中国(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
2,115 18,312 953,283
学習者数 内訳
教育段階 学習者数 割合
初等教育 1,573 0.2%
中等教育 52,382 5.5%
高等教育 625,728 65.6%
その他 教育機関 273,600 28.7%
合計 953,283 100.0%

2015年度日本語教育機関調査結果 学習者数グラフ
2015年度日本語教育機関調査結果の学習者数に関する帯グラフ。初等教育は1,573名で全体の0.2%、中等教育は52,382名で全体の5.5%、高等教育は625,728名で全体の65.6%、学校教育以外は273,600名で全体の28.7%。

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に実施された調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 中国での日本語教育の歴史は、明代に端を発するが、近代以降は清末から民国初期(1900年前後)、さらに1930年代に当時の日本から先進的な技術、思想を学ぶ必要から日本語学習のブームが訪れた。この時期にすでに多くの日本語教材、辞書、研究書が出版されている。
 その後1930年代後半から1940年代は、抗日戦争、国共内戦、新中国成立の時期に当たり、東北地方(旧満州)の一部の地域を除いては、日本語教育は停滞することになる。
 1949年の新中国成立後は、中央の外国語教育重視政策に基づいて1950年代から1960年代前半にかけて外国語専門学校や総合大学に日本語専攻が設置された。また、1950年代中頃には、北京大学東方言語系の陳信徳教授を中心に文法書、教科書が編纂され始め、LT貿易を背景に60年代前半には日漢辞典の編纂、大連日本語専科学校(現在の大連外国語大学)の設立が行われた。こうして徐々に日本語教育が社会に浸透しつつあったが、1966年からの文化大革命により全く途絶えることとなった。
 1972年の日中国交正常化により第1次日本語ブームが訪れ、多くの大学で日本語教育が開始された。1973年から各大学で日本語の教科書や辞書の編纂が始まり、ラジオの日本語講座の放送も始まった。1979年には現在の東北師範大学で日本留学生(学部)のための予備教育が開始された。また、1980年に当時の大平首相の提唱を受ける形で日中両国間政府の合意に基づく「在中国日本語研修センター」(通称「大平学校」)が設立され、1980年から1985年までの5年間に計600名の大学日本語教師の再教育を実施した。
 1980年代になると、まず中等教育、次に高等教育での日本語教育シラバス整備が始められた。また、テレビ日本語講座の放送も始められ、1980年代半ばには第2次日本語ブームとなった。さらに1985年より上記「大平学校」が発展的に解消する形で「北京日本学研究センター」が設立され、日本語教師の再教育と大学院修士課程の学生の教育を平行して実施するようになった。
 1990年代には、各教育段階でのシラバス整備の結果を受けて、それに準拠した教材が次々に出版され、日本語は英語に次ぐ第二の外国語の地位を確立した。
 2000年代に入り初等・中等教育機関では学習者数が一時的に減少したものの、その後は高等教育機関や学校教育以外の機関を筆頭に学習者数の大幅な伸びが見られた。特に高等教育機関では職業大学(短期大学)における日本語学部が増加し、また、第二外国語として日本語を履修する学生も増えている。
 2010年以降、中国教育部が大学教師の再教育を重視し、傘下の出版社がオンライン研修プラットフォームを開設し、学会や大学等日本語教育機関、各出版社が教師研修を主催するなど中国側発の動きが活発化している。2013年には、中国日本語教育研究会主催「教師の専門性の発展を目指す大学日本語中核的教師の研修プロジェクト(5か年計画)」の開催を機に、同研究会の附属組織である「日本語教育専門分会」が設立された。今後は、日中両国の専門家を巻き込みながら、中国における日本語教育研究及び日本語教育支援事業の持続的・計画的な発展に向けて、中核的役割を担うことが期待される。

背景

 国際交流基金の日本語教育機関調査によれば、中国の日本語学習者数は世界でも最大の規模をほこるが、これは初等・中等・高等教育機関及び民間の語学学校等に所属する学習者数であり、これ以外の独学者も含めるとかなりの数に達すると思われる。
 この背景には、「沿革」で記載した長い蓄積に加え、日中間の緊密な経済関係が、日本留学、日系企業への就職等の実利的なニーズを高い水準で維持していること、日本のアニメ・マンガ、ファッション、ポップカルチャー、観光等の文化的側面が、日本への興味・関心を強く喚起していることが挙げられる。

特徴

 中国における日本語教育の特徴は、高等教育段階の学習者数が最多の割合を占めること、中・上級レベルに達する学習者が非常に多いことである。日本語能力試験の基準で言えば、中等教育あるいは大学の第二外国語教育でN4、第一外国語教育でN2、専門教育では在学中にN1レベルに達する。教師の日本語力も全般に高く、大学教師の場合、日本で学位を取得した者も少なくない。また中等教育の教師では訪日経験者は少ないが、日本語で十分に意思疎通できる日本語力を持っている。

最新動向

 2013年7月、新しい教育部高等学校外国語専業教学指導委員会が正式に発足し、2017年を目途に大学外国語専攻のシラバス(教学大綱)を改定するため、準備に取り組んでいる。同委員会の中に設けられた日本語部会は、基礎段階教育(大学日本語専攻1・2年生)と高学年教育(大学日本語専攻3・4年生)のチームに分かれ、調査・分析・草案作成作業に着手し、外国語教育の国家スタンダード制定や教育基本方針の見直しを進めている。
 2016年3月、国際交流基金北京日本文化センターと高等教育出版社の企画による『日本語教育基礎理論と実践』シリーズ叢書全8巻が刊行された。日中の複数の専門家が共同執筆した中国初の日本語教育学に関する体系的書籍として、現場の教師たちに示唆を与え、日本語教育研究を志す若手・中堅研究者に広く活用されることが期待される。

書名 主編 出版時期
日本語学と日本語教育 曹大峰 2014.3
日本語協働学習理論と実践 池田玲子、舘岡洋子 2014.3
日中対照研究と日本語教育 張麟声 2015.3
日本語教育の研究方法と応用 舘岡洋子、于康 2015.3
日本語教授法の理論と実践 林洪 2015.3
異文化理解と日本語教育 趙華敏 2015.6
第二言語習得研究と日本語教育 横山紀子 2015.6
教師・授業・学生と日本語教育 冷麗敏 2015.6

教育段階別の状況

初等教育

 小学校での外国語教育は、2001年秋から正式に導入されたが、全国のほとんどの小学校では英語が導入されている。一方、遼寧省や黒龍江省、その他地域の一部の学校では、実験校として日本語教育が行われているところもある。

中等教育

 日本語を外国語科目として教えている普通校と、日本語の専門教育を実施している外国語学校および職業校に大別できる。前者は東北三省(黒龍江、吉林、遼寧)と内蒙古自治区に集中しており、日本語を第一外国語として教える場合が多かったが、社会全体の英語志向の高まりにより減少傾向にある。しかし、2006年5月、大連市教育局が「2006年秋学期から中学校、高校での日本語クラスの開設規模を拡大する」と表明するなどして、特に中学校では英語に次ぐ第二外国語として、また英語が苦手な生徒が英語の代わりに学習する外国語として、さらには英語も日本語も学ぶ双語学習の外国語として、日本語教育が奨励されている。
 外国語学校での日本語学習者数はほぼ横ばいだが、職業校は統廃合が続く中で新規に日本語教育に取り組む機関も増えている。

高等教育

 学部レベルでは日本語専攻、非専攻第一外国語、非専攻第二外国語に分類される。

日本語専攻

 日本語学科の新設や既存学科の定員増で、学生が急増している。大学入学時に日本語をゼロから始めて、3年次に日本語能力試験N1に達する者が多い。全体的に研究志向よりも実利志向(ビジネス、観光等)が高く、卒業後は日系企業に就職する学生も多い。また近年は日本語力だけでは就職が難しくなってきており、英語、経営、コンピューター等を併せて学ぶ学生が増えている。2つの学位を取得できるダブルメジャー制の導入や、日本の大学と提携し、日中双方の学位を取得できる2+2制度等を打ち出す機関も増えてきている。また、日本語専攻を卒業して日本の大学の修士課程に進学し、上記のような語学以外の専門を専攻する学生も少なくない。

非専攻第一外国語

 原則として中等教育で学習した外国語を継続して履修する必修科目で、シラバス(教学大綱)で定められた4級試験の合格が学位取得の条件となっている。第一外国語の履修者は中等教育での実施状況を反映しており、英語が大多数を占め、日本語、ロシア語の順になっているが、中等教育の生徒総数の減少で日本語を第一外国語とする学生も年々少なくなっている。到達目標は読解・文法が日本語能力試験N2程度で、聴解・作文は同N3程度である。

非専攻第二外国語

 上述の第一外国語の単位取得後3年生から履修できることになっており、現在のところ第一外国語での英語履修者を中心に日本語を選択する者が最も多い。

大学院

 社会全体の高学歴志向により、大学院進学希望者が急増しているため、ここ数年大学院の設置が相次いでいる。日本語・日本文学研究科だけでなく、外国語・外国文学研究科で日本語関連の研究をすることができる機関も増加している。日本語・日本文学関連の研究ができる大学は修士課程では90機関、博士課程は20機関以上ある。
 なお、日本語非専攻の修士・博士課程でも必修の第一・第二外国語科目として日本語を開設するところも多い。

その他教育機関

 各種の一般成人向けの日本語クラスによる日本語学習者の数は相当数にのぼる。大学が運営する出国者向けの日本語クラスも盛況である。また、仕事上での必要度に関わらず、昇進や各種資格取得試験のために日本語を学習する者も多い。さらに最近は、大学に進学できなかった高校卒業生向けに、日本国内の提携先の日本語学校を経由して日本の大学等への進学を謳って学生募集を行う民間の日本語学校が増えている。日系企業や日本・日本人との取引が多い地元企業の中には、従業員向けに企業内日本語教育を行っているところもある。さらには、教科書、DVD等、独習用教材も書店に多く並び、そうした教材によって自学自習している学習者層も相当数存在するものと思われるが、具体的な数は不明である。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-3-3-4制。
 初等教育は小学校が6年間。中等教育は中学校が3年間、高校が3年間。高等教育として、大学(総合大学)と学院(単科大学)は4年間、短期大学は2~3年間。
 初等教育、中等教育(中学校)までの9年間が義務教育である。

教育行政

 初等、中等、高等教育機関のすべてが教育部及び各省、市、自治区の教育局の管轄下にある。

言語事情

 公用語は中国語。そのほか、朝鮮族やウイグル族等の少数民族の間では民族言語が使用されている。

外国語教育

《初等教育》
 小学校3年より、第一外国語(必修)として英語、日本語(一部の地域のみ)。
《中等教育》
 第一外国語(必修):英語、日本語とロシア語(一部の地域のみ)。
 第二外国語(選択):日本語の他に、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ロシア語等がある。

外国語教育における日本語の人気

 教育段階(初等、中等、高等教育)に関わらず、日本語学習者数は他の外国語(英語を除く)より多い。ただし近年、国際言語としての英語志向の高まりにより、中等教育では第一外国語としての日本語学習者は減少傾向にある。

大学入試での日本語の扱い

 大学の一般入試では日本語も英語と同様、外国語科目の入学試験として認められている。

学習環境

教材

初等教育

 遼寧省では遼寧省教育学院制作の小学生用教科書『小学日語教材』(遼寧少年児童出版社 2002-2003)全4冊を使用している機関が多い。黒龍江省では自作教材を用いている。

中等教育

 中学校段階では、新シラバス(課程標準)に準拠した新教科書『義務教育課程標準実験教科書日語』(人民教育出版社)が広く使われている。このシリーズは各学年上下2分冊で、それぞれ『教師用指導書』(人民教育出版社)が発行されている。また教科書の内容に沿った練習帳も順次発行されている。
 高校段階では、『全日制普通高級中学教科書日語』全3冊(人民教育出版社1997-1999)が広く使われていたが、2007年から新シリーズ『普通高中課程標準実験教科書日語』全10冊(人民教育出版社)が順次発行され、徐々に採用されている。また、日本語を専門科目として教えている外国語学校や職業校では、高等教育あるいは一般成人向けの教材や日本で出版されている教材を併用するところが多い。なお、2017年を目途に高校のシラバス(課程標準)が改定され、人民教育出版社だけではなく、他の出版社も検定教材出版に参入する見込み。
 中等教育レベルの第二外国語では、これまで第一外国語用の教科書や自作教材を使用しているところが多かったが、2007年から大連教育学院と国際文化フォーラムの協力により第二外国語用の教科書『好朋友』全5冊(外語教学与研究出版社)が順次出版され、大連市内での第二外国語教育では、既にこの教科書が使用されている。国際交流基金北京日本文化センターでも、既に第二外国語としての日本語科目を開設している現場の適切な教材が不足しているとの声に応えるため、2013年4月に『エリンが挑戦!にほんごできます。』の中国版を、人民教育出版社より出版した。これは、元々3冊あった日本版『エリン』の内容を1冊に纏め、「練習」や「活動」を加える等、中国の教室で学習者が使えるように改定したものである。

高等教育

 日本語専攻、非専攻第一外国語、非専攻第二外国語ともそれぞれのシラバスに準拠した教材が作成されている。

日本語専攻

 いくつかの有力大学がシラバス準拠の教材をそれぞれ作成しており、その他の大学はそれを利用することが多い。広く使われている教材としては、『新編日語』(上海外国語大学)、『新編基礎日語』(北京大学)等がある。東京外国語大学の初級用教材(旧版)に中国語の説明をつけたもの(『新編日語』吉林教育出版社、『新日本語』山西教育出版社)も広く使われている。また、1998年に『新日本語の基礎』が、2002年には『みんなの日本語』が、中国国内でも正式に出版された(外語教学与研究出版社)ことから、初級用教材として採用するところもある。
 中・上級は、旧版の『日語』5-8(上海外国語大学)が広く使用されている他、日本で出版された教材や自主制作教材を使用することが多かったが、高学年用シラバスの制定を受け、『総合日語』(北京大学出版社)等これに準拠した主教材が出版された。

非専攻第一外国語

 『新大学日語』(高等教育出版社)シリーズが広く採用されている。

非専攻第二外国語

 シラバス準拠の教材『大学日語(第二外語)』(高等教育)出版社等も出版されているが、一般成人向けの『中日交流標準日本語 初級』『中日交流標準日本語 中級』各上下2冊や『中日交流標準日本語 会話編』(いずれも人民教育出版社)を使用するところが多い。

その他教育機関

 主教材としては『中日交流標準日本語』(前出)を使用することが多い。
 日本人教師のいる学校では『みんなの日本語』の中国版である『大家的日語』(外語教学与研究出版社)が使われることが多い。また、外語教学与研究出版社や大連理工大学出版社等を中心に、日本で出版されている会話教材、読解教材、日本語能力試験対策問題集等の中国版が、多く出版されている。

マルチメディア・コンピューター

 近年マルチメディア教材の使用が推奨されており、特に都市部や新設の機関では設備の整っているところが増えてきた。しかし地方ではまだまだ少ない。また機器はあっても学習目的に合わせて適切に使用されているか疑問が残る場合が多い。英語教育ではマルチメディア教材がかなり導入されていることから、日本語教育関係者も関心は高く、各地でCAI教材の開発が始まっている。
 大学用の教科書として新しく出版された教材の中には、新しい試みもいくつか見られる。たとえば、上述の『新大学日語』(前出)の「聴解・会話」付属のCDにはMP3が採用されており、同じく上述の『初級総合教程』には、自習用・教授用、さらにはオンラインでの学習にも利用可能なCD-ROMが付いている。

教師

資格要件

初等教育

 現在、中国では初等教育の教師についての全国的な統一資格はなく、各地域で学歴等を考慮した独自の規定を設けている。これまでは一般的に小学校教師は中等師範学校で養成されてきたが、最近では大学学部卒の学歴が要求されいる。なお、今後全国的な資格制度を設けることが発表されている。

中等教育

 現在、中国では中等教育の教師についての全国的な統一資格はなく、各地域で学歴等を考慮した独自の規定を設けている。これまでは一般的に中等教育機関の教師は師範専科学校(2~3年間)または師範大学・師範学院で養成されてきたが、最近では大学学部卒の学歴が要求されている。なお、今後全国的な資格制度を設けることが発表されている。

高等教育

 都市部においては修士修了以上の学歴が必要とされている。また、日本で修士や博士の学位を取得して帰国した教師が定着しはじめている。しかし日本語教育を専門に学んだ日本語教師は少なく、教師研修が大きな課題となっている。
 師範系大学の日本語学科に教師養成コースを設けているところがあるが、実際に教師になる者はごくわずかである。

その他教育機関

 特になし。

日本語教師養成機関(プログラム)

 多くの師範大学に日本語学科が設けられているが、教師養成コースと一般コースを設けている場合が多く、教師養成コース修了者でも実際に教師になるものはごくわずかだという。大学教師になるためには修士以上の学歴が求められること、中等教育機関の教師は日本語教師の採用自体が少ないのに加え、社会的地位も給与も高くないことが主な原因のようである。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 日本人教師の雇用については公的には特に資格上の制限はないが、最近は420時間以上の養成講座受講歴、日本語教育能力検定試験合格、日本での教授歴、日本語教育関係の学位、特に修士以上の学歴等を要求する機関が増えている。
 現在、中国で雇用されている日本人教師は、日本の機関(JICA、日中技能者交流センター、中国の機関と姉妹関係にある学校等)を通して派遣されている者と、個人契約の者がいる。定年を迎える団塊の世代が第二の人生として中国で日本語教育に携わるケースも増えてきたが、最近は年齢制限を設ける機関や省もあると聞く。日本の提携校から新卒者を採用しているところも多い。
 一般的には日本人教師は数年で交替するため、各機関のコースデザイン等に関わることは非常に少なく、会話や作文等のアウトプット型授業を担当することが多い。

教師研修

 初等・中等教育の教師については、各地方(省または市レベル)の教育学院や教師進修学校が責任を持つ。また、東北地方等の日本語教育が盛んな地域では、教育学院の日本語教研員(指導主事)が現職教師向けの研修会を実施している。
 高等教育については、修士・博士の学位を持たない現職教師に在職しながら学位取得を奨励している。

現職教師研修プログラム(一覧)

1.国際交流基金と中国教育部との共同事業

 北京日本学研究センター修士課程、言語・日本語教育コース
 2001年9月から開講された「在職日本語教師修士課程」は2004年秋入学の第4期生をもって終了とし、日本語修士の学位は修士課程の日本語・日本語教育コースにおいて取得するものとされ、2016年現在まで続いている。

2.国際交流基金北京日本文化センターによる全国大学日本語教師向け研修会

 国際交流基金北京日本文化センターが高等教育出版社との共催で、2006年から年1回、大学日本語教師を対象とする「全国大学日本語教師研修会」を実施している。本研修会は毎回4日間程度で、全国各地から約150名の日本語教師が参加する。

3.国際交流基金北京日本文化センターによる中等教育日本語教師向け研修会

 国際交流基金北京日本文化センターが人民教育出版社課程教材研究所との共催で、2006年から年2回全国の中学・高校日本語教師を対象とした日本語教師研修会を実施している。講師は国際交流基金派遣の日本語専門家らが担当。また、人民教育出版社課程教材研究所との共催以外に、各地の教育学院や中等教育機関との共催でも研修会を実施している。

4.国際交流基金北京日本文化センターによる地域巡回日本語教師研修会

 2011年から、国際交流基金派遣の日本語専門家が出張し、各地の大学等日本語教育機関と共催で地域研修会を開催している。この研修は、研修を行いたい機関から申請を受付け、研修テーマやスケジュールを申請機関の希望に合わせてデザインできるのが特徴である。2015年度は、天津、蘭州、福建の3地域で計37機関134名の教師が参加した。

5.国際交流基金北京日本文化センターによる日本語教育学実践研修

 2009年から、国際交流基金北京日本文化センターは北京日本学研究センターとの共催で、北京にある大学の若手日本語教師を対象とした日本語教育研究講座を実施している。本研修は、日本語教育に関する講義及びそれを受けての実験授業と発表から構成され、一貫して現場に根差した研修を目指してきた。2013年度からは、全国に募集枠を拡大。1週間の夏季集中研修で各自が研究テーマを設定し、事後、現場で実践した結果をレポートにまとめ、提出した者を翌年再度北京に招へいして実践研究発表会を行う形式が定着している。国際交流基金派遣の日本語専門家と北京日本学研究センターの教授らが講師を担当。

6.オンライン大学教師研修

 中国教育部が設置しているオンライン教育プラットフォームを利用した教師研修で、高等教育出版社が教育部からの依頼を受け、全国の大学教師の教授レベル向上のために実施している。国際交流基金北京日本文化センターでは高等教育出版社からの依頼により、日本語教育分野の講座を共催で企画準備し、2014年6月より開講した。全国各地に55の研修センターがあり、600科目の教師教育講座をウェブサイトから登録して視聴できるシステム。修了後、教育部発行の修了証書が授与される。

7.各地の教育学院・教師進修学校の場合

 各地の教育学院の日本語教研員(指導主事)が、地域の小学校・中学校・高校の日本語教師向けに中央の方針を伝達する他、教授法の授業や研究授業等を行う。最近は模擬授業、論文発表等も盛んに行われている。また地域によっては教師向けの長期コースを開設するところもある。

8.訪日研修

 国際交流基金主催で、中等・高等教育機関の教師対象の訪日研修を実施している。「中国大学日本語教師研修」(28名)、「中国中等教育日本語教師研修」(20名)は国際交流基金日本語国際センターで毎年約2か月間実施されている。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 正規の学校教育については、教育部に直結した形で教育段階別に関係者のネットワークがある。中等教育では、中央に中国教育学会外国語教育専門委員会の日本語部門があり、各地の教育委員会や教育学院・教師進修学校の日本語教研員(指導主事)を通じて現場の教師に繋がっている。
 高等教育では、教育部に日本語専攻・非専攻別の外国語教育指導委員会日本語部門があり、シラバス制定、教材制作、試験問題作成等に責任を持っている。さらに、それぞれ「中国日語教学研究会」、「大学日語教学研究会」を組織して、研究活動や学会活動を行っている。
 中国では有志による教師会や研究会の正式な設立は難しい状況だが、地域の教師による情報交換や勉強会を目的としたネットワーク活動が盛んになってきており、北京、上海、南京、天津、瀋陽、大連、長春、西安、無錫、合肥、西寧等には日本人教師を中心とした教師会がある。

最新動向

  • 国際交流基金北京日本文化センターが運営する日本語専門家微博(ウェイボー)のフォロワー数が2,010名となった(2016年9月27日現在)。
  • 各地の教師会は、定例会の実施やメーリングリストやインターネットを通じて、活動を続けている。長春、大連、瀋陽、北京の日本語教師会のウェブサイトについては、2013年7月より国際交流基金北京日本文化センターのウェブサイトのトップページとリンクを開始した。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2016年10月現在)

日本語上級専門家

 国際交流基金北京日本文化センター 1名

日本語専門家

 国際交流基金北京日本文化センター 2名

国際協力機構(JICA)からの派遣(2016年10月現在)

青年海外協力隊

  • 湖北省黄岡市外国語学校 1名
  • 遼寧省瀋陽市朝鮮族第二中学 1名
  • 遼寧省鉄嶺市朝鮮族高級中学 1名
  • 内蒙古自治区通遼市カールチン区第三高校 1名
  • 武漢市財貿学校 1名

シニア海外ボランティア

  • 人民教育出版社 1名

その他からの派遣

  • (財)日中技能者交流センター:
    中国派遣日本語教師登録 各種教育機関へ約70名派遣
  • 都道府県教育委員会派遣:高等教育機関へ若干名派遣
  • 民間日本語学校(日本語教師養成機関):各教育段階へ派遣

シラバス・ガイドライン

初等教育

 初等教育では、現在、日本語のシラバスがないため、教科書を作成する際は英語のシラバスを参照している。

中等教育

 中等教育では、1996年までに中学・高校のシラバス(教学大綱)が完成し、それに準拠した教科書が広く用いられていたが、2003年までに、中学・高校段階ともに新シラバス(課程標準)が制定された。また、中等教育のシラバスを補完する大学入学試験のためのシラバスがある。なお、2017年を目途に高校のシラバスが改定される見込み。

高等教育

 高等教育のシラバス(教学大綱)は、これまで日本語専攻の基礎段階(1,2年生用)と、非専攻の第一外国語、第二外国語のものがあり、それに準拠した教科書がそれぞれ出版されていた。2000年に日本語専攻高学年(3,4年生用)用のシラバスが完成し、非専攻第一外国語のシラバスも改訂された。なお、2017年を目途に専攻のシラバスが改定される見込み。
 また、第一外国語履修者に義務づけられている到達試験(大学四級考試)のためのシラバスや、大学院入試のためのシラバスもある。

学校教育以外

 日本語能力試験以外に、中国国内で実施されている各種資格試験のためのシラバスがそれぞれある。

評価・試験

 日本語能力試験が日本語学習者全般を対象に実施されており、2015年度は約18.2万人が受験した。J.TEST実用日本語検定は中国各地で実施されているが、日本留学試験は中国では行われていない。日本側が中国国内で主催している主な資格試験は以下のとおりである。

1.日本語能力試験(JLPT
  1. (1)主催:国際交流基金および中国教育部海外試験センター
  2. (2)実施回数:年2回(7月、12月)
  3. (3)会場:41都市74会場(2015年度実施 ※香港・マカオを除く)
  4. (4)受験料:450元(N1~N2)、350元(N3~N5)
  5. (5)関連ウェブサイト:http://www.jpfbj.cn/http://jlpt.etest.net.cn/
2.BJTビジネス日本語能力テスト
  1. (1)主催:公益財団法人日本漢字能力検定協会(2008年度まで日本貿易振興機構が主催)および中国教育部海外試験センター
  2. (2)実施回数:年2回(6月、11月)
  3. (3)会場:10都市12会場
  4. (4)受験料:630元
  5. (5)関連ウェブサイト:http://www.businessjapanese.org/
3.J.TEST実用日本語検定
  1. (1)主催:J.TEST中国事務局
  2. (2)実施回数:年6回
  3. (3)会場:29都市32会場
  4. (4)受験料:290元
  5. (5)関連ウェブサイト:http://www.j-test.com/

評価・試験の種類

 中国独自のものは、次のとおり。

普通高等学校招生全国統一考試(高考)

 大学入学希望者対象。中等教育での日本語履修者を対象としている。

大学専攻日語四級考試、八級考試

 大学の日本語専攻学科の学生対象。四級試験は大学2年次修了時に全国で数千人が受験。八級試験は大学4年次修了前に受験。
 四級、八級試験とも、毎年6月に実施されている。

大学日語四級考試、六級考試

 大学非専攻外国語(別称:公共日本語)履修者対象。元来、中等教育と大学での日本語履修者を対象とした大学内の試験だが、社会人も受験可。四級試験は毎年、1万人以上が受験。

碩士学位研究生入学公共科目全国統一考試

 大学院(修士課程)入学希望者対象。

全国外語水平考試(WSK)日本語水平考試(NNS

 非外国語専門家対象。大学日本語専攻2年次修了程度。

高等教育自学考試

 大学卒業と同等の学歴取得希望者対象。

全国職称日語等級考試

 非日本語専門家のための昇進試験。

全国翻訳専業資格(水平)考試

 国家人事部が2004年から実施している通訳のための資格試験。中国沿岸部を中心に全国で実施。

日本語教育略史

1949年 教育部が「外国語教育7ヶ年計画」を制定(→日本語にかかわる内容)
1959年 「高等教育における外国語学科の設置について」の規定で、日本語も第二外国語として設置が認められる
1960年頃 外国語専門学校や総合大学に日本語専攻が設置
1964年 「外国語教育7ヶ年計画綱要」策定 普通中学の外国語教育が強化 高等教育機関で設置された外国語学科の中に日本語も指定
1966年 文化大革命以後、日本語教育及び他の外国語教育が停滞
1972年 日中国交正常化以後、中学、高校で日本語教育が開始
1978年 日本語が大学の入試試験科目となる
1979年代前半 東北部を中心に日本語教育実施校が急増
1979年 日中政府の共同事業として北京日本語研究センター(通称大平学校)が設立 翌年には日本語教育特別事業計画(5ヵ年計画)が実施される
1980年 北京語言学院(現、北京語言大学)で「全国日本語教師養成班」が成立
中国日語教学研究会(日本語名称=中国日本語教育研究会)が成立
1982年  全国中学日語教学座談会」開催
全国日語教学綱要』制定
1982-1986年 人民教育出版社が初級中学用(6冊)、高級中学用(3冊)の日本語教科書を出版
1985年 大平学校が中国国家教育委員会と国際交流基金が共同運営する、日本学研究センター(現北京日本学研究センター)として北京外国語学院(現北京外国語大学)に再編成され、第1次5ヵ年計画が実施される
1986年 全日制中学日語教学大綱』制定
1988年 九年生義務教育全日制初級中学日語教学大綱(検定稿)』制定
人民教育出版社が『中日交流標準日本語初級』を出版
1989-1994年 大連市教育学院が『大連市小学使用教材 日語』(全4冊)を編集・出版
1990年 全日制中学日語教学大綱(修正本)』発行
1990年 教育部、『大学日本語専攻基礎段階教育大綱』を制定
1992年 九年生義務教育全日制初級中学日語教学大綱(試用)』制定
1992-1995年 人民教育出版社『九年義務教育三年制初級中学教科書 日語』(全3冊)を出版
1993年 中国国内で日本語能力試験の実施が始まる
1996年 『全日制普通高級中学日語教学大綱(供試験用)』制定
「第1回中国中高校日本語教師研修会」(財団法人国際文化フォーラム他主催、後に国際交流基金も共催)が行われる。東北部の三省と内蒙古自治区の各地で、2002年まで毎年開催。合計約550名の日本語教師が参加。
1996-1998年 人民教育出版社『全日制普通高級中学教科書(試験本)日語』(全3冊)を出版
1999年 国際交流基金北京事務所に日本語教育アドバイザー派遣開始
2000年 『大学日本語専攻高学年段階教育大綱』を発表
2001年 教育部が新学習指導要領『全日制義務教育日語課程標準』を発表
『大学日本語専攻基礎段階教育大綱(修訂本)』を発表
遼寧教育学院『小学日語教材試用本』を出版
国際交流基金青年日本語教師の派遣開始
北京日本学研究センターに、在職日本語教師修士課程設置
2002年 高等教育出版社、選択第二外国語用・一般成人用教科書「初級総合教程」「初級聴説教程」を出版
天津市で、「東アジア日本語教育国際シンポジウム」(主催:中国日語教学研究会)が開催される
中国教育学会外国語教学専門委員会日本語組が、吉林省長春市で「中高校日本語教育論文発表会」を開催
2003年 日本語専攻の大学2年生、4年生を対象とする「大学専攻日語四級考試」「大学専攻日語八級考試」試行試験を実施
教育部が高校用学習指導要領『普通高中日語課程標準(実験稿)』を制定
人民教育出版社、高校用教科書『全日制普通高級中学教科書(必修)日語』(全3冊)を出版
義務教育課程標準実験教科書日語』(人民教育出版社)、中学1年生用より順次使用開始される
吉林省長春市で「全国中学校日本語教師研修会」(国際交流基金・課程教材研究所日語課程教材研究開発センター共催)が行われる
小学校用教科書『小学日語教材』(遼寧少年児童出版社)(本冊全4冊)が完成
日本語非専攻大学生用教科書『新大学日語』(高等教育出版社日本語・シリーズ全10冊)が完成
国際交流基金北京日本文化センターが日本語教育用ウェブサイト「215教師」を開設
河南師範大学(河南省新郷市)において「第2回大学日本語教育国際シンポジウム」(主催:大学日語教学研究会)が行われる
2004年 遼寧省瀋陽市で「第1回小学日語教師研修会」(遼寧省基礎教育研究研修センター・国際文化フォーラム共催)が行われる(2005年に第2回、2006年に第3回)
遼寧省大連市で「全国中学日本語教師研修会」(国際交流基金北京日本文化センター・課程教材研究所日語課程教材研究開発センター共催)が行われる
日本語能力試験の申込者数が10万人を突破
2005年 北京市で「全国中学日本語教師研修会」(国際交流基金北京日本文化センター・課程教材研究所日語課程教材研究開発センター共催)が行われる
国際交流基金がジュニア専門家を国際交流基金北京日本文化センターに派遣
2006年 「第1回大学日本語教師研修会」(国際交流基金北京日本文化センター・教育部高等教育出版社共催)が行われる
「全国中学日本語教師研修会」(国際交流基金北京日本文化センター・課程教材研究所日語課程教材研究開発センター共催)が行われる
2007年 「全国高校日本語教師研修会」(国際交流基金北京日本文化センター・課程教材研究所日語課程教材研究開発センター共催)が年に2回になる
2009年 日本語能力試験の実施回数が年に2回になる(7月、12月)「第1回日本語教育研究講座」(国際交流基金北京日本文化センター主催)が行われる
2010年 新しい「日本語能力試験」開始
「第2回日本語教育研究講座」が国際交流基金北京日本文化センターと北京日本学研究センターとの共催で行われる
2011年 天津市で「日本語教育学会世界大会」(於天津外国語大学)が開催された
国際交流基金北京日本文化センター派遣専門家が3名体制となる
2012年 国際交流基金北京日本文化センター主催「第1回地域日本語教師ネットワーク会議」が開催される
国際交流基金北京日本文化センター制作『初級日語課堂活動 精選100例』出版
2013年 国際交流基金北京日本文化センター制作「中国における教師研修の記録~2012」刊行
国際交流基金北京日本文化センター制作中国版エリン『艾琳学日语』出版
中国日本語教育研究会日本語教育専門分会発足
「2013年日本語教育学実践研修」が国際交流基金北京日本文化センターと北京日本学研究センターとの共催で行われる
中国教育部全国大学教師オンライン研修センター主催「2013年大学日本語教師オンライン研修‐集中研修‐」に国際交流基金北京日本文化センター派遣専門家が出講
2014年 国際交流基金北京日本文化センター制作『日本語教育基礎理論と実践』シリーズ叢書‐‐『日本語学と日本語教育』及び『協働学習理論と実践』出版
国際交流基金北京日本文化センター制作『2013年日本語教育学実践研修‐成長し続ける教師たち‐』刊行
シンポジウム「グローバル人材育成と多様な外国語教育-日本語教育から可能性を探る-」が国際交流基金北京日本文化センターと(公)国際文化フォーラムとの共催で行われる
中国教育部全国大学教師オンライン研修センター主催「2013年大学日本語教師オンライン研修‐オンライン研修‐」(国際交流基金北京日本文化センター派遣専門家出講)全国ネット放送開始
2015年 さくらネットワークメンバーが拡充され、中国のメンバーが計28機関・団体となる
2016年 国際交流基金北京日本文化センターと高等教育出版社の企画による『日本語教育基礎理論と実践』シリーズ叢書全8巻刊行
国際交流基金北京日本文化センター、北京日本学研究センター、高等教育出版社の3社共催による「日本語教育学の理論と実践をつなぐ」国際シンポジウムが開催される

参考文献一覧

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