セルビア(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
初等教育 中等教育 高等教育 その他
教育機関
合計
11 31 99 120 246 68 533
18.6% 22.5% 46.2% 12.8% 100.0%

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1975年に、ベオグラード大学言語学部東洋言語学科に日本語の授業が設置され、セルビアにおける日本語教育は開始された。
 1986年には、言語学部内に日本語・日本文学専攻課程が開設され日本語・日本文学を専門に学ぶことが可能となり、2016年10月には52名の新入生が同課程に入学した。近年は、日本文化への関心の高まりから、日本語を選択授業に取り入れる大学、高校や日本語教育機関(民間語学学校)での学習者数の増加傾向が見られる。

背景

 セルビアでは、劇的な戦後復興を成し遂げた国、経済大国、先端技術を有する国、歴史と伝統を重んじる国として日本への評価・関心が非常に高い。また、旧ユーゴ紛争後、民主化が実現した2000年から本格的に始められた日本政府の経済協力が市民生活の改善に寄与したとして高く評価されており対日感情は非常に良好である。また、日本の伝統文化や武道は高い人気を誇っている他、日本のアニメを放映する衛星チャンネルもあるなどポップカルチャーに対する人気も高い。これらの良好な対日感情、高い日本文化への関心から日本語の学習を始める者が多く見られる。

特徴

 セルビアで実施されている外国語教育は、主に英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語等であり、学習者達は、留学・就職を意識した実利的な動機によって外国語学習に取り組んでいる場合が多い。日本語学習に関しては、上記【背景】にも記載のあるとおり、親日感情、日本文化への関心や、欧州言語とは全く異なる言語への挑戦等の非実利的な動機によって始められるのが一般的である。しかしながら、近年は海外進出する日本企業への就職や日本での学業・研究活動等を動機とした学習者も増加している。

最新動向

  • 今までベオグラード言語専門高等学校においてのみ正規科目として設置されていた日本語授業が、2013年10月、セルビア教育省による一般中等教育機関への日本語教育導入の決定により、2014年度よりセルビア全土の中等教育機関で正規科目として設置可能となった。ベオグラード第8高校では早速日本語教育が開始され毎年約30名が日本語を学んでいる。さらに、2015年からはシャバッツ、チャチャク、ウジッツェ、ブルシャツ、ニシュ、ノビ・サド等首都以外の都市の高校においても日本語教育が開始されており、今後さらなる日本語教育の拡大が期待されている。
  • 2014年10月、ノビ・サド大学哲学部内外国語センターに、正式に日本語講座が設置され、日本語が、同大学の選択科目となる予定であり、ベオグラード以外での日本語学習の拡大が今後期待される。
  • ベオグラード市内等に展開する私立メガトレンド大学に設置されていた日本語専攻コースが教員不足等の理由により休講となった。その一方で、ベオグラード大学言語学部日本語専攻コースへの入学希望者数は増加傾向にある他、民間語学学校の日本語コースでの受講者数も基本的には増加傾向にある。

教育段階別の状況

初等教育

 正規科目として日本語教育は行われていないが、ロズニッツアの小学校(首都ベオグラードの西200キロ)では、課外授業の外国文化理解の一環として日本語入門授業が行われている他、ベチェイの小学校(ベオグラードの北100キロ)でも課外授業として折紙教室の他、簡単な日本語の授業が実施されている。また、2015年よりベオグラード市内の小学校3カ所で選択授業として日本語の授業が実施されている。

中等教育

 ベオグラード言語専門高等学校に日本語コースが設置されている。同校での日本語教育は1992年より開始され今年で21年目を迎えており毎年12名の生徒が専門的に日本語を学習している。
 また、上記の最新動向にも記載したとおり、2014年度より全ての中等教育機関で正規科目として日本語授業の設置が可能となった。その流れを受け、現在8箇所の高校で日本語授業が行われている。

高等教育

 ベオグラード大学言語学部東洋学科の日本語・日本文学専攻課程は、1986年より正式に設置され、旧ユーゴ時代より日本語教育の歴史を誇る地域の権威ある日本語教育機関である。旧ユーゴ紛争時の国連制裁やその後の経済的混乱等の度重なる困難を乗り越えながら規模を拡大している。しかしながら、日本語を活かせる職場等の選択がセルビアには少なく、卒業生の多くは日本語とは関係のない仕事に就くか、研究者として大学に残るという選択を迫られており、日本語能力を活かせる職場の拡充が急務である。

その他教育機関

  • ノビ・サド日本友好協会及び在留日本人が協力し、ノビ・サド大学(ベオグラードの北70キロ)のクラブ活動として日本語教育が実施されており約20名の学生が日本語を学んでいる。2013年10月現在、同クラブ活動の成果が評価され、同大学での日本語の選択科目化が2014年10月に実現されている。
  • ベオグラード市内にある2カ所の民間語学学校に日本語コースが設置されており毎年5~10名の受講者が日本語を学んでいる。両校の教師はベオグラード大学日本語専攻の卒業生である。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 セルビアの教育制度は、初等教育8年(第一段階4年、第二段階4年)、中等教育4年(ギムナジウムと各種専門高等学校の2種類に分類)、高等教育3年以上で構成されており、義務教育は初等教育期間の8年とされている。

教育行政

 初等から高等教育機関まで全て、セルビア教育省が管轄している。

言語事情

 多くの地域ではセルビア語が公用語として使用されているが、少数民族が住む地域では、ハンガリー語、ルーマニア語、ブルガリア語、アルバニア語、ボスニア語等が使用されている。また、ハンガリー語で学校教育を行う地域もある。

外国語教育

 初等教育より選択科目として外国語授業が設置されている。英語、ドイツ語、ロシア語、フランス語から2つの言語の選択が可能である。中等教育機関でもほぼ同様だが、地域によっては教員不足のため、選択を1つに限定する、選択可能言語数を少なくする等の対応をしている。その他、2012年より31の初等、中等教育機関で中国語が選択言語内に組み込まれ中国語教育が開始された。高等教育機関では1~3か国語の外国語を履修する。

外国語の中での日本語の人気

 ベオグラード言語専門高等学校やベオグラード大学言語学部では、日本語コース入学希望者が募集定員を超えており、日本語の人気の高さが見て取れる。また、民間語学学校での日本語受講者数の増加傾向からも、人気は高まっていると言える。

大学入試での日本語の扱い

 入学試験では、日本語は試験科目にない。

学習環境

教材

初等教育

 国際交流基金事業図書展への日本ブース出展にて展示した図書から日本語教育及び折紙教本等を寄贈し支援を行っている。ロズニッツアで日本語の指導に当たっている教員は自らがベオグラード大学で日本語を学んだ当時の教本を用いて授業を実施している。

中等教育

 ベオグラード言語専門高等学校では、日本で出版された教科書・教材、万博記念基金助成で寄贈されたLL機材が活用されている。また国際交流基金による日本語教材寄贈が実施された他、図書展展示図書の寄贈を行い毎年、日本で出版された最新の教科書が入手できる体制にある。

高等教育

 ベオグラード大学は、日本で出版された教科書・教材を使用している。ここ数年、上記同様、国際交流基金の教材助成、図書展展示図書の寄贈を受けている。

その他教育機関

 民間語学学校に対しても図書展展示図書から適宜、日本語学習教材を寄贈しているところ、各機関は最新の日本語の教科書を保有している。

マルチメディア・コンピューター

  • ベオグラード大学では、日本語能力試験等で学生との連絡にメーリングリストを活用している。またインターネットを利用した情報収集の方法を指導している。
  • 東京外国語大学の作成した日本語自習サイト「JPLANG」のセルビア語版をベオグラード大学が作成し、広くセルビア中の日本語学習者に周知している。
  • ベオグラード大学及びベオグラード言語高等専門高等学校に対しては、草の根文化無償資金協力により最新のLL機材が導入されており、インタラクティブ・スマート・ボード、パソコン等が配備されており、有効に活用されている。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教師としての資格要件は特になし。ベオグラード大学言語学部日本語・日本文学専攻課程卒業者が日本語を教えている。

中等教育

 日本語教師としての資格要件は特になし。ベオグラード大学言語学部日本語・日本文学専攻課程卒業者と、JICAシニア・ボランティアが日本語授業を実施している。

高等教育

 日本語教師としての資格要件は特になし。ベオグラード大学言語学部日本語・日本文学専攻課程を卒業し、日本留学も経験した者等が授業を行っている。その他、東京外国語大学から派遣されている日本語教師が会話等の実践的な日本語授業を展開している。

その他教育機関

 日本語教師としての資格要件は特になし。ベオグラード大学言語学部日本語・日本文学専攻課程卒業者や、日本への留学経験者、学生などが日本語教師として働いている。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。定期的に国際交流基金から日本語教育専門家の派遣を受け、各日本語教育機関の教師を集め講習を実施している。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 2014年現在、ベオグラード大学に3名(うち2名は東京外国語大学より派遣されている)。

教師研修

 日本語教師対象の研修はない。国際交流基金の日本語教師研修プログラムに参加している。他に、定期的に国際交流基金より派遣される日本語教育専門家の来訪の機会に、セルビア日本学会が中心となりセルビアの日本語教師を集め研修会を開催している。

現職教師研修プログラム(一覧)

 日本語教師対象の研修はない。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 2013年5月にベオグラード大学言語学部が中心となりセルビア日本学会が立ち上げられ、日本語教師間の連携が図られている。会員は20名程度であり、年に3~4回の会合を持ち、主に日本語教育法等についての意見交換を行う。

最新動向

 上記のとおりセルビア日本学会が立ち上げられ、日本語教師間の連携の向上が目指されている。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

 なし

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

 国際交流基金が実施する日本語能力試験が唯一の機会となっている。セルビアでは毎年12月に実施されている。

日本語教育略史

1975年 ベオグラード大学言語学部東洋言語学科にて日本語の授業開始
1986年 ベオグラード大学言語学部内に正式に日本語・日本文学専攻課程設置
1992年 ベオグラード言語専門高等学校にて日本語専修コース設置
2012年 ベオグラード大学言語学部に対して草の根文化無償資金協力にて最新LL機材を提供
ロズニッツア、ベチェイ等の地方の小学校での日本語の授業開始
2013年 セルビア日本学会がベオグラード大学言語学部を中心として発足
セルビア教育省より一般中等教育機関での正規科目としての日本語の授業認可
ベオグラード言語専門高等学校に対して草の根文化無償資金協力にて最新LL機材を提供
ベオグラード第八普通高校にて日本語の授業開始
2015年 ベオグラード、シャバッツ、チャチャク、ウジッツェ、ノビ・サド、ブルシャツ、ニシュなどの高校において日本語の授業が開始される。

参考文献一覧

ページトップへ戻る