カンボジア(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
29 157 4,009
学習者数 内訳
教育段階 学習者数 割合
初等教育 15 0.4%
中等教育 648 16.2%
高等教育 583 14.5%
その他 教育機関 2,763 68.9%
合計 4,009 100.0%

2015年度日本語教育機関調査結果 学習者数グラフ
2015年度日本語教育機関調査結果の学習者数に関する帯グラフ。初等教育は15名で全体の0.4%、中等教育は648名で全体の16.2%、高等教育は583名で全体の14.5%、学校教育以外は2,763名で全体の68.9%。

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1960年代にクメール王立大学(現在の王立プノンペン大学)において日本政府が派遣した日本語教師によって日本語教育が始まる。しかし内戦のため1974年に中断された。
 その後、1990年頃よりNGOや日本人ボランティアによる日本語教育が始まり、本格的な再開は1993年12月、王立プノンペン大学への青年海外協力隊(JOCV)日本語教師派遣より始まった。同大学では1994年1月霊友会による一般向け講座が、4月にJOCVによる大学生対象の日本語コースが相次いで開講した。
 1995年にはプノンペンで、また1996年にはシェムリアップで民間学校が多数立ち上がり、続いて2001年にはNGOが支援するプノンペンの小学校のひとつでも日本語が教えられ始めた(現在閉校)。この頃、プノンペンの3大学でも日本語コースが開始されている。
 2005年10月には王立プノンペン大学外国語学部にカンボジア初の日本語学科が開設され、国際交流基金からの専門家派遣が開始された。この年カンボジア日本語教師会(CAJALTA)が発足。2007年になるとシェムリアップ地方でアンコールワット日本語教師会も発足し、同年アンコール大学で日本語コースが開講されるなど、特にプノンペンとシェムリアップの2地域の日本語教育が充実し始めた。
 一方、2008年9月には専門日本語教育として王立法律経済大学内に「名古屋大学日本法教育研究センター」が設立され、日本語教育の幅が広がってきた。
 その後、大学での日本語コースが閉鎖されるなど、機関数、教師数、学習者数ともにかなり減少した時期があったが、2011年ごろから日本企業の進出が急増し、日本語人材の需要が急激に高まってきた。カンボジアは英語の話せる人材が多いため、英語のできる日本人の多い大手企業では日本語よりも管理能力や英語が重要視される傾向があるが、中小企業では、日本語が要求されることが多い。カンボジアではまだ高度な日本語能力を有する人材は限られているため、日本語人材の取り合いのような状況も生まれている。

背景

 都市部とその他の地域で経済格差が大きく、日本語教育は主に都市部で実施されている。大学や日本語学校からの留学生誘致の問い合わせが増えているが、経済的に自力で日本へ留学できる人は非常に少ない。
 カンボジア人にとって、日本は経済大国や友好国としてのイメージが強い。なお、日本企業進出急増の背景には、近隣諸国の人件費高騰、カンボジアのインフラ整備の進展などがある。
 カンボジアは国全体の平均年齢が30歳前後と若い国である。小学校の就学率は比較的高く、修了率も向上してきているが、学校運営の体制や質はまだ万全とはいえない。
 まだ電気や水道のない地方も多いが、都市部や電気のある地方ではテレビが普及している。携帯電話や都市部のカフェやレストラン等の無料Wifi普及率は非常に高く、特に都市部では会社員や大学生の多くがパソコンやタブレット端末などを所有している。自宅でのインターネット普及率はあまり高くないが、電話カードを使ったインターネットへの接続は安価で容易にできる。
 民主カンプチア(ポル・ポト)時代に教育や文化が根こそぎ破壊され、家庭や学校に本が身近にない期間が長かったことから、読書の習慣は浸透していない。しかし、「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」などのマンガや日本アニメなどが少しずつ知られてきており、2012年、大使館とカンボジア日本人材開発センター(CJCC)が開催した絆フェスティバルでのコスプレショーをきっかけに、コスプレ、コミックショーの参加者が爆発的に増加しており、潜在的なポップカルチャーファンが存在していることが明らかになってきた。音楽やファッションなどは韓国の影響も大きい。

特徴

 内戦等の理由により、他のASEAN近隣諸国と比較してカンボジアにおける日本語教育の歴史は浅く、日本語教育はいまだ発展途上の段階である。内戦後の1993年、王立プノンペン大学に青年海外協力隊(JOCV)の日本語コースが開設されたが、当時日本語を学んだ人たちが日本語学習者の先駆けで、現在、機関の中心的役割を担っていることも多い。そうした学習者は2006年にカンボジア国内で日本語能力試験が行われるようになるまで、ベトナムやタイで受験していた。
 学習者は小学生から社会人までと幅広いが、都市部では大学生か社会人、大学進学率の低い地方では若年層が中心で、カンボジア全土ではまだ初級レベルの学習者が多数を占める。しかし、少しずつ教師及び学習者のレベルも上がっており、後述するように、日本語能力試験の受験者総数も増加、受験レベルも高くなっている。学習動機については、日本への好感や興味が基本にあり、「就職・留学」への期待から学習を始めると考えられるが、マンガやアニメなど、ポップカルチャーへの関心をあげる学習者も増えている。ユネスコ世界遺産であるアンコール遺跡群を擁するシェムリアップ州では、ガイドやホテル従業員など観光産業の日本語需要が高く、学習動機の主流となっている。
 教師に関しては、中・上級レベルを教えるカンボジア人日本語教師の育成が遅れていること、人口比から教師の年齢が20代から30代前半に極端に偏っていることも顕著な特徴である。
 学校教育以外の機関についてはNGOの支援や個人の好意に頼る施設も多く、また専任講師の場合、企業の待遇のほうが圧倒的に有利なことから転職する現地教師も多く、教育の継続性が問題となる機関が少なくない。カンボジアでは副業を持つことが一般的で、大学や会社で働きながら終業後や休日に非常勤として教える教師が多いのも特徴と言えよう。

最新動向

 2011年ごろから日本企業の進出が急増し(2016年10月10日現在、カンボジア日本人商工会(JBAC)の会員企業は176社)、日本語学習者の採用に向けた問合せが急増している。
 また、2013年12月からシェムリアップ会場でも日本語能力試験が実施されており、カンボジアではプノンペンとシェムリアップの2か所で受験できるようになった。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 1999年に日本のNGOとカンボジア人がプレイベーン州の農村に立ち上げた「カンボジア日本友好学園」(中高一貫校)においてボランティアベースの日本語教育が行われている。2016年10月現在、日本人ボランティア教師2名、学習者は7~8年生併せて約650名と、9~12年生の約40名。

高等教育

1.王立プノンペン大学(公立)

 公立大学のうち、王立プノンペン大学外国語学部にはカンボジア唯一の日本語学科がある。1994年に青年海外協力隊員(JOCV)が派遣され、翌年から希望者を対象にした単位取得のない非正規日本語コースが開講されたが、2005年に正規の日本語学科が開設されたことに伴い、2007年8月に非正規コースは閉鎖された。
 日本語学科は2009年より卒業生を輩出している。学科は午前、午後、夜間の三部制をとっており、2016年8月までの卒業生は373名。4年生になると「日本語教育(B.Ed.)」と「ビジネスのための日本語(B.A.)」の二専攻に分かれ、どちらも卒業論文執筆が義務付けられている。2016年10月現在の学生総数は352人。2年生127名、3年生140名、4年生85名(うち日本語教育専攻37名、ビジネスのための日本語専攻48名)、1年生はまだ入学していない。また、在学生30名が日本に留学中である。卒業時の学生の日本語能力はN4~N2で、卒業後の進路希望は、1)日系企業への就職、2)日本留学、3)日本語教師となっている。
 2016-2017年度の学科教師は14名。内訳は、常勤カンボジア人教師8名(修士号取得者3名、学士号取得者5名)、常勤日本人教師3名(現地採用1名、留学生1名、国際交流基金派遣日本語専門家1名。修士号取得者1名、学士号取得者2名)、非常勤日本人教師1名(学士号取得者1名)。また、2016年10月現在、過去学科に在職していた教師1名が、日本の大学院の修士課程に在学中、また1名が国際交流基金で研修中である。
 また、同学科は、①カンボジア日本語教師会(CAJALTA)の事務局、②さくらネットワークの中核メンバーにもなっており、カンボジアでの日本語教育の中心的存在である。2015年12月には「さくら日本語・日本文化普及キャラバン」が実施されたが、これは王立プノンペン大学主催、在カンボジア日本国大使館共催の国際交流基金さくら中核事業で、日本語教育機関、社会人(王立プノンペン大学卒業生)、在留邦人がチームを組み、15校(地方11校、プノンペン近郊2校、プノンペン市内2校)の高校をめぐって日本語や日本文化を紹介したものである。参加した高校生は合計1,163人。日本語教育関係者間のネットワークが強化され、また若い世代に向けた日本語普及事業としての効果が期待される。

2.王立法律経済大学(公立)

 王立法律経済大学は2002年11月青年海外協力隊(JOCV)による非正規日本語コースが開設され、2009年には正規コースに昇格し、希望する受講者に対しては外国語としての単位取得が可能となった。2016年10月現在、カンボジア人教師4名で、JOCVは派遣されていない。2学年の総数36名、全2年間コースで中級前半まで学習する。学生の日本語能力はN4からN3程度。
 一方、同大学内に2008年9月に設立された「名古屋大学日本法教育研究センター」では、法律及び行政専攻の学生に対して4年間の日本語及び日本の法律に関する教育を施し、修了時には上位1~2名を名古屋大学大学院法学研究科に留学させる。2016年10月現在、日本語教師はカンボジア人2名、日本人3名、専門科目教師1名、学生35名。学生は4年生の時点で日本語能力試験のN2取得を目標としているが、毎年、1~2名のN1合格者がいる。

3.バッタンバン大学(公立)

 同じく地方のバッタンバン大学では、外国語学部で英語と韓国語が正規に開講されているが、日本語は3ヶ月を1学期とする非正規のショートコースで、バッタンバン大学の学生は全員受講することができる。以前は英語と韓国語だけであったが、2010年5月から日本語と中国語が加わった。日本語は韓国人教師が担当し、2016年6月~8月、『みんなの日本語Ⅰ』を週3回計4.5時間で行った。28名でスタートし、全期間在籍したのは8名だった。2016年11月23日から3か月の予定で、『みんなの日本語Ⅰ』の続きをする予定である。

4.カンボジアメコン大学(私立)

 私立大学については、カンボジアメコン大学において2003年大学設立時より、人文・外国語学部に日本語ビジネス学科が開設され、2016年10月現在カンボジア人教師0名、日本人教師3名、学生約50名で中級まで学習している。4年間でN3程度、卒業生は約100名。他学科では、観光学科、会計学科、金融学科の学生のごく一部が日本語ビジネス学科の学生と学んでいる程度である。

5.ザマン大学(私立)

 ザマン(Zaman)大学は2010年にプノンペンに設立された私立大学で、2011年度にFaculty of Arts Humanities and Languagesに正規の選択外国語科目として日本語コースが開設された。現在はInstitute of English and Foreign Languages で開講。レベルは6つ、それぞれ1週間3時間、1学期に45時間で3単位の取得。2016年6月現在、全学生数約600名。日本語学習者数は2016年11月以降にならないと判明しない。

6.その他

 パンニャサストラ大学(プノンペン、シェムリアップ)、国立経営大学、王立農業大学、スバイリエン大学などで、非正規日本語コース(単位にはならない)が開講されている。

その他教育機関

 王立プノンペン大学内にあり、JICAと王立プノンペン大学の共同プロジェクトとして始まった「カンボジア日本人材開発センター(CJCC)」では2004年から国際交流基金より専門家が派遣され、同年11月教師養成コース開講を皮切りに、初級から中級までの定期コース、短期のビジネス日本語コース、教師養成コース、企業委託コースなどを平日昼休みと夜間を中心に開講している。2016年10月現在、カンボジア人教師11名(常勤5名、非常勤6名)、日本人教師5名(常勤3名、非常勤1名、国際交流基金派遣専門家1名)、学習者は2016年10月現在、CJCCコース約500名、企業委託コース6名。
 そのほかにプノンペン、シェムリアップ地方、コンポンチャム州などで日本語が教えられているが、民間の語学学校、日本への研修生送り出し機関、個人塾など、形態はさまざまである。設置主体は日本及びカンボジアのNGO、日本人またはカンボジア人個人、研修事業関連団体、企業、寺院など様々で、学習目的は就業、研修留学など実利目的、学習者は若年層が中心である。カンボジアの特徴として、 NGO Heart of Goldが支援するチェイ小学校での日本語教室やクメール伝統織物研究所のような子供や女性の自立支援施設で日本語が教えられていることが多く、教師数、学習者数など流動的で実態がつかみにくいことがあげられる。こうした学校教育以外の機関では、将来の収入手段獲得、自立の支援を目的として掲げるところが多く、レベルは初級を中心に、なかには上級まで学習するところもある。
 修了後は母校の教師として教壇に立ったり、シェムリアップではガイドやホテルなど観光業、プノンペンの場合は日系企業やNGOに就職したりすることが多い。
 プノンペンのオリガミスクールでは5名のカンボジア人教師のもとで現在約100名が日本語を学んでいる。優秀な学習者は奈良県天理市あるTLI(天理教語学院)に1年半~2年間留学する機会が与えられ、大半の学生は日本語能力試験のN2、N1を取得する。帰国後、母校で日本語教師として教える場合が多い。現在、6名が日本に行っている。2017年3月に TLIに2名留学する予定。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-3-3制。
 6歳より就学し、小学校6年間、中学校3年間、高校3年間、大学は一般に4年間。その他、高校レベルの技術高校、職業訓練校もある。義務教育は小学校から中学校までの9年間とされる。カンボジアでは日本と違って、年齢と学年が一致しないことも一般的で、経済的な理由などにより学校を辞めて、また復学するケースも多いため、10代半ばで小学校に通っていたり、30歳を越えて一度は断念した高校に復学したりといった事例も珍しいものではない。年上の兄弟といっしょに6歳以前に就学し、その後、実年齢より数歳高い年齢を使い続けるケースなども見られる。
 小中高校では校舎や教員不足のため一般的に午前・午後の二部制をとっている。大学では午前・午後・夜間・土日コースと三~四部制をとっており、同時に複数の大学や学部に所属したり、働きながら夜間や土日コースで学んだりする者も非常に多い。

教育行政

 初等・中等教育は、教育・青年・スポーツ省が管轄している。
 高等教育は、約20校ある国・王・公立大学及び公的研究教育機関のうち、農業大学は農林水産省、保健科学大学は保健省、芸術大学は文化芸術省、カンボジア軍保健科学研究所は防衛省の管轄となっており、王立プノンペン大学、王立法律経済大学、工科大学、高等師範学校、マハリシュ・ベディック大学、スバイリエン大学、経済財政研究所などは教育・青年・スポーツ省の管轄である。技術高校、職業訓練校はカンボジア労働・職業訓練省管轄。

言語事情

 公用語は国民の90%を占めるクメール人のクメール語で、識字率は2013年現在、76.3%で世界133位である。地方の少数民族はそれぞれの言語を使用している場合もある。また、中国系住民の間では中国語、ベトナム系住民の間ではベトナム語も使われている。

外国語教育

 植民地時代はフランス語が主要外国語であった。ポル・ポト政権で教育制度自体が壊滅的打撃を受け、その政権が崩壊した後の外国語教育は政治的要因によりロシア語、ベトナム語が中心となった。1989年ごろ援助国が西側諸国に移ってからは再びフランス語、英語に塗り替えられた。Grade7(中学生)より外国語(英語またはフランス語)が必修。しかし、国内産業に乏しいカンボジアでは、経済活動を外国に頼らざるを得ないため、外国語学校や塾などに通って早期から外国語を学ぶのが一般的で、特に都市部を中心に英語能力はASEAN諸国の中でも特段に高いと思われる。それに加えて、中国語、フランス語、日本語、韓国語など、複数の言語を話す国民が多いのも特徴。私立校の場合は早い所では幼稚園から英語を学ぶ。英語系、中国語系の学校も多く、クメール語、英語、中国語の三か国語教育を行う学校もある。

外国語の中での日本語の人気

 一般的には就職で有利な英語の人気が圧倒的に高い。2016年10月の王立プノンペン大学外国語学部の入学試験で応募者数が多い順は、英語、日本語、韓国語、中国語であった。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

 『みんなの日本語初級Ⅰ Ⅱ』についてはカンボジア日本人材開発センターから本冊および翻訳・文法解説のクメール語版がセットで出版されている。

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 教科書は使用されていない。

高等教育

『みんなの日本語初級Ⅰ Ⅱ』スリーエーネットワーク編(スリーエーネットワーク)
Basic Kanji Book Vol.1、2』加納千恵子他著(凡人社)
『中級へ行こう』平井悦子他著(スリーエーネットワーク)
『聞いて覚える話し方 日本語生中継(初中級編1、2)』ボイクマン総子ほか著(くろしお出版)
『大学・大学院留学生の日本語〈4〉論文作成編』アカデミックジャパニーズ研究会(アルク)
『にほんごで働く!ビジネス日本語30時間』宮崎道子著(スリーエーネットワーク)
ほか

その他教育機関

『みんなの日本語初級Ⅰ Ⅱ』(前出)
『まるごと 日本のことばと文化 入門A1 かつどう/りかい』国際交流基金編著(三修社)
『まるごと 日本のことばと文化 初級1A2 かつどう/りかい』国際交流基金編著(三修社)
『まるごと 日本のことばと文化 初級2A2 かつどう/りかい』国際交流基金編著(三修社)
『まるごと 日本のことばと文化 初中級A2B1』国際交流基金編著(三修社)
『まるごと 日本のことばと文化 中級1 B1』国際交流基金編著(三修社)
『(初級)語学留学生のための日本語ⅠⅡ』木川和子・松井充子著(凡人社)
『テーマ別中級から学ぶ日本語』松田浩志ほか著(研究社)
『商談のための日本語』米田隆介ほか著(スリーエーネットワーク)
『カンボジア日本語ガイドの基礎知識100』鬼一二三著(一二三日本語教室)
ほか

マルチメディア・コンピューター

 カンボジアでは携帯電話や無料wifi施設(カフェやレストラン)が普及しているので、町ではスマートフォンやタブレット端末などでインターネットを利用する学習者が増えてきているが、シンプルな携帯電話しか持っておらず、メールやインターネットが使えない学習者もまだまだ多い。
 個別の機関の状況については、以下のとおり。

  • プノンペンでは大学でのコンピュータールームの設置も一般的になってきており、名古屋日本法教育研究センターではパワーポイントのほかテレビ会議システムを利用。王立プノンペン大学、カンボジア日本人材開発センターでは授業でパワーポイント等を使用。
  • カンボジアメコン大学では3つのコンピュータールームに加え、日本語の事務所を学生にも開放し、視聴覚教材を使えるように準備を進めている。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 ボランティアの日本人教師のみであり、特に資格要件はない。

高等教育

(1)日本人教師:

 カンボジアでは修士号以上の学位を有する人材を確保することは困難で、大卒が必須条件となっている。日本語教育に関する専門知識(大学で主専攻または副専攻、420時間以上の研修、日本語教育能力検定試験等)または3年以上の経験などを求める場合が多い。法律やビジネスなど、日本語以外の専門分野を専攻する場合は、日本語教育の専門知識に加えて、日本史や公民など日本語教育以外の科目も教えられることが望ましいとするところもある。大学によっては日本語教育の資格は問わず、日本語以外の専門の教師にも門戸を広げ、幅広い社会経験がもたらす実学的なものをより重視しているところもある。
 なお、急増する企業の要望に応えるため、日本から会計などの専門分野の教師を派遣してもらい、日本企業に勤務した場合の経理、会計処理の能力向上や、ビジネスマナーや日本の企業文化等について日本の専門家、中小企業の経営者に定期的に特別講義を行ってもらっている大学もある。

(2)カンボジア人教師:

 正規職員(公務員資格保有者)は修士号以上の学位を有する者、非公務員資格(契約)教員は、基本的に学士の学位を有する者以上となっている(専門は問わない)。日本語能力や日本語教授知識に関する規定はない。大学のカンボジア人講師の日本語能力はN2程度が主流。
 大学によっては、英語やビジネスなど日本語以外の専門スキル能力向上に力を注いでいるため、必ずしも日本語教育能力に主眼を置いているとはいえない傾向もある。技術系あるいは社会科学系の大学では、日本語以外の専攻で留学し、帰国してから教師として籍を置くカンボジア人教師もおり、日本語能力試験は受験していなくとも、非常に高度な日本語能力を有している場合がある。しかし、こうした人材は企業に引き抜かれることが多く、高度な日本語能力を有するカンボジア人教師が慢性的に不足している。

その他教育機関

 カンボジア日本人材開発センターでは高等教育機関とほぼ同じ条件で教師を採用しているが、一般の民間学校では明確な規定がない。カンボジア人教師の日本語能力はN4程度からN1までと差が大きく、大学生や会社員が非常勤として教えているケースも多い。
 シェムリアップの山本スクールでは、日本人教師には日本語教師養成講座修了か日本語教育能力検定試験合格を条件としており、カンボジア人教師は日本人教師が指導している。
 NGO Hearts Of Gold(通称HG)の支援するチェイ小学校の日本語教室のカンボジア人指導者は、日本語教育の教師の資格は持っていないが、全員1年間日本に留学したことがあり、日本語能力は高い。
 民間の日本語学校、特に子供や女性の自立支援機関などでは日本人ボランティアに頼る機関も多く、なかなか日本人ボランティアを確保できない機関もある。

日本語教師養成機関(プログラム)

  • 王立プノンペン大学外国語学部日本語学科では、日本語教育専攻の学生に対し、理論と実習を課している。
  • カンボジア日本人材開発センターでは不定期に一般向けの教師養成講座を開講。2015年度は土曜日の午前中に開講。半年間15回の講義受講と50時間のインターンシップを義務づけ、修了までに日本語能力試験のN3以上に合格することを条件としていた。2016年10月現在は開講していない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 正規日本語コースを実施する大学・機関では、国際交流基金派遣の日本語専門家以外の日本人教師は正規雇用あるいは契約の形を取ることが多い。カンボジア人教師の場合、大学ではごく少数の公務員資格を持った教師以外は契約であり、学生数の増減によって次年度の契約が決まる。給与も非常勤と同様、担当授業数に応じて増減するのが一般的であるが、日本人は給与が契約で一定額に決められていることが多い。日本人教師は、初級~中級の授業全般、会話授業や中上級レベル中心に担当、専門科目の担当、カンボジア人教師とのチームティーチング、カンボジア人教師の教授法や教務の指導など、機関によってさまざまな役割がある。
 大学の非正規コースや民間日本語学校においては、短期・長期滞在の日本人にボランティアとして授業を担当してもらう機関も多い。
 前出のNGO Hearts of Goldの場合、2001年からチェイ小学校で日本語教室を支援しており、授業料は無料、日本人教師は週1回のサポートをし、カンボジア人の指導者が将来的には自分たちの手で全てが運営できるように現地化することを役割としている。

教師研修

(一覧参照のこと)

現職教師研修プログラム(一覧)

  • カンボジア日本人材開発センターにおける日本語教育セミナー(半日) 年1回
  • シェムリアップのアンコールワット日本語教師会におけるセミナー(1日間)年3回
  • アンコールワット日本語教師会による国際日本語教育セミナー(隔年1回)
  • 訪日研修として、国際交流基金の日本語教師研修(長期・短期)
  • 前出NGO Hearts Of Goldが支援するチェイ小学校のカンボジア人教師は2011年、岡山県ローカル・トゥー・ローカル・プロジェクトの技術指導員として5ヶ月間、岡山外語学院で日本語教師養成講座を受けた。
  • オリガミスクールでは校長の支援と奨学金を受けてTLI(天理教語学院)日本語教師養成コースで学ぶ機会を与えられている。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

カンボジア日本語教師会(CAJALTA

 2005年11月発足。前身は「カンボジア日本語教師の会」。カンボジア人・日本人双方の教師で構成されているが、2016年10月現在、目立った活動はしていない。2016年度の会員は約20名。王立プノンペン大学日本語学科が事務局となっている。

アンコールワット日本語教師会

 シェムリアップの日本人教師が中心となって2007年1月に立ち上げた教師会で、月例会及び定期的な日本語教育セミナーを実施している。2016年10月現在約20名(日本人13名、カンボジア人7名)が会員となっている。2010年度からは毎年1回アンコールワット日本語コンクールを、2012年からは隔年でアンコールワット国際日本語教育セミナーを実施している。2013年12月には、カンボジア日本人材開発センター(CJCC)主催、アンコールワット日本語教師会協力でシェムリアップ会場(アンコール大学)で初めての日本語能力試験が実施された。

最新動向

 特になし。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2016年10月現在)

日本語専門家

 カンボジア日本人材開発センター 1名
 王立プノンペン大学       1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 過去には以下のようなNGO支援を受けた派遣があった。

《霊友会》
王立プノンペン大学一般社会人コース:日本語教師派遣(1994年1月~1997年)
JHP学校をつくる会》
王立プノンペン大学一般社会人コース:日本語教師への資金援助(1997年~1999年4月)
《国際親善文化交流協会(IFCA)》
商業省:日本語教師1名派遣(1996年9月~1999年3月)

シラバス・ガイドライン

 日本語教育に関する統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

 日本語能力試験をプノンペンにおいて年2回実施。2013年12月からはプノンペン会場に加えて、シェムリアップ会場でも実施。2015年度の応募者数は年間累計でN1が 94名、N2が 304名、N3が 583名、N4が 516名、N5が 249名、総計1,746名で、毎年着実に増加している。2011年7月まではN4受験者がいちばん多かったが、2011年12月よりN3受験者が最多となり、さらにN1、N2受験者も増え、日本語学習者数の増加のみならず、全体の日本語能力も少しずつ高くなってきていることがわかる。

日本語教育略史

1960年代 クメール王立大学(現在の王立プノンペン大学)にて日本語講座開講(1974年に閉鎖)
1991年ごろ 現地在住の日本人によるボランティアベースでの日本語教育再開
1993年 12月 プノンペン大学(1996年王立プノンペン大学と改称)にJOCV隊員派遣開始
1994年 1月 プノンペン大学にて一般社会人対象の日本語講座が開講(霊友会)
4月 プノンペン大学にてJOCVによる当大学生対象の非正規日本語講座が開講
プノンペンの観光省にもJOCV隊員が2代に亘って派遣(~1998年)。またシェムリアップの観光庁にもJOCV隊員が派遣(3代で終了)
シェムリアップに日本人による民間日本語学校一二三日本語教室開校(図書館も併設)
1995年 カンボジア人による民間語学学校の日本語講座が数多く開講
1996年 9月 商業省に国際親善文化交流協会(IFCA)から日本語教師1名派遣開始(~1999年3月)
商科大学(1998年に国立経営大学と改称)にJOCV隊員派遣開始
1998年 シェムリアップで日本の民間旅行会社の支援を得た日本語学校開校
プノンペン日本語教師の会主催で第1回日本語スピーチコンテスト開催(この年はプノンペンの日本語教育機関のみ)
1999年 プノンペン日本語教師の会主催で第2回日本語スピーチコンテスト開催(この回よりシェムリアップの日本語教育機関も参加)
プレイベーン州のカンボジア日本友好学園(中高一貫校)で日本語教育開始
2000年 日本語スピーチコンテスト実行委員会主催で第3回日本語スピーチコンテスト開催
2001年 シェムリアップの民間日本語学校一二三日本語教室を秋篠宮殿下同妃殿下がご訪問
2002年 王立法律経済大学にJICAシニア隊員の派遣開始
2003年 10月カンボジアメコン大学開学
2004年 JICAのカンボジア日本人材開発センタープロジェクトに国際交流基金より日本語専門家派遣開始。同準備室にて日本語教師養成講座開始
2005年 3月 王立プノンペン大学の一般社会人対象日本語講座が閉講
10月 王立プノンペン大学に正規の日本語学科設置
11月 カンボジア日本語教師会(CAJALTA)発足
王立プノンペン大学に国際交流基金より日本語専門家派遣開始
日本語スピーチコンテストと同時に川柳コンクール開催
2006年 2月 王立プノンペン大学内にカンボジア日本人材開発センター完成
3月 一般向け日本語講座開始
カンボジアにおける日本語能力試験実施開始
2007年 2月 アンコールワット日本語教師会発足
8月 王立プノンペン大学の学生対象非正規日本語講座が閉鎖
10月 アンコール大学日本語コースが開講
2008年 ミエンチェイ大学へのJOCV隊員派遣開始
王立法律経済大学内に名古屋大学日本法教育研究センター開所。日本語講座開講
2009年 国立経営大学日本語コース閉鎖
王立法律経済大学日本語講座が正規講座に昇格
2010年 日本語能力試験 年2回実施開始
5月 バッタンバン大学で日本語ショートコース開講
2011年 カンボジア日本語学習者による第1回「のどじまん大会」開催(大使館、CJCC、カンボジア元日本留学生同窓会(JAC, JAPAN ALUMNI OF CAMBODIA共催)
第1回アンコールワット日本語コンクール開催(アンコールワット日本語教師会主催)
王立プノンペン大学日本語学科を皇太子殿下がご訪問
「さくら日本語・日本文化普及キャラバン」開始
2012年 第1回アンコールワット国際日本語教育セミナー開催(アンコールワット日本語教師会主催)
第15回カンボジア日本語スピーチコンテスト開催(王立プノンペン大学外国語学部日本語学科・カンボジア日本人材開発センター主催)
10月 メコン大学付属Mekong International Schoolで日本語教育開始。しかし、現在は終了している。
2013年 3月 最後のJOCV隊員(ミエンチェイ大学)が帰国。
12月 日本語能力試験 シェムリアップでの実施開始
2014年 第17回カンボジア日本語スピーチコンテスト開催(在カンボジア日本大使館・王立プノンペン大学外国語学部日本語学科・カンボジア日本人材開発センター主催)
2015年 第18回カンボジア日本語スピーチコンテスト開催(在カンボジア日本大使館・カンボジア日本人材開発センター主催)
2016年 第19回カンボジア日本語スピーチコンテスト開催(在カンボジア日本大使館・カンボジア日本人材開発センター主催)

参考文献一覧

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