マレーシア(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
176 430 33,224
学習者数 内訳
教育段階 学習者数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 17,450 52.5%
高等教育 12,442 37.4%
その他 教育機関 3,332 10.0%
合計 33,224 100.0%

2015年度日本語教育機関調査結果 学習者数グラフ
2015年度日本語教育機関調査結果の学習者数に関する帯グラフ。初等教育は0名で全体の0.0%、中等教育は17,450名で全体の52.5%、高等教育は12,442名で全体の37.4%、学校教育以外は3,332名で全体の10.0%。

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 マレーシアにおける日本語教育は戦中の日本統治時代から行われ、マレーシアから「南方特別留学生」が日本に留学した。
 戦後、1966年にマラヤ大学人文社会科学部で日本語講座が開講され、その後、各大学でも日本語教育が行われるようになった。マラヤ大学では1982年に日本留学予備教育課程が設けられ(当初2年間は文系のみマレーシア国民大学で実施)、日本留学のための日本語教育が開始された。1998年にはマラヤ大学言語学部に日本語専攻コースが設けられた。
 また、1984年には、全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)でも日本語が外国語選択科目として教えられるようになった。これに対応するため、初等・中等教員を日本の大学に留学させ日本語教育関係の学位(学士)を取得させる日本語教師養成プログラムが、マレーシア人事院により1990年に開始された。同プログラムは、1998~2002年の一時中断を経て2008年まで継続された(2013年に最終期生が帰国、通算留学者数156名)。また、2005年には一般全日制中等学校(デイスクール)にも日本語教育(を含む第2外国語科目)が拡大されたことに伴い、より多くの日本語教師を早期に養成する必要が生じたことから、主にマレーシア国内の研修で日本語教師を養成するプログラムがマレーシア教育省により2005年9月に開始された。 このプログラムは2013年修了の第6期生までで67名が修了し、各地の中等学校で日本語を教えている。現時点(2016年10月)で7期生の募集は行われていない。

背景

 1981年7月に就任したマハティール首相(当時)は、マレーシアの国造りのため、日本や韓国をモデルとして人材を養成する構想を発表した。これはその後、東方(ルック・イースト)政策と呼ばれ、大学や高等専門学校への留学、産業技術研修生派遣など多様な事業が行われている。

特徴

 東方政策により、日本留学を目標としたいくつかの予備教育プログラムがある。一般に日本に対する興味・関心は強いが、予備教育以外の日本語教育は初級が中心である。中等教育段階における学習者数が全体の過半を占めている。

最新動向

  • 日本語を教えている中等学校は、全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)で56校、全日制中等学校(デイスクール)で79校に増加した(2015年9月現在)。
  • 2017年、中等学校において新シラバスが施行され、2017年入学の1年生から適用される。新シラバスに基づいた教科書は、1年生~3年生までで1冊、4年生、5年生で1冊の計2冊となる。2016年10月現在、前者はすでに完成しており、後者についても、2017年中に完成する見込みとなっている。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育を行っている公的な初等教育機関の存在は確認されていない。クアラルンプールのSayfol International School、ペナンのThe International School of Penang(Uplands)といったインターナショナルスクールでは、初等教育段階の児童を対象とした日本語クラスが開講されている。

中等教育

 1984年に、東方政策の一環として、ブミプトラ(マレー人及びその他のマレーシア先住民)の優秀な生徒を集めた全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)において外国語選択科目として日本語教育が開始された。2005年には全日制中等学校(デイスクール)13校にも日本語教員が赴任し、日本語教育が開始された。同年、外国語教育が4年制から5年生に改定され、現在に至る。2015年9月現在、56校のレジデンシャルスクールと、79校のデイスクールで、選択科目として日本語が教えられている。2017年には、シラバスの改訂が行われる。新シラバスとなる“Dokumen Standard Kurikulum dan Pentaksiran Bahasa Jepun”(日本語カリキュラムと評価のスタンダード)では、これまでのシラバスに引き続き21世紀スキルの育成がうたわれているが、特に高次思考能力の育成や探求型学習を推奨している点と、パフォーマンス評価が導入される点に特徴がある。  このほか、中華系の私立中等学校(華文独立中学)のなかには、課外活動(部活動)として日本語学習の機会を提供している学校がいくつかある。
関連情報:レジデンシャルスクールにおける日本語教育の詳細

高等教育

日本留学のための予備教育

 中等教育修了者を対象とする日本留学のための予備教育が、以下の4機関で行われている。

  • Rancangan Persediaan Khas ke Jepun, Pusat Asasi Sains, Universiti Malaya(通称Ambang Asuhan Jepun、AAJ) マラヤ大学予備教育部日本留学特別コース
    ブミプトラ(マレー系及びその他のマレーシア先住民族)を対象に、2年間の予備教育を経て、日本の学部(1年次)に入学。本プログラムにより、これまでに3,000名を超える学生が日本に留学している。
  • Kumpulan Teknikal Jepun(KTJ), INTEC Education College INTEC教育カレッジ東方政策プログラム高等専門学校予備教育コース
    1983年に開始された、高等専門学校へのマレーシア政府派遣留学プログラム。中華系、インド系などブミプトラ以外にも開かれており、2年間の予備教育を経て、日本では高等専門学校3年次に編入。当初は日本国内で予備教育を実施していたが、1992年にマレーシア工科大学(UTM)クアラルンプールキャンパスに設置された高等専門学校予備教育センターでの実施に切り替わり、さらに2009年度からはマラ工科大学(UiTM)国際教育センター(INTEC;2013年にINTEC教育カレッジに改編)で実施されている。本プログラムにより、これまでに1,700名を超える学生が日本に留学している。2012年からは、主にマラ理科中等学校のための日本語教員養成のため、1年間の予備教育後、日本でさらに1年間の準備教育を経てから学部(1年次)に入学するプログラムも合同実施されている。
  • Malaysia Japan Higher Education Programme(MJHEP), Yayasan Pendidikan MARA マラ教育財団マレーシア日本高等教育プログラム
    円借款を受けて1993年に開始されたマラ教育財団ジャパン・マトリキュレーション・センター(JMC)、のちの日本マレーシア高等教育大学連合プログラム(JAD)を前身とする、ツイニング形式による大学(学部)への留学プログラム。日本留学時は学部3年次に編入。2011年の新入生からは円借款を卒業し、マラ教育財団の資金で実施されている。本プログラムにより、これまでに900名を超える学生が日本に留学している。
  • Institut Bahasa Teikyo(IBT) 帝京マレーシア日本語学院
    1998年に開校、私費留学生及びマレーシア政府派遣留学生を対象に大学(学部)留学予備教育を実施。2年間(私費留学生向けには1年間のコースもあり)の予備教育を経て、日本の学部(1年次)に入学。
一般高等教育

 国立大学20校のうち、次の19校で日本語教育の実施が確認されている。[アルファベット順]

  • Universiti Islam Antarabangsa Malaysia(IIUM、マレーシア国際イスラム大学)
  • Universiti Kebangsaan Malaysia(UKM、マレーシア国民大学)
  • Universiti Malaya(UM、マラヤ大学)
  • Universiti Malaysia Kelantan(UMK、マレーシア・クランタン大学)
  • Universiti Malaysia Pahang(UMP、マレーシア・パハン大学)
  • Universiti Malaysia Perlis(UniMAP、マレーシア・プルリス大学)
  • Universiti Malaysia Sabah(UMS、マレーシア・サバ大学)
  • Universiti Malaysia Sarawak(UNIMAS、マレーシア・サラワク大学)
  • Universiti Malaysia Terengganu(UMT、マレーシア・トレンガヌ大学)
  • Universiti Pendidikan Sultan Idris(UPSI、スルタン・イドリス教育大学)
  • Universiti Pertahanan Nasional Malaysia(UPNM、マレーシア防衛大学)
  • Universiti Putra Malaysia(UPM、マレーシア・プトラ大学)
  • Universiti Sains Islam Malaysia(USIM、マレーシアイスラム科学大学)
  • Universiti Sains Malaysia(USM、マレーシア科学大学)
  • Universiti Teknikal Malayisa Melaka(UTeM、マラッカ・マレーシア技術大学)
  • Universiti Teknokogi Malaysia(UTM、マレーシア工科大学)
  • Universiti Teknologi MARA(UiTM、マラ工科大学)
  • Universiti Tun Hussein Onn Malaysia(UTHM、マレーシア・トゥン・フセイン・オン大学)
  • Universiti Utara Malaysia(UUM、マレーシア北大学)

 このうち、日本語専攻があるのはUM(マラヤ大学)言語学部のみである。USM(マレーシア科学大学)での日本語教育は副専攻として言語翻訳センターで行われてきたが、このセンターが2008年11月に言語リテラシー翻訳学部に昇格した。また、2005年からUMS(マレーシア・サバ大学)、2016年からIIUM(イスラム国際大学)において、副専攻として日本語教育が行われている。UiTM(マラ工科大学)やUUM(マレーシア北大学)では、日本語が選択必修科目となっている。  国立大学に限らず、Universiti Multimedia(MMU、マルチメディア大学)、Universiti Tunku Abdul Rahman(UTAR、トゥンク・アブドゥル・ラーマン大学)、Kolej Tunku Abdul Rahman(KTAR、トゥンク・アブドゥル・ラーマン・カレッジ)、Taylor's University(テイラー大学)、International University of Malaya-Wales(マラヤ・ウェールズ国際大学)などの私立大学や、University of Nottingham Malaysia Campus(ノッティンガム大学マレーシアキャンパス)など外国大学のマレーシアキャンパスでも日本語教育が行われている。
 日本の大学と交換留学制度を設けている大学があり、例えばUMが東京大学、東京外国語大学、青山学院大学等と、USMが南山大学、中部大学等と、UTMが筑波大学と交換留学を行っている。

その他教育機関

 各地の日本語協会や民間学校、公的機関が運営する教育機関、日系企業(社員教育として実施)で教えられている。
 1968年創立のマレーシア日本語協会(クアラルンプール)や1982年設立のペナン日本語協会(ペナン)、1986年設立のペラ・マレーシア日本友好協会(イポー)などのNGOは、日本語講座の開講や日本文化紹介を通じて地域の日本語教育推進の役割を担ってきた。2016年現在も、それぞれ日本語能力試験(クアラルンプール会場、ペナン会場、イポー会場)の実施機関となっているほか、ペナンやイポーでは日本語弁論大会の実施機関となっている。
 民間学校は、クアラルンプール周辺をはじめとして多数存在するが、その多くが初級(JLPT N4合格程度)レベルのクラスを開講している。中級レベル以上のクラスを開講している学校は限られている。他に、日本留学を目的とした学習者を対象としたコースを開講している学校、プライベートレッスンや企業へ教師を派遣している学校もある。
 日系企業内の社員教育は、上述のような民間の日本語学校に委託したり、非常勤の日本語教師を迎えたりして行われていることが多い。
 他には、小学校や中学校の先生たちがボランティアで日本語を教えているクアラルンプール日本人学校や、在留日本人ボランティアによりクアラルンプール日本人会で行われている日本語講座がある。また、クアラルンプールにあるSayfol International School、ペナンにあるThe International School of Penang(Uplands)では、選択外国語教科として日本語が教えられている。

教育制度と外国語教育

教育制度

 6-5制。
 小学校は6年間(6~11歳)で、国民学校と国民型学校の2つのタイプがある。国民学校では、教育言語はマレー語で、英語は必修となっている。国民型学校は、教育言語の違いでさらに2つのタイプに分かれ、中国語国民型とタミール語国民型があるが、マレー語は必修科目になっている。
 中等教育では、教育言語は一律マレー語となり、5年間(12歳~16歳。国民型学校の卒業者でマレー語力が不十分な者は、1年間の移行学級を経て13歳~17歳)で、前期(フォーム1~3、各1年間)と後期(フォーム4~5、各1年間)に分かれる。なお、中等教育機関のエリート校である全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)がマレーシア全土に69校ある。また、公的な中等教育機関の枠外に、独自のカリキュラムを用いて中国語で授業を行う6年制の私立中等学校(「華文独立中学」とよばれる)も存在する。
 高等教育機関としては、ポリテクニック(2~3年間、総合技術専門学校)、師範学校(4年間、初等中等教育の教師養成)、カレッジ(2~3年間)、大学(3~6年間)がある。このうち、ポリテクニック、師範学校、カレッジへは中等教育終了後すぐに進学することができるが、大学に進学する場合は、大学進学前準備教育課程であるフォーム6(一部の中等学校において実施、1.5年間)を経なければならない。成績優秀な学生(但し、ブミプトラ優先)は、フォーム6課程に代えて大学予備教育機関(マトリキュレーション・コース、1~2年間)を修了することでも進学が可能である。
 進級・進学の可否及び進学先は、全国統一試験の結果による。全国統一試験を受けるのは、小学校6年次のUjian Pencapaian Sekolah RendahUPSR、初等教育到達度試験)*、中等教育3年次のPenilaian Menengah RendahPMR、前期中等教育評価。2013年の実施を最後に廃止、校内評価に移行)、5年次のSijil Pelajaran MalaysiaSPM、マレーシア教育証書=中等教育修了試験)、フォーム6の2年次のSijil Tinggi Persekolahan MalaysiaSTPM、マレーシア学校教育高等証書=大学入学資格試験)である。(* 但し、初等教育から中等教育への進学可否はUPSRの結果に影響されない。)
 華文独立中学は、修了時に独自の統一試験Unified Examination CertificateUEC)を実施している。マレーシアの国立大学への進学のためには別途STPMを受験する必要があるが、海外留学の場合、受入国・大学によってはUECの結果を中等教育修了資格として認めている。

教育行政

 2004年の省庁再編で従来の教育省は「教育省」と「高等教育省」に分割、2013年に再び両省が「教育省」に統一されたが、2015年に「教育省」と「高等教育省」に再分割。
 また、留学政策については人事院が管轄している。

言語事情

 マレー語が国語であり、公用語になっている。
 その他、中華系住民の間では中国語(広東語、福建語、客家語等含む)、インド系住民の間ではタミール語等、その他各民族の言語が使用されている。英語も広く使われている。
 初等教育では中国語(北京語)、タミール語を教育言語とする学校の存在が認められているが、中等教育以降は私立学校を除いてマレー語が教育言語となる。2003年入学者より、英語力の強化を目的として、数学と理科については英語による教育に切り替わったが、両教科の授業に支障が出ているとの批判やマレー語の地位強化の観点から、2010年入学者より両科目の教育言語を順次元に戻すことが決定され、それ以前からの入学者についても移行期間として学校裁量によりいずれかの言語もしくは両言語併用で授業が行われている。ただし、英語の授業時間数が増やされるなど、英語力の強化は引き続き重視されている。

外国語教育

 多民族国家のマレーシアは、複数言語が日常生活の中で使用されていることから、「国際語教育」という位置づけで第二外国語教育が行われている。初等教育から英語が必修。
 中等学校のうち全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)は、必修の英語に加え、アラビア語・ドイツ語・フランス語・中国語・日本語の5言語のうち1言語が選択必修となっている(但し、一部の学校ではアラビア語も必修になっているため、アラビア語を除く言語が選択対象科目となっている)。一般中等学校(デイスクール)では、必修の英語以外に学習する外国語は、日本語・フランス語・ドイツ語のうち1言語が学校裁量で決められた上で、希望する生徒が受講する。なお、マレーシア国内の民族の言語として、中国語、タミール語も一定数以上の生徒の父母の希望があれば開講されることになっている。

外国語の中での日本語の人気

 1984年に中等教育機関6校で開始された日本語教育は、2015年9月現在135校に拡大している。日本語を選択希望する生徒は少なくないが、学校側ではそれぞれの外国語の履修者を均等にしようとしているところもある。大学では、学習希望者は多いが教師の数が足りないのが実情である。一方、学校教育以外においては経済面・文化面での存在感を背景に中国語や韓国語の人気が上昇しており、日本語の人気は相対的には以前より低下している。

大学入試での日本語の扱い

 大学の一般的な入学要件は、大学進学前準備教育課程であるフォーム6終了時に行われるSTPMに合格していることである。この試験科目に日本語は入っていない。なお、大学予備教育機関(マトリキュレーション・コース)の学生はSTPMを受けずに大学に進学する。
 フォーム6や大学予備教育機関への進学は中等教育終了時に行われるSPM合格が前提になるが、この試験科目に日本語は入っていない。
STPMはAレベル、SPMはOレベル相当の試験と認定されており、学習期間が中等教育での5年間しかない国際言語科目〔(含む日本語を含む)〕はこれらのレベルに到達できない。)

大学入試での日本語の扱い
STPMに採用されている言語科目: 英語(必修)、アラビア語、中国語、タミール語
SPMに採用されているマレー語以外の言語科目: 英語(必修)、アラビア語、中国語、タミール語、パンジャブ語、イバン語、フランス語(進学判定に関わる科目外)

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育を行っている公的な初等教育機関の存在は確認されていない。

中等教育

 2008年度に施行された現行シラバス“Sukatan Pelajaran Bahasa Jepun”(日本語指導要綱)準拠教科書は、1年生~5年生用が使用されている。また、2010年度国際交流基金日本語国際センター上級研修に参加した中等学校教師によって同教科書1年生用の指導の手引が開発され、2011年1月に全校教師に配布された。国際交流基金クアラルンプール日本文化センターはこの指導要綱に準拠した教授用リソース(2年生~4年生用)を制作し、各校教師に配布した。
 その他の副教材などは、主に国際交流基金の寄贈により、年少者向けに日本で開発されたものが多く使用されている。
 2017年より施行される新シラバス“Dokumen Standard Kurikulum dan Pentaksiran Bahasa Jepun”(日本語カリキュラムと評価のスタンダード)に準拠した教科書は、1~3年生用が1冊にまとめられており、2017年入学生より使用が開始される予定である。4、5年生用も1冊にまとめられるが、こちらは2017年に制作される予定である。

高等教育

 『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)が最も多く使われているが、自主制作教材を使っている機関が増えてきている。

その他教育機関

 『みんなの日本語』(前出)が最も多く使われている。

マルチメディア・コンピューター

 高等教育機関においては、各校に教師用、学生用ともにコンピューターやインターネット接続環境は設置されているが、授業等での利用は担当教員による。
 中等教育機関においても、コンピューターやインターネット接続環境は各校に設置されているが、授業での利用は担当教員による。2012年に、JACTIM基金(マレーシア日本人商工会議所基金)の支援により、中等教育日本語教材制作コンテストが行われ、多くの中等学校日本語教師がマルチメディアを使用した自作教材を制作した。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育を行っている公的な初等教育機関の存在は確認されていない。

中等教育

 マレーシアの初等・中等学校の教員免許がある者。教員免許取得の条件としては、

  • 教員養成大学校(IPGInstitute Pendidikan Guru / Teacher's Training Institute)、スルタン・イドリス教育大学(UPSI)またはその他の国立大学教育学部卒業(学位取得)
  • SPMにおけるマレー語の成績が所定の基準以上であること。

 日本語科目担当教師に関しては、上記の条件に加えて、マレーシア教育省が指定する日本語教員養成プログラムの修了が必要となる。マレーシア人事院が1990年に開始した、日本の大学に留学し学位を取得する教員養成プログラム(2008年派遣終了)に代わり、2005年からは主にマレーシア国内での研修により日本語教員を養成するプログラムがマレーシア教育省により実施された(詳細は後述)。

高等教育

 各大学によって異なる。日本語教育の知識、経験が求められる場合もあれば、大学を卒業し、日本語の知識があればいいという場合もある。しかし、最近では、修士号を持った教師が増えている。在職中に修士課程に通う教師もいる。昇進の条件として博士号が必須となりつつあることから、博士号取得を目指す教師も増えている。

その他教育機関

 特に資格の定めはないが、日本語教育能力検定試験合格や養成講座420時間修了が採用条件となっている場合が多い。マレーシア人については日本滞在経験者、日本語の運用力の高い者が雇用される傾向が強い。

日本語教師養成機関(プログラム)

  • Institut Pendidikan Guru - Kampus Bahasa AntarabangsaIPG-KBA,教員養成大学校国際語キャンパス、旧IPBA/Institut Perguruan Bahasa-bahasa Antarabangsa 国際言語教員養成所)
     中等教育における日本語教育の拡大に伴う教師の需要を満たすべく、2005年から2013年まで、日本語教員養成コースを実施した。このコースは、すでに中等教育機関での教員資格を有する教師を対象に、12週の日本語集中コースののち、1年間の本コース(日本語、教授法)を実施し、このコース修了後1年間マレーシア国内の中等学校でインターンシップを行い、最後に2か月の訪日研修(国際交流基金日本語国際センター)を経て、日本語教師を育てようとするものである。毎年15名の教員を養成する5か年計画として開始されたが、当面の教師需要を満たすため、さらに2期にわたって実施することが決定された。しかしながら、2013年に第6期生が修了したのち、2016年10月現在まで、第7期生の養成は行われていない。これまでの同コースの修了生は67名。今後は、日本語関連の学位を取得した者を対象に、日本語科教員として教員免許を取得させるプログラム(インサービス)も視野に入れて、新たな教員養成システムの構築に向けた検討が進められている。
  • マラ公社 日本留学プログラム
     マラ公社(MARA;Majlis Amanah Rakyat。ブミプトラの社会進出や商工活動を支援する特殊法人。マラ教育財団はその傘下)が日本語教師養成を目的として2012年に開始した日本留学プログラム。マラ工科大学国際教育カレッジ(現INTEC教育カレッジ)において9か月の予備教育を受けたのち、さらに日本で1年間の準備教育を経てから学部(1年次)に入学する。以前のマレーシア人事院による日本語教師養成プログラムとよく似た形式だが、中等教育を修了したばかりの学生を対象としている点、配属先として想定されているのが公立中等学校ではなく、主にマラ公社が設置・運営する教育機関である点が異なる。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

初等教育

日本語教育を行っている公的な機関の存在は確認されていない。

中等教育

 全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)には1984~2001年の18年間、青年海外協力隊の日本語教師隊員が派遣されていた。合計104名派遣され、中等教育段階における日本語教育の基礎作りを担った。1995年以降、日本留学により養成されたマレーシア人日本語教師が各校に配属されるのに伴い、マレーシア人教師と日本人教師が協働で日本語科目を担当するようになった。青年海外協力隊の派遣が終了した2002年以降、中等学校には日本人教師はいない。但し、2009年よりJENESYS若手日本語教師派遣プログラムにより派遣された若手日本語教師が毎年10か月ほどずつ一部の中等学校に配属され、マレーシア人教師を補佐する役割を果たしてきたが、同プログラムは2011年派遣をもって終了した。(また、教師ではないが、2015年より「日本語パートナーズ」プログラムが開始され、日本人がマレーシア各地の中等学校に派遣されている。第1期は8名、2期は20名のパートナーズがマレーシア人教師の補佐として、日本文化の紹介などを行った。そして2017年派遣予定の第3期は、30名に増員される。本プログラムは、2020年まで続く予定である。)

高等教育

 大学では、以前はマレーシア人の教師が少なかったため、ネイティブの日本人が大学の直接雇用で採用されてきた。しかし、最近はマレーシア人教師の採用が増加している。予備教育を除いた高等教育機関全体の教師のうち、マレーシア人教師の割合は6割近くになっており、マレーシア人教師だけの機関も4~5割ほどある。

その他教育機関

 比率ではネイティブ教師数が約7割となっている。民間日本語教育機関では教師が日本人だけのところもある一方、非営利機関ではマレーシア人教師が多数を占める機関が多い。採用においては、日本語教育能力検定試験合格や養成講座420時間修了が条件となっている場合が多い。非ネイティブかネイティブかの特性を生かした役割の棲み分けをしているところは多くない。

教師研修

JFKL日本語教師研修コース

 初級を教えている日本語教師の質的向上をはかることを目的として、国際交流基金クアラルンプール日本文化センター(JFKL)が実施している教師研修コース。対象はマレーシアで日本語を教えている教師で、日本語母語話者でない場合、日本語能力試験N1(旧1級)取得あるいはN1相当の日本語力を有する者としている。

Regional Seminar for Secondary School TeachersRESESS、中等教育教師向け地域セミナー)

 2007年から国際交流基金クアラルンプール日本文化センターがマレーシア教育省と共催で実施している、中等教育の現職日本語教員を対象とした地域別ワークショップ形式の研修。基本的に毎年開催されることになっているが、2012、13、16年は開催されていない。

JFKL-MOE Japanese Language Teachers Professional Development Program (J-Pro)

 2016年に初めて開催される、全国の中等教育現職日本語教員を対象に行う年1回のセミナー。教育省の協力を得て、国際交流基金クアラルンプール日本文化センターが主催する。

JFKL地域セミナー

 国際交流基金クアラルンプール日本文化センターが地方の日本語教師を対象に実施している地方セミナー。2015年は北部(ペナン)、中北部(イポー)、南部(ジョホールバル)、サバ州(コタキナバル)、サラワク州(クチン)の5地域で実施。

日本語教育セミナー

 国際交流基金クアラルンプール日本文化センターがマラヤ大学言語学部と共催で、マレーシアの全教師を対象に年1回実施しているセミナー。日本語教育に関する情報を提供することを主な目的としている。

マレーシア日本語教育国際研究発表会・浦和研修報告会

 国際交流基金クアラルンプール日本文化センターがマラヤ大学予備教育部日本留学特別コースと共催で年1回実施しており、マレーシアにおける日本語・日本語教育(学)に関する研究発表の場を提供することと、国際交流基金日本語国際センター(浦和)の海外日本語教師研修のフォローアップを目的としている。マレーシアからの研修参加者に対しては、国際交流基金クアラルンプール日本文化センターが独自にパーソナル・ミニ・プロジェクトの実施を課しており、その成果などが報告される。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 日本人中心に運営され認可団体ではなかった「マレーシア日本語教育連絡協議会」が発展的に改組され、マレーシア人中心の「マレーシア日本語教師会(Japanese Language Teacher’s Association in Malaysia, 略称JALTAM」として2000年7月に団体登録が認可されたが、実質的な活動がないまま団体登録が失効した。

最新動向

 一部高等教育機関のマレーシア人教員を中心に、JALTAMに替わる新たな教師会「Malaysia Japanese Language Instructor Society, 略称MAJLIS」の発足準備が進められており、マレーシア政府から認可を受けて2016年10月に第1回年次総会を開催し、 正式に発足した。具体的な活動はこれから始まるが、具体的な活動はこれからである。総会で承認された会の活動目的は、1)ネットワークの構築、2)学術研究活動の促進、3)学術雑誌の刊行の3つが主なものとして挙げられている。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2016年10月現在

日本語上級専門家

 国際交流基金クアラルンプール日本文化センター 1名
 マラヤ大学予備教育部日本留学特別コース(AAJ) 3名

日本語専門家

 国際交流基金クアラルンプール日本文化センター 1名
 マラヤ大学予備教育部日本留学特別コース(AAJ) 7名

日本語指導助手

 国際交流基金クアラルンプール日本文化センター 1名
 マラヤ大学予備教育部日本留学特別コース(AAJ)2名
 日本語パートナーズ 20名

国際協力機構(JICA)からの派遣(2016年10月現在)

 マレーシア工科大学マレーシア日本工科院 2名

その他からの派遣

 民間日本語教育機関(日本語教師養成機関)による提携機関へ派遣

シラバス・ガイドライン

初等教育

 日本語教育を行っている公的な初等教育機関の存在は確認されていない。

中等教育

 従来、全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)では、教育省が承認した1987年完成のシラバスをもとに、4年間(1~4年生)の日本語教育が行われてきた。2004年より、一般中等学校にも日本語教育(を含む第2外国語科目)を拡大する方針に伴い、5年間(1~5年生)の学習を前提としたシラバス作成作業が開始され、2008年1月に“Sukatan Pelajaran Bahasa Jepun”(日本語指導要綱)として施行。2009年からはシラバスを問わず5年間の学習が行われることとなったため、旧シラバスで4年間学習した生徒を対象とした5年生用のトップアップシラバスが開発され、使用された。2012年以降は全学年でこの“Sukatan Pelajaran Bahasa Jepun”が適用された。さらに、2017年に全科目のシラバスが刷新されることになっており、日本語も新シラバスとなる“Dokumen Standard Kurikulum dan Pentaksiran Bahasa Jepun”(日本語カリキュラムと評価のスタンダード)が施行される。2017年より新入生に順次新シラバスが適用されるため、2021年に全学年で新シラバスが使用されることになる。

高等教育

 各校が独自に設定している。

その他教育機関

 各校が独自に設定している。

評価・試験

 全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)では、1987年から「教育省試験」が行われていたが、2002年からは、4年生終了時に「日本語統一試験」が行われるようになり、全日制中等学校でも2009年から同試験が行われていた。旧シラバスに基づく「日本語統一試験」は2012年の実施をもって終了し、現行シラバスに基づき5年生で受験する新試験(中等教育国際言語到達度試験の日本語科目)が2014年から開始された。

日本語教育略史

1966年 マラヤ大学(人文社会科学部)にて日本語講座開設
1968年 マレーシア日本語協会(クアラルンプール)にて日本語クラス開講
1975年 日マ協会(ペナン)にて日本語クラス開講
1976~1978年 在マレーシア日本大使館広報文化センターにて日本語講座開設(1978年中断、1982年より再開、1991年より国際交流基金クアラルンプール日本文化センター(JCC)に移管)
1981年 マハティール政権「東方政策」提唱(1982年に正式提唱、開始)
1982年 マラ工科大学 政府派遣技術研修生の赴日前集中講座の開講
マラヤ大学予備教育課程(RPKJ;日本留学特別コース、のち通称AAJ)開設
ペナン日本語協会にて日本語クラス開講
1984年 全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)6校で日本語が第二外国語選択科目となる。
日本語能力試験(クアラルンプール会場)開始
1985年 日本語能力試験(ペナン会場)開始
1986年 日本語能力試験(イポー会場)開始
1990年 マレーシア公務員研修所にて日本語研修開始
人事院による日本語教師養成プログラム開始(日本留学によるコンバート事業)開始
1992年 マレーシア工科大学予備教育課程(高等専門学校予備教育プログラム)開始
1993年 マラ教育財団ジャパン・マトリキュレーション・センター予備教育(JMC)開始(1998年終了)
1995年 国際交流基金クアラルンプール日本語センター(JLC)開設
1996年 アジア・ユース・フェローシップ予備教育(AYF)開始(2006年度からは国際交流基金関西国際センターで実施)
1998年 マラヤ大学言語学部に日本語専攻課程設置
1999年 人事院による日本語教師養成プログラム(日本留学によるコンバート事業)休止
日本マレーシア高等教育大学連合プログラム(JAD)開始(JMC改編)
2001年 日本語能力試験(コタキナバル会場)開始
2002年 レジデンシャルスクールで日本語統一試験開始
2003年 人事院による日本語教師養成プログラム(日本留学によるコンバート事業)再開
2004年 中等教育用シラバス改訂作業開始
2005年 一般中等学校(デイスクール)での日本語教育開始
マレーシア教育省によるマレーシア国内での中等教育日本語教員養成事業の開始
2007年 マレーシア国内で養成された中等教育日本語教員のインターン配属開始(以降、インターン配属の翌年に正式配属)
2008年 Sukatan Pelajaran Bahasa Jepun”(中等教育機関日本語指導要綱)施行
人事院による日本語教師養成プログラム(日本留学によるコンバート事業)派遣終了(公式にはマレーシア教育省への移管という位置づけ)
2009年 デイスクール日本語統一試験開始
マラ工科大学国際教育センター(現・INTEC教育カレッジ)東方政策プログラム高等専門学校予備教育コース開始(マレーシア工科大学から移管)
2010年 トゥナガ・ナショナル大学日本留学準備教育プログラム開始(2011年終了)
2011年 日本語能力試験 年複数回実施(クアラルンプール・ペナンで7月実施)
日本語能力試験(ジョホールバル会場)開始
マレーシア日本高等教育プログラム(MJHEP)開始(JAD改編)
2012年 マラ公社による日本語教師養成のための日本留学プログラム開始
旧日本語統一試験終了
2013年 人事院による日本語教師養成プログラムの最終期生が日本留学から帰国、中等教育機関に配属
2014年 中等学校国際言語到達度試験開始
2015年 日本語パートナーズプログラム開始
2017年 Dokumen Standard Kurikulum dan Pentaksiran Bahasa Jepun”(日本語カリキュラムと評価のスタンダード)施行

参考文献一覧

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