ベルギー(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
初等教育 中等教育 高等教育 その他
教育機関
合計
12 37 0 0 476 715 1,191
0.0% 0.0% 40.0% 60.0% 100.0%

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 ベルギーにおける本格的な日本語教育は、1958年、国立ゲント大学の東方・東欧・アフリカ研究所に、1963年、カトリック・ルーヴァン大学の極東研究課程に、研究者育成を目指して講座が設けられたことに始まった。
 1980年代に入ると、社会における対日関心の高まりと相まって、高等教育での極東研究課程に占める現代日本語教育のウェイトが高まった。同時に、語学学校、外国語大学、商科大学、欧州委員会などでも次々に日本語コースが開設され一般市民レベルに広がっていった。
 1990年以降、日本語教育を行っている機関数は受講者の多様なニーズ(ビジネスコース、上級コース等の創設)に伴い、やや増加傾向にあった。一方、2000年前後は、長期に亘る日本経済の低迷や、中国への人気復活により、多くのアジア言語学習者が中国語に流れたことから、日本語学習者数もやや減少した。しかし、2004年から2010年前半にかけ、学習者数が著しく増加した。それは、学習の動機が学術、経済分野への関心だけでなく、マンガ等のポップカルチャーを含む文化的関心へと広がったこと、さらに学習者層の低年齢化によるものである。現在は伸び率は落ち着いたものの学習者数がそのまま横ばいとなっている。

背景

 大学間協定締結の増加により、日本の大学への長期留学の機会が増加したほか、航空券の価格低下、ユーロ高騰の外的要因から経済的負担が軽減し、長期留学に対して、より積極的な学生が増えている。さらに、インターネットの普及により日本の情報を容易に入手でき、また、メールやチャット等を通じて日本の友人達と活発に交流できることから、学習者にとって日本との距離がだいぶ縮まっているようである。こうした事実は、今後の日本語教育の発展にも大きく寄与するものであろう。

特徴

 学習者のニーズが多様化し、動機も個別化しているので、学校のコースではなく、個人授業を希望する人やオンラインの学習サイトで学習する人も多い状況である。このような潜在的な学習者を合わせると学習者が増える傾向を持続していると見られる。
 また、欧州評議会が提唱している複言語主義を理念として教育を実践している日本語教育機関が多く、その機関でのコースカリキュラムは2001年に欧州評議会が出版したCommon European Frameworks for Reference of Languages(欧州共通参照枠)を範として作成されている。

最新動向

 2013年、オランダ語圏では同圏政府教育省が中等教育に指導可能な科目として日本語を導入したことにより、今後同圏中等教育で日本語教育が実施される可能性を有している。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 2013年、オランダ語圏では同圏政府教育省が中等教育に指導可能な科目として日本語を導入したことにより、今後同圏中等教育で日本語教育が実施される可能性を有している。

高等教育

 オランダ語圏のカトリック・ルーヴァン大学、ゲント大学には日本学科が設けられており、1980年代から必修科目として日本語教育が学士課程・修士課程で行われている。フランス語圏では、主専攻としてではなく第三外国語、一般教養のとして日本語教育が行われてきたが、2013年からリエージュ大学、2016年からブラッセル自由大学の学士課程に日本語コースが開設され、2015年からはリエージュ大学修士課程での日本語教育が始まった。

その他教育機関

 一般の語学学校各所で日本語講座が設けられており、そこでは幅広い層にわたって日本に関心を持つ人々が日本語を学んでいる。最近の動向として、中等教育の生徒の受講が多くなり横への広がりが始まったこと、及び、継続学習者が増えたため中・上級コースも開講され縦への広がりも見せている。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-6制。
 初等教育が6年間(6~11歳)、中等教育が6年間(12~17歳)。この期間を終えると、進学希望者に対してはおおむね3~5年の高等教育が用意されている。
 義務教育は、初等、中等教育の12年間。

教育行政

 フランス語、オランダ語、ドイツ語の各言語共同体が、各々の教育行政を管轄。連邦政府は、義務教育年限制定などの限られた事項においてのみ、権限を有する。

言語事情

 公用語は、フランス語、オランダ語、及びドイツ語。
 ただしドイツ語人口はベルギー総人口の1%未満。ブラッセル首都地域(フランス語、オランダ語両共同体の管轄区域が交錯する)においては、フランス語・オランダ語2言語併用の状況にある。

外国語教育

 複数公用語制度をとるベルギーでは、母語以外の言語教育は、「外国語教育」というよりも、国内で用いられる諸言語の習得という位置づけにある。
 そのシステムは各言語共同体により若干異なるが、初等教育第5年次(10歳時)を母語以外の言語教育の開始時期とした「教育における言語を制定する法」(言語共同体制度が成立する以前の1963年に制定)の内容が、現在も各共同体におおむね適用されているようである。

[フランス語共同体]
 原則的には上記の通り初等教育第5年次より第二言語教育(「現代語」Langue Moderneと呼ばれる)が始まる。この段階では、オランダ語、英語、ドイツ語から1言語のみの選択となる。以降、各段階での詳細は下記のとおり。

  • 中等教育第1~2年次:「現代語」は必修で、オランダ語、英語、ドイツ語から1言語のみを選択。原則として、初等教育において習得を開始した言語をそのまま選ばなければならない。ブラッセル首都地域ではオランダ語のみ選択可能。
  • 中等教育第3~4年次:前段の「現代語」が「現代語Ⅰ」と呼び直される(必修)。ほか、新たに第三言語として「現代語Ⅱ」が選択可能になる。「現代語Ⅱ」は、オランダ語、英語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ロシア語の中から1言語のみ選択。ブラッセル首都地域では、「現代語Ⅰ」及び「現代語Ⅱ」ともに必修。
  • 中等教育第5~6年次:「現代語Ⅰ」(必修)、「現代語Ⅱ」(選択)及び第四言語としての「現代語Ⅲ」が新たに選択可能となる。「現代語Ⅲ」は、「現代語Ⅱ」の各言語の中から1言語の選択。

 なお、共同体政府の認可があれば、幼年教育(2歳半~5歳)の5歳時の授業より、母語以外の言語を用いた教育プログラムを一定の割合でカリキュラムの中に組み込むことができる。

[オランダ語共同体]
 初等教育第5年次より第二言語習得が開始されるが、この場合選択できる言語はフランス語のみ。必修ではないが、実際はすべての学校がこの時期に第二言語教育を開始している。また、ブラッセル首都地域内の区及びいくつかのコミューンでは、フランス語話者が多いため、フランス語で授業が行われる学校がある。そこでは、初等教育第3年次より、必修としてオランダ語の授業が行われている。中等教育以降は下記のとおり。

  • 中等教育第1年次より:フランス語(必修)。ただし実際には、フランス語に加え英語の授業も第1年次より行っている学校がある(全機関数の約4分の1)。
  • 中等教育第2年次より:フランス語(必修)及び英語(必修)。
  • 中等教育第3年次以降:言語教育の枠組及び具体的に選択可能な言語は法律により定められていないが、進学する分野に応じ第四言語以降の選択が可能。

[ドイツ語共同体]
 第二言語はフランス語とされ、幼年教育の3歳時から習得を開始することができる。以降は下記のとおり。

  • 初等教育:全期間を通じ、フランス語のみ(必修)。
  • 中等教育:全期間を通じ、フランス語(必修)。第2年次からは、第三言語(英語かオランダ語のどちらか)を選択することができる。さらに第4年次からは、第四言語(第三言語において選択していないどちらかの言語に限る)を選択することが可能。

 備考:なお、ブラッセル首都地域を含め、他の共同体と隣接する地区にある学校では、特別なプログラムを導入しているところもある。

外国語の中での日本語の人気

 ベルギーでは、近年は現代日本文化(特にアニメ・マンガ)への関心の高まりなどから、日本語の人気は、青少年層をはじめ、幅広い層に人気が高まっている。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 アンケートの結果、『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE Ⅰ Ⅱ』国際日本語普及協会(講談社USA)、『現代日本語コース』名古屋大学言語文化部日本語学科(名古屋大学出版会)、『日本語初歩』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)、『ヤンさんと日本の人々ⅠⅡ』国際交流基金日本語国際センター(ビデオ・ペディック)、『日本語ジャーナル』(アルク)など日本で出版された教科書・教材が挙げられた。そのほか、新聞や小説などがテキストに用いられている機関もある。

その他教育機関(その他一般市民講座等)

 『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE Ⅰ Ⅱ』(前出)、『初級日本語』・『中級日本語』東京外国語大学留学生日本語教育センター(凡人社)、『日本語かな入門』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)、NHKビデオ『日本語講座』、『初級日本語げんき』坂野永理ほか(ジャパンタイムズ)、『みんなの日本語』スリーエ-ネットワーク(スリーエーネットワーク)、『日本語ジャーナル』(前出)など日本の教材が用いられている。

マルチメディア・コンピューター

 コンピューターの普及は著しく、小学校から科目の一つとしてコンピューターを取り入れているところが多い。日本語教育では、日本語環境設定が容易になったこと、読解支援ツールの充実などから、授業にコンピューターを導入し始めている。特にルーヴァン・カトリック大学ではコンピューター支援の自立学習構築のプロジェクトがある。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 特に日本語教師としての資格要件はない。
 高等教育機関では、欧州の大学の修士号を有すること、EU外で学位・教職免許を取得した場合は、その学位の認承制度による認可手続が必要。
 実際に高等教育機関で教えている者は、日本語教育能力検定試験合格者、あるいは修士号取得者がほとんどである。

その他教育機関

 特に日本語教師としての資格要件はない。

日本語教師養成機関(プログラム)

 ルーヴァン・カトリック大学文学部(オランダ語共同体)では、2007年度から教職課程のプログラムが一新され、その中に日本語教師養成コースも開設された。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 高等教育機関では、語学部門の半数近くが日本人である。常勤講師はその割合は更に高い。

教師研修

 現職教師対象の研修については、ベルギー日本語教師会が2か月に1度、日本語教育に関する勉強会を実施しており、その内2~3回は講師を招いて日本語教育セミナーを開催している。訪日研修としては、国際交流基金の海外日本語教師研修がある。
 2007年7月からフランスのアルザスで開催されている国際交流基金主催の短期日本語教師研修にもベルギーの日本語教師が参加している。

現職教師研修プログラム(一覧)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 「ベルギー日本語教師会」が1997年に発足。同教師会の活動としては、教師研鑚の場として2か月に1度の勉強会(内2~3回は講師を招いて日本語教育セミナーを開催)を実施し、その報告書を作成し、会員への送付している。また、1か月に1度、学習者支援を目的として「日本語を話そう会」を主催している。また、ベルギー内外の機関と連携し、ベルギーでの日本語教育の活性化を目指す活動を行っている。2005年9月には、第10回ヨーロッパ日本語教育シンポジウムを主催した。また、2005年より在ベルギー日本大使館と協力して、毎年開催される「言語祭」に参加している。そこでは、アトリエやスタンドを設置し、500名前後の小中学生及び一般人を対象に、日本語に関心や親しみを持たせる活動を行っている。また、Japan Expoにおいて毎年日本語ワークショップを実施し、日本語スピーチコンテストにも協賛参加をしている。

最新動向

 特になし。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

国際協力機構(JICA)からの派遣

 国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。

その他からの派遣

 (情報なし)

日本語教育略史

1957年 ゲント大学に南・東アジアの言語と文化部日本学日本語コース開設
1958年 ゲント大学に東方東欧・アフリカ研究所が設立され、日本学専任教授ポストが創設された
1963年 ルーヴァン・カトリック大学の東洋研究所に、現代日本語コース開設
1980年代 高等教育レベルでの極東研究課程に占める日本語のウェイトが高まる
語学学校や外国語大学、商科大学、欧州委員会などを含めた市民・一般教育レベルにまで講座が拡大
1986年 ルーヴァン・カトリック大学に、文学部東洋スラヴ学科日本学専攻課程開設
1991年 リエージュ大学に日本文化研究センター開設
1999年 リエージュ大学にて、学部学位取得済みの学生を対象とした日本学専攻課程開設(2003年に打ち切り)
2004年 経済分野への関心だけでなく、文化的関心が高まり、日本語学習者が著しく増加
2007年 ルーヴァン・カトリック大学文学部で、教職課程の中に日本語教師養成コース開設
2013年 リエージュ大学の学士課程に日本語コース開設
2015年 リエージュ大学の修士課程に日本語教育コース開設
2016年 ブラッセル自由大学の学士課程に日本語コース開設

参考文献一覧

ページトップへ戻る