フィンランド(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
初等教育 中等教育 高等教育 その他
教育機関
合計
20 29 21 143 851 586 1,601
1.3% 8.9% 53.2% 36.6% 100.0%

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 フィンランドの日本語教育は、1937年、アルタイ言語学の権威G.J.ラムステッドによってヘルシンキ大学において始められ、戦争で一時中断した後、1960年代半ば(64年あるいは65年)に再開され、地道に継続されている。1980年から1997年までの期間は、国際交流基金派遣の日本語教育専門家がヘルシンキ大学における日本語教育を担当した。

背景

 フィンランドは歴史的な経緯もあり、親日感情が強く、現在も外交上・経済上の大きな問題は存在しないことから、二国間関係は極めて良好である。
 日本語に関しても、実用的な運用能力を身に付けビジネスに活用する目的より、多くの場合、アニメ・マンガやJ-POP・ファッション等のポップ・カルチャー、日本古来の武道や伝統芸能等の日本文化が糸口となって学習を開始するものが多いように見受けられる。

特徴

 ヘルシンキ大学、トゥルク大学、ストックホルム大学ヴァーサ分校等の高等教育機関が日本語教育の中心となっているが、近年は高校や成人学校(各自治体が運営するカルチャーセンターのようなもの)でも多くの授業が実施されている。
 日常生活では日本語に接する機会が少ないことから、フィンランド国内の日本語学習者は授業以外で日本語を実際に練習することは難しいものの、最近はインターネットの普及により、日本の音楽・ドラマ等を通じて生の日本語に触れる若者が多い。

最新動向

 首都ヘルシンキのみならず、地方でも日本語教育が活発になりつつある。一定の高等職業専門学校(ポリテクニク)や高等学校でも日本語教育を行っており、若い世代の間でより関心が高い。また、2005年度から日本語能力試験を実施している。
 これまで日本語に関するナショナル・カリキュラムは作られていなかったが、2016年に高等学校のナショナル・カリキュラムが改定され、日本語が選択言語として正式に同カリキュラムに加わり、全国統一的な日本語教育のカリキュラムが作成された。他方で高等教育機関においては政府からの予算削減が続き、アールト大学が2016年11月を以て日本語教育を終了するなど、日本語教育の縮小が懸念される。

教育段階別の状況

初等教育

 義務教育課程(日本の小学校と中学校に相当)では特別なプログラムとして日本語・日本文化教室を導入している学校もあるが、定期的には実施していない。また、義務教育課程では「母語教育」が取り入れられており、日本語教育についても首都圏ではヘルシンキ市とエスポー市の管理するクラスが一つずつ、また2009年から養護学校1校で導入されている。

中等教育

 高等学校では数校ながら定期的に日本語講座を開設している学校が存在する。

高等教育

 ヘルシンキ大学に1993年から日本学の教授の席が設けられている。日本語・日本研究学は、ヘルシンキ大学の世界文化学科東アジア研究専攻内にある日本学コースの他、東フィンランド大学、オウル大学、ヴァーサ市にある独立キリスト教国民学校(コミュニティ・カレッジ)に設置されたスウェーデンのストックホルム大学分校でも受講することができる。また、日本語教育は、多くの大学や高等職業専門学校(ポリテクニク)で受けることができる。

その他教育機関

 生涯学習を重んじるフィンランドでは様々な成人教育講座が開講されており、初級日本語講座を設置する機関も増えている。講師は、通常フィンランドに長く住んでいる日本人や、長い滞日歴を持つフィンランド人が務めている。学習者は成人の他、中学生や専門学校生などの若年層も多い。また、日本関連友好団体が開く講座もある。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 基礎学校(あるいは総合学校。日本の小学校に相当する前期課程と、日本の中学校に相当する3年間の後期課程から成る)における7歳から16歳の9年間が義務教育。総合学校修了後、普通教育を行う高等学校、若しくは中等教育レベルの職業学校へ進学し、通常2~4年で必要単位を取得する。高等教育機関には 大学と高等職業専門学校(ポリテクニク)がある。一部の学部を除き、大学では通常3年間で前段階の学位(学士、Bachelor’s Degree)を取得し、その後通常2年間で後段階の学位(修士、Master’s Degree)取得を目指すカリキュラムとなっている。高等職業専門学校の場合、修了までに3年半~4年を必要とする。

教育行政

 教育政策は国会で決定され、教育文化省とその下部機関である国家教育委員会が中央レベルでの政策を実施する。国家教育委員会は義務教育及び中等教育機関の中核的な模範カリキュラムを作成する。これをもとに各地方自治体または各学校が個別のカリキュラムを作成する。高等職業専門学校は公立(地方自治体による運営)と私立の両方がある。
 高等教育においては、2010年初頭から大学制度改革が実施されている。これにより、運営形態はこれまでの国立から法人格あるいは財団に移行し、大学間の統合も進んでいる。各大学は教育・研究の自由及び大学の自治の理念に基づいて運営されている。

言語事情

 公用語はフィンランド語とスウェーデン語。
 住民の93%がフィンランド語、6%がスウェーデン語を母語としている。その他、サーミ語が公用少数言語に認定されているが話者は1%に満たない。

外国語教育

 フィンランドでは母語以外に最低2つの言語を学ぶ。そのうちひとつは母語以外の公用語、つまりフィンランド語が母語の子供はスウェーデン語、スウェーデン語が母語の子供はフィンランド語になる。外国語教育の決定権は各学校と自治体が有する。
 フィンランド母語話者の場合、第一外国語は、普通基礎学校3年生で始まり、多くの場合英語が選択される。(基礎学校前期課程において、選択科目として他の外国語を学ぶことも可能。)
 7年生から、第二必修外国語の学習が始まる。第一外国語として英語を学んだ児童は第二必修外国語として母語以外の公用語を学ばなくてはならない。必要最低限の二言語に加えて、学校によってはさらに多くの外国語を学ぶことができる(学習学年に決まりはない)。
 国家が行う一般的な資格基準である大学入学資格試験(高等学校卒業前に受験する)では、母語が必須であり、母語とは別の公用語及び外国語(英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、サーミ語、イタリア語、ポルトガル語、ラテン語)は選択科目となっている。

外国語の中での日本語の人気

 他の外国語(特に英語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、ロシア語)と比較すると学習者の数は少ないが、若年層を中心にマンガやアニメへの関心の高まりと共に日本語への関心も高い。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 市販の教材や教師が自ら用意した(自作含む)配布資料を用いる。

中等教育

 市販の教材や教師が自ら用意した(自作含む)配布資料を用いる。

高等教育

 日本で出版された日本語教科書と各教師自身が作成した教材等を併用する機関が多い。

その他教育機関

 日本で出版され当地書店で販売されている日本語教科書等を使用する機関が多い。また、初級日本語教材はフィンランドでも多く出版されており、これらを使用することもある。

マルチメディア・コンピューター

 インターネット上のサイトで参考になると思われるものを紹介したりすることがあり、パワーポイントなどを使用した課題発表なども行われている。

教師

資格要件

初等教育

 常勤の教師として働くためには、基礎学校前期課程では修士号(学校で教えられる教科のいずれかで最低60単位を要取得)と一般教員資格(60単位から成る一般教員資格取得コースを受講)が必要である。国は大学の教員養成課程への入学者数を調整することにより、教師の数を管理している。初等教育において日本語教師の採用は現在ない。

中等教育

 常勤の教師として働くためには、基礎学校後期課程及び高等学校では修士号(学校で教えられる教科のいずれかで最低120単位を、もう一つの教科で最低60単位を要取得)と一般教員資格(60単位から成る一般教員資格取得コースを受講)が必要である。国は大学の教員養成課程への入学者数を調整することにより、教師の数を管理している。日本語教師の多くは、非常勤講師として採用されるため、各校長の許可によって採用される。

高等教育

 法律で定められた資格要件は無く、各大学の裁量で決めることができる。

その他教育機関

 特定の要件は必要とされていない。

日本語教師養成機関(プログラム)

 ヘルシンキ大学世界文化学科東アジア研究専攻の修士プログラムにおいて、日本語を主専攻(120単位)または副専攻(60単位)として卒業することは可能であるが、現在は50単位分の日本語コースのみ同大学で提供されており、日本語を主専攻又は副専攻とする場合、残りの単位は交換留学等を通じ他の教育機関で取得する必要がある。2017年秋以降は、ヘルシンキ大学世界文化学科東アジア研究専攻の修士プログラムで日本語を主専攻とすることはできなくなり、日本語を主専攻としたい場合は言語学専攻の修士プログラムに参加する必要がある。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 永住者の一部が、大学付属の言語センター等で日本語講師として活躍している。

教師研修

 フィンランドには2013年まで日本語教師養成課程はなく、国際交流基金の日本語教師研修に個人的に参加する教師が多い。2008年から、パリの日本文化会館主催による欧州日本語教師研修会への募集に応じており、同年には2名が参加した。その他、東海大学ヨーロピアン・センターやアルザス欧州日本語研究所の日本語教師研修、ヨーロッパ日本語教師会日本語教育シンポジウムに参加する者もいる。また、不定期ではあるが、ヘルシンキ大学文化学科がワークショップを開催することがある。

現職教師研修プログラム(一覧)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 1993年8月に設立された「フィンランド・日本語日本文化教師会」には、フィンランドの日本語教師のほとんどが会員として参加している。(会員数は2016年11月現在58名。)同教師会は、1995年4月に社団法人に認定され、種々の活動を行っている。
 定期的に会合を開き、セミナーやワークショップ等を開催することにより日本語教師の質の維持・向上に努め、教師同士のネットワークの維持・強化を図っている。
 同教師会の最大行事である弁論大会の際には、多くの日本文化関係団体の協力を受けている。

最新動向

 毎年3月、「日本語で語る会」(日本語弁論大会)を開催しており、2015年3月には第30回大会が行われた。2005年度より、年間行事を充実させることを目的として、年1~2回、日本語と日本文化に関するセミナーまたはワークショップを行っている。近年、少しずつ増えている高校での日本語教育と、その継続となる大学における日本語教育において、その統一性などにつき検討・話し合いを進めている。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

国際協力機構(JICA)からの派遣

 国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。

その他からの派遣

 (情報なし)

日本語教育略史

1937年 ヘルシンキ大学にて日本語教育開始
1964or5年 戦争中、一時中断されていたヘルシンキ大学における日本語教育再開
2006年 日本語能力試験実施開始

参考文献一覧

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