消失点―日本の現代美術

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展覧会のカタログ(定価:1,500円(税抜))は、国際交流基金本部1階のショップでも
お買い求めになれます。
をちこち
隔月刊『をちこち(遠近)』21号(2008年2月発行)では、当事業に関する記事を掲載しています。

会期・会場・出品作家

デリー(インド)
会期: 2007年10月12日 金曜日 から 11月11日 日曜日
*オープニングを10月12日 金曜日、
アーティスト・トークを10月13日 土曜日に開催予定。
会場: ニューデリー国立近代美術館
出品作家: 石原友明、小金沢健人、祐成政徳、田中敦子、中川幸夫、平川典俊、
三輪美津子、村岡三郎、村瀬恭子、山口啓介
カタログ: 「消失点」ニューデリー展カタログ(日本語)
定価:762円(税抜)
ムンバイ(インド)
会期・会場: 2007年11月21日 水曜日 から 12月15日 土曜日
 プロジェクト88
2007年11月21日 水曜日 から 12月5日 水曜日
 チャッタルジー・ギャラリー
*両ギャラリーにて、11月21日 水曜日にオープニングを開催予定。
出品作家: 小金沢健人、祐成政徳、ノーヴァヤ・リューストラ(中野良寿、安原雅之)、寄神くり 他
カタログ: 「消失点」ムンバイ展カタログ(日・英語併記)
定価:952円(税抜)

Standing Bedの写真
村岡三郎
Standing Bed
2006

協賛:

AIR INDIACanon
キヤノン・インディア、ソニー・インディア、CMS、コージ・スタジオ、TDK三隅川工場

キュレイター

金井直
[かない・ただし]
信州大学人文学部准教授
1968年福岡県生まれ。 2000年4月から2007年3月まで豊田市美術館学芸員。2007年4月より現職。京都大学博士(文学)。専門は新古典主義および近現代彫刻。主な企画展に「ヴォルフガング・ライプ」(2003年)「イメージの水位:ナルキッソスをめぐる変容と反射」(2004年)、「アルテ・ポーヴェラ/貧しい芸術」(2005年)などがある。

アーティスト・イン・レジデンス

期間: 2007年10月から11月
  ヴィスワ・バラティー国立大学(シャンティニケタン)
 木村崇人
コージ・スタジオ(ニューデリー)
 小金沢健人
オープンサークル・アーツ・トラスト(ムンバイ)
 ノーヴァヤ・リューストラ
カノーリア文化センター(アーメダバード)
 寄神くり

各事業の見どころ

デリー 展覧会「消失点」のもう一つの狙いは、ルネサンスの透視図法に発する対象把握のシステム/消失点のルールを乗り越え、ともすれば視覚に偏りがちな私たちの感覚を解き放つことでもあります。村岡三郎氏の自らの身体をつかったドローイング、かつてジャイプール藩王の宮殿であったニューデリー国立近代美術館の空間に呼応するかたちで現場制作される祐成政徳氏の彫刻作品などの作品群は、造形芸術の多様性・可能性に私たちを誘います。
小金沢健人氏による美術館でのパフォーマンスの記録映像、デリーの人たちと一緒に制作される山口啓介氏のカセット・プラント(ワークショップは10月14日から18日まで)など、ニューデリー会場ならではの作品も出品されます。
ムンバイ ムンバイでは、ノーヴァヤ・リューストラが、アーティスト・ランの非営利組織オープンサークル・トラストの協力を得つつ、公共スペースでの活動を計画中です。取手、山口、釜山、カナダ、名古屋で制作したパッチワークと竹を使って制作するツリーハウスや、ランゴーリ・アーティストとのコラボレーションなど、レジデンス期間中に制作した作品は、ムンバイのギャラリー・スペースで再現されます。
シャンティニケタン インドと日本とは近代美術史のはじまりにおいて、密接な交流を持っていました。シャンティニケタンは、20世紀初頭に、岡倉天心が詩聖タゴールを訪問し、新たな美術運動を興した日印美術交流の縁の地です。タゴールの創設したヴィスワ・バラティー国立大学では、オープンエアーの教室が多数存在していて、樹下でのびのびと学生たちが学んでいる光景が印象的です。木村崇人氏は、木漏れ日プロジェクトをはじめとする光の感受をテーマにした作品の制作を検討中です。
アーメダバード 神話や伝承に取材しつつ、布やテーブル、カーペットなど身近な素材を使って、日常的な空間に潜む物語を紡いだ作品を発表している寄神くり氏は、インドのテキスタイル産業の中心地、アーメダバードで滞在制作を行います。
  • 祐成政徳 Friendship #III 2005の写真
    祐成政徳
    Friendship #III
    2005

  • 平川典俊from the series of “Hamaoka”200の写真
    平川典俊
    from the series of “Hamaoka”
    2006

平面性。過去10年の日本の美術を内外の文脈で振り返るとき、この言葉はなおひとつの鍵となる。奥行きのなさ、装飾性、奥ではなく横へとスクロールするコミックの構造。主題・内容においても同様に、概念的、表現的であるよりも、表層性、日常性が重視される。こうした“平べったさ”への着目によって、日本美術をめぐる国際的な言説から、精神主義的な遅まきのプリミティヴィズム(極東という「風土」に、土、水、木といった素材を巻き込むかのような言説等々……)が払拭された意義は大である。

だが、そのいっぽうで、平面性自体がまた日本の視覚文化の一局面と無条件に重ね合わされ、ナショナルな言説に再回収される危険をはらんでもいたようだ。審美的な観点から歴史的同一性をあっさりと呼び込むほど、作品も、そして私たちも、透明でも平明でもないのだが。

今回の展覧会では、むしろ個々の作品に練りこまれた奥行き、深さに焦点を当てる。無論、透視図法の精密や図像学の洗練、ある種の反映論をもって深さを語るのではない。作者の内面といったロマン主義でもない。注目したいのは作品に割り込む別のメカニズムの存在であり、作品の首尾一貫性や美的統一を端から覆す他者の影である。

石原友明 Self Portrait― 二条城 #4 2003の写真
石原友明
Self Portrait―  二条城 #4
2003

言い換えれば、歴史の残響、記憶の断片、あるいは今・ここにある体が、一種の消失点として(つまり不可視のしかし不可避の参照項として)、作品のなかにいかに練りこまれ、いかに観者に作用するのか、という問いである。一義的な、安定した解は望むべくもあるまい。

しかし、こうした応答の場へと作品を導くことこそが、審美的調和を前提とせず、したがって世界の中に日本美術の定席を早々と求めることぬきに、私たちが世界の現実(インドに生きる人々もまたそうした現実を与えてくれる)と直に関わっていく方法であると信じたい。本展で紹介する日本の作家たちの活動が、そのことを証明してくれるはずである。

[お問い合わせ]

〒160-0004 東京都新宿区四谷4-4-1
国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
芸術交流部造形美術課
Tel: 03-5369-6062 / Fax: 03-5369-6038
西岡麻記子 E-mail

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