日本語教育論集 世界の日本語教育 第4号 要旨

「ヒューマニスティック・テクニック」を考える:
中等教育の外国人日本語教育のために

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横山 紀子(国際交流基金ロサンゼルス日本語センター 日本語教育専門員)

特定の教授法理論とは直接関係づけずに現在使用中の教科書を使いながら教室活動を組み立てていく際のヒントになる考え方として「ヒューマニスティック・テクニック」を紹介し、中等教育の外国人日本語教師のための可能性を提案した。
まず、Moskowitz(1978)およびGalyean(1977)によるヒューマニスティック・テクニック」の考え方を紹介した。その要点は以下の通りである。(1)言語学習は言語形式を習得する認知面の学習にとどまらず、情意面での人間的成長を考慮したものである べきだ。(2)言語学習が学習者にとって有意味であるためには、学習者に身近な題材をトピックにしながら自己表現させ、併せてクラスメート間の人間的交流を図ることが大事である。
「ヒューマニスティック・テクニック」の拠って立つ「人間性」のとらえどころのなさや楽観性などに対して批評的考察を加える一方、次のような点で意義を認めた。(1)学習者心理、教室内における目標言語の有意味な使用、言語学習における自己表 現の重要性などに大きな関心を払っている。(2)教師が学習者の内発的動機を探求するうえで有益な機会を与え、教師自身の内省に効果的である。
中等教育における言語教育のもつ人間教育の側面や外国人教師の利点を生かすうえで「ヒューマニスティック・テクニック」の意義を確認し、日本語の教室活動の例を紹介して、外国人日本語教師にその評価を問う。

新教授法と日本語教育:ドイツ・ヤポニクムにおける実践と応用
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村井巻子・佐藤和弘(ノルトライン・ウェストファーレン州立日本語研修所「ヤポニクム」講師)、
ピナウ-サトウハイケ(ノルトライン・ウェストファーレン州立日本語研修所「ヤポニクム」研究助手)

ドイツ・ノルトライン・ウェストファーレン州立日本語研修所「ヤポニクム」では 、伝統的教授法の中に新教授法を取り入れ、新しい語学教育を目指している。従来の 知識中心の左脳偏重教育から、頭だけでなく全身を使用する全脳教育を目指す。
新教授法においては、まず全身を使う学習として、教師が口頭で与える命令に対し、学習者が全身で反応するTPRがある。発声練習では、身体の緊張と弛緩を利用した音の生成を「身体リズム運動」で機能的に発音指導できるものとしてVT法がある。「リラックス練習」は、人間の脳と音楽を聴くことによって生じるアルファ波の関係を外国語学習に応用したものである。また、サジェストペディアコースは人間のもつ潜在能力の開発・活用を目指したものであり、その教授法には未知の可能性が潜ん でいる。
アンケートの回答から得た学習者のこれら新教授法についての反応は、肯定的な意見とともに否定的意見があるが、否定的なものに関してはその教授法のもつ意義が正 しく理解されていないことから出てきたものが多い。新教授法を用いる際には、教師・学習者間のこれら新教授法に対する相互の理解が前提とされる。

初級日本語教科書と「聞き返し」のストラテジー
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トムソン木下千尋(ニューサウスウエールズ大学 商学部アジア科シニア・レクチャラー)

会話の中の聞き手の言語行動の1つに「聞き返し」がある。本稿は初級学習者のよくぶつかる問題点とその原因を探り、その解決策として「聞き返し」のストラテジーを取りあげる。「聞き返し」のストラテジーの重要性を、コミュニケーション能力の理論の中の方略能力の立場と、広義の学習ストラテジーの中のコミュニケーション・ストラテジーの立場から検証する。そして、初級教科書9冊の「聞き返し」の扱いを検討し、初級教科書における「聞き返し」の提示の仕方として、(1)学習目標として「聞き返し」を設定、(2)本文に「聞き返し」のモデルを提示、(3)その練習の添付、(4)実際に「聞き返し」が使える場面の提供、を提唱し、日本語を教育の対象だけで なく、教育の手段として生かすために、「聞き返し」/コミュニケーション・ストラテジーの指導の重要性を説いて結ぶ。

Signalingが日本語の科学技術文献読解に及ぼす効果
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山元 啓史(筑波大学 文芸・言語学系(留学生センター)助手)

本研究の目的は外国人研究者のための新しい読解技術を開発することである。次の3つを目的としてもっている。第1にsignalingの有無の要因における日本人の読解 過程の分析、第2にsignalingと専門知識の有無の要因における外国人の読解過程の分析、第3にsignaling理論を用いた読解支援システムの開発である。
本稿では上記のうち、第2について述べる。2×2×2の実験を計画した。第1の 要因はsignalingの有無、第2の要因は一般的説明文と専門文献の文章特性の要因、第3の要因は専門用語に関する知識の有無である。実験を行なった結果、signalingは一般的な説明文ではその効果をみせなかったが、専門文献の構造的解釈においてその効果がみられた。また、ただ単に専門用語を提示しただけでは内容的解釈において効 果がみられなかったが、signalingを併用することによって文章理解を促進することがわかった。これらのことから、専門的な文章指導においては、知識的な指導だけでなく、signalingのような構造的あるいは内容的な手がかりを指導に含めることによって専門知識を活用できることがわかった。

漢字系学習者のための漢字教育のあり方: 韓国人の日本語学習者を中心に
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曺 喜澈(国立国語研究所 外国人研究員)

これまでの漢字文化圏の学習者に対する漢字教育は、すでに漢字の下地があるものとみなされ、非漢字文化圏の学習者に対する漢字教育に比べてみると、相対的になおざりにされてきた感がある。
韓国人の既習の漢字能力を大いに活用して、日本語の教育に臨むべきであるが、安易に両国語の類似性だけを強調して、日韓両国の漢字の異同を見逃してはいけない。日韓両国の代表的な漢字使用の基準である、常用漢字と基礎漢字には、字種および字 体はもちろん、音や訓などにも数多くの違いがみられる。さらに、使用頻度や実態にもかなりのずれがみられる。
したがって、日本語学習や教育においてはいうまでもなく、教材や辞書・字典など の作成においても両国の漢字の位相をよく工夫・研究し、韓国人の日本語学習者のための教育方法を講じなければならない。本稿は、主に日本の「常用漢字」と韓国の「基礎漢字」を対照比較しつつ、日本語の漢字教育を行なう際に注意すべき点をまとめ、 韓国人学習者のための漢字の学習法・指導法の改善に資することを期したものである。

中級日本語読解における読解ストラテジーと相互教授法の効果
【PDF:393KB】
森本 多喜子(エルカミノ大学 外国語学科準教授)

英語と同語系に属する外国語の教授法が成功しているからといって、同じ教授法が果たして日本語教育にも適用できるのだろうか。
本稿では、日本語教師が抱えるそういう疑問の背景を考えながら、外国語としての日本語の数少ない読解研究をふまえ、最新の教授法を紹介し、その日本語教育上の評価を試みるものである。現在、英語と同語系にある外国語読解においてもっとも効果 的だと評価されている第1の方法は、読解をするにあたって、1)要約、2)疑問提 起、3)明確化、4)次段落への予想という4つの読解ストラテジーを学生に与える 方法である。もう1つには、文を読むにあたって、ペアを組んだ学生同士が会話をかわしながら、助けあって読み進んでいく相互教授法である。この2教授方法が日本語 読解にも応用できるかどうか、また、どのような学生がこの教授法により、高い効果をあげているかという2点について、1学期間のクラス実践をもとに調査してみた。
調査の対象としたのは、米国短期大学で中級日本語を学ぶ、日本語を母国語としない18人の学生である。調査の手順としては、まず学期の初めに個々の学生にプリテストを施し、クラス全員の読解力を測定した。次に、相互教授法を使った計5回の読解トレーニングを隔週ごとに与え、各トレーニング後には、個々の学生に内容についての読解テストを受けさせ、その結果を記録した。最後に、学期末試験で個々の学生の 読解力がどのように伸びたかをポストテストとして測定した。プリテストとポストテ ストの結果の比較分析から、前述の2教授法が日本語読解においても効果的であるこあわせて考察を加えた。

イラボレーション理論の日本語教育への応用:文型配列順序への提言
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中川 智恵美(コーネルカレッジ 日本語講師)、 ジェイムズ クィーン(アイオワ大学 教育学部助教授)

本稿は、インストラクション・デザインの分野の理論を使って、日本語教育への応 用を試みたものである。アメリカ合衆国で実践された教案の成果を踏まえ、その理論 に基づいた文法の提出順序を紹介する。従来の文型積み上げ式では、断片的な文法知識しか学習者に与えず、いくらコンテクストとシチュエーションを与えても体系的な 知識が身につかず、暗記を強要しているにしかすぎない教授法に陥りがちである。イラボレーション理論では、全体像を先にみせることによって学習者の理解への足がかりを作り、徐々に詳細を学習しながら既存の学習内容と新しい内容とに体系的な関連 性をもたせ、学習者の理解を促進していく提出方法をとる。
まず、一貫して使われている概念は、マーカー(しるし)である。語の後ろにつくというその概念を、助詞マーカー・文末マーカー・コミュニケーションマーカーへと 拡げ、学習者は、動詞の活用形を一度に勉強する。語の意味を覚えることは、その後に続くコミュニケーション学習の中の多様なコンテクストの中で学習することにして 、最初、日本語の枠組みを練習する。その後、学習者に必要な文型が一度に出され、 その多種多様な選択肢の中で、シチュエーションにあったマーカーの選択を学習者自身がすることにより、学習者の本当の実践力の向上がはかれる。この理論では、学習 者の試行錯誤を促すだけでなく、母国語への干渉を防ぐ処置もとられる。教授法の面からも、コンテクスト作りがしやすくなり、生教材の使用も恐れることなくでき、学 習者を母国語の直訳ではなく、日本語らしい文へと導いていけるようになる。
イラボレーション理論は、学習者の認知過程にそった文法項目の再構築を示唆し、それに続く効果的なコミュニケーション学習への布石を投じるものと考えられる。

漢字指導上の字形の重要さ
【PDF:500KB】
アルド トリーニ(パヴィア大学 政治学部日本語科準教授)

この論文は非漢字圏の学習者を対象にした漢字指導に関する研究である。漢字指導 の中で問題となるのが学習者に提出する漢字の選択であるが、たいていの場合、漢字 を選択するとき、漢字の形(字形)は考慮されていない。しかし、字形は漢字習得上、重要な役割を果たしていると思う。初めて漢字にアプローチする非漢字圏の学習者 には、字形によって漢字の区別や認識が一般視覚認識規則に従って難しかったりやさしかったりすることがある。区別や認識のしやすい漢字もあれば、しにくい漢字もあ ることは学習過程の中で経験することである。
この論文は、まず、パターンと漢字の認識に関する一般的な考察を述べ、次にアルファベットと漢字の視覚的な相違を検討する。最後に、非漢字圏の学習者の視覚認識 規則の根本的な仕組みを理解するために行なった実験を紹介し、その結果に基づいた学習的な考察を述べる。

日本語クローズテスト:試作
【PDF:730KB】
ダグラス昌子(カリフォルニア大学 日本語講師)

本稿は、外国語または第2言語として日本語を学ぶ学習者の読解能力を測るためのクローズテスト作成の試みである。
クローズテストは、第2外国語としての英語教育(TESOL)の分野で長く使われており、数多くの研究や実際の使用により、テストとしてのvalidity(妥当性)や reliability(信頼性)のあるものとみなされている。
このクローズ手法を日本語に使う場合、以下の問題を解決しなければならない。

  1. 1.英語では「語」が分かち書きされているため、数えるのに問題はないが、日本語の場合、膠着言語という性質上、何を「語」として扱うのかを定義する必要がある。既存の日本語クローズテストは、「文節」を語の単位として扱っている。しかし、それが妥当か否かについての研究はない。本稿は文節を語とするクローズと形態素を語とするクローズの結果について他のテストのスコアーとの統計学の相関関係を調べることにより、どちらのクローズが妥当なものであるかを調べた。
  2. 2.採点方法:クローズテスト採点にあたり、学習者の解答の中で、原文と同じ語のみを正解とするのか、原文とは違っても意味がとおるものなら正解とするのかは意見の分かれるところである。本稿は、この2種類の採点方法と他のテストのスコアーとの相関関係を調べ、どちらの採点方法が有用かを調べた。
  3. 3.消去された語のカテゴリーについて:クローズテストが読解能力査定のテストとして有効であるためには、単文内の文法関係を読みとる能力だけでなく、文と文あ るいは段落そしてテキスト全体の文法関係を読みとる力や社会的常識に関する知識の有無を調べることができるテストでなくてはならない。本稿は、試作のクローズテストが何を測っているのかを調べた。
  4. 4.結果として、形態レベルのクローズテストを使い、意味がとおるものは正解とする採点法を用いた場合、他のテストスコアーとの間に有意の相関関係があることがわかった。また、7語ずつ消去した場合、消去された語は単文内のみでなく、文と文、段 落間、そしてテキスト全体にわたる文法関係や社会的常識の知識なしでは復元されないものであることがわかった。

クローズテスト法による日本語読解力の測定:
日本語学習者と日本人小学生の読解力を比較分析する

【PDF:633KB】
山下 早代子(国際基督教大学 専任講師)

外国人日本語学習者の最終学習目標の理想は、母語話者と同等の日本語力を習得することであるが、実際には、両者の日本語力にはどのような相違があるのだろうか。本稿では、大学生の日本語上級学習者、中級学習者、および日本人小学1年生の3つのグループを対象に、クローズテストを用いて、それぞれの読解力を測定し、比較分 析した。使用したクローズテストは、昔話の『桃太郎』を素材にして作成したものである。テストの信頼性の検証も含め、項目分析、一元配置分散分析(ANOVA)などの統計分析により、3者の読解力を比較した。その結果、上級学習者と日本人小学生の読 解力には統計的差異はみられなかったが、中級学習者と上級学習者、および中級学習 者と日本人小学生の間には差異がみられた。これにより、読解力において、日本語学 習者は上級になるにしたがい、母語話者のそれに近づくことが明らかになった。また、項目ごとに詳しく各学習者グループの回答をみていくと、統計的に差異の認められなかった上級学習者と日本人小学生の間にも、それぞれのグループ特有の誤答が認められた。本稿はクローズテストによる読解力の比較分析に加え、クローズテストの項 目分析が、各学習者(日本語学習者対母語話者)にとってどの学習文法項目が難易か を測定できることを示唆した。

「ケレド」と「ノニ」の談話機能
【PDF:629KB】
今尾 ゆき子(名古屋大学 大学院文学研究科(日本言語文化:後期課程)

本稿は、「ケレド」と「ノニ」の異同を談話機能の側面から考察したものである。 用法の異同は談話機能の相違に起因するという仮説をたて、焦点の概念を導入して「ケレド」と「ノニ」の多岐にわたる用法の分析を試みた。
焦点といえば、従来、「強調の焦点」や「質問とそれに対応する返答の焦点」がもっぱら議論の対象とされてきた。これら「強調の焦点」と「質問の焦点」のほかに、「修正の焦点」と「対照の焦点」を援用して、「ケレド」「ノニ」を用いた接続表現にみられる焦点現象を考察した。まず、「~ケレド」節、「~ノニ」節に強調の焦点 が置かれるか否かを考察し、次に「ケレド」「ノニ」に続く主節に「質問の焦点」「修正の焦点」「対照の焦点」が置かれるか否かを考察した。
これらの考察から、「ケレド」を用いた場合は「ケレド」に続く主節に焦点が置かれ、「ノニ」を用いた場合は、「ノニ」に前接する要素(「~ノニ」節)に焦点が置 かれることを明らかにした。その結果をもとに、「ケレド」「ノニ」の使い分けを統一的に説明する基準の一つとして次のような談話機能の相違を導き出した。
「ケレド」:前接要素を非焦点化し、焦点要素が後続することを予告する機能を持つ。
「ノニ」:前接要素を焦点化する機能を持つ。

「魚は鯛がいい」構文の分析
【PDF:690KB】
陳 訪澤(広州対外貿易大学 外国語学部日本語講師)

「XはYがZ」構文の一種である「魚は鯛がいい」というタイプの分析について、「Xは」を文の要素の主題化とみる考え方と、深層構造における存在とみる考え方というまったく違った2つの立場がある。後者の立場は「魚は鯛がいい」という文を前者の立場に対する反例としてみてきた。本稿は前者の立場に立って、このタイプの構造を考察し、新しい分析法を提案する。「魚は鯛がいい」というタイプ(本稿ではDタイプという)にはD[1]タイプ(「魚は鯛がいい」)とD[2]タイプ(「人工衛星を打ち上げたのはソ連が最初だ)」の2タイプがある。このタイプの特徴として、(1)「X」と「Y」は同じ種類の集合体と個別体の関係になっている。(2)「YがZ」の中の格助詞「が」は総記性を表わしている、という点が挙げられる。D[1 ]タイプは「X」の部分が名詞で、主題化以前の構造に還元すると、「XノYガZ」、「YノXガZ」または「YガZノX(ダ)」のいずれかに還元できる。D[2]タイ プは「X」の部分が「連体修飾成分+の」で、主題化以前の構造は「Y+Z+X」と分析できる。D[1]タイプとD[2]タイプは主題化以前の構造は違うが表層文の構造は 同じであるため、両タイプは融合することがある。

「見える」「見られる」「見ることができる」について
【PDF:238KB】
李 金 蓮(山東大学 外語教学部講師)

「見える」「見られる」「見ることができる」は、みな「見る」という動詞の可能 表現であるが、意味にはそれぞれ違いがある。「思われる」「感じられる」の意を表 す場合には、「見える」は自発的な傾向が強いが、「見られる」は推論的・判断的なイメージがある。これも両者の上述の違いの延長としてとらえられると思われる。

トピックについての一考察語頭子音の対応比較およびその歴史的背景
【PDF:704KB】
谷守 正寛(大阪大学 大学院文学研究科)

日本語文のトピックについての多くの研究がなされてきたが、なお考察の余地があるかもしれない。この論文の目的は、トピックに対して、日本語の文におけるなにか新しい位置づけができないかを試みることである。トピックを表わす助詞「ハ」は、説明との関係において、さまざまな格を代行することが言われるが、「ハ」と、特に、一般に主格を表わす助詞「ガ」の違いは、説明文と現象(描写)文(あるいは無題 文)との関係を再考することによって、明らかにできる手がかりがあるようである。
本稿では、ソーサー(受け皿)という概念を新しく採用することによって、「ハ」にマークされるトピックと、説明とが、多くの場合、それを媒介として結びつけられ 得るであろう構造を、従来の文構造の捉え方と異なった方法で、仮定した。これによって、トピックというものの姿を見ることができると期待される。「ハ」にマークさ れたトピックは、説明の後にソーサーを要求し、ソーサーは、「ダ」を志向する傾向があるようだ。したがって、例えば、ガ格の語で始まるとされる説明部分は、従属的にソーサーに属するものであって、トピックとは二分されていると言い得るようでもある。そして、かなり多くの場合に有効であろうと思われる、「-ハ-ダ」型の構造を、限られた数の例文からの考察でありなお課題は多いが、日本語の文のプロトタイ プのひとつとして、認められよう。

ブラジル日系人の敬語行動と文化変容
【PDF:660KB】
鈴木 妙

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