韓国(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
2,862 14,855 556,237
学習者数 内訳
教育段階 学習者数 割合
初等教育 1,160 0.2%
中等教育 451,893 81.2%
高等教育 51,963 9.3%
その他 教育機関 51,221 9.2%
合計 556,237 100.0%

2015年度日本語教育機関調査結果 学習者数グラフ
2015年度日本語教育機関調査結果の学習者数に関する帯グラフ。初等教育は1,160名で全体の0.2%、中等教育は451,893名で全体の81.2%、高等教育は51,963名で全体の9.3%、学校教育以外は51,221名で全体の9.2%。

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 現代の韓国における日本語教育は、1965年の日韓国交正常化を契機とするというのが一般的な見方である。
 高等教育においては、国交正常化に前後して大学校(日本における「大学」に相当)に日本語が専攻科目として設置され始め、1970年代以降、時代が下るに従い、大学院修士課程や大学(日本における「短期大学」に相当)の観光関連学科における日本語科目の設置、諸分野の日本研究者による学会創立等の動きを経て、今日に至っている。
 中等教育では、1972年に出されたパク・チョンヒ(朴正熙)大統領の指示により1973年に高等学校の教育課程(日本の「学習指導要領」に相当)が部分改定され、日本語が第二外国語科目の一つとして導入された。以来、高等学校では第二外国語として日本語が教えられている。中学校においても、2001年に第二外国語の一つとして日本語教育が始まっている。

背景

 日韓両国が、政治・経済、社会・文化等の多方面において緊密な関係を保ってきたことが、日本への関心の継続と、日本語学習者の新たな世代の登場に繋がっているものと思われる。

特徴

 約84万人の日本語学習人口を擁し、年齢層は小学生から一般成人までと幅広いが、その中心は全学習者数の約8割を占める中学生および高校生である。高等学校では、日本語は第二外国語に指定されている7つの言語の中で最も履修者が多く、2012年度の高校の第二外国語学習者中、履修者数は、日本語33.2万人(60.1%)、中国語18万人(32.6%)、フランス語1.9万人(3.4%)などとなっている*1)。
*1)2012年度『教育統計年報』(韓国教育開発院)による。
 学習者数や学習内容に影響を与える要因はいくつか考えられる。中等教育段階では、政府の定める教育課程や大学校・大学受験時の「修学能力試験」(国公立・私立を問わず、いずれの大学校・大学に進学する場合も受験が義務付けられている全国統一試験)における第二外国語科目の取り扱い等、進学上の要因が大きい。
 高等教育・一般成人教育では、就職や昇進に有利かどうかという社会・経済的な要因が大きいが、功利性を離れて日本の社会や文化に対する直接的・具体的な関心が学習動機となる傾向も見られる。
 なお、「学院」と呼ばれる民間の教育機関や、各種文化センター、公民館等での日本語教育も盛んである。

最新動向

Prime事業 自由学期制》
 高等教育機関では、2013年度以降、学部、教育大学院において外国語関連の学科の統廃合が急速に進展している。これは、政府が進めるPrime1事業(産業需要に合わせた先導大学支援事業)による影響が大きい。Prime事業とは、「大学と産業間の人材ミスマッチ現象を解消するため、社会・産業ニーズに適合した学科及び教育課程を運営する大学を選定して支援する」という趣旨を掲げた教育部の代表的な高等教育政策で、具体的には、構造改革によって人文、芸術、体育系の定員を減らして、理工系の定員を拡大するというものである。これを実現させた大学には年間50億~150億ウォンずつ3年間で6,000億ウォンが与えられるとのことで、5年連続で登録料(授業料)が凍結され経営に苦しむ75の大学が殺到し、結果21の大学が選ばれた。これらの大学は順次入学枠を調整していくものと思われるが、最終的には、工学系の枠が4,500名ほど増える代わりに、人文・社会・自然・芸術体育系は同人数分枠が減ることになる。祥明大学校師範大学の日語教育科は、このPrime事業によってすでに「日語教育科」から「韓日文化コンテンツ学科」と名称を変えている。また、慶南大学校師範大学では、日本語教育専攻の学生の定員が40名から30名に削減されたとの情報もある。
 2016年から全国3,186校の中学校で自由学期制が始まった。自由学期制とは、中学1年1学期から2年1学期までの3学期の間の1学期を、職業体験やサークル活動などの体験活動に当てるもので、進路体験、主題探索活動、サークル活動、芸術体育活動など大きく4種類に分けられている。自由学期期間中は基本的に午前は教科授業、午後は自由学期活動が行われる。また、筆記試験形式の中間・期末試験は行われず、教師が生徒の成就水準、参加度および態度、自由学期活動内訳などを学校生活記録簿に叙述式で記録する「過程中心の評価」が行われる。教育部は自由学期制のため1校当たり約2,000万ウォンの予算を支援する。ソウル日本文化センターにも、自由学期制を利用した日本語・日本文化体験活動への協力依頼が入り始めている。

1 Program for Industrial needs-Matched Education の略

教育段階別の状況

初等教育

《初等学校》
 教育課程においては英語だけが正規科目で、日本語を含む他の外国語は、教育課程上の正規科目ではない。しかし、校長裁量で日本語科目を設置したり、放課後のクラブ活動のなかで日本語を教えたりしている学校がある。また最近は、韓国国内の外国人の急増に対応する「多文化教育」の一環として日本語をはじめとする外国語を教える動きも出つつある。2012年度日本語教育機関調査では約1,800人の学習者が確認できたが、実態はもっと多いものと推測される。

中等教育

《中学校》
 2001年度から「裁量授業」が始まった。裁量授業とは、上記の初等学校における校長裁量とは異なり、漢文、コンピュータ、環境、生活外国語(日本語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、ベトナム語の8言語)の4科目の中から校長が設置科目を決めて実施することが教育課程で規定されているものであり、むしろ選択必修科目の一つというべきものである。
 2012年度『教育統計年報』によれば、2012年4月1日現在で、韓国の中学校は3,162校あり、そのうち881校で生活外国語が履修されている。全中学校の約28%強であるが、このうちの何校が日本語を履修しているかは明らかにされていない。生活外国語全体の履修者数は267,218名である。なお、日本語教員数は648名(中国語は541名)である。
《高等学校》
 上述の『教育統計年報』では、2010年度までは高校を一般系と専門系に大別しており、一般系高校の中には人文系高校のほか、芸術高校、体育高校、外国語高校、科学高校が含まれていた。また、専門系高校を農業高校、工業高校、産業高校、水産・海洋高校、家事・実業高校、総合高校に区分していた。2011年度からは、上述の一般系高校が、「一般高校」(人文系高校)、「特殊目的高校」(芸術高校、体育高校、外国語高校、科学高校)、「自律高校」(教育課程、教員人事、学生選抜など自律的な学事運営が保証された高校)などへと細分化され、専門系高校は「特性化高校」に変更された。
 2012年に一般高校、特殊目的高校、自律高校に在籍する生徒のうち、日本語を選択した者は331,533名である。特性化高校の日本語履修者数は明らかになっていない。ただし教員数は示されており、一般高校、特殊目的高校、自律高校の日本語教員数は2,170名、特性化高校は523名である。
 日本語教育機関調査では中学校と高等学校を併せて「中等教育」として把握しており、2012年度調査では、2,762機関に694,036人の日本語学習者がいることが判明した。これは、2009年度調査の結果と比較すると、18万人近く減少したことになる。その要因としては、少子化、教育課程の改訂が大きな原因として挙げられるが、その他、韓国において、中国の経済的プレゼンスが年々意識されてきている中で、実利面での将来性を考えて中国語を学ぼうとする学習者が増えることを見越して中国語を開講する機関が増えたことも挙げられる。同時に、東日本大震災・原発事故や日本の経済状況、日韓の政治外交関係の悪化など、日本に対する複数のイメージの悪化により、日本語を選択しないという機関が一部に出てきていることも要因として挙げられる。

高等教育

 2012年度日本語教育機関調査によれば、韓国内の大学校・大学・大学院のうち476の機関(学科)で日本語教育が実施されていると見られている。2009年度調査と比較し、減少数は1,600人程度と、減少の幅は小さい。
 また2012年度『教育統計年報』によれば、「日本」「日本語」が学科名に含まれる大学校・大学・大学院は約170機関であることから、多くの大学校・大学・大学院が日本語を学べる複数の専攻学科を持っていることや、専攻だけでなく一般教養科目としても日本語が広く学ばれていることがうかがえる。
 なお、インターネットを利用した通信教育大学校(通称「サイバー大学」)は韓国に19機関存在するが、このうち専門課程で日本語を学習できる機関は3か所である。

その他教育機関

 民間企業や官庁に勤務する社会人、大学生、大学院生、中高生まで、学習者層は多岐にわたっている。
 2012年度日本語教育機関調査において、学校教育以外の学習者数が大幅に増加しているが、これは2012年度調査分より、ある大手民間教育機関の調査回答を入手できるようになったためである。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-3-3-4制。
 初等教育(初等学校)が6年間(6~12歳)、中等教育のうち、中学校が3年間(12~15歳)、高校(高等学校)が3年間(16~18歳)。高等教育として、大学(日本における「短期大学」に相当)が2年間、大学校(日本における「大学」に相当)が4年間。
 初等学校、中学校の9年間が義務教育である。

教育行政

 教育政策を統括している教育部は全国の4年制の大学校及び2年制の大学を直接管轄しており、さらに特別市・広域市・道の教育庁(市道教育庁)を管轄している。市道教育庁は、地方自治団体(市庁及び道庁)とは別の独立した行政機関である。市道教育庁は当該地域の高等学校を直接管轄し、さらに当該地域の下部教育庁(ソウル特別市の場合は、ソウル市内各区教育庁)を管轄しており、その管轄下に中学校・初等学校・幼稚園がある。
 また、学校教育の教育課程、及び修学能力試験の問題作成に関しては、独立行政機関である韓国教育課程評価院が取り扱い、大学入試に関する事業は韓国大学教育協議会*2)が取り扱っている。
*2)韓国教育課程評価院は、同院法に基づいて設立され、教育の質的向上を目的として教育課程と教育評価の研究開発等を行う機関。韓国大学教育協議会は、同協議会法に基づいて設立され、大学の教育・運営に関する研究開発等を行う機関である。

教育行政組織図。教育科学技術部が全国の4年制と2年制の大学および特別市・広域市・道の教育庁を管轄。市・道教育庁は当該地域の高等学校の他、当該地域の市教育庁およびソウル市内各区教育庁を管轄しており、その管轄下に中学校、初等学校、幼稚園がある。

言語事情

 公用語は韓国語。

外国語教育

《初等学校》
 3年次から英語が正規授業として取り入れられている。正規授業としての日本語教育は行われていないが、例外的に、済州特別自治道の1校で3年生から6年生までを対象に正規授業として日本語が教えられている。
《中学校》
第一外国語(必修):英語
第二外国語(選択):中学校裁量活動の選択科目の中の自由選択科目(漢文、コンピューター、環境、生活外国語)における生活外国語の一つとして日本語がある。生活外国語には、日本語の他に、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、ベトナム語がある。
《高等学校》
第一外国語(必修):英語
第二外国語:生活・教養科目領域(技術・家庭/第二外国語/漢文/教養)の中から選択する。第二外国語には、日本語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、ベトナム語がある。

外国語の中での日本語の人気

 2012年度『教育統計年報』によれば、一般系高校の第二外国語学習者数は、日本語33.1万人(60.1%)、中国語18万人(32.6%)、フランス語1.8万人(3.4%)などとなっており、第二外国語の中では根強い人気を保っている。高等教育機関での第二外国語学習者数に関しての正確なデータはない。
 日本語は、韓国語との近似性から「学びやすさ」「親しみやすさ」も感じられる半面、「誰でも、大した苦労もなく学べる言語」として軽んじられてしまう傾向もある。そのため高校生などは、「優秀な学生ほど、難しい中国語にチャレンジする」といった声も聞かれる。
 また特に、中国が世界第二の経済大国となり両国の関係が強まっていること、東日本大震災・原発事故の発生により日本に対するイメージの悪化などの影響で、「将来性を考えれば、日本語よりも中国語を学習するべきだ」といった雰囲気が、ここ数年特に親たちの間で広がりを見せていることは特記すべき点である。(2013年10月時点)。

大学入試での日本語の扱い

 2010年2月に「修学能力試験より『第二外国語/漢文科目』を外すことを教育科学技術部で検討中」との報道があり、その後公聴会等も実施されたが、2011年1月に発表された修学能力試験改正案では、「第二外国語/漢文」はこれまで同様に試験科目として残ることとなった。
第二外国語は、日本語・中国語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ロシア語・アラビア語、ベトナム語(2013年11月実施分から)がある。2013年11月実施の試験では、60,209人が「第二外国語/漢文」を選択した。

学習環境

教材

 学習者と学習動機の多様化に伴い、多種多様な日本語教材が出版されている。その中で、10代後半の初級者を対象にした独学書や日本旅行のための会話集の類が、従来主流であったビジネスマンや日本語を専攻する大学生のための教材よりも数多くなっているのが近年の特徴といえる。教材は、イラストがふんだんに使われたカラー版が好まれ、既存の教材の改訂版出版に際してCD-ROM教材を追加する傾向も顕著である。日本語能力試験対策本等の試験本に加えて、日本留学試験対策の教材も目に付くようになった。教材執筆者を見ると、これまで主流であった大学教員に加え、高校教員によるものが出版されるようになってきた。

初等教育

 初等学校では日本語が正規科目ではないため、教育行政機関が指定(国定、検定等)する教科書はなく、韓国の複数出版社から刊行されている、子ども向けの日本語学習書が利用されている。

中等教育

 中等教育では日本語が正規科目として存在しており、中学校、高等学校とも、検定教科書が使用されている。
 中学校の教科書は、2010年3月より、改定第7次教育課程に準拠した検定教科書8種類が発行されていたが、2009年改定教育課程が適用される2013年からは、「中学校生活日本語」には認定教科書が使用されることとなった。
 高等学校の教科書は、2014年から2009年改定教育課程が適用され、「日本語Ⅰ」は、認定教科書6種が使用されている。
 教育過程については、2015改定教育過程が、2017年3月より中学校で、2018年3月より高等学校で適用予定となっている。それに伴い2015改定教育過程に準拠した教科書の作成・編集も各出版社で行なわれている。

高等教育

 大学では、各大学が独自に開発した教材を使用する傾向がある。よって、ある特定の教科書が多く使われるということはない。

その他教育機関

 複数の出版社が数多くの日本語教材を刊行しており、民間日本語学校では、同系列の出版社が刊行する教材を利用する傾向がある。

マルチメディア・コンピューター

 大学や高等学校の教師が中心となったCD-ROM教材の開発が盛んである。中学校・高等学校の教育現場においてもこのようなマルチメディア教材が多用されている。また、インターネット上の学習サイト等も多数ある。

電波・有線放送

 放送通信大学校の授業科目として日本語の授業が放映されている。また、EBS(教育放送)ではラジオ日本語講座番組を放送している。
 さらに、サイバー大学校等の設立により、インターネット配信による遠隔教育が盛んに行われている。2015年度現在、サイバー大学は全国に21機関(4年制-17機関/2年制-4機関)ある。

教師

資格要件

初等教育

 外国語科目は履修科目となっていないため、日本語教師としての資格は設けられていない。日本語教師の採用は当該校校長の裁量となっている。

中等教育

 下記(1)と(2)の双方を満たすことが条件となっている。

  1. (1)「2級正教師資格証」を有していること。
     以下のいずれかを修めると、「2級正教師資格証」が取得できる。
    《師範大学》
     日本語教育科主専攻
    《その他の大学》
     日本語学が主専攻で、教育学が副専攻 または、教育学が主専攻で、日本語学が副専攻。
     ただし、大学に副専攻制度がない場合、日本語学主専攻の者が資格を得るためには教育大学院(修士、2年半)を修了しなければならない。
  2. (2)以下のいずれかの試験に合格していること。
    《私立高校の場合》
     各校が実施する教師採用試験
    《国公立高校の場合》
     毎年12月に国が実施する任用試験(国家試験)。採用・異動は基本的に市道単位で行われる。中学校教師と高校教師は「中等日本語教師」という一つの採用枠として募集され、試験合格後に配属先が中学校と高等学校に振り分けられる。その後の人事異動で中学校から高校への異動、またその逆も行われる。

高等教育

 日本語学や日本文学を含む日本学専攻者が日本語教育に従事しており、日本語教育学専攻者はむしろ少数である。教育機関の間に共通の資格があるわけではないが、新たに専任講師として採用されるには、最低でも修士号、一般には博士号を必要とする。

その他教育機関

 共通の資格はないが、多くの機関が、韓国の大学校の日本学関連学科卒業、日本の大学の日本語教育関連学科卒業、日本語教師養成講座420時間修了、(公財)日本国際教育支援協会主催の日本語教育能力検定試験合格等を条件に挙げているようである。

日本語教師養成機関(プログラム)

  1. (1)大学の主専攻コース(師範大学日本語教育学科、文科大学日語日文学科等)
  2. (2)教育大学院(修士課程のみ)

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

初等教育

 済州特別自治道では、道教育庁が雇用する中等教育のネイティブ教師1名を初等学校に派遣している。その他、韓国人以外の親を持つ子どもに対する二重言語教育(継承語教育)の一環として日本語を教える教師がいるほか、放課後授業の一環として保護者が日本語を教える場合も見られる。

中等教育

 済州特別自治道では、道教育庁が複数の日本語ネイティブ教師を期間制で雇用し、複数学校を巡回させる形式で授業を担当させている。また全羅南道や大邱広域市、江原道春川市などでは複数の日本語ネイティブ教師を期間制で雇用し、各校に配属し、授業を担当させている。また、外国語高校や私立学校において、日本語ネイティブ教師を雇用し「日本語会話」「日本語作文」等を担当させている例が見られる。
 「特技適性」(希望者から受講料を徴収して開講する放課後の学習時間)の時間に教えている非常勤日本語ネイティブ教師の例も見られる。

高等教育

 多くの大学で日本語ネイティブ教師が雇用されており、2~3年の短期契約が一般的。大半の教師が「日本語会話」等の授業を担当している。
 なお、外国人日本語教師(主に日本人・在日韓国人)の資格制度は設けられていないが、多くの機関では

  • 日本語教育主専攻、または副専攻卒業
  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • (公財)日本国際教育支援協会主催の日本語教育能力検定試験合格

などを条件に挙げる機関が多く、高等教育機関では、修士号以上の学位取得が条件であるケースが多い。

その他教育機関

 日本語ネイティブ教師は、大規模な日本語学校・予備校(韓国語で「学院」)で雇用されているほか、企業での日本語研修や在宅授業(スカイプやインターネットを使った授業)などで常勤、非常勤で授業を担当している。
 また、日本語能力試験や日本留学試験などの試験対策担当講師として日本語ネイティブ教師の需要がある。資格要件は特に設けられていないが、ほとんどの機関では4年制大学卒業が必須条件で、その他

  • 日本語教育主専攻、または副専攻卒業
  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • (公財)日本国際教育支援協会主催の日本語教育能力検定試験合格

などを必須もしくは優遇条件として課すところもある。
 また、就労に問題のないビザ所持者(永住ビザ、配偶者ビザなど)を条件とする場合がある。
 企業で教える場合には、韓国語の能力が一定程度求められる場合が多い。

教師研修

 教師を対象とした研修は以下のように分類される。
《資格研修》
 教師の昇進・昇給に影響する教師の等級を上げるための研修(2級正教師→1級正教師)と、本来の専攻科目ではない科目も教えられるようにする研修(副専攻免許)がある。
《職務研修》
 研修を主催する機関が、機関が所在する地区の教育庁の認定を受けて実施する研修。修了者には、15時間につき1学点*3)が与えられる。

*3)学点とは、一般的には大学等の科目履修単位、あるいは科目の成績を意味するが、ここでは研修履修単位を意味する。この学点の数は、昇進等人事考査に利用される。

《自律研修》
 教育庁等の認定を受けずに行われている研修。学点は与えられない。

現職教師研修プログラム(一覧)

 現在、実施されている資格研修と職務研修は、以下のとおり。

1. 《日本語教師1級正教師研修》
 各市道教育庁が実施する研修で、3年以上在職した教師に受講機会が与えられる研修(180時間:30日以上)。同研修の修了者は「1級正教師資格証」を取得し、その資格は昇進・昇給に影響する。各地域の教員を対象とし、管轄教育庁より委託された高等教育機関及び研修機関が実施。資格研修。
2. 《副専攻科目研修》
 各市道教育庁が実施し、本来の専攻以外の科目(日本語)を教えるために受講すべき研修(全450時間以上)。3年以上の教育歴を有する正規教師が受講可。資格研修。
3. 《ソウル日本語教育研究会主催研修》
 職務研修(毎年8月)、自律研修(毎年1月)
4. 《京畿道外国語教育研修院》
 中等日本語教師研修。毎年9月の1か月間に40名を対象に実施。職務研修。
5. 《教育庁主催研修》
 不定期で開催。教授法もしくは日本語能力中心。職務研修。
6. 《国際交流基金ソウル日本文化センター研修》
 中等日本語教師集中研修:年1回(1月)。職務研修。
7. 《国際交流基金ソウル日本文化センター、釜山韓日文化交流協会研修》
 中等日本語教師研修:職務研修。

 また、訪日研修として以下のもの等がある。

1. 《国際交流基金日本語国際センター 大韓民国中等教育日本語教師研修》
 中等日本語教師研修。毎年7-8月(1か月間)/中学校及び高校日本語教師。
2. 《京畿道外国語教育研修院 訪日研修》
 上述した京畿道外国語教育研修院での研修に参加した40名のうち、上位10名が訪日し、日本国内の大学などで日本語・日本語教授法・日本文化などの研修を受講する。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 韓国には多くの人文科学系の日本関連学会が存在するが、日本文学と日本語学の両方を主流とするものが大半であり、日本語教育を含む言語教育を主たる学究対象とした学会は多くない。
 長い歴史を有する全国規模の学会としては、1970年代に発足した「韓国日語日文学会」及び「韓国日本学会」が挙げられる。年複数回開催される両学会の学術発表大会には、全国から多くの日本語学、日本文学、日本語教育を専攻する大学教員が参加している。一方で、各地域の拠点大学を核とした学会や専門分野に特化した学会による独自の活動も行われており、全国で30程度の学会が存在する。
 2002年12月には、韓国内の日本関連学会が連合し「韓国日本学連合会」が発足、国際学術大会を催されるなど活動を続けてきたが、2011年末に連合会が再編成され、現在は主に首都圏を中心として活動する学会の連合体である「韓国日本研究団体」と、地方所在学会の連合体である「韓国日本研究総連合会」の2団体が存在する。
 中等教員による日本語教育研究会は、1990年代に各道・市単位で次々と発足し、研究会によって活動内容は異なるが、主に教員研修、教材開発、弁論大会などを行っている。2003年2月には、全国16の研究会が連合した「韓国日本語教育研究会」が発足、毎年2月には各地域の研究会の役員が一堂に会したワークショップの実施、8月には各地域の研究会の代表による「韓国日本語教育研究会授業研究発表大会」が開催されている。
 多くの学会、研究会がウェブサイトを有しているが、ウェブサイト上で教材開発、教材提供を中心に行っている教師グループ「JTA(全国日本語教師コミュニティ)」も存在している。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2016年10月現在)

日本語上級専門家

ソウル日本文化センター 1名

日本語専門家

ソウル日本文化センター 3名(うち1名は嶺南地域担当)

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 文部科学省REXプログラム(外国教育施設日本語指導教員派遣事業、Regional and Educational Exchanges for Mutual Understanding):平成25年度の派遣をもって終了。

シラバス・ガイドライン

《中等教育課程の改正》
 日本の初中等教育の学習指導要領に相当するものとして、韓国には「教育課程」がある。1968年の第1次教育課程からほぼ5年ごとに公布され、2002年には第7次教育課程が出された。その後2007年には、第7次教育課程の改定が行われた。その後は5年ごとではなく、必要に応じて改定することとなったため、第8次教育課程とは言わず、2007年改定教育課程と呼ばれている。
 2007年改定教育課程は、第7次教育課程の特徴であった、コミュニケーション機能の重視、学習者中心、異文化理解や交流態度の重視などを踏まえつつ、「第7次教育課程の細分類化」「文化教育の強化と再分類化」「基本語彙と意思疎通(コミュニケーション)基本表現の修正」が主な変更点であり、全体的にみると文化の教育を重視する傾向がある。
 2007年改定教育課程は、中学校では2010年度から、高等学校では2011年から適用されることになっていたが、その後2009年12月にも2009年改定教育課程が公布された。この改定の最大の特徴は、政府が外国語教育政策の原則としている「英語重視」をさらに推し進めたものになっていることで、高校での第二外国語は必修科目を外れ、生活・教養科目領域(技術・家庭、第二外国語、漢文、教養)からの選択必修科目に変更されることになった。

評価・試験

 国際交流基金が実施する日本語能力試験、独立行政法人日本学生支援機構が実施する日本留学試験のほかに、民間の出版社等が行う日本語能力判定試験が複数ある。また、日本語は、大学受験のための「修学能力試験」における第二外国語の選択受験科目の一つでもある。(→修学能力試験については、「教育制度と外国語教育」参照。)

評価・試験の種類

1.《日本語能力試験(JLPTJapanese-Language Proficiency Test)》
 1984年から日本国内及び海外で、日本語を母語としていない者を対象に日本語能力を測定及び認定。2010年にはコミュニケーション能力をより重視し、元々4段階であったレベルを5段階に増やした新試験の実施を開始した。2015年度、韓国では54,266人が受験。
 主催団体:国際交流基金
  ソウル:JLPT日本語能力試験ソウル実施委員会
  釜山:(社)釜山韓日文化交流協会
  済州:済州商工会議所
  実施回数:年2回(7月、12月)
  実施都市
  ソウル圏:ソウル、仁川、水原、城南、安養、天安、清州、大田、全州、光州、春川、高陽、富川、原州
  釜山圏:釜山、金海、梁山、大邱、亀尾、昌原、晋州、蔚山、浦項
  済州圏:済州
 受験料:一般受付:48,000ウォン(N1~N3)、40,000ウォン(N4~N5)
 追加受付:一般受付受験料+10,000ウォン
URL:http://www.jlpt.or.kr/(ソウル圏)
URL:http://www.bsjlpt.or.kr/(釜山圏)
URL:http://www.jejujlpt.or.kr/(済州圏)
対象:限定せず。
2.《JPTJapanese Proficiency Test)》
 聴解試験及び読解試験(日本語能力試験とは異なり、全受験者が同一の問題を受験)。主催団体がJPTとJLPTの両方を受験した者を対象に調査し、JLPTの各レベルに対してのJPTのスコア分布をウェブサイトに掲載している。
主催団体:YBM Sisa.com
実施回数:年19回
実施都市:ソウル、釜山、仁川、大邱、大田、光州、蔚山を含め、33都市。(このほか日本国内で、東京:年6回(奇数月)、大阪:年2回(5,11月)実施)
受験料:43,500ウォン、軍人:21,700ウォン、特別追加受付:47,800ウォン
URL:http://exam.ybmsisa.com/jpt/japan/japan01_1.asp
対象:限定せず。
3.《SJPT(Spoken Japanese Proficiency Test)
 韓国初のCBT(Computer Based Test)方式の日本語スピーキングテストで、日本語学習者の話す能力を直接的に評価することができるとしている。
主催団体:YBM Sisa.com
実施回数:年16回
実施都市(テスティング・センター数):ソウル(14)、釜山(1)、大邱(1)、大田(2)、光州(4)、全州(3)、水原(3)、天安(2)、済州(1)、高陽(4)、亀尾(2)、牙山(1)の合わせて18都市、68か所で実施。
受験料:72,600ウォン(但し、JPT定期試験の有効成績保有者は61,600ウォン)
URL:http://exam.ybmsisa.com/sjpt/abo_profile.asp
対象:限定せず。
4.《FLEX(Foreigner Language Examination)※2005年より実施》
主催団体:大韓商工会議所、韓国外国語大学FLEXセンター
実施回数:年4回(2016年:3、5、8、11月)
実施都市:ソウル・大田・光州・大邱・釜山 受験料:聴解・読解 38,000ウォン
作文 50,000ウォン
口頭 64,000ウォン
URL:http://flex.hufs.ac.kr/
対象:限定せず。
5.《日本語検定 ※2011年より韓国実施》
 日本語総合能力を評価するための試験。語彙、文法、敬語、表記、漢字、意味など日本語運用能力に関する6つの項目で評価。日本語を母語とする人及び日本語を第二外国語として学習する外国語学習者を評価対象にする。(2014年現在韓国内では2、3、4、5級受験可能)
主催団体:日本語検定委員会/YBM Sisa.com
実施回数:年2回(2016年:6、11月)
実施都市:ソウル(4)、釜山(2)、大邱(2)、大田(3)、光州(3)、水原(2)、仁川(3)、昌原(1)、城南(1)の合わせて9都市、21箇所で実施。
受験料:2級(45,000ウォン)、3級(40,000ウォン)、4級(35,000ウォン)、5級(30,000ウォン)
URL:http://exam.ybmsisa.com/nihongo/index.asp
対象:限定せず。
6.《SNULT(Seoul National University Language Test)》
 TEPS管理委員会主催、ソウル大学校言語教育院出題の外国語能力試験。難易度の最も低い問題はJLPTN5のレベル、最も高い問題はJLPTのN1より高度の語彙力、文法的知識が必要としている。
2008年8月から実施。点数制(100点満点)である。
主催団体:TEPS管理委員会
実施回数:年4回(2016年:2、5、8、11月)
実施都市:ソウル、釜山、大田
受験料:40,000ウォン
URL:http://www.teps.or.kr/Teps/info/snult_info.aspx
対象:限定せず。
7.《BJT(ビジネス日本語能力テスト)》
主催団体:日本漢字能力検定協会
実施回数:年2回(6、11月)
実施都市:ソウル、釜山
受験料:60,000ウォン
URL:http://www.bjttest.com/
対象:限定せず。

日本語教育略史

1960年代
1961年 韓国外国語大学校に日本語科開設
1962年 国際大学校(現在の西京大学校)日本語科開設
1963年 第2次教育課程公布(~1974)高校での第二外国語(英語・ドイツ語・フランス語・中国語)履修開始
1968年 在釜山日本国総領事館に日本語講座開設
1970年代
1972年 2年制大学への観光科設置を機に、日本語関連専攻学科の開設に弾み
韓国外国語大学校大学院に日本語科開設
1973年 韓国日本学会 創立
国立慶尚大学校師範大学(教育学部)に日本語教育科開設
第2次教育課程の第2次部分改定 高校の第二外国語科目が必修化、5言語(ドイツ語・フランス語・スペイン語・中国語・日本語)から選択となる
1974年 第3次教育課程公布及び施行(~1981)
1975年 ソウル大学校等が入試本考査から日本語を除外の意志表明
1976年 「大学入学予備考査(1968~1980)」の外国語選択科目に日本語が加わる。
1977年 在韓日本国大使館公報文化院に日本語講座開設
1978年 韓国日語日文学会 創立
1979年 国立慶尚大学校教育大学院に日本語専攻開設
1980年代
1981年 「大学入学学力考査(1981~1993)」(「大学入学予備考査」改め)への一本化、大学別の本考査の廃止
テレビ日本語講座(KBS3)放送開始
第4次教育課程公布
1983年 全国高校日本語教師を対象とする「1級正教師」資格研修開始(国立慶尚大学校)
1984年 第4次教育課程施行(~1987)
1986年 大学入試において第一外国語(英語)と第二外国語が分離
第二外国語科目(ドイツ語・フランス語・スペイン語・中国語・日本語)のなかで日本語の学習者数が第1位となる
1987年 教育改革により、高校において第二外国語科目か実業科目(農、工、商、水産、家庭)のいずれかを選択する方式に変更
1988年 第5次教育課程公布(~1995)
教育改革の修正、高校において第二外国語と実業科目を異なる選択群に戻す
1990年代
1990年 第5次教育課程施行
1992年 第6次教育課程公布
ソウル大学校等が入試本考査の第二外国語から日本語のみ除外を発表
1994年 「大学修学能力試験(1994~現在)」(「大学入学学力考査」改め)で第二外国語科目を除外
1996年 第6次教育課程施行(~1995)
1997年 第7次教育課程公布(~現在)
ラジオ日本語講座(EBS)放送開始
1998年 「2001年度大学修学能力試験」より第二外国語科目(日本語を含む)を選択科目として採用する旨発表
2000年代
2000年 「2001年度大学修学能力試験」(大学入試)の実施
「高等学校日本語教師特別養成課程」の設置(2001~2002年の2ヵ年間)
2002年 第7次教育課程施行(~現在)
中学校の選択科目に日本語を含む第二外国語が編入
「大学修学能力試験」に第二外国語が選択科目として導入される
韓国日本学連合会(5つの日本関連学会の連合)の発足
2003年 韓国日本語教育研究会(中等日本語教師会の全国連合)の設立
「第1回全国連合学力評価」(大学修学能力試験の模試。高校2年生対象)の実施
2007年 2007年改定教育課程告示
2008年 李明博大統領就任後の行政機構改編により、教育人的資源部が教育科学技術部に
2009年 2009年改定教育課程告示
2010年代
2011年 2009年改定教育課程施行 第二外国語は生活教養科目の一つと位置付けられ、必修科目から外れる
2012年 韓国日本学連合会が再編成され、「韓国日本研究団体」と「韓国日本研究総連合会」の2団体が設立

参考文献一覧

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