第57回 ヴェネチア・ビエンナーレ 国際美術展 作家メッセージ

作家メッセージ

私は、広島で生まれ育ち、現在も広島を拠点に作家活動を続けています。
今回、キュレーターの鷲田めるろさんより、展示プラン作成に際し、日本館は展示しにくいと思われているかもしれないが、独特な建築の面白さと対話した展示を目指したいという、なんだかドキドキするようなお話しをいただきました。改めて日本館の断面図を見ますと、1階のピロティから伸びた4本の柱は、そのまま2階、展示室の壁になっており、1階の天井でもある2階の床が、まるで海中と地上を分ける境界のように感じました。潮汐によって視点を変化させる広島の厳島神社や、ヴェネツィアの街のように、海抜0mから眺める風景を、1階の天井中央に空いている穴から見たいと考え、プランを制作しました。一つの展示を、見上げる/見下ろすという異なる視点を作ることで、透視図法のように一つの視点による整合性のとれた空間ではなく、複眼的に展開される空間体験を生み出したいと思っています。鳥瞰的なスケールの把握や、虫瞰的な細部の観察、魚瞰的な空間の歪みといった視点の切り替えは、鑑賞者に息を殺してしゃがませたり、近づいたり離れたりと、身体と眼球を巧みに動かすことを自然と促します。また人工と自然、秩序と混沌、歴史と現在といった相違点がお互いを補完しつつ、事象のはかなさや、移ろう時間の流れ、トロンプ・ルイユ的な知覚の変換作用といった点にも気付いてもらえればと思います。そして、なによりも楽しんでいただける展示が出来ればと思っています。

岩崎貴宏

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