オーストラリア(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
初等教育 中等教育 高等教育 その他
教育機関
合計
1,643 2,800 209,123 138,345 6,420 3,460 357,348
58.5% 38.7% 1.8% 1.0% 100.0%

2015年度日本語教育機関調査結果 学習者数グラフ
2015年度日本語教育機関調査結果の学習者数に関する帯グラフ。初等教育は209,123名で全体の58.5%、中等教育は138,345名で全体の38.7%、高等教育は6,420名で全体の1.8%、学校教育以外は3,460名で全体の1.0%。

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 オーストラリアにおける日本語教育は1906年、経済交流の拡大を背景にメルボルンで始まったとされる。1917年になると、主に国防上の理由から陸軍士官学校とシドニー大学、翌1918年からはシドニーのフォート・ストリート・ハイスクールにおいて開始された。第二次世界大戦による国交断絶、戦後の日豪経済貿易協定締結(1957年)を経て、経済関係の深化とともに1960年代、1970年代にはオーストラリア国立大学、クイーンズランド大学、モナシュ大学など多くの高等教育機関と中等教育機関で日本語教育が開始された。また、1970年代に入ると多くの州において日本語が高校卒業認定試験の科目として認定されるようになった。1980年代から1990年代にかけては主に中等教育段階で急速に学習者数を伸ばし、この現象は日本語教育ブームと呼ばれた。
 2000年代に入り、政権交代によるNALSAS(後述)の早期終了や日本経済の減退などの複合的な要因により、2003年海外日本語教育機関調査をピークに日本語学習者は減少傾向にあった。しかし、2007年の政権交代により、アジア言語政策が復活。2012年度調査では2009年度調査に比べて日本語学習者は漸増となった。2012年10月に発表された白書『アジアの世紀における豪州』(Australia in the Asian Century)において、日本語は、中国語、ヒンディー語、インドネシア語とともに学校教育段階で学ぶべき4言語の一つに改めて位置付けられている(後日、韓国語が加えられ5言語となった)。
また2009年からは全国統一カリキュラムの開発が主要科目から順次始まり、日本語は2015年3月に公開された。2012年には第1回全豪日本語教育シンポジウム(NSJLE: National Symposium on Japanese Language Education)がメルボルン日本語教育センター(Melbourne Centre for Japanese Language Education )と国際交流基金シドニー日本文化センターの共催で実施された。
 なお、オーストラリアにおける日本語教育の歴史および現状については、以下に詳しい。

背景

 主に経済的な理由から、1970年代に白豪主義を放棄し、アジア重視の外交と多文化主義へ舵を切ったオーストラリア政府であるが、同政府の外国語教育に対する意識の変化とそれを反映した各種政策を背景に、1980年代から1990年代に日本語教育ブームが起こった。
 1987年、連邦会議において、英語教育と英語以外の言語(LOTE: Language Other Than English)教育に関する報告書『言語に関する国家政策』(The National Policy on Languages)が承認された。そこでは、外交上あるいは経済上の実利の追及を目的の一つとしてLOTE教育を推進することが謳われており、この観点からオーストラリアにおいて推進すべきLOTE(英語以外の言語)として日本語を含む9言語が指定された。この報告書の提言を受け、LOTEを学校教育の重点的学習領域に含めることを取り決めた「学校教育におけるホバート宣言」がすべての州及び準州において承認。その後もオーストラリア政府やその他の関係機関がLOTEに関する政策を相次いで立案・実行している。このような文脈の中、LOTE教育はまず中等教育を中心に段階的に施行されることとなり、次いで初等教育へ拡大していった。
 日本語は、その経済環境と地理的な位置から重要視され、学習が奨励された結果、オーストラリア全土に日本語学習者が急増し、「日本語教育の津波」とまでいわれる状態になった(1970年代末から1998年までの約20年間でオーストラリアにおける日本語学習者数は約40倍にまで増加した)。

特徴

1.初等・中等教育
 オーストラリアでは、日本語学習者のほとんどが初等・中等教育段階に集中している(全体の約96%)。オーストラリアにおける初等・中等教育は、各州政府の所管であり、それぞれが独自のカリキュラムを設定しているため、外国語教育の取組形態や規模には州ごとに差異が見られるものの、全体的に日本語学習は活発である(ただし、全国統一カリキュラム(Australian Curriculum導入に関する動きについて、「最新動向」の欄を参照のこと)。
 この背景としては、LOTE教育の振興を図る各種教育政策に加えて、1994年に導入された「オーストラリアの学校におけるアジア語・アジア学習推進計画」(NALSAS: National Asian Languages and Studies in Australian Schools Program)の存在も挙げられる。同計画は、学習優先度の高いアジア言語として、中国語・日本語・インドネシア語・韓国語の4言語を指定し、当該4言語の教育を1996年から全国の初等教育に導入するととともに、2006年までに3年生から10年生(日本の高校1年生に相当)までの全ての生徒の60%と12年生(日本の高校3年生に相当)の15%が当該言語の一つを学習していることを目標とした。
 この計画は労働党政権によって着手されたが、政権交代の影響を受け当初の予定より4年早い2002年に終了した。この言語教育政策の転換が、2006年度実施の海外日本語教育機関調査における対2003年度調査比で約4.1%減少という結果に表れたという見方も可能である。なお、オーストラリアで日本語学習者が減少したのは、1970年代に国際交流基金が同調査を開始して以来、この時が初めてのことであった。
 2009年度実施の日本語教育機関調査の結果は2006年度調査の結果をさらに下回り、学習者数は約27.6万人まで減少。対して、2012年調査の結果は29.7万人と2009年度比で7.6%増となったが、その背景にはNALSASの後継プロジェクトとして労働党の政権奪還(2007年12月)後の2009年1月から開始されたNALSSP(後述)の影響もあると考えられる。このように、オーストラリアの日本語教育は初等・中等教育段階に集中しているため、その時々の政策や政治状況の影響を受け易いと言える。
2.「学校におけるアジア語・アジア学習推進計画」(NALSSP: National Asian Languages and Studies in Schools Program
 2007年12月に発足したラッド労働党政権は、その選挙公約として「教育革命」(Education Revolution)を掲げ、2002年に打ち切られたNALSASの復活を提唱していた。同政権が2008年5月に公表した「教育革命予算」の中では、2009年から4年間に、6,240万豪ドルがアジア言語・文化教育振興支援のために配賦されることが発表された。この新しいプログラムは、「学校におけるアジア語・アジア学習推進計画」(NALSSP: National Asian Languages and Studies in Schools Program)と呼ばれ、その主な内容は、1)学校教育におけるアジア語クラスの増加、2)アジア語教師研修・アジア語教師支援の強化、3)アジア語学習・アジア学習で優れた才能を発揮した生徒のための「専門家カリキュラム」(specialist curriculum)の開発を図るというものである。なお、このプログラムで重点言語とされているのは、NALSASの時と同じく、中国語・インドネシア語・日本語・韓国語の4言語である。
 2007年当時、オーストラリアでは12年生(日本の高校3年生に相当)のうち、約13.4%しか外国語を選択・学習しておらず、アジア言語を学習しているのは、全体の6%に過ぎなかった。こうした状況の下、2008年にジュリア・ギラード副首相(兼教育・雇用・労使関係大臣。当時)はNALSSPを推し進める理由として、主に経済的・商業的な理由からアジアを重視した異文化理解の重要性を挙げている。このように、アジア言語教育推進を含む教育革命とは、経済そして安全保障の点においてオーストラリアの国益に資するという観点から実施されたものであり、オーストラリア経済の将来のためのものという点で、1987年から基本的な方向性は変わっていないと言える。
 最新の動向として、NALSSP終了後の2012年10月に発表された白書『アジアの世紀における豪州』(Australia in the Asian Century)において、日本語は、中国語、ヒンディー語、インドネシア語とともに学校教育段階で学ぶべき4言語の一つに改めて位置付けられた(後日、韓国語が加えられ5言語となった)。同白書は、2025年までに中等教育を修了する生徒に対して、アジアの文化やアジアの言語をよく知る人材を育成すること、さらに、職業訓練コースや大学レベルにおいても、成長し続けるアジアとの関係において自国の利益につなげる人材育成と質の高い教育を提供することを目指すものである。この白書は、豪州の対アジア戦略、連邦政府におけるこれまでの公式宣言(メルボルン宣言2008)、全国統一カリキュラム(Australian Curriculumの理念ともつながるものと考えられている。学校教育におけるアジア関連の資料は、アジア教育基金(Asia Education Foundationを参照。  なお、同白書を受けたその後の具体的政策にNALSSP後のアジア言語教育重視が打ち出されることが期待されていたが、2013年9月に発足した自由党政権は、豪州の若者をアジア太平洋地域に留学させ、インターンシップを体験させることにより同地域に関心を抱かせることを目指す「新コロンボプラン」を打ち出した。2016年10月現在32か国で実施されているこのプランに日本は開始当初から対象国として含まれているが、アジア言語の学校教育に関する振興施策については今のところ打ち出されていない。
3.Intercultural Language Learning
 オーストラリアの初等・中等教育段階における外国語教育政策の重要なキーワードに、Intercultural Language LearningILLあるいはIcLL)という概念がある。これは、1987年に発表されたAustralian Language Level GuidelineALLガイドライン)において基本的な考え方が示され、2005年のNational Plan for Language Education in Australian Schools 2005-2008の中でさらに発展させた形のアプローチとして普及が始まったものである。
 ILLは特定のシラバスや教授法ではなく、むしろ外国語教育におけるスタンス(立場、考え方)というべきものである。そこでは、文化は言語構造や言語運用と密接に結びついているという認識に立ち、学習者は言語が文化をどのように具体化しているのか、文化的な姿勢や態度、行動が言語でどのように示されているのかについて考えることが求められる。文化に関する学習や指導は、言語教育に付随するものではなくむしろその中心であり、文化に関する指導は言語に関する指導と統合されて提示されるべきものであるため、分離して扱うべきものではないとILL理論は提唱している。
 言語と文化を統合して提示するという意味から、教室活動では「本物の」素材(Authentic materials)の使用が強く推奨されている(一例を挙げると入場券、地図、メニュー、新聞、雑誌等)。また、学習者には学習言語とその背景にある文化について考えるだけでなく、自らの言語・文化について考察することも求められる。つまり、多言語・多文化と関連させて自言語・自文化についての理解を深めることで、相互理解のための視点を養うこともILLの目的の一つである。自言語・自文化に基づく第1地点(the first place)と、学習言語・学習文化に基づく第2地点(the second place)を理解することによって、そのいずれをも超えた第3地点(the third place)へと学習者を導くことを狙いとする。この第3地点においてこそ、学習者は自らのアイデンティティ(自文化)を維持しながらも、他文化の者との円滑で快適なコミュニケーションが可能になると考えられてきた(Liddicoat他 2003)。
 こうした考え方は、ACARA(Australian Curriculum, Assessment and Reporting Authority)が策定した全国統一カリキュラム(Australian Curriculumにおいても確実に受け継がれている。同カリキュラムでは、全教科を通じて育成すべき汎用的能力(General Capability)の一つにIntercultural Understandingを位置付け、言語教育に限らず、カリキュラム全体を通して実践していくことが求められている(Diaz 2013)。また、アジア教育基金(Asia Education Foundationでは全教科におけるアジア関連の知識や情報の扱い方、リソースなどを提案している。言語教育に関しては、アジア教育財団のほかにもオーストラリア教育サービス(Education Services Australia)を通じて、改めてILLの概念やそれに基づく実践例や教材提供などが行われ、教育現場への支援が図られている。その一例として2013年に公開されたウェブサイトLanguage Learning Spaceが挙げられる。このサイトは、2016年10月現在、中国語、日本語及びインドネシア語版が公開されているが、予算削減のため今後の他言語版開発予定はない。

最新動向

全国統一カリキュラム(Australian Curriculum
 前述のとおり、オーストラリアにおいては、初等・中等教育は各州/準州政府の管轄となっており、すべての教科において州ごとに独自のカリキュラムが設けられている。このような状況下で、州の間での学力格差の拡大が問題となってきたことに加え、学習内容に差異があるため生徒の州を越えた移動が困難であるという不都合、各州がそれぞれ個別に教材開発等を行う等の不経済があることなどが指摘されてきた。これらを背景に、1989年の「ホバート宣言」(The Hobart Declaration on Schooling)で全国統一カリキュラムの策定が決定、同宣言を受けて、2008年12月にメルボルン宣言(Melbourne Declaration on Educational Goals for Young Australians)【PDF:外部サイト】が発表された。このメルボルン宣言は、「全てのオーストラリア人年少者が成功した学習者かつ自信を持った創造的な個人となり、また活動的で広い見識を持った市民となることを支援し」、教育における平等及び優れた成果を促進するために制定された。全国統一カリキュラムは、同宣言にうたわれている「全てのオーストラリア人年少者に、グローバル化した社会及び情報が氾濫する現代を生き抜き、社会と個人の幸福に資するために必要とされるスキル、知識そして能力を身に付けさせる」ことをオーストラリア連邦の教育目標として掲げている。
 以上の2つの宣言に基づき、ACARA(Australian Curriculum, Assessment and Reporting Authority)が、全国統一カリキュラムを策定した。ACARAFoundationYear1に先行する就学前の教育段階。州ごとに呼び名が異なり、ニューサウスウェールズ州(NSW)及び首都特別地域(ACT)ではKindergarten、クイーンズランド州(QLD)、ビクトリア州(VIC)及びタスマニア州(TAS)ではPrep、西オーストラリア州(WA)ではPre-primary、南オーストラリア州(SA)ではReception、北部準州(NT)ではTransitionと呼ばれる)からYear12(後期中等教育段階)までのカリキュラム開発を担っている。本カリキュラムの指針となるのが『オーストラリア・カリキュラムの輪郭』(Draft Shape of Australian Curriculum)である。これは、カリキュラム開発の枠組みを示すための文章であり、英語、数学、科学、歴史の主要科目は2009年から、言語は2011年から順次草案の公開が始まった。日本語は2013年5月に草案が作成され、パブリックコンサルテーションを経て、2015年3月に公開された。2016年10月現在、アラビア語、中国語、フランス語、ドイツ語、インドネシア語、イタリア語、日本語、韓国語、ギリシャ語、スペイン語、ベトナム語が公開されている。カリキュラムの導入に関しては各州に委ねられているが、将来的にはすべての州で導入する方向に動いており、各州教育省は、自州の教育現場への適用を支援している。

教育段階別の状況

初等教育

 下記【中等教育】を参照。

中等教育

 先述の通り、オーストラリアにおける日本語学習者約30万人のうち、その約96%が初等・中等教育における学習者である。
 外国語学習はほとんどの州で必修化しているが、言語の選択や学習期間については、州教育省、学校、地域社会、保護者の方針如何による変動もあり、日本語に限らず一様ではない。初等教育段階での日本語教育においては、学校によって大きく学習時間数が異なるため、学習内容や到達目標もその学習状況に応じて変わる。
 初等教育段階では、全体的に言語学習というよりも、歌や工作などの文化体験に比重が置かれ、学年が上がるにつれて言語学習の内容も濃くなることが多い。また初等教育段階においては、数は少ないながら日本語によるバイリンガル教育を実施している学校も複数ある。2016年10月現在、初等教育段階においては、確認が取れているだけで5校(VIC 3校、NSW 1校、QLD 1校)。対して中等教育段階ではQLDで1校である。多くの場合、全体のカリキュラムの30%(小学校においては週7.5時間)を日本語で教えている。また、近年ビクトリア州を中心にContent and Language Integrated Learning (CLIL)が注目を集めており、日本語での実践も行われている (Cross & Gearon 2013; Turner 2013)。

 初等教育段階から中等教育段階への橋渡しの時期(5~9年生)はミドルイヤーズと呼ばれる。この教育段階で外国語が必修になる州が多い。初等から中等教育段階にかけて、生徒が学習する言語に一貫性がなく、中等教育段階においては未習者と既習者の混合クラスが存在するケースもある。特に前期中等教育段階(7~9年生)においては、必修科目として日本語を学ぶ生徒のうち、外国語(日本語)学習にあまり興味がない生徒たちの学習意欲を持続させる教え方やクラス活動の内容に頭を悩ませている教師は多い。
 大学受験を控える後期中等教育段階(10~12年生)になると、外国語は選択科目になることが多く、クラスには本格的に日本語・日本文化を学びたい生徒が集まり、比較的モチベーションが高い生徒の割合が増える。加えて、11~12年生では卒業後の進学先決定に大きく影響する高校卒業認定試験の対策に重点が置かれる。

  • 初等・中等教育機関における、外国語履修者の必修学年
     以下の情報は、2016年4月に各州教育省のウェブサイトに発表されたもの、オーストラリア現代言語教師会がまとめた資料から得たもので、基本的に公立校を対象とする。今後、全国統一カリキュラムの導入・浸透に伴い、変更の可能性がある。
    初等・中等教育機関における、外国語履修者の必修学年
    ACT 初等教育段階3~6年生の間は、最低週60分、中等教育段階7~8年生の間は、最低週150分の外国語学習が義務付けられている。
    NSW 中等教育段階(7~10年生)の間に100時間以上が必修。 特に7~8年生での履修が望ましい。
    NT 必修だが学年や時間数などの規定がなく、学校ごとに対応。
    QLD 小学校入学前の準備学級から12年生までの間で外国語学習が強く推奨されている。2015年より5~8年生で必修。
    SA 小学校入学前の準備学級から8年生で必修。
    TAS 外国語学習は強く「推奨」されているが、必修ではない。
    VIC 全ての初等・中等教育機関で、学習科目の一つとして外国語が必修になっているが、履修学年は学校により異なる。Quality Languages Programsでは週150分以上の学習を推奨している。
    WA 2016年のセメスター2より、新しい外国語カリキュラムへの移行が始まり必修科目化への動きが開始。2018年以降1年ずつ順番に3年生から8年生で外国語が同じカリキュラム下で実施される計画(8年生の外国語カリキュラムが完全な状態で実施されるのは2023年)。

高等教育

 高等教育段階ではオーストラリアのほとんどの大学で日本関連のコースが提供されてきたが、近年財政逼迫による学部・学科の改編・縮小のあおりを受け、開講数としては漸減傾向にある。たとえば、定年を迎えた教員のポストに後任が充当されないなど、全体として講師の数は減っている。また、学部・学科の再編も進んでおり、その影響を受けているコースもあり、中にはこれまで提供してきたコースの運営が不可能となった大学もある(オーストラリア・カソリック大学、キャンベラ大学など)。
 全体的に学習者数が減少傾向にある中、日本語学習を継続し上級レベルまで進む学習者もいる。ここ数年は、日本語学習の理由として、経済などの実利的な目的よりも、日本の文化、特にポップカルチャー(アニメ、マンガ、ドラマ、J-POPなど)に対する興味を挙げる学生が増えており、こうした内容を扱う大学も多くなってきている。
 大学で日本語を専攻する場合は、語学だけでなく社会、文化、経済などの日本学関連科目も履修するのが一般的であり、Bachelor of Asian StudiesまたはBachelor of Artsとして位置づけられることが多い。また、日本語の学位だけでなく、たとえば日本語と法学、日本語と商学などDouble Degreeとして2つの学位を専攻する場合もある。

その他教育機関

 一般成人を対象とした日本語教育としては、一部の民間の語学学校で日本語を教えているほか、各地域のコミュニティ・カレッジで日本語講座が開かれている。また、大学が一般成人を対象とした公開講座を開いている。また、国際交流基金シドニー日本文化センターにおいても、JF日本語教育スタンダードに準拠した日本語講座(J-Course)を運営している。
 都市部においては、日本人子弟、または日本語のバックグラウンドを持った生徒を対象に、日本語補習校が開かれている。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-6または7-5制。一般に初等教育(小学校)が6年間または7年間、中等教育(中学校及び高等学校)が6年間または5年間である。初等・中等の区別には州による年数の差異があるものの、両教育段階を通算すればいずれも12年間となる。

 6-6制:ACT/NSW/TAS/VIC/QLD/WA
 7-5制:NT/SA

 学校には公立校と私立校があり、生徒数の割合はそれぞれ65%と35%となっている(2016年現在)。設置形態は、初等教育校、初・中等部分一貫校、初・中等完全一貫校、中等前期校、中等後期校、更に中等一貫校と様々である。公立校は州教育省の直接的管轄を受け、普通校以外に、特別選抜校、音楽校、外国語校、スポーツ校などを設けている州もある。私立校は協会(association)が独立して運営しており、カトリック系と独立系の2系統がある。
 義務教育は、各州とも、小学1年生に先行する準備学級の1年間(上述のFoundation)から10年生(日本の高校1年生に相当)までの11年間となっている。10年生修了時に試験を経て義務教育修了証が発行される。日本の高校2年生、3年生に相当する11年生、12年生が後期中等教育段階にあたり、11年生以降の進学は任意である。
 中等教育段階修了後の教育機関としては、高等教育機関にあたる大学の他、高等実業専門学校(TAFE)などがある。大学には一般教養課程がなく、初年次から専門科目が履修される。
 なお、広大な国土をもつオーストラリアでは遠隔地教育が発達しており、全ての教育段階において採用されている。

教育行政

 教育は、各州教育省が管轄する。また、大学は連邦政府教育科学訓練省が、TAFEは各州教育省が管轄する。

言語事情

 英語が事実上の公用語であるが、各移民の言語もCommunity Languageとして保障されており、オーストラリア政府の支援を受け、学校単位ではなく、地域単位で特別教室(土曜学校、補習学校またはエスニック・スクール)を設けて指導する場合がある。
 1987年連邦議会において承認された『言語に関する国家政策』(The National Policy on Languages【PDF:外部サイト】)に述べられているオーストラリアの言語政策の基本指針は、次のとおり。

  1. 1.国民すべてのための英語教育
  2. 2.アボリジニ及びトレス海峡諸島民の固有言語の維持継承
  3. 3.国民すべてを対象とした英語以外の言語教育
  4. 4.国民への均等かつ広範な言語サービスの提供
  • Joseph Lo Bianco (1987). National Policy on Languages, Australian Government Publishing Service: Canberra

外国語教育

 オーストラリアの学校教育においては、数多くの言語が提供されており、一人が複数の言語を学ぶことも可能である。州によっては、小学1年生に先行する準備学級(Foundation)の段階から外国語教育が行われている。履修者の少ない言語は、上述の遠隔地教育により、授業が提供される場合もある。

外国語の中での日本語の人気

 州によって順位の変動はあるものの、小学校から大学までの教育段階において日本語はもっとも学ばれている言語である(de Kretser & Spence-Brown, 2010:4【PDF:外部サイト】)。
 なお、2006年の段階で、学校教育において、学習者が多い言語は順番に日本語、イタリア語、インドネシア語、フランス語、ドイツ語、中国語であり、この6言語で学習者の91%を占める(Lo Bianco & Slaughter, 2009)。

大学入試での日本語の扱い

 日本語は大学入学認定科目として認められている。一般的に外国語は高い点数が取りにくいとされ、外国語を大学入学認定科目として選択する生徒の数は比較的少ない。
 日本語母語話者及び日本語のバックグラウンドを持つ生徒も、大学入学認定科目として日本語を選択することができるが、受験資格や選択可能なコースは州によって異なるので、詳しくは各州のシラバス一覧を参照のこと。

学習環境

教材

初等教育

 下記【中等教育】を参照。

中等教育

 オーストラリアで開発された市販教材が多数あり、それぞれの環境や条件に応じて選択されている。
 初等教育では、多くの教師は教科書を使わず、副教材やアクティビティー集を適宜選んで使ったり、独自のリソースを使ったりしている。初等教育向けのコース教材として、『Primary school Japanese = しょうがっこうのにほんご』がある。また、副教材、アクティビティー集として『Ohisama connect!』、『Yonde kaite』、『Teaching Japanese for juniors idea book』、『Japanese language enrichment activities』などが出版されている。
 初等後期から前期中等教育段階では、2002年にミドルイヤーズ(5~9年生)用の教科書『Hai!』が出版された。これは、生徒の年齢、興味に合わせ日本の最新の若者文化を紹介する写真やレアリアなどを多く含むビジュアル教材である。持ち運びが楽なように教科書自体が薄くなるなど、使いやすさの上でも従来の教科書と比べかなり改善されている。
 前期中等教育段階では、『Obento deluxe』、『Obento supreme』、『Mirai. 1, 2, 3+4』、『Ima!』、『iiTomo』などの総合教材が人気であり、幾度かの改訂を経て、現在も使われている。これらの総合教材の多くは、用途の異なる複数の教材で構成される。生徒用教科書、生徒用問題集、教師用指導参考書(生徒への配布資料としてのソースが多く含まれ、学校内コピー使用可ライセンス付)、音声CDという組み合わせが一般的だが、最近ではインタラクティブ教材をCD-ROMやオンラインで配布している。
 後期中等教育段階の教材としては、『Mirai. 5, 6』、『Gakkoo seikatsu』、『Kookoo seikatsu』、『Wakatta!』、『A first course in Japanese』など、各州のシラバスに合った、試験対策用の教科書が出版されており、多くの教師は自分の州のシラバスに合った教科書を使用している。
 また初等・中等教育段階で人気のCD-ROM教材としては『Sugoi!  learn to speak Japanese』がある。近年は、各教育省がweb教材を意欲的に作成している。

教育段階 書名 著者 出版社 出版年
初等 Primary school Japanese. Early stage, Stage 1, 2, 3 = しょうがっこうのにほんご Fudeko Obazawa Reekieほか Pascal Press 1997-1998.
Ohisama connect!. Core, Sunbeams, Clouds Mary Taguchi. Mingei Australia 2000-2003.
Yonde kaite. Level 1, 2, 3, 4, 5, 6 Anne Rajakumar. Insight Publications 1998-2002.
Teaching Japanese for juniors idea book. 1, 2, 3, 4, 5 Hiroko Nishibayashi Liston Kyozai L.O.T.E. Teaching Aids 1995-2000.
Japanese language enrichment activities – Revised ed. Karan A Chandler. Creative Language Resources 2007.
初等後期~中等初期 Hai!. 1, 2, 3, 4, 5+6 Sue Burnhamほか CIS Heinemann * 2002-2004.
中等前期 Obento deluxe – 4th ed. Peter Williamsほか Cengage Learning Australia 2013.
Obento supreme – 4th ed. Kyoko Kusumotoほか Cengage Learning Australia 2013.
Mirai. 1, 2, 3+4 Meg Evansほか Longman Australia 1999-2002.
Ima! 1, 2 Sue Burnhamほか CIS Heinemann * 1998-2001.
iiTomo. 1, 2, 3+4 Yoshie Burrowsほか Pearson Australia 2010-2012.
Excel SENIOR HIGH SCHOOL JAPANESE Fudeko Obazawa Reekie Pascal Press 2006
中等後期 Mirai. 5, 6 – 2nd ed. Meg Evansほか Pearson Education Australia 2006.
Obento senior Ken Hutchinsonほか Thomson Learning ** 2005-2006.
Gakkoo seikatsu Keiko Aitchison. Macmillan Education Australia 2002.
Kookoo seikatsu – 2nd ed. Keiko Aitchison. Macmillan Education Australia 2001.
Wakatta! David Jaffrayほか Pascal Press 1999-2000.
A first course in Japanese – 2007 ed. Fudeko Obazawa Reekie Pascal Press 2007.
初等・中等 Sugoi! [electronic resource] : learn to speak Japanese [developed by] Curriculum Support Directorate of the New South Wales Department of Education and Training, Curriculum Corporation. Curriculum Corporation [distributor] 2000.
  • * CIS Heinemann発行の教科書は、現在はPearson Australiaにて販売。
  • ** Thomson Learning発行の教科書は、現在はCengage Learning Australiaにて販売。

高等教育

 高等教育向けにオーストラリアで刊行された教科書として、1976年にAnthony Alfonso他によって作成された(後、改訂が数度行われた)コース教材『Alfonso Japanese. Book 1, 2, 3』(Curriculum Development Centre)があるが、現在ではほとんど使われていない。近年では、『初級日本語げんき. 1, 2』坂野永理ほか(ジャパンタイムズ)や『Yookoso!Yasu-hiko TohsakuMcGraw-Hill)を採用している大学が比較的多い状況である。教材選択は教師独自の裁量に任されている場合が多い。小説、新聞記事、ウェブサイトからの生教材も広く使われている。

その他教育機関

 教育機関ごとに使用教材が異なる。

マルチメディア・コンピューター

 外国語教育に限らず学校でマルチメディアを使用することが推奨されており、ICT(Information and Communications Technology)に対する関心は非常に高い。近年では、教室活動にコンピューターやタブレット端末が頻繁に使われている。グループごとに、あるいは学生に一台ずつコンピューターやタブレット端末が配布されることもあり、インターネットやアプリ等を活用した教室活動への関心が高まっている。Interactive White Board(IWB)の導入が一時期進んだが、ソフトや機種の互換性の問題などもあり、今後はタブレット端末にとってかわられると考えられる。その他、日本の提携校とメール交換をしたり、掲示板によるディスカッション、チャット機能やテレビ会議システムを用いた交流などを行ったりしている例もある。

教師

資格要件

初等教育

 下記【中等教育】を参照。

中等教育

 オーストラリア国内の初等・中等教育機関で正規の教員として日本語を教える場合、教員資格を得るためには以下の5つの選択肢が考えられる。(1)~(4)のコースには一定の期間の教育実習が含まれており、コース修了後に各州の教員登録オフィスに登録手続きを行う。州によって教員登録要件が異なるため、詳しくは各州の教員登録要件を参照のこと。

  1. (1)オーストラリアの大学の教育学部において、教育学の学士課程(Bachelor of Education/フルタイムで3年のコースで、入学前に初等か中等教育かを選ぶ必要がある)を修了。
  2. (2)大学卒業後、オーストラリアの大学院の教育学部で教授法の修士課程(Master of Teaching/フルタイムで2年のコースを開講している大学が多く、入学前に初等か中等教育かを選ぶ必要がある)を修了。
  3. (3)大学卒業後、オーストラリアの大学の教育学部で教員養成課程(Graduate Diploma of Education/フルタイムで1年のコースであるが、2016年10月現在、このコースを提供する大学は少なくなっている。入学前に初等か中等教育かを選ぶ必要がある)を修了。
  4. (4)大学卒業後、オーストラリアの大学の教育学部で教育学の大学卒業者向けの学士課程(Bachelor of Education/フルタイムで2年のコースを開講している大学が多く、入学前に初等か中等教育かを選ぶ必要がある)を修了。
  5. (5)オーストラリア以外の国で取得した教員免許がオーストラリア国内の教員免許として認定される場合がある。

 ここでいう、「教員資格」とは「日本語教師」としてのものではなく、初等もしくは中等教員資格を指す。オーストラリア国内の教員養成課程では、一般的な教育学や教育実習などが中心となる。そのため、日本語教授法を学ぶ機会は限られており、大学によっては日本語教育の特別授業が何回か入ることもあるという程度である。
 なお、かつてはクイーンズランド州ロックハンプトンにあるセントラルクイーンズランド大学において、イマージョン教育を用いて日本語教員を養成するユニークなコースが提供されていたが、現在は閉鎖されている。当該コースはLanguage and Culture Initial Teacher Education: Primary (LACITEP)と呼ばれ、全教科の約50%が日本語で教授されていた (Erben et al 1993)

  • Tony Erben, Robyn Cox & Suzanne Phillips (1993). Primary Teacher Training Through Immersion. Babel, Volume 28 No. 2 pp. 39-46.

オーストラリア国内における各州の教員免許登録オフィス

高等教育

 教育機関、またはポストにより資格要件は異なるが、一般に修士号以上、多くの場合に博士号が求められる。

その他教育機関

 教育機関により異なる。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語を専門に教える教師を養成するための、日本語教授法を提供するコースは一部の民間の学校などに限られている。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 公立の学校教育機関で正規に働く場合は、基本的にはオーストラリア人と同様の資格が求められる。教員資格(上記、資格要件を参照)に加え、オーストラリア政府から正式な労働許可を得ていなければならない。私立校の場合は、学校の裁量に任されている部分もあるが、公立校と同様の資格が求められることが一般的である。
 日本人がオーストラリアの学校で働く場合、オーストラリア滞在のための査証が問題となる。基本的には永住権を持ち、オーストラリアでの滞在及び就労が可能であるという条件を満たして、初めてポストに応募する資格が与えられるのが一般的である。
 一方、アシスタントとして働く場合に求められる経験、資格、学歴等はポジションにより様々である。アシスタント教師は、民間団体のアシスタント派遣プログラムなどにより派遣される者や、ワーキングホリデービザなどで来豪した者がポジションを得る場合もある。なお、教育省がアシスタントプログラムを実施して日本人を採用している州もある(ビクトリア州のAssistants to Teachers of Japanese Programなど。)
 高等教育機関においても、多くの日本人教員が活躍している。ポストの多くは公募であり、能力と実績により、重要なポジションにつくことも可能である。

教師研修

 現職の日本語教師を対象とした研修は、主に次のようなものがある。

  1. 1.各州教育省(公立校教師)、独立系私立学校協会、カトリック系学校協会が主催するもの
  2. 2.各州の日本語教師会(JLTA)、全国外国語教師会(AFMLTA)が主催するもの
  3. 3.国際交流基金が主催するもの(国内外)
    • 国内集中研修:年2回全豪・NZの初等・中等教育段階の日本語教師を対象に国際交流基金シドニー日本文化センターにて開催(http://www.jpf.org.au/pd/seminars/intensive.html
    • 訪日研修:日本語国際センター、関西国際センターでの研修
  4. 4.その他の機関などが開催するもの
    • Melbourne Centre for Japanese Language Education(MCJLE):現職日本語教師のニーズ及び日本語教育の現状を踏まえたセミナーが定期的に開催される。
      http://artsonline.monash.edu.au/mcjle/major-programs-of-the-melbourne-centre-for-japanese-language-education/
    • Endeavour Language Teacher Fellowships(ELTF):2004年から行われている豪州政府による訪日プログラムで、主に教員養成課程で学んでいる現職教員に目標言語・文化体験・リソース収集などの機会を与えるものだったが2016年以降は中止となった。

 現職教師向けの研修のいずれも、日本語運用力の向上、教授法・教材研究、文化体験、カリキュラム、試験と評価、教室運営など、様々な内容が扱われている。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 各州に「日本語教師会(JLTA: Japanese Language Teachers’ Association)」、または日本語教師を含む外国語教師の組織「現代語教師会(MLTA:Modern Language Teachers’Association)」が設置されている。これら州レベルの日本語教師会、現代語教師会の全国組織として「全豪現代語教師会(AFMLTA: Australian Federation of Modern Language Teachers’Association)」がある。
 活動状況としては、それぞれが年1回の総会を開き、会員の研究発表、親睦を図るほか、定期的に機関誌発行や研修会の開催を行う。またAFMLTAは2年に1回の大会を開催している。目下のところ、それぞれの教師会の組織強化と、その延長として相互の連携の確立と強化が課題となっている。国際交流基金シドニー日本文化センターは、日本語教師会の横の連携を支援するために、同センターのウェブサイトに各州教師会のウェブサイトをまとめて表示し、情報共有を図っている。

  • 各州教師会のウェブサイト一覧:http://www.jpf.org.au/tn/index.html

 その他の日本語教育関連の組織としては、高等教育の教育研究者を中心とする「オーストラリア日本研究学会(JSAA: Japanese Studies Association of Australia)」、「オーストラリア応用言語学会(ALAA: Applied Linguistics Association of Australia)」、「オーストラリアアジア研究学会(ASAA: Asian Studies Association of Australia)」がある。JSAAは日本語教育を含む日本研究全般の学会で、学会誌『Japanese Studies』の発行、2年に1回の全国大会などを行う。ALAAは日本語を含む外国語全般を対象に、言語教育、教師養成などのテーマを扱う。ASAAは日本語、日本研究を含むアジア研究全般の学会である。

最新動向

 先述のとおり、全国統一カリキュラム(Australian Curriculum)の導入・施行に向けての動きに呼応し、全豪レベルでのネットワーク形成の重要性が意識されていたが、2012年に行われた全豪日本語教育シンポジウム(National Symposium)において改めて縦と横のつながりの重要性が認識された。国際交流基金シドニー日本文化センターも各州教師会代表者が集まる機会を提供している。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2016年10月現在)

日本語専門家

 国際交流基金シドニー日本文化センター 3名

日本語指導助手

 国際交流基金シドニー日本文化センター(タスマニア州) 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 公的なものでは以下のビクトリア州教育・早期幼年期開発省による事業が知られている。

 その他、大学(院)間の連携による派遣や民間業者のプログラムによる派遣も行われているが、統計はない。

シラバス・ガイドライン

初等教育

 下記【中等教育】を参照。

中等教育

 1987年ALL(The Australian Language Levels)Guidelineが作成された。これは、「Language Learning in Australia」、「Syllabus Development & Programming」、「Method, Resources and Assessment」、「Evaluation, Curriculum Renewal and Teacher Development」の4冊から構成されている言語教育の指針である。
 シラバス、カリキュラムは、全国共通のものはなく、各州にその策定が委ねられてきた。その後、各州では初等教育段階から中等教育段階への継続性・一貫性を視野に入れたシラバスの策定が行われてきた。後期中等教育段階では、1998年に日本語教育についてのナショナル・シラバス策定の検討が始まり、州の事情や特色が先鋭化する中、まずニューサウスウェールズ州とビクトリア州が共同でプロトタイプ(モデル)を作成し、それをもとに、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、南オーストラリア州、タスマニア州が自州の新シラバスを作成した。新シラバスで共通する点はOutcomes、つまり学習の結果何ができるようになるかを重視している点である。
 全国統一カリキュラム(Australian Curriculum)については「最新動向」の欄を参照のこと。

高等教育

 学校別に独自のシラバス、ガイドラインがある。

その他教育機関

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

 ALL Guidelinesの「Method, Resources and Assessment」、「Evaluation, Curriculum Renewal and Teacher Development」を基軸としてさまざまな方策が検討されてきたが、まだ国として統一的かつ汎用性のある方策は確立されていない。全国統一カリキュラム(Australian Curriculumの今後の動きが注目される(「最新動向」参照)。

評価・試験の種類

  1. 1.高校卒業認定試験[各州]
     クイーンズランド州と首都特別地域を除き、後期中等教育段階の最終学年(12年生)にそれぞれの州で学外の統一試験(高校卒業認定試験)が行われる。クイーンズランド州と首都特別地域は、学内で試験が行われる。これらの試験の結果は、学校での学業成績に加えられ、最終結果により進学できる大学や専門学校などが決められる。
     大学進学に関しては、州ごとに出された高校卒業認定資格の成績が、国レベルの尺度であるATAR(Australian Tertiary Admission Rank)に換算され、この点数により、進学できる大学が決まる。クイーンズランド州のみATARは採用しておらず、OP(Overall Position)という独自のシステムを持っている。
     なお、近年では、国際バカロレア(IB: International Baccalaureate)のコースが履修できる学校もオーストラリア国内に66校あり(2016年10月現在)、IBの資格を大学出願時に提出する生徒もいる。
    <各州の高校卒業認定資格名>
    • 首都特別地域:Australian Capital Territory Year 12 Certificate
    • ニューサウスウェールズ州:Higher School Certificate(HSC)
    • ノーザンテリトリー:Northern Territory Certificate of Education(NTCE)
    • クイーンズランド州:Queensland Certificate of Education(QCE)
    • 南オーストラリア州:South Australian Certificate of Education(SACE)
    • タスマニア州:Tasmanian Certificate of Education(TCE)
    • ビクトリア州:Victorian Certificate of Education(VCE)
    • 西オーストラリア州:The Western Australian Certificate of Education(WACE)
     その他、日本語能力を図るものとして以下の試験が実施されている。
  2. 2.日本語能力試験[国際交流基金]:一般対象
  3. 3.漢字検定試験[日本漢字能力検定協会]:一般対象
  4. 4.ALC(Assessment of Language Certificate)[ACER(Australian Council for Educational Research):初等後期課程以上対象

日本語教育略史

1906年頃 メルボルンのストット・アンド・ホアレ商業学校が日本語教育を開始
1917年 陸軍士官学校とシドニー大学で日本語教育を開始
1918年 中等教育課程(フォート・ストリート・ハイスクール)で日本語教育を開始(1927年中止。1946年再開)
1936年 ビクトリア州の中等教育終了試験に日本語科目が導入される
1944年 オーストラリア空軍日本語学校が開校(1946年閉校)
1963年 オーストラリア国立大学が日本語教育を開始
1965年 メルボルン大学、クイーンズランド大学が日本語教育を開始
1967年 グリフィス大学、アデレード大学、タスマニア大学が日本語教育を開始。第1回全豪弁論大会開催
1975年 モナシュ大学が日本語教育を開始。ニューサウスウェールズ州教育省が日本語を現代語科目に認定。クイーンズランド州の公立学校で日本語教育が開始
1977年 中等教育教材『Japanese』(Anthony Alfonso著)の発行
1980年 オーストラリア日本研究学会(JSAA)を設立
1984年 日本語能力試験開始。
1987年 National Policy on Languages、The Australian Language Levels Guidelines(ALL)を発表。 ニューサウスウェールズ大学が日本語教育を開始
1988年 アジア教育審議会がNational Strategy for the Study of Asia in Australiaを発表
マッコリー大学が日本語教育を開始
1989年 The Hobart Declaration on Schooling発表
中等教育教材『Isshoni』の発行
1990年 中等教育教材『Kimono』の発行
1991年 Australia's Language / The Australian Language and Literacy Policyを発表
国際交流基金シドニー日本語センターを設立
1992年頃 この頃から日本語教育を導入する小学校が増加
1993年 日本語学習者数が国民全体の1%に達する
YOROSHIKU』シリーズが刊行
1994年 Asian Languages and Australia's Economic Futureを発表
NALSAS(National Asian Languages and Studies in Australian Schools)計画が開始
1998年 日本語学習者数、30万人を超える
1999年 The Adelaide Declaration on National Goals for Schooling in the Twenty-First Century発表
2002年 予定より4年早くNALSAS計画が中止
2004年 Endeavour Language Teacher Fellowshipsプログラム開始
日本語学習者数38万人に達する。
アジア言語専門学習プロジェクト(Asian Languages Professional Learning Project)実施
2005年 『オーストラリアの学校での外国語教育に関する国家声明書(National Statement for Languages Education in Australian School)』の発表
2006年 『オーストラリアの学校教育において生徒たちをアジアに結びつけるための国家声明書(National Statement for Engaging Young Australian with Asia in Australian Schools)』の発表。日本語学習者数が減少に転じる
2007年 ラッド労働党政権発足
2008年 Melbourne Declaration on Education Goals for Young Australians発表
『教育革命(Education Revolution)』予算発表
2009年 NALSSP(National Asian Languages and Studies in Schools Program)開始
日本語学習者数が約28万人まで減少
2010年 Draft Shape of Australian Curriculum発表
2012年 「アジアの世紀におけるオーストラリア白書」(Australia in the Asian Century)発表
第1回全豪日本語教育シンポジウム開催
2015年 全国統一カリキュラム:日本語公開

参考文献一覧

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