チリ(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
初等教育 中等教育 高等教育 その他
教育機関
合計
8 47 45 60 181 792 1,078
4.2% 5.6% 16.8% 73.5% 100.0%

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1975年に日智文化協会において、学生や社会人等など広く一般人を対象とした日本語講座が開設されたのが始まり。その後、1993年にサンティアゴ大学(国立)に選択科目として日本語講座が始まり、1995年には5年制の翻訳課程(英語・日本語専攻)が人文学部に開設された。2003年以降は日本語を選択科目に取り入れる大学や日本語教育機関(語学学校)の増加傾向が見られる。

背景

 日本とチリの関係はEPA(経済連携協定)の締結に見られるような経済関係のみならず、日本料理やマンガ、アニメなどに対する人気が高まるにつれて、チリ人の間にも日本に触れる機会が身近に増え、日本文化全般に対する関心が高まっている。

特徴

 一般的に外国語教育はあまり盛んでなく、英語以外の外国語を学習する機会は少ないが、日本語学習者は2016年11月現在、約1,300名おり、年々学習希望者が増加している。
 チリ人にとって、日本語学習のきっかけは、日本文化への関心、母語であるスペイン語と全く異なる言語の学習への挑戦など、非実利的な傾向が一般的であるが、技術・経済的に発達した日本との結びつきから、留学、就職を意識した学習者も増加している。

最新動向

 チリにおける日本語教育は、大学専門課程のサンティアゴ大学、カトリカ大学、一般人向けの中央日本人会、日智文化協会、日本総合学習センターなどで行われている。地方の大学や日本人会等でも行われている。さらには、オリエンタルブーム、日本の伝統文化への関心のみならず、特にマンガ、アニメ、音楽などのポップカルチャーへの人気が高まっており、多くのチリ人がインターネットを通してそれらに関する最新情報を入手している。そのほか、日本のアニメを専門に放映するケーブルテレビ、日本のアニメイベントなどもある。日本語学習に関心を持つ人が増えている中、日本語教師、日本人教師共に不足しており、日本語学習の需要をカバーしきれていない。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。
(注:チリの教育は、下記の通り、初等、中等、高等教育段階の8-4-4制。)

高等教育

 チリでは、高等教育が卒業後の職業と直結して考えられる傾向が強く、大学で外国語を専攻した場合、教員養成、翻訳者養成のコースがほとんどである。4年生まで修了すると学士号、5年生までの全課程を修了すると翻訳家の資格を授与される。

(1)サンティアゴ大学(USACH:Universidad de Santiago de Chile

 スペイン語圏の南米における高等教育機関で唯一、正式専攻課程としての日本語教育が行われている。1993年に選択科目としての日本語講座が設置され、1995年からは、人文学部言語文学学科翻訳課程に5年制の英語・日本語専攻としての日本語講座が開設された。2013年には翻訳課程のカリキュラムが改訂され、1年次に英語、日本語、ポルトガル語を学び、2年次に英語・日本語専攻か英語・ポルトガル語専攻を選択するというカリキュラムになった。翻訳課程であるため、日本語、文法、作文などのほか、翻訳、通訳などの科目も学ぶ。毎年入学希望者が増えており、知名度も上がっている。課外活動として、チリの主要大学に留学中の日本人学生と交流する機会を定期的に設けている。また、毎年日本語専攻の学生たちが自主企画として「日本祭」という文化祭を開催している。
 卒業時の到達レベルは日本語能力試験N3レベルだったが、2009年より能力試験N2合格を目指したプログラムを実施した。新カリキュラムではN2合格レベル到達を卒業条件にし、現在はそれに向けたシラバスを実施している。英語・日本語翻訳家の資格を取得することができる。これまで17期約350名の卒業生を送り出し、約120名が在籍している。文部科学省国費留学生、国際交流基金の大学生研修や日本語成績優秀者研修、また国際青年交流事業などで短期渡日する者が毎年数名程度おり、日本企業の進出が進む中、卒業生で日本関連業種に就職する者も増えてきている。なお、サンティアゴ大学には、日本語課程(専攻)のほかに選択科目としての日本語講座もある。

(2)その他の大学

 選択外国語科目として、次の日本語講座が開設されている。

  • カトリカ大学(Pontificia Universidad Católica de Chile)、私立、サンティアゴ
  • アウストラル大学(Universidad Austral)、国立、バルディビア(南部)、2003年
  • コンセプシオン大学(Universidad de Concepción)、私立、コンセプシオン、2012年
  • タルカ大学(Universidad de Talca)、国立、2016年

その他教育機関

 チリ中央日本人会、第5州バルパライソ日系人協会のほか、日智文化協会(ICCJ:Instituto Cultural Chileno Japones)、日本統合学習センター(CEIJA:Centro de Estudios Integrales de Japon)においてそれぞれ日本語教室が開設されている。2016年現在、大学及び学校教育以外を含めて計約1,300名の学習者がおり、増加傾向にある。また、チリでは毎年「日本語スピーチ大会」が開催されている。(在チリ日本国大使館、日智商工会議所及び国際交流基金が協力。学習時間数により3レベルに分類)。当初は日智文化協会とサンティアゴ大学の2機関の学習者が中心であったが、徐々に他機関からの参加者が増え、地方からの参加者も増加してきた。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 8-4-4(~6)制。
 幼稚園1年間(5歳)、初等教育が8年間(6~13歳)、中等教育が4年間(14~17歳)。高等教育機関は大学(専門により4~6年)、技術専門学校(専門により2~3年)がある。初等教育8年間と中等教育4年間の計12年間が義務教育とされている。

教育行政

 すべて教育省(Ministerio de Educación Pública)の管轄下にある。

言語事情

 主要言語(公用語)はスペイン語。

外国語教育

 公立校では、一般に初等教育7年生より英語が教えられている。就学前教育あるいは小学校1年生から教育を開始する機関もある。以前は7~8年生の2年間、第二外国語としてフランス語が教えられていたが、2002年より選択制となった。私立校では学校により事情は大きく異なる。

外国語の中での日本語の人気

 一般的に英語以外の外国語はあまり重視されておらず、日本語学習者についても、チリは計画的移民がなく日系社会の規模も極めて小さいことから、近隣諸国と比べると少なかった。しかしながら、上記の通り教育機関数や学習者の増加が見られること等などに鑑みれば、日本語の人気・ニーズは上昇傾向にあると考えられる。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 基本的に日本語教育は実施されていない。ただし、一部の初等教育機関においては選択科目として日本語講座が設置されている場合もある。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 サンティアゴ大学では、『みんなの日本語初級Ⅰ、Ⅱ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)及び『まるごと』、『ベーシック漢字ブック』、『Jブリッジ』、副教材、『日本語総まとめ問題集2級 文法編・語彙編・漢字編・読解編』、『日本語総まとめ問題集1級 聴解編・読解編』佐々木仁子ほか(ASK)、『日本語中級J501』土岐哲ほか(スリーエーネットワーク)などを使用。
 アウストラル大学、ラ・セレナ大学、タルカ大学では『みんなの日本語初級Ⅰ』(前出)、コンセプシオン大学では『みんなの日本語初級Ⅰ』(前出)及び『まるごと入門』を使用。 カトリカ大学では、独自の教材を使用している。

その他教育機関

 バルパライソ日系人協会及び中央日本人会では、『みんなの日本語初級Ⅰ、Ⅱ』(前出)及び副教材などを使用。日智文化協会、日本総合学習センター(CEIJA)でも『みんなの日本語』(前出)及び『まるごと』を使用している。

マルチメディア・コンピューター

 サンティアゴ大学では、総合日本語の授業や学生の研究発表等においてほぼ毎時間パワーポイントを使用しており、DVDなどのメディア教材も多用している。教材の配布、課題の提出、学生との連絡には専用のサイトやメーリングリストを活用している。また、インターネットを利用した情報収集の方法を指導しているほか、日本語学習のサイトやスペイン語による日本関係のサイトなどを学生に紹介している。他機関においても、メディア教材やコンピューターが授業に活用されている。

教師

資格要件

初等教育

 例外を除いて、日本語教育は実施されていない。

中等教育

 中等教師資格が必要だが、日本語教師資格はない。実際に日本語を教えている者は、日本留学経験のある他科目の教師である。

高等教育

 特に日本語教師としての資格要件はない。実際に日本語教師になっている者は、学士号を持ち(専門不問)、外国語教育についてある程度の経験を持っている。チリ人が大学の正式な教員となるためには、日本語、言語学関連の修士号以上を取得していなければ難しい。

その他教育機関

 特に日本語教師としての資格要件はない。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 日本語教師常勤ポストは現在のところ、サンティアゴ大学の2つだけである。うちひとつに日本人教師が雇用されている。常設講座のポストでは、半数が日本人であるが、近年日系人を含むチリ人講師が増加傾向にある。一般的に役割分担というようなものはないが、サンティアゴ大学翻訳課程では日本語関係の科目を日本人教師が、翻訳・通訳関係の科目をチリ人教師が中心となって担当している。

教師研修

 チリからは毎年日本で実施される日本語教師研修に参加している。
 また、2015年にペルーで実施された日本語教師大会にチリから日本語教師が参加したほか、2016年にはブラジルで実施された日本語教師大会にも日本語教師が参加した。2016年11月には、日本語教育専門家がチリ訪問の機会を捉え、日本語教育のワークショップが実施された。
 他方、サンティアゴ大学は、2014年より毎年南山大学や日本大学と協力し、「第二外国語としての日本語教育」についてのシンポジウムを開催している。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 2003年5月にチリ日本語教師会が発足したが、現在は活動していない。

最新動向

 日本人のみならず、チリ人教師も増えてきており、日本語教育機関の増加と共に、首都サンティアゴのみならず、地方でも教員が増加している。また、JICA派遣(シニア海外ボランティア)の日本語教師も各地で活躍している。また、サンティアゴ大学出身の日本語教師や日本語教師志望の大学生も増えてきており、教育機関、教師の多様化により、日本語教育が活性化されつつある。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

 なし

国際協力機構(JICA)からの派遣(2016年10月現在)

シニア海外ボランティア

 サンティアゴ大学 1名(2017年3月まで)
 ラ・セレナ大学 1名(2017年3月まで)
 アウストラル大学 1名(2017年9月まで)
 NGOチリ中央日本人会 1名(2017年3月まで)

その他からの派遣

 なし

シラバス・ガイドライン

 いずれの教育段階においても、統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

 いずれの教育段階においても、共通の評価基準や試験はない。
 2011年12月より日本語能力試験が実施されており、現在は7月と12月の年2回行われている。

日本語教育略史

1975年 日智文化協会に日本語講座開設
1993年 サンティアゴ大学人文学部に選択日本語講座開設
1995年 同大学人文学部言語文学学科に翻訳課程英語日本語専攻開設
2002年 アウストラル大学に課外日本語講座開設
2003年 同講座が正式の選択科目になる
国立高校「Instituto Nacional」に課外日本語講座開設(2016年現在は閉鎖)
カトリカ・デル・ノルテ大学に日本語クラブ開設(2016年現在は閉鎖)
チリ中央日本人会に成人対象の日本語講座開設
2004年 小学校2校(エルターボ)に日本語講座開設(2016年現在は閉鎖)
第5州バルパライソ日系協会に日本語講座開設
カトリカ・デル・ノルテ大学に選択日本語講座開設(2016年現在は閉鎖)
2005年 ラ・セレナ大学に選択日本語講座開設
2006年 アコンカグア大学に選択日本語講座開設(2016年現在は閉鎖)
カトリカ大学に選択日本語講座開設
2007年 日本統合学習センター(CEIJA)に日本語講座開設
「日本の心」(Cdj)語学学校開設(2016年現在は閉鎖)
2009年 実行委員会主催による初の全国規模の弁論大会開催
アジアグローバル(日本語、中国語等のアジアの言語・文化を扱う)が初等・中等教育機関と連携し日本語講座を実施(2016年現在は閉鎖)
  「第1回チリ共和国日本語教育セミナー」開催
2011年 チリ大学に選択日本語講座開設(2016年現在は閉鎖)
2012年 コンセプシオン大学に選択日本語講座開設
2013年 チリ大学に選択日本語講座開設(2016年現在は閉鎖)
2016年 タルカ大学に選択日本語講座開設

参考文献一覧

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