ベラルーシ(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
初等教育 中等教育 高等教育 その他
教育機関
合計
8 16 0 0 95 210 305
0.0% 0.0% 31.1% 68.9% 100.0%

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 ベラルーシにおける本格的な日本語教育は、1991年ソ連崩壊2年後の1993年、ミンスク国立外国語大学(現ミンスク国立言語大学)日本語学科で開始された。その2年後、ベラルーシ国立大学においても日本語教育が開始された(1995年当初第二外国語、2002年から主専攻)。ベラルーシ国内の高等教育機関で日本語を主専攻として学べるのは2016年現在もこの2校のみである。
 日本語教育開始以来、ミンスク国立言語大学では5年に一度日本語専攻入学試験を行い30名~40名の学生を受け入れている。一方、ベラルーシ国立大学は2~3年に一度、12名程度の学生を受け入れている。両大学とも日本語学習希望者は増加しており、副専攻の学生に対する日本語教育が実施されるようになった。しかし学習者の増加に対し予算・指導者が不足しているため、全ての希望に応えることは難しい状況である。一例を挙げると、ミンスク国立言語大学では2007年から一般向けの夜間講座が開かれていた。しかし教師を確保できなくなったため、2014年を最後に新規募集は行われていない。高等教育機関においては各種の制約(後述)から、近い将来に急速な量的発展は見込めない。しかし両大学の学習者の日本語水準は確実に向上しており、今後高い日本語運用能力を持った優秀な専門家が世に出てくることが期待される。
 一方、高等教育機関以外の日本語教育が盛んになっている。1999年ミンスク市内でNGO日本文化情報センター、2005年にNGO葉隠が発足した。さらに私営の語学学校においても継続的な日本語教育が行われている。ここでは大学生や高校生、社会人が日本語学習に取り組んでいる。上記教育機関の体制はそれぞれ発展途上の最中で、カリキュラムの整備等が進められている。
 全体的に日本語学習希望者は増加する傾向にあり、日本語能力試験受験者数にもこれが表れている。2003年より毎年9月に開催されている国内日本語弁論大会も、内容・運営面での改善の余地はまだ残されているものの、専攻以外の学習者が出場するなど恒例行事として定着してきており、参加者数も年々増加傾向にある。

背景

 旧ソ連時代はモスクワ、レニングラード(現サンクトペテルブルグ)などで日本語教育が行われていた。91年にソ連が崩壊すると、ベラルーシにおいては外国語教育を重視する傾向が全般的に高まり、独自に人材を育成する必要性が生じた。この理由により日本語教育が開始された。しかしベラルーシと日本の政治・経済関係は極めて低調で、日本語の知識を活かす場は国内にはほとんどない。両国間の交流はチェルノブイリ被災者支援を中心としたものが主である。とはいえ、対日感情は良好である。日本語、日本文化に対する関心は決して低くない。

特徴

 日本語を学ぼうとする者にあっては、遠く、謎に満ちた国である日本、日本文化、日本語自体に対する知的好奇心が高いことが特徴である。日本文化のなかでも特にアニメやコスプレをはじめとするポップカルチャーに対する関心をもつ者が多い。婚姻や仕事のための日本訪問に向けた準備を理由に日本語を学習する者もいるが、少数である。ベラルーシに進出している日本企業は無いとは言えないものの、当面両国の関係が顕著な発展を遂げうる状況にない。また大学などの教育機関で敢えて予算を確保し、新たに日本語コースを開講しようという動きも期待できない。そのため就職を現実的な目的として日本語を専門的に勉強するケースは多いと言えない。

最新動向

 近年の日本語学習者の増加は、日本のポップカルチャーに興味を持った者達が学習を希望することが理由として挙げられる。しかし日本語学習ができる教育機関は依然少なく、民間・大学に依らず教師がいないため、コースが開講・継続できないというケースもある。日本語を学べる場の選択肢はまだ十分といえる状況ではない。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 ミンスク国立言語大学の日本語専攻者は、通訳学部東洋語学科に属し、通訳者養成を主目的とした教育を受けている。ベラルーシに進出している日本企業はごく僅かであるため、通訳の需要は限定されている。これまでの卒業生は、日本大使館勤務、システム開発会社やロシアにある日系企業で日本語関連作業に従事する者がいるほか、数名が副業として不定期に日本語通訳・翻訳・教師などを行っている模様である。
 一方、ベラルーシ国立大学では、日本語教育を始めた当初には国際関係学部で国際関係、国際経済などを専攻し、第二外国語として日本語を学習した卒業生が出たが、学習時間数も少なく、日本語能力の水準は決して高くはなかった。しかし中には、外務省に就職し日本担当になったり、卒業後に日本語や日本研究のために留学(日本以外も含む)したりする者も出た。2002年秋に設立された同学部の言語地域研究科(日本学専攻)では、日本語学習により力を入れているほか、社会・経済・文化といった日本事情学習にも時間を割き、総合的な日本専門家の育成が行われている。2007年夏には、日本学を専攻した第1期生4名が卒業した。なお、2007年から国際経済専攻の日本語教育が再開されたが、2012年に卒業生を出して以降、再び中断している。
 日本留学は、主に文部科学省の奨学金を得て実施されており、1996年以降、日本語・日本文化研修留学生プログラムでいずれかの大学からほぼ毎年採用者があり、ここ数年は年に2名程度採用されている。またベラルーシ国立大学からは、大学推薦枠で早稲田大学へ1名、筑波大学へ2名程度が留学できることになっている。

その他教育機関

 1999年にNGO日本文化情報センターが設置された。同NGOはセンターの設置に先だって1997年にベラルーシ人に対する日本語学習支援を開始。1998年からは日本の絵本の翻訳や日本語能力試験受験者への交通費支援を続けている。
 日本語コースは、2005年にNGO葉隠、2007年にNGO日本文化情報センターが開講し、それぞれの機関で継続的な日本語学習が行われている。
 またミンスクの幼稚園で2011年度に日本語、2012年度には中国語が教えられたが、2013年度からまた日本語が教えられるようになった。幼稚園の方針でネイティブの教師が必須となり2013年度9月からはNGO日本文化情報センターの所長が授業を担当している。これ以外に組織的かつ継続的に日本語教育を行っている機関はなく、在留邦人や大学で日本語を学習した卒業生による個人教授、小規模なサークル形態での授業のみである。学習者は、仕事で日本を訪問する機会のある者のほか、大学生など若年層が中心である。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 初等教育(6~9歳)と前期中等教育(10~14歳)は「シュコーラshkola」と呼ばれ、計9年(通常一貫教育)が義務教育となっている。後期中等教育(15~16歳)の10・11年次は多くの場合、初等教育・前期中等教育と一貫教育であるが、最近ではこれらに加え、通常の学校より教育内容の充実したギムナジウム(中・高)、リツェイ(リセ、高校)などが新設されている。高等教育機関へ進学するには、上記義務教育+2年の計11年の初等~中等普通教育を修了するほか、職業技術学校(uchilische)、専門学校(technikum)、コレッジなど中等専門教育を修了するという選択肢がある。
 高等教育機関は5年間(医学系は6年間)で、大学(universitet、institut、akademiyaなど)を卒業後は2通りの進路がある。一方は3年以上の大学院(aspirantura)修了で博士候補号(kandidat nauk)を取得するもの、もう一方は1年の修士課程修了で修士号(migistr)を、3年以上の博士課程修了で博士候補号(kandidat nauk)を取得するものである。その後さらに3年の博士課程を修了すれば博士号(doktor nauk)が得られる。
 最近は、これを西側の制度に合わせる動きがあり、学部4年(または5年)修了で学士号(bakalavr)、5(6)年次をマギストラトゥーラ(magistratura)と呼ばれるマスターコース(aspirantura)の前段階と位置付けられ、修了すると学位マギストル(magistr)が得られる)とする大学もある。

教育行政

 国内の教育機関は、その教育段階により、州、市、地区など各レベルの行政機関にある教育局・教育課が直接の管轄機関となるが、それら全てを監督し、国家の教育方針策定に携わるのは、ベラルーシ教育省である。また、一部の高等教育機関、中等専門教育機関(職業技術学校、専門学校など)は、その内容により、保健省、国防省、文化省など、教育省以外の省庁に所属する。

言語事情

 東スラブ語族に属するベラルーシ語及びロシア語が公用語であるが、特に都市部ではロシア語の使用が一般的となっている。公共機関の表示(駅名や通りの名前)、交通機関でのアナウンスなどはベラルーシ語が用いられている。公的文書はベラルーシ語で書かれたものもあるが、ロシア語の利用が多数派である。学校教育は、ロシア語で行われる場合が多く、ベラルーシ語で教授する学校は少数である。

外国語教育

 旧ソ連時代、外国語教育は初等教育修了後の5年生からであったが、現在は1年生から開始する学校もある。第一外国語は英語のほか、フランス語、ドイツ語、スペイン語のいずれかがあり、学校によって特定されているが、2006年からはこれに中国語が加わった。  英語を重視する傾向は高く、幼稚園でも英語を教えるケースが増えている。だが学校で第一外国語が英語以外であったため、英語が不得手、という大学生も散見される。外国語教育に重点を置いている学校では、学年が進んでから第二外国語(フランス語・ドイツ語など)の学習も開始される。

外国語の中での日本語の人気

 日本語の人気は年々高まってはいるものの学習機関がごく限られており、学習環境にも恵まれているとは言えない。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試での日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 日本で出版された教科書(国際交流基金の教材助成、派遣教師を通じて入手したもの)を使用している。
 独立行政法人国際交流基金編著(2013)『まるごと日本のことばと文化入門A1』三修社
 独立行政法人国際交流基金編著(2014)『まるごと日本のことばと文化初級1A2』三修社
 独立行政法人国際交流基金編著(2014)『まるごと日本のことばと文化初級2A2』三修社
 独立行政法人国際交流基金編著(2015)『まるごと日本のことばと文化初中級A2/B1』三修社
 スリーエーネットワーク(1998)『みんなの日本語初級Ⅰ・Ⅱ』スリーエーネットワーク
 スリーエーネットワーク(2008)『みんなの日本語中級Ⅰ』スリーエーネットワーク
 坂野永理・他(1999)『AN INTEGRATED COURSE IN ELEMENTARY JAPANESE げんきⅠ・Ⅱ』The Japan Times
 平井悦子・他(2004)『中級へ行こう日本語の文型と表現59』スリーエーネットワーク
 平井悦子・他(2007)『中級を学ぼう日本語の文型と表現56』スリーエーネットワーク
 平井悦子・他(2009)『中級を学ぼう日本語の文型と表現82』スリーエーネットワーク
 鎌田修・他(2012)『新生きた素材で学ぶ中級から上級への日本語』The Japan Times

 宮原彬編著(2006)『留学生のための時代を読み解く上級日本語第2版』スリーエーネットワーク
 荻原稚佳子・他(2005)『日本語上級話者への道きちんと伝える技術と表現』スリーエーネットワーク

その他教育機関

 日本で出版された教科書(国際交流基金の教材助成)を主に使用している。
『みんなの日本語初級Ⅰ・Ⅱ』(前出)
『まるごと日本のことばと文化』(前出)

マルチメディア・コンピューター

 ミンスク国立言語大学にLL教室、ベラルーシ国立大学に視聴覚室があるが使用頻度は皆無である。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 現在のところ、学歴などで明確な採用基準・制限はないが、現地人・日本人とも、日本語能力と教師としての適正を各機関で判断した上で教師の採用を行っている。日本語教師を養成する機関は存在せず、大学においても、一般科目として外国語教授法があるのみ。

その他教育機関

 特に基準はない。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 2015年からミンスク国立言語大学では常勤教師1名が勤務を開始(国際交流基金日本語専門家を除く)。他の現地人常勤教師3名と日本語の総合的な授業を担当している。在留邦人は30名程度と数少ないが、時折日本人留学生がゲストとして授業に参加している。

教師研修

 2006年、2008年、2013年に日本語教師会セミナー及び勉強会が行われた。その他、国際交流基金の日本語教師研修が利用されている。

現職教師研修プログラム(一覧)

なし

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 日本語教育を行っている2大学の教師陣により、「ベラルーシ日本語教師会」が2003年末に設立された。

最新動向

 2016年6月25日 第4回GUAM諸国合同日本語弁論大会実施(於:ベラルーシ国立大学国際関係学部) 2016年さくらネットワーク助成

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2016年10月現在)

日本語専門家

 ベラルーシ国立大学、ミンスク国立言語大学 1名(兼任)

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 統一されたシラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

 日本語学習における共通の評価基準・試験は存在しない。日本語能力試験は大学での日本語専攻者にとって、卒業時までにN2~N1取得が目標とされる。しかし学外での知名度は低く、評価は日本語関係者間のみに限定される。

日本語教育略史

1993年 ミンスク国立外国語大学(現ミンスク国立言語学大学)にて日本語学科開設
1995年 ベラルーシ国立大学にて日本語教育(第二外国語)開始
1997年 ミンスクのNGO日本文化情報センターが日本語支援を開始
2002年 ベラルーシ国立大学の日本語教育が言語地域研究科(日本学専攻)に変更
2003年 ベラルーシ日本語教師会設立
2005年 ミンスクのNGO葉隠が日本語講座開講
2006年 ミンスク市内のギムナジウムでサークル形式での日本語教育開始(2008年をもって終了)
2007年 ミンスク国立言語大学で日本語夜間講座開講
NGO日本文化情報センターで日本語コース開講

参考文献一覧

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