ハンガリー(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
32 93 1,992
学習者数 内訳
教育段階 学習者数 割合
初等教育 201 10.1%
中等教育 267 13.4%
高等教育 1,007 50.6%
その他 教育機関 517 26.0%
合計 1,992 100.0%

2015年度日本語教育機関調査結果 学習者数グラフ
2015年度日本語教育機関調査結果の学習者数に関する帯グラフ。初等教育は201名で全体の10.1%、中等教育は267名で全体の13.4%、高等教育は1,007名で全体の50.6%、学校教育以外は517名で全体の26.0%。

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 ハンガリーの日本研究は、戦後一時期、断絶・停滞を余儀なくされた。戦後の東洋学は中国研究を中心に発展したため、日本研究・日本語教育はチェコやポーランドの域内近隣諸国に比べ立ち遅れの感があった。
 1980年代に入って日本語学習熱が高まり、1986年にエトヴェシュ・ロラーンド大学に日本学専攻が設置されたことが、ハンガリーの日本語教育の実質的な始まりである。また、1987年には小学校でも実験的に日本語教育が行われ、現在は高等教育機関でも初等・中等教育機関でも日本語が教えられている。
 1990年代初頭からは青年海外協力隊の日本語教師派遣が始まり、質的にも強化された。日本語学習者数は1990年代に入り日本語学習ブームに乗って増加の一途をたどり、1990年には328名であった。2003年には1,000名を超え、2009年には1,837名に達したが、それ以降はやや減少し、2012年には1,554名となっている。

背景

 学習動機としては、一般に純粋な日本文化・歴史・文学に対する興味の場合が多い。
 初等・中等教育段階では、アニメやマンガから児童・生徒が日本に興味を持ったりして、児童・生徒の親が日本への興味・関心を持ったりし、実利目的から子供に日本語学習を勧める場合が多い。
 社会人学習者の場合は、実利・ビジネス目的で日本語学習を始める者も少なくない。

特徴

 ハンガリーではナショナル・コア・カリキュラムの現代外国語教育の項にもCEFRに基づくレベル目標が設定されるなど、CEFRの取り組みに積極的である。日本語教育でもその動きに対応する試験、教科書開発や研修などが盛んに実施されている。

最新動向

 日本・ハンガリー協力フォーラム事業により、CEFR準拠の日本語教材『できる1』が2011年夏に完成し、2012年9月に続いて完成した第二冊目『できる2』とともに、教材として導入する教育機関が増えている。ただし、日本・ハンガリー協力フォーラムによる「日本語教師のサラリーサポートプログラム」が2012年度で終了し、2011年まで実施された「日本文化発信プログラム」(J-CAT)によるボランティア派遣も終了したことも影響し、2012年12月時点での日本語学習者は1,554名となり、2009年の1,837名(2009年度日本語教育機関調査)から約15%減少した。なお、日本・ハンガリー協力フォーラム事業は2014年3月31日を持って終了した。

教育段階別の状況

初等教育

 4機関で日本語教育が実施されており(2016年10月時点)、第二外国語の選択必修科目か自由科目もしくは課外活動という位置付けである。

中等教育

 9機関で日本語教育が実施されており(2016年10月時点)、第二外国語の選択必修科目か自由科目という位置付けである。

高等教育

 日本語教育は12機関(2016年10月時点)で実施されているが、このうち日本語を主専攻としている大学はブダペスト市内のエトヴェシュ・ロラーンド大学(ELTE)、カーロリ・ガーシュパールカルビン派大学の2大学である。
 また、ブダペスト商科大学では第二及び第三外国語として日本語教育が行われている。他の高等教育機関では、日本語は選択科目という位置付けである。なお、法門仏教大学では第一外国語として日本語が位置付けられていたが、大学のカリキュラム変更により、2015年に日本語教育を含む外国語教育の廃止が決定し、新規募集を停止した。

その他教育機関

 学校教育以外では7機関(2016年10月時点)で日本語教育が行われている。学習者は学生、社会人など様々で、学習目的も教養や実利目的など様々である。
 国際交流基金ブダペスト日本文化センターでも日本語講座を実施している。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 8-4(~5)-3(~5)制
 初等教育:8年
 中等教育:4~5年(進学向けGimnazium,及び職業訓練向けSzakkozepiskola
 高等教育:3~5年
 2006年9月よりボローニャプロセスが導入され、高等教育機関は5年制(修士号取得)から3年(学士号)+2年(修士号)制へ移行した。2009年6月に新システムでの卒業生(学士)が誕生し、2010年6月に5年制の最後の修了生が卒業した。初等・中等一貫教育もあり、各段階の修了年数には若干のずれがある。
 また、この他に社会人向けの成人教育機関がある。
 義務教育は12年間。

教育行政

 国家人材省(旧教育文化省)が全教育段階の機関を所管している。

言語事情

 公用語:ハンガリー語(マジャール語)

外国語教育

 外国語教育はナショナル・コア・カリキュラム(National core curriculum)を作成しており、複数言語主義教育をはじめとする欧州評議会が掲げる理念をハンガリーに導入している。
 各教育段階で、下記のとおり外国語到達目標が①最低到達レベルと②上級到達レベル(上級エーレッチェーギ(後述)受験を目指す場合)の2レベル設定されている。

  • «初等教育段階»
    • 第一外国語
      • 6年生:①A1、②A1
      • 8年生:①A2、②A2-B1
    • 第二外国語(7年生から)
      • 8年生:①なし、②A1
  • «中等教育段階»
    • 第一外国語※
      • 10年生:①なし、②B1-B2
      • 12年生:①B1、②B2(2か国語教育コースなど、コースによってはC1を到達目標とすることができる。)
    • 第二外国語
      • 10年生:①なし、②A2
      • 12年生:①A2、②B1-B2

外国語の中での日本語の人気


大学入試での日本語の扱い

 2005年度より新試験システム導入に伴い、大学別に行っていた日本語の筆記試験、面接試験はなくなり、高校卒業資格認定試験がハンガリーでの大学入試試験システム(エーレッチェーギ)を兼ねたかたちで導入されている。
 エーレッチェーギ日本語試験には当初中級・上級の2つがあり、2010年日本語の受験者は中級レベル14名、上級レベル48名であった。2010年1月に前政権下で2011年のエーレッチェーギ上級レベル試験から日本語が外れるという事態になったが、2015年より上級レベルに再度日本語が導入された。エーレッチェーギ上級試験は、60%以上の成績を修めると国家外国語試験の中級の資格が付与される。また、エーレッチェーギ上級試験に日本語が復活したことに伴い、東洋言語・東洋文化系学科の入学試験科目(ハンガリー語・ハンガリー文学もしくは歴史+外国語の2科目)として日本語が選択可能となった。一時上級レベル試験から日本語が外れてしまったことで、中等・高等教育機関における日本語教育の縮小、学習者の減少という懸念があったが、2015年から上級試験に日本語が導入されることで、中等・高等教育機関における日本語教育への機運が再度高まることが期待される。しかしながら、欧州全体の言語教育の動向、また政治体制の変化により制度が再度変更する可能性もあり、今後事態の推移について注視し、対応していく必要がある。

学習環境

教材

初等教育

 よく使用される教科書は次のとおり。
 『やさしい日本語』((Decens出版社(ハンガリー))
 『DARUMA』(TAROGATO出版社(ハンガリー))
 『できる1』(Hungarian Institute for Educational Research and Development(ハンガリー))
 『まるごと』(国際交流基金)

中等教育

 よく使用される教科書は次のとおり。
 『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
 『DARUMA』(前出)
 『できる1』(前出)『できる2』(Hungarian Institute for Educational Research and Development(ハンガリー))
 『まるごと』(前出)

高等教育

 担当者が自分で開発した教材を使う場合もある。よく使用される教材は次のとおり。
 『みんなの日本語』(前出)
 『初級日本語 げんき』(ジャパンタイムズ)
 『JAPANESE FOR EVERYONE』(学習研究社)
 『J Bridge』(凡人社)
 『テーマ別中級から学ぶ日本語』(研究社)
 『できる1』『できる2』(前出)

その他教育機関

 よく使用される教科書は次のとおり。
 『みんなの日本語』(前出)
 『JAPANESE FOR EVERYONE』(前出)
 『できる1』『できる2』(前出)

マルチメディア・コンピューター

 インターネットを授業活動に取り入れている機関もあるが、マルチメディアの導入は一般的ではない。

教師

資格要件

初等教育

 初等教育の教員資格を取得するためには、大学の初等教育教員養成課程(4年+1年のインターン)を修了する必要があるが、カリキュラムの編成権を持たない「語学教師」になるにはこの限りではない。教職課程は必ず2科目取得する必要がある。2科目のうち1科目を初等教育、もう1科目を中等教育と選択した場合は、教員養成課程は4年半+1年のインターンとなる。

中等教育

 中等教育の教員資格を取得するためには、大学の中等教育教員養成課程(5年+1年のインターン)を修了する必要があるが、カリキュラムの編成権を持たない「語学教師」になるにはこの限りではない。教職課程は必ず2科目取得する必要がある。2科目のうち1科目を初等教育、もう1科目を中等教育と選択した場合は、教員養成課程は4年半+1年のインターンとなる。

高等教育

 機関により異なるが、基本的に博士号が条件となる。外国語教育を担当する「語学講師」になるにはこの限りではない。

その他教育機関

 特になし。

日本語教師養成機関(プログラム)

  • 2013年10月時点で日本語教師養成を行っている機関はない。
     エトヴェシュ・ロラーンド大学及びカーロリ・ガーシュパール・カルビン派大学に設置されていた日本語教員養成課程が2011年に終了し、2013年10月現在、日本語の教員養成課程を設けている大学は存在しない。
     なお、カーロリ・ガーシュパール・カルビン派大学日本学科の修士課程では、教員免許取得を目的としない科目として「日本語教授法Ⅰ」「日本語教授法Ⅱ」が開講されている。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 2012年末に行った調査では、教育機関における67の日本語教師のポストのうち、ネイティブ教師は28ポストを占めている。

教師研修

 国際交流基金ブダペスト日本文化センターでは、ハンガリー日本語教師会の協力を得て、年数回程度の日本語教師研修及び2015年より年1回のハンガリー日本語教育シンポジウムを実施している。
 また、例年2月に、中東欧日本語教育関係者を招へいし、「中東欧日本語教育研修会」を実施し、ブダペスト日本文化センターは中東欧の日本語教師の教師研修、ネットワーキングの機能も果たしている。

現職教師研修プログラム(一覧)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 2001年に「ハンガリー日本語教師会」が設立され2005年に法人化された。2016年10月現在、会員数は65名で、内訳は正会員(現職教員等):53名、準会員(学生等):4名、特別会員(海外在住):8名から構成されている。
 主な活動内容のひとつはイベントの実施であり、2006年から日本語スピーチコンテストを実施する他、2002年にはヨーロッパ日本語教師会と共催で「ヨーロッパ日本語教育シンポジウム」を、2008年には国際交流基金ブダペスト日本文化センターと共催で「日本・ハンガリー協力フォーラム事業ハンガリー日本語教育シンポジウム」を実施した。また、新しい試験制度に対応するために『初級日本語・ハンガリー語語彙集』(2003年)、『初級ハンガリー語・日本語語彙集』(2005年)、『日本語初級問題集』(2009年)、『日本語中級問題集』(2009年)、『平仮名・片仮名練習帳』(2010年)『基礎漢字練習帳Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』(2012~2013年)、『できる教室活動用絵教材』(2014年)、『ハンガリー語・日本語テーマ別語彙集』(2014年)など、教材作成も盛んである。

最新動向

 日本・ハンガリー協力フォーラムの特別事業助成を受けてハンガリー日本語教師会が『できる教室活動用絵教材』(2014年)、『ハンガリー語・日本語テーマ別語彙集』(2014年)を作成した。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2016年10月現在)

日本語上級専門家

 国際交流基金ブダペスト日本文化センター 1名

日本語専門家

 国際交流基金ブダペスト日本文化センター 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 2001年9月より、初等・中等教育レベルで、ナショナル・コア・カリキュラム(NAT:Nemzeti Alaptanterv)が導入されている。ただし、このカリキュラムは、公的教育機関の基本的原理、方針を示したもので、内容に関しては各教育機関の自立性、独自性が保たれている。日本語教育の実施内容に関しては、現在のところ各教育機関の裁量に任されており、各機関で現場に即した教育が行われている。

評価・試験

 ハンガリー政府認定の国家外国語試験(資格)の日本語試験は2006年に一度中断されたが、2008年3月より再開された。これは初級、中級、上級のレベル別に能力考査(筆記、及び口頭試験)を行うものである。同国家試験(資格)は2005年から導入されたエーレッチェーギ(大学入学試験システム)の上級レベル日本語試験を受験し、60%以上をとると中級合格として認定され、40~59%をとると初級合格としてそれぞれ認定される。
 ブダペスト商科大学において「ビジネス日本語検定試験」が実施されている(2002年1月ハンガリー政府正式認定)。

日本語教育略史

1923年 パーズマーニ・ペーテル大学(1950年に現在のエトヴェシュ・ロラーンド大学(ELTE)に改称)に「東アジアの言語と文学」講座が設置され、日本語・日本学の研究・教育がスタート。大戦による中断後、1959年に、改称された「中国・東アジア」講座内で日本語教育も自由選択科目として再開
1984年 外国貿易大学(現在のブダペスト商科大学)で日本語教育開始
1986年 エトヴェシュ・ロラーンド大学(ELTE)に日本学専攻設置
1987年 トルクバーリント実験小学校で日本語教育開始
1991年 国際交流基金ブダペスト日本文化センター開設
1992年 青年海外協力隊日本語隊員派遣開始
1993年 日本語能力試験実施開始
1995年 カーロリ・ガーシュパールカルビン派大学で日本学科開設
1996年 エトヴェシュ・ロラーンド大学(ELTE)の日本学専攻が日本学科として独立。同時に中等学校日本語教員養成プログラムを開始
1998年 カーロリ・ガーシュパール・カルビン派大学で中等学校日本語教員養成プログラムを開始
2000年 国際交流基金ブダペスト日本文化センターに日本語上級専門家派遣開始
2001年 ハンガリー日本語教師会(MJOT)設立
2005年 エーレッチェーギ(大学入試資格試験)開始
国際交流基金ブダペスト日本文化センターに日本語専門家派遣開始
2007年 日本・ハンガリー協力フォーラム「日本語教育促進事業」活動開始
青年海外協力隊日本語隊員活動終了
2008年 日本文化発信プログラム(J-CAT)活動開始
2011年 日本文化発信プログラム活動終了
日本・ハンガリー協力フォーラム事業による日本語教材「できる1」刊行
2012年 日本語教材『できる2』刊行
日本・ハンガリー協力フォーラム「ハンガリー若手日本語教師訪日研修」実施
日本・ハンガリー協力フォーラム「ハンガリー日本語教育シンポジウム」開催
2013年 日本・ハンガリー協力フォーラム「ハンガリー日本語教師訪日研修」実施
2014年 日本・ハンガリー協力フォーラム「日本語教育促進事業」活動終了

参考文献一覧

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