旧アジアセンター知的交流課 事業実績 1997(平成9)年度 2.公募助成事業 (4)有形・無形文化遺産の保存、記録、公開 (24件)

全インド国立芸術文化遺産トラスト(インド)

史跡の開発方法論の研究と応用:ヘミス地域の僧院におけるコミュニティ中心の保存と開発
¥2,774,612
95年度、アジアセンターの助成により実施した「コミュニティの持続的発展のための歴史的建造物保存に関する日印共同研究」にて構築した史跡開発の全体論的手法が、コミュニティの参加に基づいた文化保存の方法として実際に有効であるのかどうか確認することを目的とした事業。ラダック地方ヘミスは豊かな仏教の文化遺産を受け継いでいるが、近年観光産業、無計画な開発の影響等によりその遺産が脅かされている。このような状況に鑑み、地域建築や儀礼、社会経済的環境と観光の影響、遺跡の法的地位、コミュニティによる僧院のマネージメントなどについて調査を行なうとともに、美術工芸品の記録作業を行ない、その成果を報告書にまとめた。

口承伝統研究協会(インドネシア)

スマトラ地方の口承伝統調査及び会議
¥2,385,000
インドネシアのスマトラ4州における文学、民話、伝説、魔術、医療、習慣、慣習法等の口承伝統文化を調査・記録する事業。第一次調査として、地元の研究者を得て、口承伝統の分布地図を作成し、今後の詳細な調査の基礎とした。また、インドネシア国内及びブルネイ、マレーシア、オランダ、アメリカから専門家や若手研究者を招聘し、98年6月8日~11日に口承伝統文化の研究方法に関するワークショップを実施した。

カンボジア王立芸術大学(カンボジア)

建築記録に関するハワイ大学との共同プログラム
¥1,069,530
1997年7月~8月/バンコク、アユタヤ97年7月のカンボジアにおける政変のため、「カンボジア人学生を対象とした、プノンペンにおける建築物の記録を通じた研修」という当初の計画を変更し、ハワイ大学アジア文化保存フィールドスクールのアメリカ人学生を対象に、バンコクのバングランプー区域における地域特有の建築物の調査を行なった。9名の学生に対して、写真撮影、インベントリーの作成、都市建築のデザイン、建築記録の手法、ドローイング等の研修を実施し、参加学生は115の建築物のインベントリーを作成。また、アユタヤでタイの考古学局芸術省が実施していた建築物調査に参加し、共同作業を行なった。

クメール大衆文化・芸術振興センター(カンボジア)

小規模影絵国内巡回シアター
¥2,047,617
カンボジア、シェムリアップの内戦孤児及び貧しい家庭の子どもたちを対象に、伝統的小型影絵スバエク・トーイの技術をトレーニングし、学習や人間の尊厳について理解する機会を与えると共に、次世代の演者を養成して伝統文化の現代における再生を図ることを目的とする。同影絵は内戦時代の影響で壊滅的打撃を受けたが、ユネスコ等の協力により最近復興した。内戦を生き残った数名の技術保持者が、10~16才の児童を対象に人形制作、動き、物語等を教え、子どもたちがセンター付近の学校や仏寺の塔で公演した。

チェンマイ大学社会科学部資源管理開発センター(タイ)

アジア古代都市の固有文化保存:持続可能な開発手段としての住民参加と文化資源管理
¥2,656,845
アジアの代表的古代都市であるチェンマイ(タイ)、麗江(雲南)、フエ(ベトナム)における古文書、歴史的遺物、建築等の文化資源の管理と、その文化資源をどのように生かしながら経済発展を進めてきたかについて、タイ、中国、ベトナムの研究チームと地元グループが地域参加型の研究を実施。バンコクの主要な図書館や大学での情報収集、チーム・ミーティング、古代都市の地図や写真のインベントリー作成のほか、日本における歴史的都市保存の経験を学ぶため京都、奈良、名古屋を訪問し、自治体関係者や研究者と意見交換を行なった。その後チェンマイでワークショップを開催、訪日の成果をまとめた。文化保存に関わる住民の意識を高めるためのアドボカシー活動に役立てることをめざす。

東南アジア山岳民族の文化と開発、研究、記録、情報プログラム(タイ)

メコン地域のハニ族・アカ族の無形文化財の記録、保存、公開
¥2,798,450
タイ、ミャンマー、ラオス、中国の山岳地帯に在住するハニ族・アカ族の文化研究・保存を行なう事業で、各地での収集資料と整理、アーカイブ作成、及び各国の機関・研究者が資料を利用できるよう保存方法を改善すること(CD-ROM化等)を目的とする事業。アカ族を含む記録作成チームを結成し、アカ語とコンピューターの研修を実施したほか、過去20年間にタイ北部で収集されオーディオテープに収められた古語によるアカ語文書や歌謡の調査と記録を行なった。その調査記録の中から、アイデンティティ喪失の危機にあるアカ族の若い世代やアカ族研究者のためのテキストとして利用するため、歴史に関する資料を選択して現代アカ語に翻訳した。これらの作業を通し、アカ族コミュニティとのネットワークを構築することができた。

中国戯劇学研究会(中国)

'98亜洲民間祭礼芸能研討国際会議
¥2,070,268
1998年2月9日~14日/河北省
民族間の認識と理解を深めるため、アジアにおける宗教信仰儀礼に伴う伝統文化の歴史的変遷、現代社会での生存と今後の方向について討議する会議を開催した。韓国、シンガポール、台湾、中国、日本、ベトナム、オーストラリア、フランスから研究者が参加。テーマは「各国の宗教文化芸能の当代価値とその保存方式」、「アジア伝統農業社会における文化的共生と民俗芸能に対する制約」、「自然崇拝精神の芸能的な表現」、「陰陽五行観念の伝播と芸能での存在方式」、「節気と祭典行事、民俗芸能との関連」等。会議に伴い河北省邯鄲市・武安市にて、アジア民間芸能国際会議・民俗芸能鑑賞を実施した。

中国中医研究院(中国)

日本現存の中国散逸古医籍の伝承史研究利用と公表
¥2,340,000
江戸期に日本が中国から輸入・保存してきた中国医薬文書のうち、すでに中国には現存しない書は、国立公文書館内閣文庫蔵書だけでも206部・150書目に及ぶ。同文書をマイクロフィルム化し、調査を実施する96年度からの継続事業。中国医薬文化の空白を埋めるとともに、日本における伝承・保存の経緯の解明することを目的とする。97年度は、内閣文庫、宮内庁書陵部等が所蔵する計50書をマイクロフィルム化し、集中的に研究を行なった。結果を報告書にまとめ、98年3月31日に中国中医研究院にて報告会を実施した。

国立民族学博物館地域研究企画交流センター(日本)

モンゴルにおけるオルホン突厥碑文の保存修復プロジェクト
¥3,599,000
ユーラシア大陸で活躍した遊牧民の世界的な遺産であるオルホン突厥碑文のうち、モンゴル中央部にあり緊急の修復を必要としている「キュルテギン碑文」を修復する事業。修復作業のほか、碑文を立体的に記録する作業が行なわれた。その記録をもとに今後碑文のレプリカを作成する予定。今回の作業は、モンゴル国内に現存する石造りの遺物、遺跡の初めての保存修復作業であり、モンゴルの文化財保存専門家への技術移転効果は大きい。

(財)東洋文庫(日本)

セント・ペテルスブルグ蔵敦煌文書保存支援(上半期)
¥2,924,000
今世紀最大の歴史資料の発見と言われる敦煌文書は、古代により近世に至るまでの中央アジア諸民族の興亡や中国の漢族との関係等、従来の歴史研究の空白を一挙に埋めるとされているが、現在世界に四散しており、早急に保存・記録を行なう必要がある。ロシア科学アカデミー東洋学研究所ペテルスブルグ支所所蔵の敦煌文書を保存・記録する継続事業の最終年次上半期事業。チベット語の撮影リストを作成したほか、引き続きタングート語のマイクロフィルム化を継続した。また、いくつかの言語を一般公開に向けて複製したほか、それらの文書調査と仮目録の作成並びに研究に着手した。

(財)東洋文庫(日本)

セント・ペテルスブルグ蔵敦煌文書保存支援(下半期)
¥4,813,000
現在世界に四散している敦煌文書のうち、ロシア科学アカデミー東洋学研究所ペテルスブルグ支所所蔵の文書を保存・記録する最終年次下半期事業。今回の助成で、タングート語のマイクロフィルム化を終了した。96年から継続して行なってきた保存作業を通して蒐集した資料をもとに、今後内陸アジア諸民族の興亡に関する歴史的総合研究が進展することが期待される。

(財)日本民藝館(日本)

中国民間版画の国際共同研究
¥2,757,500
新中国成立後、旧時代の悪習として生産や消費が禁止され、文化大革命の際に多くの版木が破壊されてしまった中国民間版画は、現在中国や台湾において極めて貴重な価値を有すると高い評価を受けている。本事業は、中国の民間芸術、民俗文化の研究の振興をめざし、日本民芸館が有する中国民間版画を中心に、日本、中国、台湾の研究者が共同で研究を実施する事業の第2年次。本年度は、中国福建省と台湾で調査を行なったほか、イギリス、フランスに収蔵されている民間版画についても調査を行なった。

上智大学アジア文化研究所(日本)

アンコール時代窯跡保存・公開マスタープラン作成プロジェクト
¥2,890,000
カンボジアのアンコール遺跡整備保存機構と共同で、シェムリアップ州タニ村で発見されたアンコール時代の大規模な窯跡の調査、保存、整備活用のマスタープラン作成を実施する事業。第2年次の97年度は、カンボジア国内の政情不安などにより発掘調査の継続は困難であったが、前年度発掘出土品の整理のほか、古窯跡保存とクメール陶器に関する啓蒙パンフレット作成を行なった。また、クメール陶器不法国外流出の状況の調査と情報収集、クメール陶器の記録写真撮影を実施した。パンフレットは日本語、英語、クメール語の3カ国語で出版され、クメール語版は地元の関連機関へ配布された。

上智大学アジア文化研究所(日本)

カンボジアのシェムリアップ州村落における民族伝統文化財の基礎的調査
¥2,097,000
急激に変容しつつあるカンボジアの村落社会においては、クメールの伝統的な民族文化に関する調査、研究、保存、振興が急務であるという認識に立ち、カンボジアの伝統民族文化の現状と変容、担い手の状況を把握する事業。本年度は、カンボジアの旧王都であるシェムリアップ州アンコール地域周辺部に点在する村落において、民俗芸能の「トロット」(舞踊)や「スバエク・トーイ」(小型影絵芝居)の実態調査を行なった。成果は報告書としてまとめ、今後のカンボジアの伝統的民族文化の保護、振興、保存への具体的な施策立案及び方法論を探る手立てとし、調査段階から緊密な協力関係を持つカンボジア政府文化芸術省や王立芸術大学を通じて、現地へ還元してゆく予定。

東京修復保存センター(日本)

ベトナム国における歴史的文書史料の修復保存総合調査
¥4,601,000
1997年8月21日~9月10日/ベトナム
日本の紙保存専門家がベトナムを訪問し、現地の専門家とベトナム国家文書局の協力を得て、気候や温湿度、建物の老朽化等が原因で劣化損傷が著しいベトナムの歴史的文書に関する調査を実施。歴史的文書の所在情報の集約、文書の劣化損傷状況の調査、保存施設の環境調査、古文書の素材調査、紙のサンプリング収集、伝統的紙漉工房等の関連施設の視察を行なった。

西チベット古代文化日中共同調査団(日本)

中国チベット西部古代密教洞窟群及び壁画の調査
¥2,357,000
1997年7月2日~8月16日/西チベット
92年に西チベットで発見されたピヤン・トンガ等の大規模な遺跡は、同地域の過酷な地理状況のため、これまでまとまった調査が行なわれてこなかった。本事業では、国際日本文化センターと中国四川連合大学チベット歴史文化考古研究センターが共同調査団を結成し、46日間にわたりピヤン・トンガ洞窟遺跡、カルズ洞窟遺跡及びグゲ王国遺跡の密教壁画の調査を実施。グゲ王国時代(9世紀中頃から1630年)の西チベットにおける政治的、経済的、文化的な重要性が確認された。今後中国側との協議のうえ、仏教壁画や写経・仏像などの調査データを仏教史や美術史の研究に役立てていくと共に、資料の公開、出版等の可能性も探っていく予定。

日本大学理工学部アジア木造建築研究会(日本)

ベトナム・フエ明命帝陵右従祠修復事業終了報告会議
¥3,178,936
1997年3月23日~27日/ハノイ、フエ
アジアセンター、トヨタ財団等の助成を受けて修復が行なわれた明命(ミンマン)帝陵の修復過程及び成果につき、日本とベトナム両国の研究者・実務者によるシンポジウムを開催し、成果の共有を図ると共に、今後の展望について討議した。ハノイでは、研究者、政府関係者が本件の成果を国家レベルで共有し、フエでは一般市民にシンポジウムを公開、問題意識の共有を図った。日本からの参加者は、本修復事業の国際的な意義及びベトナム研究へのインパクトという観点から研究発表を行ない、本件修復事業のフレームワークの拡大をめざした。

ヒマラヤ保全協会(日本)

ムスタン・エコミュージアム
¥2,410,000
本事業は、伝統的にチベット文化が根づいているネパール中西部ムスタン地域の固有の伝統文化を継承し、自然環境や近代社会と調和させながら地域住民と地域振興を進めていくことをめざし、地域住民の協力・参加のもと、ビデオ撮影による文化遺産の保存活動と伝統医療の復興を支援するもの。本年度は、ネパール語で出版されている「ムクチナート地域の文化」の英語版作成、ムスタン地域の文化遺産に関するディレクトリー作成の準備を進めたほか、ムスタン在来の薬草の栽培指導、チベット伝統医に関するビデオを作成した。

立命館大学国際環境・開発研究センター(日本)

国際シンポジウム及びワークショップ「イスラム社会の歴史的都市」
¥2,451,300
1998年4月21日~23日/ジョグジャカルタ
96年度アジアセンター助成事業「第5回アジア・太平洋歴史的都市保存会議」の成果を受け、ガジャマダ大学建築学科との共催で国際シンポジウム「イスラム社会の歴史的都市」を開催。各国における歴史的都市の保存・開発の現状と課題について討議した。会議に引き続き、「イスラム社会における歴史的都市・地区の現況分析」、「歴史的都市の管理運営:将来に向けて」、「21世紀のイスラム社会における歴史的都市・地区の将来展望」と題するワークショップを実施。アメリカ、インドネシア、オーストラリア、エジプト、シリア、スイス、マレーシア、日本から専門家が参加した。

早稲田大学長江流域文化調査隊(日本)

四川成都市で発掘された古城址に関する調査
¥2,063,000

四川省成都市で96年度に発掘された宝遺跡の出土物の整理作業を実施したほか、次年度の調査対象である都江堰市城遺跡の予備作業を、四川総合大学、成都市文物考古工作隊と共同で行なった。早稲田大学は、過去3年間にわたり四川省一帯について調査を行なってきた。96年11月に今回の調査対象である新石器時代城址遺跡を試掘したことにより、中国古代文明の成り立ちを、黄河・長江文明のみでなく、四川という周縁の地から見直す必要が高まっている。

フエ芸術大学(ベトナム)

雅楽(ニャーニャック)科の復興
¥3,699,156
失われつつあるベトナムの雅楽(ニャーニャック)を復興し、後継者の養成をめざす95年度からの継続事業。フエ芸術大学に開設した雅楽コースに演奏技術を伝える演奏家3名を講師に迎え、学生15名に雅楽の演奏技術を中心に教授した。また、98年1月9日~11日に日本の専門家を招聘してワークショップを開催し、ベトナムの雅楽の独自性、また中国や日本の伝統的な記譜法との共通点等について科学的な分析を行なった。

ミャンマー伝統的写本保存委員会(ミャンマー)

ミャンマー古文書保存修復
¥4,207,321

ミャンマー国内の公文書館、寺院等に残っている貝葉及び紙文献を中心とした歴史的文書の保存修復事業。2回の事前調査を経て、大学中央図書館、ミャンマー歴史委員会、大学歴史研究センター等で構成される写本保存委員会が、ヤンゴン近郊、南シャン州等の文献を調査して目録を作成し、言語、文字、伝統医療、経済等に関する重要な文書をマイクロフィルム化した。

モンゴル文化遺産センター(モンゴル)

モンゴル博物館ワークショップ
¥1,880,490
1997年3月15日~4月8日/ウランバートル
社会主義政権から民主主義政権への移行による急激な社会変化に伴い、文化的アイデンティティの再編成と固有の民族文化の再生が課題となっているモンゴルにおいて、その解決に重要な役割を担う博物館運営に対する支援事業。95年度にアジアセンターが主催で実施したワークショップの成果を踏まえ、日本人専門家をモンゴルに招聘し、博物館運営に関わる国内法基盤の整備、所蔵作品の保存方法、歴史的建造物の保護等の課題についてより専門的な内容でワークショップを開催した。ワークショップには、ウランバートルの博物館のみならず、地方の博物館の専門家も含めて100名以上が参加した。

ラオス情報文化省ラオス文化研究所(ラオス)

ラオス国内におけるラオス諸言語調査
¥2,152,000
ラオスにおける国民言語としてのラオ語は、近年の対外開放政策の影響で、特にタイ語の浸食を受けて急速に変貌しつつある。そうした状況下にあるラオ語の諸方言、少数民族言語等の記録・研究を、日本とラオスが共同で実施している事業。96年度に中央ラオスを中心に行なった記録・研究作業に続き、日本人研究者の協力を得て、北部ラオスの6県をに調査を行なった。また、96年9月にラオス文化研究所の研究者が日本を訪問し、言語学の研究を行なうと共に、データ処理技術のトレーニングを受けた。

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