ヨルダン(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
3 9 166
学習者数 内訳
教育段階 学習者数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 0 0.0%
高等教育 58 34.9%
その他 教育機関 108 65.1%
合計 166 100.0%

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1993年のヨルダン大学文学部への青年海外協力隊員派遣により初めて日本語講座(初級)が開設、2006年より2名の日本語教師隊員が派遣され、現在まで継続している。日本語専攻設立は以前より案は出ているが2016年11月現在開設には至っていない。
 2002年からJICA事務所内で一般人向け公開講座が開始された。2008年に現地組織であるJICA研修員同窓会(JAAJ)に移管され、現在は「JICA研修員同窓会日本語公開講座(JJLC)」として運営されている。大学生に限らず子供から社会人まで幅広い年齢層が学んでおり、日本語だけでなく文化イベントも積極的に行っている。
 2013年にヨルダンと日本の間の協力関係を強化する目的で非営利団体「ヨルダン日本協力協会(JJCS)」が設立され、2014年から2015年まで小規模な一般人向けの日本語教育を実施していたが、2016年現在は実施されていない。
 2015年、新たに民間の日本語教室が始まり、2016年現在も運営を続けている。

背景

 日本理解の程度は浅いが、欧米へのカウンターバランスを含めて親日的なムードが強く、特に日本の経済協力、工業製品への評価が高い。また、テレビやインターネットなどのメディアを通し、文化面への関心も存在する。特にアニメを中心としたポップカルチャーへの関心が高い。
 一方、英国による委任統治とその後の親英米政策を反映し英語の地位は絶対的に高く、また欧州と地理的・文化的な距離が近いことからフランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語学習者も多い。

特徴

 最も日本語学習者が多いのはJICA研修員同窓会日本語公開講座(JJLC)である。常時、50名以上の学習者がおり、拡大傾向にある。 唯一、学校教育で日本語教育が行われているヨルダン大学は教師数や設備に制限があるため、学習希望者全員を受け入れるのは難しい状況であるが、常時40、50名の学習者がいる。
 学習者の多くは趣味や教養として日本語を学んでいるが、留学や仕事のために学んでいる学習者もいる。いずれにせよ、自発的に学んでいるため、学習意欲が高いと言える。大学以外の教育機関では小学生から大人まで様々な年代や職業の学習者が共に日本語を学んでいる。また日本語教育機関のない地方等で、日本語や日本文化に関心のある人々が集まりサークルを結成し日本語の自主講座を運営したり、インターネット等を通じて独学で日本語を学んだりする学習者もおり、ヨルダン全体の学習者の把握は難しい。

最新動向

  • 2017年春学期より、ヨルダン大学で全学部生対象自由選択科目としての日本語コースが数年ぶりに開講される予定である。
  • 2016年春学期、ヨルダン大学アカバキャンパスで選択科目として日本語クラスが開講された。
  • 2016年、新たに民間の日本語教室(万屋)の運営が始まった。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

ヨルダン大学外国語学部アジア言語学科日本語コース
 外国語学部アジア言語学科の選択必修科目及び全学部対象の自由選択科目である。初級1から初級3までのコースを開講、1クラスの学習者数は10~25名程であり、年間延べ100名程の学習者がいる。初級3までの総学習時間は140時間程である。1学期間ないし2、3学期間しか日本語学習機会がなく、習得レベルは高くないため、多くの学生は日本語をマスターし、進路に活かすことを期待していない。

その他教育機関

  • JICA研修員同窓会日本語公開講座(JJLC
    初級1から初級4までをコースを常時開講、1クラスの学習者数は5名~20名程であり、年間延べ100名程の学習者がいる。なお2016年11月より初中級コースを試験的に開始した。各クラスの学習時間は24時間で、初級4までの総学習時間は96時間である。総じて知的興味から日本語を学習する者が多い。年齢層は10代から50代と幅広く、男性の方がやや多い。職業は中高生、大学生、主婦、公務員、会社員、教員、デザイナーなど多様である。
  • ヨルダン日本協力協会日本語公開講座(JJCS
    2014年から日本語学習に興味を持っている一般人に日本語教育を提供していたが、2016年現在は開講されていない。
  • 万屋(Japanese Culture Center)
    2015年夏にJJLC修了生が日本関連事業(万屋)を始めた。その一事業として日本語教室が運営されている。6段階のレベルがあり、各レベルの学習時間は18時間、レベル6までの総学習時間は108時間である。週に3時間の授業があり、短期間で集中的に学習できる。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-6-2(4)制

  • 初等教育:小学校(6年)
  • 中等教育:中等学校(6年)
  • 高等教育:短期大学(2年)、大学(4年)
    小学校入学年齢は6歳、義務教育は10年間

教育行政

 初等、中等教育を教育省が、高等教育を高等教育省が管轄している。難民キャンプを対象とする初等、中等教育は国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が実施(ただし、難民がUNRWA以外の学校に入ることは可)。

言語事情

 公用語はアラビア語。都市部を中心に英語が広く解される。
 また、知識人を中心にフランス語を話す層もある。

外国語教育

 小学校1年生から第一外国語として英語が必須科目。

外国語の中での日本語の人気

 英語が絶対的な位置を占め、次いでフランス語やドイツ語などの欧州言語の人気が高い。ヨルダン大学外国語学部では同じアジア言語である中国語、韓国語がすでに専攻として設立されているため学習者数は比較にならないほど多い。しかし一方で「日本語専攻がないので韓国語または中国語学科に入った」と言う学生も少数ながら存在している。
 ヨルダン大学日本語コースは外国語学部生の第三外国語選択必修科目の一科目であるが、アジア言語学科の言語の中ではトルコ語とともに人気が高く、受講希望者が定員を超えることが多々ある。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。また、日本語学習歴による入学試験得点への加算もない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

  • ヨルダン大学ではかつて『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)が使用されてきたが、2013年以降は『にほんご45じかん』『にほんごつぎの45じかん』沢村美恵子・下田信子(専門教育出版)が使用されている。また、副教材として『かなをまなぼう』ファーリス・シハーブ(国際交流基金カイロ日本文化センター)、『KANJI LOOK AND LEARN』坂野永理・池田庸子・品川恭子・田嶋香織・渡嘉敷恭子(The Japan Times)が使用されている。

その他教育機関

  • JICA研修員同窓会日本語公開講座(JJLC)ではヨルダン大学と同じ教材が使用されている。
  • 万屋では「みんなの日本語」スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)が使用されている。

マルチメディア・コンピューター

  • ヨルダン国内主要都市のインターネット通信環境は非常に良く、日本語コンテンツ(アニメやドラマ等)への接触が容易であり、インターネットを通じて独学で日本語を習得する学習者もいる。
  • 2008年にヨルダンオリジナルEラーニングシステム「日本語らくだ」が公開され、現地日本語教師によって運営されている。
  • 若者を中心にソーシャルネットワークメディアの利用が盛んで、日本語学習者や親日ヨルダン人の間で多くのコミュニティーが作られ、交流や情報交換の場となっている。
  • 2012年にJICAの支援でヨルダン大学及びJICA研修員同窓会日本語公開講座(JJLC)にプロジェクターが設置され、それ以降、それらの学習機関ではスライドや動画を用いた授業が実施されている。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 日本語教育専攻で修士号あるいは博士号を有すること。ただし、JICAボランティア日本語教師はこの要件を特別に免除されている。

その他教育機関

 特に資格要件は設定されておらず、個別に判断される。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはないが、JICA研修員同窓会日本語講座(JJLC)では日本語教師志望の初中級修了学習者をアシスタントとして授業に参加させ、研修を行っている。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 現在まで大学及びその他の教育機関で滞在ビザの発給を受けて直接雇用されたネイティブ教師はおらず、ヨルダンの日本語教育はJICAボランティア日本語教師の継続的な派遣で維持されている。JICAボランティア日本語教師はコース運営やイベント実施の他、現地人教師の育成も行っている。
 また民間の日本語学校では在留邦人を講師として採用している。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修はないが、エジプトの国際交流基金カイロ日本文化センターが主催している「中東・北アフリカ日本語教育セミナー」に参加が可能である。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

  • 全国的・恒常的な日本語教育ネットワークはまだ存在していない。
  • 2015年、4名のネイティブ教師のネットワークを作り情報交換を行っていたが、メンバーの半数が国外転居し、JICAボランティア2名だけが残ったため、2016年現在は休止中である。
  • JICA研修員同窓会日本語講座(JJLC)の教師数が2016年2月4名、2016年11月7名と増えたことから、定期的に情報交換を行っている。今後、教師会に発展させ、他機関の日本語教師もメンバーに加え、活動をしていく予定である。
  • 国際交流基金カイロ日本文化センターが主催している中東諸国(エジプト、アラブ首長国連邦、イエメン、イラン、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、トルコ、バーレーン、モロッコ、ヨルダン、レバノンほか)の日本語教師のネットワークに参加している。

最新動向

 特になし。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

 なし

国際協力機構(JICA)からの派遣(2016年10月現在)

青年海外協力隊

 ヨルダン大学外国語学部アジア言語学科 2名

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 ヨルダン大学の日本語コースでは初級3までが公式なクラスとして開講され、最長で140時間程の学習が可能である。ヨルダン大学では初級3が修了した時点で初級日本語の教育課程の前半が修了できるシラバスを採用している。

その他教育機関

 JICA日本語公開講座では初級4までが開講され、初級4修了時点で初級日本語の教育課程の3分の2が修了できるシラバスを採用している。

評価・試験

 共通の評価基準や試験はない。
 JLPTの受験希望者はカイロやトルコの日本語能力試験に参加している。しかし自費で出かけ受験できる学習者は限られている。

日本語教育略史

1993年 ヨルダン大学人文学部での講座開設(青年海外協力隊隊員)
1994年 ヨルダン大学にて第1回日本語弁論大会(以降、毎年開催)
1996年 ヨルダン大学日本語ガイド養成講座開設
2002年 JICA日本語公開講座開設
2003年 ヨルダン大学日本語ガイド養成講座閉鎖
米英の武力行使によるJICA関係者退避
日本人教師不在の間、ヨルダン人日本語教師がコースを運営
2008年 ヨルダン大学における現地教師の活動開始
恒常的ではないものの、Berlitz方式で知られている言語学校で、ヨルダン初の商業ベースでの日本語講座を開講
ヨルダン大学文学部現代言語学科が、ヨーロッパ言語学科及びアジア言語学科の2つの独立した学科に分科
JICA日本語公開講座が現地組織であるJICA研修員同窓会(JAAJ)へ移管。以降、JAAJ日本語公開講座(JJLC)を開設
Eラーニングシステム「日本語らくだ」開発開始
2009年 上記システムをインターネット上で公開
2013年 JICA研修員同窓会公開講座(JJLC)で現地人教師育成を目的にアシスタントの採用を開始
2014年 ヨルダン日本協力協会JJCS日本語公開講座開設(2016年現在休止中)
JICAヨルダン日本語教育在外研修を首都アンマンにて、モロッコ、スーダン、イエメン、ウズベキスタンのネイティブ及びノンネイティブカウンターパートに対し、カイロJF日本語教育専門家を招いて研修を実施。
2015年 民間の語学教室が新たな日本語講座を開始

参考文献一覧

ページトップへ戻る