北マリアナ諸島(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
3 3 345
学習者数 内訳
教育段階 学習者数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 345 100.0%
高等教育 0 0.0%
その他 教育機関 0 0.0%
合計 345 100.0%

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 北マリアナ連邦はサイパン、ロタ、テニアンその他11の島からなる。17世紀の半ばにスペインに支配され、1899年ドイツに売却された。その後、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけては日本の統治下におかれ、戦後アメリカ合衆国の国際連合信託統治領となった。さらに1975年から北マリアナ諸島コモンウェルス(CNMI)として米国自治領となった後、2009年に連邦化され、アメリカ合衆国に組み入れられた。
 北マリアナを含む南洋群島(現ミクロネシア連邦及びパラオも含まれる)における日本語教育は1914年の日本軍の占領とほぼ同時に始まったといわれる。時代によって多少異なるが、優秀な児童は概ね3年から5年の期間で日本への留学も可能であった。そのため当時日本語教育を受けた高齢者の中には今でもかなり日本語が話せる人がいる。
 1937年当時のサイパン在住の日本人は、現地人約4千人に対し約2万人であったと言われ、日本人町が栄えていたことがわかる。
 第2次世界大戦後の教育機関における日本語教育は北マリアナ最大のマリアナ高校(創立1969年、現学生数1,200人)で始まったと思われるが、いつからどのようにして始まったのか正確な資料は残っていない。北マリアナ短期大学(NMC)では、1981年学校設立と同時にLiberal Artsの学生を対象とした日本語コース(JA100 Conversational Japanese)が開設された。その後マリアナ観光局(MVA)、日本のシルバーボランティア等の協力を得て、徐々にコースを増やしていった。日本語コースは、以前はビジネス・観光学科に所属していたが、1999年以降は言語・人文学科所属となり現在に至っている。

背景

 日本統治時代の日本人のチャモロ人に対する対応は友好的で公平であったといわれ、そのため対日感情は一般的に良好である。日本人に対する印象も「勤勉」「正直」などで「日本から学ぼう」という思いが見受けられる。このような状況下にあって、公立高校における外国語教育は、表面上スペイン語との選択になっているが実質は日本語が必修科目として扱われている場合が多い。北マリアナ短期大学(NMC)の外国語教育は日本語(3クラス)、チャモロ語(2クラス)、スペイン語(2クラス)、手話(1クラス)の中からの選択になっており、40%近くの学生が日本語を選んでいる。

特徴

 北マリアナ連邦の主要産業は観光であり、日本からの投資と観光客(全体的に減少しているが約10%を日本人が占める)に依存しており、日本語ができると就職に有利であると考えられている。観光業、ホテル、レストラン等の接客業に携わっている人々の中には日本語ができる人も多い。また日本に近いこともあり、毎年多くの学校関係者、学生、及び市民団体が訪れ、交流会も頻繁に行われている。ただし、2005年の日系航空会社の日本-サイパン便の廃止によって北マリアナツーリズムは大きな打撃を受け、この小さな島々の経済状況が悪化し、日本語教育に関わる教育方針や教育予算にも影響を及ぼしている。

最新動向

 北マリアナ短期大学(NMC)では、近年の経済低迷や同時多発テロ等の影響により留学生、特に韓国人留学生が減少したことに加え、日本語以外の新たな外国語プログラムとして、スペイン語、チャモロ語、アメリカン・サインランゲージ(手話)も増設されたことで、日本語コースの学生が減っており、ここ暫く中級以上のクラスはほとんど開講できなくなっている。また大学の方針により2009年から日本語の常勤ポストがカットされてしまい、以降、非常勤講師2名で教えてきたが、2013年秋学期からは非常勤講師1名のみとなっている。
 高校レベルでは、以前は公立高校3校と私立高校3校で日本語教育を行っていたが、2016年度はマリアナ高校とマリアナバプティストアカデミーの日本語クラスが教師不在の為に休講となっており、公立高校2校と私立高校2校で日本語コースが継続されている。公立高校においては、新たに日本語オンラインコース(前期・後期1クラスずつ、各30名程度)も導入されたことが最新動向の一つとして挙げられる。
 小学校での日本語教育は、2008年に私立校で日本文化を中心としたプログラムがスタートしたが、2016年現在は残念ながら開講されていない。
 民間の語学学校では、2008年に50人の学生数を数えた学校も2010年には20人余りに減少し、とうとう2011年には閉鎖されてしまった。これは日本語に対する興味が薄れたというより、授業料が払えないからという経済的な理由によるものと思われる。 なお近年、特に北マリアナ諸島が連邦化されて以降は、日本人教師のビザの問題も新たに浮上しており、中にはCW1という極めて不安定な外国人ビザで働かざるをえない等、苦しい立場に置かれる教師も出てきている。

教育段階別の状況

初等教育

 2008年から私立マウントカーメル小学校で日本語教育(10週間のプログラム)が開始され、1年生から6年生までの約100人を対象に日本文化を中心とした内容で折り紙や書道などを紹介していたが、2011年度に一旦休止となり、その後2012年に規模を縮小して再開したものの、2016年現在は開講されていない。

中等教育

 2016年12月現在、公立のサザン高校、カグマン高校で日本語教育が行われており、日本語学習者は全体で年間400名程度である。私立ではマウントカーメル高校とグレース・クリスチャン・アカデミーで日本語教育が行われている。日本語教師は常勤2名と非常勤2名である。
 マリアナ高校でも、日本語Iのみ(4クラス各30~32人)開講していたが、現在は教師不在のため開講されていない。
 サザン高校では、外国語科目は日本語のみで、日本語Iが必修科目となっている。半年毎に高校2年(10年生)がこれを受講しており、日本語I 3クラス、日本語II 1クラス(各クラス30人)で、1人の日本人常勤講師が教えている。
 カグマン高校では外国語は日本語かスペイン語を選択できるようになっている。前期・後期共に、日本語Iが3クラス、日本語IIが1クラス(各クラス30人程度)で、1人の常勤講師が教えている。
なお、公立高校では新たに日本語オンラインコースも開始され、前期・後期1クラスずつ(各30名程度)を開講している。
 私立高校ではマウントカーメル高校で継続的に教えられていた日本語クラスが2011年に一旦休止となったが、2012年に再開された。Japanese I 2クラスで40人程度が受講している。
 マリアナ・バプティスト・アカデミーでは、2013年時点で日本語I(24人)、日本語II(17人)、APクラス(3人)、合わせて44人の生徒が日本語を受講していたが、2016年現在は教師不在のため、開講されていない(開講当時の教科書は公立高校と同じ『Japanese for Young People』(AJALT)とその他の教科書を併用していた。)
 グレース・クリスチャン・アカデミーでは、前期は日本語Iのみ、後期は日本語IIのみ(各クラス20人程度)開講している。教科書は『Japanese for Young People』(AJALT)。ここ数年サイパンの経済は悪化の一途を辿り、私立校の在籍者数が激減し、公立校の在籍者数が急増する時期もあったが、再び生徒が私立に移る傾向も見られるようになった。

高等教育

 北マリアナ短期大学(NMC)では1998年春学期までは日本語は8クラスあったが、既に述べたように近年では中級以上のクラスは全く開講できなくなり、クラス数は半減したままである。JA100(会話コース)も2009年以来開設されていない。NMCでは2009年に常勤の日本語講師のポジションをなくしてしまったため、非常勤の日本人講師が2人で教えていたが、2013年の秋学期は学期が始まる直前に学校の突然の方針転換のため、2つの日本語クラスがキャンセルされた。2016年現在は、日本語Iが2クラス、日本語IIが1クラス(各20名程度)を開講しており、サマースクールは実施していない。

その他教育機関

 景気低迷と日本語の需要低下を受け、ホテル、旅行会社、政府機関などで行われてきた日本語教育はその規模を大幅に縮小している。かつて幼児から年配者まで、50人程度の幅広い学習者に教えていたベスト・アプローチ・ランゲージ・スクールでも2010年頃から学生数が激減し、2011年ついに、学校を閉校することとなった。プルメリア・ランゲージ・インスティチュート(2009年オープン)は、日常会話の学習者および日本語能力試験、AP Japanese受験希望者などが学んでおり、ホテルの従業員教育なども不定期で行っているが、やはりこの景気低迷の折、経営安定に苦慮している。DFS(免税店)でも、日本からの直行便が減り、日本人の来店率が落ち込んでいるため、日本語教育は現在行われていない。その一方で中国人の来店率が上昇し、中国語の需要が増しているため、日本語教育に代わって中国語教育が行われている。その他フィリピンの在外公館の下OWWA(Oversea Workers Welfare Administration)では2000年頃より北マリアナで働くフィリピンの労働者(約11,000人)を対象に日本語コースが無料で提供されていた。講師は日本留学の経験のあるフィリピン人観光ガイドで、これまでに約600人以上のフィリピン人が受講した。通常年3回(各10週35時間余り)「日本語I」が開講され、2010年は「日本語I」3クラスに加え、「日本語II」1クラスが開講されたが、2011年は50人程度のクラスが一度開講された後、しばらく休講している。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-2-4制。
 1~6年:小学校 7~8年:中学校 9~12年:高校

教育行政

 教育省の下にPSS(Public School System)が公立校(小学校から高校)を管轄している。私立校に関しては教会付属が主で独自の運営をしている。

言語事情

 公用語は英語。学校教育も英語で行われているが、現地の人々の大半はチャモロ語かキャロリニアン語で日常会話をしている。その他、コミュニティーによっては中国語、日本語、韓国語、タガログ語、タイ語、パラオ語、ヤップ語、ポナペ語、トラック語等、各家庭のバックグラウンドに応じた言語を話している。

外国語教育

 公立高校では卒業のために外国語1単位が必要である。以前は1コマの授業が50分だったため、卒業単位を履修するのに月曜~金曜までの授業を1年間受けたが、現在は1コマが75~80分になったため、半年(1学期)で履修できるようになった。
 私立の外国語教育は、学校によって著しく異なる。方針に基づいて実施されるというよりも、校長の考え、周りに教えられる人材がいるか(資格は厳しく問われない)、採算がとれるか等が考慮されて実施されるか否かが決定されると思われる。

外国語の中での日本語の人気

 スペインの支配が2世紀半続き、現地のチャモロ人の中にはスペイン語の姓を持つ人が大変多い。歴史的意義からスペイン語を学びたいという人はいるが、実質的に日本語の方が役に立ち日本語ができると将来の就職に有利であると考える学生が多く、日本語を選択する学生が圧倒的に多い。高校でもスペイン語を選択科目に挙げているが実際にスペイン語を開講している学校はあまりない。ある校長の話では教える人が見つからないとのこと。北マリアナ短期大学(NMC)でもスペイン語が開設されたのは数年前であり、それまでは外国語科目は日本語だけであった。現在、NMCの外国語プログラムは、日本語、スペイン語、チャモロ語、アメリカン・サインランゲージ(手話)の4コース。

大学入試での日本語の扱い

 北マリアナ短期大学(NMC)にはいわゆる入学試験はない。学生は入学するとき英語と数学のプレースメントテストだけ受ければよく、日本語を含めた外国語の試験はない。

学習環境

教材

初等教育

 詳細不明。

中等教育

 公立高校(サザン高校、カグマン高校)では『JAPANESE FOR YOUNG PEOPLE Ⅰ Ⅱ』国際日本語普及協会(講談社USA)を使用している。私立のマリアナ・バプティスト・アカデミーでは、2016年現在は教師不在のため、日本語講座は休止となっているが、開講時は『JAPANESE FOR YOUNG PEOPLE Ⅰ』国際日本語普及協会(講談社USA)と『Genki』(The Japan Times)なども併用していた。

高等教育

北マリアナ短期大学(NMC
《JA101》
『新日本語の基礎I』(漢字かなまじり版)海外技術者研修協会(スリーエーネットワーク)
BASIC KANJI BOOK Vol 1』加納千恵子ほか(凡人社)
《JA102》
『新日本語の基礎I』(漢字かなまじり版)(前出)
BASIC KANJI BOOKVol 1』加納千恵子ほか(凡人社)

その他教育機関

 現在、日本語教育は実施されていない。

マルチメディア・コンピューター

 公立高校では、近年、日本語のオンラインコースも開始され、コンピューター、インターネット、iPad等が日本語教育に取り入れられるようになった。

教師

資格要件

初等教育

 PSS下の公立小学校では3つの条件を満たしていることが要求される。まず学士号及び教員免許を有すること。かつ、近年米国連邦法のNo Child Left Behind法に準拠する方針を立てており、教師の育成能力証明のためにPraxis 1(一般教養)とPraxis 2(専門分野の知識)に合格して初めてHQT(Highly Qualified Teacher)とみなされる。しかし2010年7月の段階でPraxis 1・2に合格しているのは全PSSの教師の77%と言われていた。また公立高校では外国人の雇用はできないため、米国籍者と米国永住権を持つ者またはその配偶者に限られる。
 私立の場合は教会を通して派遣されることもあり、学士号を有していること以外は独自の基準で採用される。

中等教育

 公立中・高校の場合は公立小学校の資格と同様である。私立中・高校の場合も私立小学校と同様である。

高等教育

 修士号以上、高等教育機関での日本語教育経験5年以上の者。非常勤講師の場合、ビザの関係でアメリカ国籍またはその配偶者以外の者は難しい。
 アメリカ人の場合は大学で日本語を専攻した者、あるいは日本に居住したことのある日本語能力の優れた者が採用される。

その他教育機関

 特に資格は問われない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 現在は、学校制度において日本語教育に携わっている教師は全員が日本人(常勤が公立高校の2人、非常勤が私立高校の2人と北マリアナ短期大学の1人)。

教師研修

 この地域内での教師研修はない。研修を受ける為には日本、ハワイ、またはアメリカ本土まで行く必要がある。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 有志が会し、問題点や授業の方法等について話し合うことは1、2度あったが、全体的に公的な組織としては活動していない。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

国際協力機構(JICA)からの派遣

 国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。

その他からの派遣

 日本語教育の派遣は行われていない。

シラバス・ガイドライン

 小学校から高校までは公立校、私立校共に日本語に関しては統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。公立高校では同じ教科書を使っているものの、内容や進度は一定ではない。

評価・試験

 共通の評価基準や試験はないが、APテストは年に1回実施している。

日本語教育略史

1969年 マリアナ高校で日本語クラス開設。
1981年 北マリアナ短期大学でLiberal Artsの学生を対象とした日本語クラス開設。
2002年 公立校のサザン高校、カグマン高校を新設、同時に日本語クラス開設。
2008年 私立マウントカーメル小学校で日本語クラス開設。
(その後2011年に一旦休止となり、2013年に再開したが、2016年現在は開講されていない。)
2016年 マリアナ高校、マリアナバプティストアカデミーの日本語クラスが教師不在の為に休止。

参考文献一覧

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