チェコ(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
17 53 1,175
学習者数 内訳
教育段階 学習者数 割合
初等教育 47 4.0%
中等教育 54 4.6%
高等教育 720 61.3%
その他 教育機関 354 30.1%
合計 1,175 100.0%

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1947年に、プラハにあるカレル大学に日本研究学科が創設され、チェコスロバキア(当時)における日本語教育が本格的に始まった。
 1993年にはオロモウツにあるパラツキー大学にも日本学科が設置された。また、1990年代以降、チェコ第二の都市ブルノにあるマサリク大学、ピルゼンの西ボヘミア大学、オストラヴァのオストラヴァ大学で、選択科目として日本語のコース(エキゾチック言語コースの一つとして)が開設された。中等教育機関では、1991年にプラハにあるギムナジウムにおいて初めて外国語教育に日本語が取り入れられた。また、初等教育では、2006年からコリーン市の学校でクラブ活動の一環として日本語教育が始められた。ボローニャ宣言(1999年)以降の大学の制度改革により、日本語・日本研究の主専攻があるカレル大学、パラツキー大学では3年で学士号取得、さらに2年で修士号取得という新システムに変更された。現在は、新カリキュラムでの授業が行われている。2008年10月にはブルノのマサリク大学に日本研究学科が設立され、71名の新入生が入学した。
 学校教育以外では、プラハ市立言語学校(当時はプラハ国立言語学校)が1952年から、またチェコ・日本友好協会でも1998年から日本語のコースを開設している。現在は、私立の語学学校等でも日本語の授業が行われている。また、2007年秋に日本センター・ブルノがオープンし、大学生や一般成人向けの日本語授業がスタートした。2008年度よりプラハ市立言語学校が国家試験実施校となり、2009年度からはチェコ国内で唯一CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)基準の試験が実施されている。

背景

 1989年のビロード革命、1993年のチェコの分離・独立以降、日本・チェコの両国は友好な関係を築いている。また、近年チェコの経済発展はめざましいものがあり、2015年時点で、175社の日本企業がチェコに進出している。なかでも製造業の比率が高く、習得した日本語をビジネスの場面で生かしている者も多い。さらに武道、邦楽等伝統的な文化や、マンガ・アニメ等日本のポップカルチャーの人気が高いこと、パントマイム等の現代芸術が紹介されたことも日本語教育の普及に良い影響を与えている。

特徴

 高等教育機関での日本語教育が従来盛んであったが、中等教育機関、あるいは学校教育以外の機関での日本語学習者も増えつつある。
 学習動機は、以前は日本の伝統文化への興味が主であったが、日本のビジネス、経済に対する関心及びアニメ等のポップカルチャーの影響から日本語学習を始める人も増えてきている。また、自らの母語とは大きく異なる「めずらしい言語」「おもしろい言葉」として日本語を学習しようとする人やシニア世代の間からも、生涯学習の一環として日本語を学習しようとする動きが現れてきた。さらに、日本人とチェコ人夫婦の間に生まれ、継承語として日本語を学習する子供も存在する。

最新動向

 特になし。

教育段階別の状況

初等教育

 トヨタ・プジョー・シトロエン・オートモビル(TPCA)社の工場があるコリーン市において、同社の協力を得て2006年より小中学校3校でクラブ活動の一環として日本語教育が行われていたが、2010年に同社による支援は終了した。

中等教育

 ギムナジウム等の中等教育機関で外国語教育に日本語を取り入れるところが出てきている。現在、プラハ市内を中心に数校のギムナジウムにおいて、選択科目として日本語クラスが設けられている。日本語クラス開設の可否は学校長の裁量により決定される。プラハ市のサーザフスカー高校では、選択クラスとして45分の授業が週に3コマ実施されており、CEFR:Learning, teaching, assessmentのB1レベルが到達目標として掲げられている。またリトミシュル市は日本との文化交流に熱心で、市内の高校でも選択科目として週1回の日本語のクラスがあり、日本の高校への短期留学も行われている。

高等教育

 カレル大学、マサリク大学には日本研究、パラツキー大学には日本語専攻の学科がある。これらの学科では毎年数名が日本へ留学し、卒業後は通訳者・翻訳者として活動する者、教師・研究者となる者もいる。最近では日本企業の進出に伴い、日本及び日系企業への就職を希望する者、またそれらの企業からの求人も多くなっている。このほかには、オストラヴァ大学、チェコ工科大学、ニューヨーク大学プラハ校でも、選択科目として日本語の授業が開講されている。また、地方の観光関係の高等専門学校においても、日本人ビジネスマンとの関わりを想定して日本や日本語に関する知識へのニーズが高まっている。

その他教育機関

 プラハ市立言語学校は主に成人の学習者を対象としている。一方、同じくプラハにあるチェコ・日本友好協会の日本語講座には、成人のほか高校生の学習者もいて、2006年から子供クラスが開講されているほか、2011年からは、日本文化理解と簡単な日本語表現の習得を目指したシニアクラスが開設された。日本センター・ブルノでも、10代から60代までの幅広い年齢層の学習者が日本語学習に取り組んでいる。
 在チェコの日本企業、また日本企業と取引のあるチェコの企業の中には、ビジネスのための日本語クラスも開講しているところもある。
 また、最近の動向としては、プラハ市内および日本センター・ブルノでは、日本人とチェコ人夫婦の間に生まれた子どもたちを対象に、継承語としての日本語クラスが開講されており、年齢や時間に応じてクラス分けされ、文化理解も含めた日本語が学ばれている。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 9-3制。
 初等教育は通常9年間(6~15歳)、中等教育は3~4年間(15~19歳)でギムナジウム、専門学校等で行われる。少数であるが成績優秀者は、5年で初等教育機関から中等教育機関へ移り、中等教育を8年間受ける者もいる。6歳からの9年間が義務教育。
 高等教育機関は主に大学で、専門によって3年から5年の教育を受ける。ボローニャ宣言を受けて、新たに学士制度が設けられ、従来の5年間で修士号取得のシステムから、学士課程(3年)と修士課程(2年)に分けるシステムへと変更している学科が多い。

教育行政

 初等、中等、高等教育機関のほとんどが教育省の管轄下にある。

言語事情

 主要言語、公用語ともチェコ語。

外国語教育

 通常、初等教育課程第4学年で外国語教育が開始(必修)。語学優秀者のコースでは第3学年から開始。
 主に英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語からの選択。学校によってはイタリア語、スペイン語等の言語を選ぶこともできる。

外国語の中での日本語の人気

 カレル大学において、欧米系以外の言語として学習者が多いのは、1位アラビア語、2位日本語の順で、プラハ市立言語学校においては、1位アラビア語、2位中国語、3位日本語の順になっている。日本語学習の動機は、大学生の場合は主に学問的な興味からであり、そのほかビジネスのために必要であること、高校生や大学生等の若い世代では、アニメ等の趣味が挙げられている。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。
 ただし、カレル大学では、日本研究科の入学試験に日本語の表記(ひらがな・カタカナ)および日本に関する知識を問う試験が含まれている。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 『みんなの日本語 初級』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)、『初級日本語 げんき』坂野永理ほか(ジャパンタイムズ)のほか、チェコ語で書かれた教科書『初級日本語Japonstina』(LEDA)が使用されている。

高等教育

 『みんなの日本語 初級』(前出)、『中級へ行こう』『中級を学ぼう』平井悦子ほか(スリーエーネットワーク)、『文化中級日本語』文化外国語専門学校(凡人社)、『中級の日本語』三浦昭ほか(ジャパンタイムズ)等のほか、大学で独自に編纂した初級教科書を使用しているところもある。

その他教育機関

 チェコ日本友好協会から2007年に出版された『絵でおぼえるひらがな』、同じく2010年に出版された『絵でおぼえるカタカナ』、『絵でおぼえる漢字』(2014年出版)、『Situational Functional Japanese』筑波ランゲージグループ(凡人社)、『みんなの日本語 初級』(前出)、『初級日本語 げんき』(前出)、『Japanese for Busy People』国際日本語普及協会(講談社USA)、『会話の授業を楽しくするコミュニケーションのためのクラス活動40』安部達雄ほか(スリーエーネットワーク)、『毎日の聞き取り』宮城幸枝ほか(凡人社)等のほか、言語学校で独自に編纂された教科書も使用されている。また、一部の機関で『まるごと』が使われ始めた。

マルチメディア・コンピューター

 カレル大学では学生の成績管理はコンピューターで一括管理されており、カリキュラム情報等の提供にもインターネットが利用されている。学内ネットワークが完備されており、講師から個々の学生への連絡、教材の配布、課題の提出等にもこれらが活用されている。
 各教室にはプロジェクターが設置されており、近年ではスカイプを使った国外との交流授業や、パワーポイントを使った発表等も行われるようになってきた。

教師

資格要件

初等教育

 教育機関によって様々である。

中等教育

 教育機関によって様々である。

高等教育

 修士号以上を持っていることが望ましい。

その他教育機関

 教育機関によって様々であるが、チェコの大学を卒業していることを条件としているところもある。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本研究、日本語専攻を持つ大学は3つ(カレル大学、マサリク大学、パラツキー大学)あるが、日本語教授法等の教師養成のための講義は開講されていない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 現地採用のほか、数ヶ月から2年程度の雇用契約で採用され、複数の学校・機関をかけもちで教えている講師も少なくない。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修制度は国内にはないが、国際交流基金ブダペスト日本文化センターの中東欧日本語教育研修会(2008年度から実施)等に参加している。また、日本語教師会の月例会で勉強会が実施されており、国外から講師を招いてワークショップ等を開催することもある。

現職教師研修プログラム(一覧)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 数年前から国際交流基金派遣の日本語専門家を中心に勉強会が行われており、2005年からメーリングリストが整備等の段階を経て、2007年1月に教師会が正式に発足した。毎月1回の勉強会やメーリングリストでのやりとりは教師会の活動の一環として続いており、2013年には教師会のサイトも開設された(http://czkyoshikai.wordpress.com/)。2007年秋には、教師会メンバーによる自主制作教材『絵でおぼえるひらがな』、また2010年春には『絵でおぼえるカタカナ』を出版した。2014年3月、同シリーズの漢字教材が出版された。また、日本や隣国から講師を招いてワークショップ等も開催している。メンバーは2016年10月時点で30名ほどである。
 会員にはチェコ人をはじめ日本語非母語話者教師もいるが、日本語母語話者の会員に比べ、まだ人数は少ない。今後どのように活動の輪を広げていくかが課題となっている。

最新動向

 2007年に完成・出版した『絵でおぼえるひらがな』に続き、『絵でおぼえるカタカナ』を2010年春に出版した。2014年、同シリーズの漢字教材『絵でおぼえる漢字』が出版された。2017年4月には、弁論大会と作文コンテストが教師会を主催として開催される予定である。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2016年10月現在)

日本語専門家

 カレル大学 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

評価・試験の種類

 共通の評価基準や試験はない。

日本語教育略史

1947年 カレル大学に日本語研究学科創設
1952年 プラハ市立言語学校で日本語コースを開設
1991年 プラハにあるギムナジウムが、中等教育で初めて外国語教育に日本語教育を開始
1992年 マサリク大学(ブルノ)で選択科目として日本語コース開設
1993年 バラツキー大学に日本学科設置
1998年 チェコ・日本友好協会で日本語コース開設
西ボヘミア大学(ビルゼン)で選択科目として日本語コース開設
2006年 コリーン市の学校でクラブ活動の一環として、初等教育で初めて日本語教育を実施
2007年 日本センター・ブルノが開所し、大学生や一般成人向けの日本語授業開始
2008年 プラハ市言語学校が国家試験実施校となる
マサリク大学(ブルノ)に日本研究学科設立
2009年 プラハ市言語学校がチェコ国内で唯一CEFR基準の試験を実施
2010年 チェコ南東部のブルノ市においてチェコで初めてとなる日本語能力試験を実施

参考文献一覧

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