ミャンマー(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
初等教育 中等教育 高等教育 その他
教育機関
合計
132 524 0 0 762 10,539 11,301
0.0% 0.0% 6.7% 93.3% 100.0%

2015年度日本語教育機関調査結果 学習者数グラフ
2015年度日本語教育機関調査結果の学習者数に関する帯グラフ。初等教育は0名で全体の0.0%、中等教育は0名で全体の0.0%、高等教育は762名で全体の6.7%、学校教育以外は10,539名で全体の93.3%。

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 学校教育としての日本語教育は、1964年の国立外国語学院(Institute of Foreign Languages:IFL)創設時に日本語学科が設置されたことから始まる。国立外国語学院は1996年にヤンゴン外国語大学(Yangon University of Foreign Languages:YUFL)に改組され、1997年12月にはミャンマー第2の都市マンダレーにマンダレー外国語大学(Mandalay University of Foreign Languages:MUFL)が創設された。ミャンマーで日本語専攻課程としての日本語教育が行われているのは、この2校のみである。両大学とも当初は、専門課程のみだったが、1999年に学士コースが設置されて今日に至っている。また、2009年にはヤンゴン外国語大学に、2012年にはマンダレー外国語大学に修士課程が設置された。
 学校教育以外での日本語教育は、ミャンマー人が日本語を教授する日本語教育機関に始まり、1980年代後半になると日本人ボランティアによる日本語教室がヤンゴン市内の僧院で開かれるようになった。1990年代中頃には、ミャンマー人による教育機関がヤンゴンを中心に増加しはじめ、日本人による民間の教育機関も設立された。2011年に軍事政権から民政移管されると、日本語学校数も一気に増え、2016年10月現在、ミャンマー全国で128校の民間の教育機関が日本語教育を行っていることが確認されている。これまではヤンゴン外国語大学やマンダレー外国語大学で学んだ卒業生や訪日経験者などが小規模な学習塾を開いたり、または家庭教師として日本語教育を行ったりしているケースが多かったが、近年では資金力を持った大きな学校や、日本国内の日本語学校の提携校などが増えつつある。また、日系もしくは日本との取引のある企業内で社員を対象とした日本語教育がおこなわれている場合もある。
 日本語能力試験は1999年12月以来実施されており、2015年からは7月にマンダレー、12月にヤンゴンという変則年2回の実施となっている。受験者数は急増しており、2015年度の受験者数は8000名を超えた。

背景

 第二次世界大戦前からの長い日本との関わりから、ミャンマーは日本文化に高い関心を持つ親日国であると言える。高齢者の中には日本語を解する者もあり、若年層でも日本にあこがれを抱く者が多い。
 一方、1988年に起こった学生による民主化運動と、軍事政権によるその制圧以降、政治的には閉鎖的な状況が続き、1990年代後半に一時政策が緩み日系企業の進出や日本人観光客が増加した時期があったものの、結局一時的なものに終わった。その後2011年に民政移管されたのち、クリントン米国務長官やオバマ米大統領による相次ぐ電撃訪問などもあり民主開放路線が一気に進んだ。現在は、日系企業の進出や日本人訪問客の増加に伴い、日本語を使用する就業機会も劇的に増加しており、学習者数もうなぎ上りに上昇している。

特徴

 初等・中等教育機関には日本語の授業はないため、若年層の日本語学習者は少なく、高等教育機関入学後、あるいは学校教育終了後に日本語学習を開始する者が多い。
 2000年代以降、ミャンマーでの日本語学習熱は高まりを見せてきたが、民政移管後はその傾向が顕著となり、外国語大学、民間の教育機関、無料で学べる僧院など、さまざまな機関で多くのミャンマー人が日本語を学んでいる。日本語学習の主な目的は、就労や留学あるいは訪日実習であるが、日本へのあこがれやファッション的要素があることも考えられる。

最新動向

 1999年12月以来実施されている日本語能力試験は、年々受験者数を伸ばしており、現在は7月にマンダレー、12月にヤンゴンの変則年2回の実施となっている。3年前に3,000名程度であった受験者数は昨年2015年度第2回では7000名を超え、今年度第2回ではヤンゴンの受験者が1万名を超えるのではないかとみられている。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育は実施されていない。外国語教育は英語のみである。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。外国語教育は英語のみである。

高等教育

 ヤンゴン外国語大学とマンダレー外国語大学に学部レベルの日本語学科と大学院修士課程が設置されている。外国語大学の日本語学科は、英語学科と並んで人気が高く、医科大学、工科大学、歯科大学に次いで入学に際して高い得点が必要とされている。
 両外国語大学には、専門課程(ディプロマ、学位は授与されないが修了証書が授与される)、夜間部、学部、修士の4コースが設置されている。専門課程は大卒以上対象で講義は午前7時~8時40分のみで、修了期間4年であり、働きながら通学する者も多い。夜間部は高卒以上対象で、3か月1タームで初級Ⅰ・Ⅱ、中級Ⅰ・Ⅱ、上級Ⅰ・Ⅱの6レベルが設けられている。学士取得以上で夜間部の全レベルを修了すれば専門課程3年に編入できるが実際に編入するケースは少ない。学部は全日課程で修了期間4年の学士課程である。なお、2009年にヤンゴン外国語大学に、2012年にマンダレー外国語大学に修了期間2年の日本語専攻大学院修士課程が設置された。

その他教育機関

 学校教育以外の日本語教育機関は、128機関が確認されている。その多くがヤンゴンに集中しているが、最近は第二の都市マンダレーはもちろん、バゴー地域、ザガイン地域、シャン州、モン州などにある地方都市にも民間の日本語教育機関がある。また、僧院、小規模な学習塾や家庭教師が日本語教育を行っている。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 基礎教育課程は5-4-2年制。初等教育として小学校が5年間(5~10歳)、前期中等教育が4年間(10~14歳)、後期中等教育が2年間(14~16歳)の計11年である。前期初等教育として幼児教育(1年間)もある。義務教育制度はない。
 公的高等教育機関としては短期大学、大学、大学院が設置されており、在学期間は、短期大学が2年、大学は学部により異なり4~6年である。

教育行政

 教育省の管轄下にある。専門性の高い一部の高等教育機関については、関連する各省が管轄している。たとえば文化芸術大学は文化省、医学大学は保健省といったかたちである。

言語事情

 ミャンマー語(チベット・ミャンマー語族系)が公用語である。
 その他、少数民族の間ではそれぞれの言語が使用されている(ミャンマー政府の発表によれば、ミャンマーには135以上の民族がある)。中国系・インド系住民の間では、それぞれ中国語ならびにインド系諸語も使用されている。国境沿いの一部の地域では、初等・中等教育が地元の少数民族言語を中心に行われている場合もある。

外国語教育

 初等・中等教育における外国語教育は、国境地域の一部を除き、英語以外認められていない。
 高等教育においては、長らく英語以外の外国語を履修できるのはヤンゴン外国語大学とマンダレー外国語大学のみであり、外国語専攻の学生以外、英語以外の外国語は正規科目として履修科目に含まれなかった。しかし、2016年よりヤンゴン工科大学とマンダレー工科大学において選択外国語としての第二外国語として日本語・韓国語・フランス語が採用された。今後、この二校に続く高等教育機関が現れてくるかもしれない。
 ヤンゴン外国語大学とマンダレー外国語大学では、日本語のほかに、英語、フランス語、ドイツ語、中国語、韓国語、ロシア語、タイ語、イタリア語(タイ語・イタリア語はヤンゴン外国語大学のみ)も教えられている。

外国語の中での日本語の人気

 外国語大学の入学の難易度は、以前は英語、中国語、日本語の順番であったが、2012年に日本語が中国語を上回った。2011年の民主化以降、日系企業の進出や、日本人訪問客の増加により、日本語学習熱が高まってきており、今後もしばらくはこの傾向が続くものと思われる。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 ヤンゴン外国語大学及びマンダレー外国語大学において、以下の教材が使用されている。

1.専門課程
  • 『日本語初歩』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)
  • 『毎日のききとり』(初級)(中級)宮城幸枝ほか(凡人社)
  • 『たのしく聞こう』文化外国語専門学校(凡人社)
  • 『ニュースで学ぶ日本語』堀歌子ほか(凡人社)
  • 『中級日本語』東京外国語大学留学生日本語教育センター(凡人社)ほか
2.夜間部
  • 『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
  • 『中級日本語』(前出)
  • 『自然な日本語 中級用会話教材』桜井晴美(凡人社)
  • 『日本語中級Ⅰ』国際交流基金日本語国際センター(凡人社) ほか
3.学部
  • 『初級日本語』東京外国語大学留学生日本語教育センター(凡人社)
  • 『毎日のききとり』(前出)
  • 『日本語かな入門』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)
  • 『日本語読解入門』富岡純子(アルク)
  • 『たのしく聞こう』(前出)
  • 『中級から学ぶ日本語』松田浩志ほか(研究社)
  • 『中級日本語』(前出)
  • 『実例で学ぶ 日本語新聞の読み方』小笠原信之(専門教育出版社)
  • 『ニュースで学ぶ日本語』(前出)
  • 『テーマ別上級で学ぶ日本語』松田浩志ほか(研究社)
  • 『外国人のための新聞の見方・読み方』KIT教材開発グループ(凡人社)

その他教育機関

 民間の日本語教育機関においては、『新日本語の基礎』、『新日本語の中級』ともに海外技術者研修協会(スリーエーネットワーク)、『みんなの日本語初級Ⅰ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)などが使用されている。『新日本語の基礎』には別冊としてミャンマー語版の解説書もあるためか、ミャンマーの日本語学習者に親しみやすいものになっている。また、各教育機関のオリジナル教材を使用している学校もある。

マルチメディア・コンピューター

 ヤンゴン外国語大学及びマンダレー外国語大学には日本国政府から援助を受けたLL機材が使える教室があり、マルチメディア教室として利用されている。しかし、まだまだ一部の教室でしかプロジェクターが使用できず、停電も頻繁に起きるため、通常授業でのコンピューターの使用は限定的である。 民間学校の場合は学校により設備はさまざまである。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 2校ある外国語大学の正規教員の採用条件は、「日本語学科を優秀な成績で修了したミャンマー国民であること」とされている。このため、日本で学んだり学位を取得したりした人材が公募で採用されることはない。ヤンゴン外国語大学日本語学科には、2013年12月から国際交流基金の日本語専門家が派遣されているほか、2015年5月からは日本語パートナーズとして日本人補助教員がヤンゴン、マンダレー両外国語大学に派遣されている。
 なお、大学の日本人ボランティアの日本語教師の受け入れに関しては、資格要件や採用枠は決められていないが、個別の申請に対してその都度、教育省等関係政府機関との協議の上判断されている。

その他教育機関

 民間の日本語教育機関においては、『新日本語の基礎』、『新日本語の中級』ともに海外技術者研修協会(スリーエーネットワーク)、『みんなの日本語初級Ⅰ』(スリーエーネットワーク)などが多く使用されている。『新日本語の基礎』には別冊としてミャンマー語版の解説書もあるためか、ミャンマーの日本語学習者に親しみやすいものになっている。また、近年では日本人がコースを担当している学校も増えてきており、日本で販売されている様々な市販教材や、各教育機関のオリジナル教材を使用している学校もある。

日本語教師養成機関(プログラム)

 広く一般を対象とした教師養成プログラムは現在のところ存在しない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 大手の民間教育機関の中にはネイティブ教師を採用するところも出始めている。また、日本人経営であったり、日本の日本語学校の姉妹校であったりする機関も増えつつあり、ネイティブ教師の数も増加傾向にある。機関によってその役割はまちまちであるが、文法を教えるミャンマー人教員と協力し、主に会話を担当するケースが多く見られる。

教師研修

 2校ある外国語大学では、修士課程で外国語教育に関する教育を行っている。また、2007年以降、国際交流基金が主催する「日本語教師セミナー」を実施している。
 なお、国際交流基金の訪日研修プログラムには外国語大学の教員が毎年、数名参加している。最近では3年連続で修士研修にも教員が選ばれており、研修後帰国した教員は外国語大学の修士課程での指導においても重要な役割を果たしている。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 ミャンマーには長らく集会禁止規定があり、教師会のような人々同士のネットワークをつくることは困難であった。2013年に規定が撤廃されて以来、ようやく教師会設立の機運が高まりつつある状況で、現在ヤンゴン在住の邦人教師の有志が中心となって設立したヤンゴン日本語教師会と、主に民間の教師の底上げ勉強会を母体として設立されたミャンマー日本語教師会というふたつの団体が存在する。両団体とも有志の団体であり、まだ事務所もないような状況であるが、それぞれEメールやフェイスブックなどでつながり、総会や勉強会というかたちで定期的に活動を重ねている。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2016年10月現在)

日本語上級専門家

 ヤンゴン外国語大学・マンダレー外国語大学 1名

日本語パートナーズ

 ヤンゴン外国語大学 2名
 マンダレー外国語大学 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 1990年代より、日本の国際親善文化交流協会よりヤンゴン外国語大学に対し、ボランティアの日本語講師が1名派遣されていたが、現在は途絶えている。また、2014年よりヤンゴン大学内に東京外国語大学がグローバルジャパンオフィスを設置し、非正規科目ではあるが日本語教育をおこなっている。現在、オフィスには日本語専門教員が1名派遣されている。
 マンダレーYMCAは「HITO(人)センター」を設立して日本語教育を行っており、日本のNGO団体「Net Work HITO」より常時2名程度の日本人教師が派遣されている。そのほか、民間ベースでボランティア教員の派遣を行っている機関も存在するが、数は多くはない。民間学校では日本の提携校から教師が派遣されるケースもあり、現地での採用も含め一般の日本人教師の数は増加傾向にある。

日本語教育略史

1964年 国立外国語学院(Institute of Foreign Language : IFL)に日本語学科設立
1980年代後半 ヤンゴン市内の僧院で日本人ボランティアによる日本語教育開始
1990年代中頃 ヤンゴン市内にミャンマー人による日本語教育機関が増加
日本人による民間教育機関設立
1996年 国立外国語学院がヤンゴン外国語大学(Yangon University of Foreign Language : YUFL)に改組
1999年 ヤンゴン外国語大学に学士コース設置
マンダレー外国語大学(Mandalay University of Foreign Languages : MUFL)に学士コース設置
2009年 ヤンゴン外国語大学に修士課程設置
2012年 マンダレー外国語大学に修士課程設置
2013年以降 日系企業の激増、日本語学習者の増加

参考文献一覧

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