旧アジアセンター知的交流課 事業実績 1995(平成7)年度 事業について

1. 企画開発事業

国際交流基金アジアセンターは、アジア域内の対話と相互理解及びアジア地域の文化振興に資する目的で、自ら事業を企画実施し、さらに内外の非営利公益団体と共同で事業を実施しています。平成7年度は国際シンポジウム、専門家の派遣、アジア地域の博物館・図書館の調査、ワークショップ、グループ招へい等を実施しました。主なものを挙げると、アジアセンターの開設を記念してアジアの有識者6名を招いて実施した国際シンポジウム「アジア相互理解のメッセージ」や、大阪APEC会議開催に関連しアジアのポピュラー文化の担い手、研究者を招へいして実施した国際シンポジウム「越境文化の現在」、アジアの博物館専門家のグループ研修、アジア染織アーティストのグループ研修等があげられます。 また、若手研究者やNGOリーダーが自国以外で研鑽を深めるためのフェローシップを供与しました。95年度は日本から3名の若手研究者を香港、フィリピン、インドに派遣し、NGO職員1名をタイに派遣しました。またトヨタ財団との共同で「東南アジア研究地域交流プログラム」を実施し、13名の東南アジア人研究者に自国以外の東南アジア諸国で語学研修や客員講義を行なうためのフェローシップを供与しました。

2. 公募助成事業

アジアセンターは、広く日本を含むアジア地域において、以下の5つの分野を重点分野として公募を行ない、優れた国際的な共同作業に対し、経費の一部を助成しています。平成7年度は、初年度にもかかわらず多数の申請が寄せられ、その中から82件について、総額238,246,793円の助成を行ないました。

  1. (1)多様性の理解と共生に資する取組み
  2. (2)域内共通課題解決のための取組み
  3. (3)社会の平等と開放に資する取組み
  4. (4)有形・無形文化遺産の保存、記録、公開に資する取組み
  5. (5)伝統文化を現代に生かすための取組み

(1)多様性の理解と共生に資する取組み

欧米諸国間の文化理解に比し遅れているアジア域内の相互理解を推進するため、アジア人によるアジア研究、近隣国研究の振興を支援しています。代表的なものをあげると東京大学東洋文化研究所が開催した国際シンポジウム「21世紀のアジア: アジア研究の新たな枠組みの構築」やタイのチュラロンコン大学文学部の「タイ・ミャンマー研究 研究者交流とトレーニング・プログラム」などがあげられます。また多様な民族、宗教の共生や共有しうる新しい価値観の創出を図るプロジェクトも重要な助成対象と考えています。こうした観点から助成を行なったプロジェクトとして、日本国際問題研究所主催の国際シンポジウム「アジアとイスラム」や、オーストラリアの南フリンダース大学国際ホスピス研究所が実施した「ホスピスに関するアジア地域との共同研究」などがあります。学術研究分野に関するものは、従来の学術の枠にとどまらない、専門分野、専門領域を越えるものを奨励しています。また、シンポジウム等域内対話の促進を目的とするものは、より多様な分野、業種の対話とネットワークの形成を促進するものを優先しています。

(2)域内共通課題解決のための取組み

アジア地域が共通に抱える課題を解決するために進められる国際的な共同作業に対し助成を行ないました。新しい国際秩序の構築、協調を基調とする国際経済運営の枠組み作り、地球環境の保全等が本年度多く寄せられたテーマでした。こうした助成プロジェクトの例としては日本の持続可能性研究会の調査研究「アジア地域の自然資源・環境と日本の持続可能な経済活動研究」や中国社会科学院アジア太平洋研究所の「APECの役割と影響 日本、中国、アセアンの関係と役割」などがあげられます。環境問題など、特に関心の高い分野については、地域住民の声を政策に反映していくことを狙いとしたものや、地域の固有文化、価値観との関連から環境保全を図ることを目的とするもの等、ユニークな視点をもったものを奨励しています。

(3)社会の平等と開放に資する取組み

各国の法整備支援や女性の社会参加を支援するプロジェクト、アジアの非営利セクターの強化とネットワークの形成に役立つプロジェクトに対し助成を行ないました。代表的なものとして名古屋大学大学院の「中国、ベトナム、モンゴルにおける市場経済の導入に伴う民事法制の変化に関する研究」、タイのメコン地域法律センターの「国際貿易法に関するインドシナ地域の法律専門家養成のための研修」、タイのNGOが主催した「インドシナ地域におけるNGOのネットワーク形成事業」があります。特に、旧社会主義国及び市場経済化が進展する現社会主義国における、社会の改革・開放に資する新しい試みや、こうした課題の解決を目指す国際的ネットワーク作りに資するプロジェクトを奨励しています。

(4)有形・無形文化遺産の保存、記録、公開に資する取組み

急激な社会変動に伴い変質、消失の危機に直面するアジア地域の文化遺産の保存や、伝統文化の担い手の育成を図るプロジェクトを支援しています。有形文化遺産に関する助成の例としては、国立民族学博物館の「アジア博物館国際協力プロジェクト」、インドの国立芸術文化遺産トラストの「歴史的建造物保存に関する日印共同研究」、無形文化遺産については、ベトナムのフエ芸術大学の「雅楽科の復興」、パキスタン民俗伝統遺産研究所の「中央アジアの無形文化財の記録・保存」等のプロジェクトがあります。アジア各国の国づくりやアイデンティティーの確立、さらには地域社会に根ざした固有文化保存に寄与するプロジェクトや、将来の文化振興の担い手となる人材育成のための取組みを重視しています。

(5)伝統文化を現代に生かすための取組み

国際的な対話と共同作業により伝統文化を活性化させ、現代に生かすためのプロジェクトを支援しています。Roots 展実行委員会の「"Roots"-超アジア建築展 風土・記憶・現在-シンポジウム」、アジア・エッジ・プロジェクトによるシンポジウム「アジア・エッジ 1996/東京」に支援を行ないました。単なる伝統文化の保存に止まらず、現代に適応した新しい文化の創造、地域文化の振興に資する取り組みを奨励しています。

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