スペイン(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
初等教育 中等教育 高等教育 その他
教育機関
合計
80 192 0 0 963 4,159 5,122
0.0% 0.0% 18.8% 81.2% 100.0%

2015年度日本語教育機関調査結果 学習者数グラフ
2015年度日本語教育機関調査結果の学習者数に関する帯グラフ。初等教育は0名で全体の0.0%、中等教育は0名で全体の0.0%、高等教育は963名で全体の18.8%、学校教育以外は4,159名で全体の81.2%。

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 公的機関で正式に日本語が教えられ始めたのは、1975年、マドリード国立語学学校(現・公立語学学校)である。高等教育機関においては、1986年にマドリード自治大学語学センターにて日本語コースが設置され、1989年にはバルセロナ自治大学内の翻訳・通訳高等専門学校にて副専攻の第二外国語履修科目として日本語コースが開始された。1992年にはバルセロナ自治大学においてスペイン初の日本語能力試験が実施され、1993年にはマドリード自治大学にて大学の選択外国語コースとして日本語が開講されるとともに、哲学文学科に東アジア研究所が開設、日本語・日本文学科目が開講された。1995年にはバルセロナ自治大学の日本語コースが翻訳・通訳学部に昇格するなど、1990年代には、各地の大学の附属語学センターや翻訳・通訳学部、文学部の第二外国語科目や自由選択科目として日本語コース設置の動きが活発化し、大学における日本語コースの地位が確立していった。
 近年の新規講座開設は、2007年にオビエド大学、2008年サラゴサ大学、2010年にスペイン国立遠隔教育大学(UNED)、2012年にカスティーリャ・デ・ラマンチャ大学クエンカ校と続き、現在15の高等教育機関において日本語講座が開講されている。
 このほか、大学レベルの日本研究課程として、2003年にスペイン政府により東アジア研究学士課程の設置が承認され、マドリード自治大学、バルセロナ自治大学、サラマンカ大学、カタルーニャ公開大学の4大学において東アジア研究後期学士課程(3~4年のみ)が新設された。さらに、ボローニャ・プロセス(1999年にイタリアのボローニャで採択された『ボローニャ宣言』に基づく、ヨーロッパの高等教育の改革プロセス)との関係で、2009年にはマドリード、バルセロナ両自治大学の課程は4年間の学士課程(GRADO)に改編された。一方、サラマンカ大学の学士課程は2008年に、カタルーニャ公開大学の学士課程は2012年より、修士課程に改編された。
 一方、スペイン各地の公立語学学校(EOI)では日本語講座開講のニーズの高まりを受け、2007年以降にも新規で日本語講座が開講され、ガリシア地方の2校(ビゴ、ア・コルーニャ)で日本語講座が新規開講されるなど、現在6校で日本語講座が開講されている。また、公的機関としては、カサ・アシアでの日本語講座がマドリード及びバルセロナで、スペイン経済商務研究センター(CECO)の講座がマドリードで実施されている。
 日本語教育支援体制としては、2010年2月にスペイン日本語教師会が設立され、同年4月に国際交流基金マドリード日本文化センターが開設、教師研修の機会の提供とネットワークの強化を通してスペインにおける日本語教育の拡充を進めている。

背景

 スペインでは70年代中頃以降、30年以上続いていた独裁政権から民主化への移行に大きなエネルギーが注がれたため、他の欧州諸国と比べ国際化という点で大きく遅れをとり、アジア地域を含む欧州以外の地域に対する関心が低かった。しかし、EU加盟後の目覚しい経済発展の後押しを受け、それまで関係が薄かった国・地域に対する関心が高まり、現在では官民をあげて日本やアジア諸国との関係強化に取り組んでいる。2001年には、政府が掲げた「プラン・アシア」に基づき、スペインとアジア諸国の学術・文化・経済交流促進を目的としたカサ・アシアが設立された。また、2007年にはマドリード市が、同市が掲げる日本との交流強化計画「プラン・ハポン」に基づき、国際交流基金を誘致し、2010年4月には国際交流基金マドリード日本文化センターが開設された。
 市民レベルにおいては、日本に関する情報が十分に広がっているとは言えないものの、対日評価・対日関心は非常に良好であり、伝統文化、日本食、武道などに対する関心が高いほか、近年では、日本のアニメ、マンガ、ゲームなどに傾倒する若年層を中心に日本語を学習する人々が増加している。また、日本への旅行者数も増加傾向にあり、日本旅行をきっかけに日本語に関心を持ち、日本語学習を始める学習者も少なくない。

特徴

 大学を中心とする高等教育機関、公立語学学校(EOI)、及び民間の語学教育機関(いわゆる語学学校)による日本語教育が中心であり、初等・中等教育機関での日本語教育は行われていない。

最新動向

  1. (1)スペインの日本語学習者数・教師数ともに増加傾向にあり、堅調な伸びを示している。
  2. (2)当初、日本語能力試験はバルセロナのみで実施されていたが、受験者数の増加を受けて2006年にマドリード市で、2012年にはサンティアゴ・デ・コンポステーラ市でも実施されるようになった。2010年度、2011年度は新試験導入とスペイン経済危機の影響もあってか受験者数は減少傾向にあったが、実施会場が3か所となった2012年度には865人が受験し、2010年度の821人を上回った。さらに、2014年にはグラナダにおいて、2016にはマドリードで7月の能力試験が実施されることとなったこともあり、受験者数は増加傾向にある。学習者数に対する受験者数の多さから推測すると、機関調査の対象とならない個人教授や独学による学習者が多くいるものと思われる。 特にこの1-2年、N3以上の受験者数が増加しており、日本語学習のすそ野が広がる段階から、継続学習者が増えつつある安定期に入ってきたと考えられる。
  3. (3)ボローニャ・プロセスを経て、東アジア研究後期学士課程(2年制)が4年制の学士課程(GRADO)あるいは修士課程へと改編されていき、2013年には最も早くGRADOに移行した大学から1期生が卒業した。それと並行して少しずつではあるが、日本語教育に関心を持ち始めるスペイン人も増えてきている。
  4. (4)カタルーニャ公開大学に加えて、2010年より、全国規模のスペイン国立遠隔教育大学(UNED)において日本語コースが開講されたが、日本語教育機関が居住地近辺にない学習希望者も多いので、今後遠隔地教育の発展は期待できる。
  5. (5)2013年9月にマドリードで第17回ヨーロッパ日本語教師会(AJE)シンポジウム が開催され、スペイン日本語教師会が運営にあたった。
  6. (6)2015年にサラマンカ大学文献学部に東アジア専攻の4年生学士課程(GRADO)が導入されたことを受け、サラマンカ大学に東京外国語大学グローバルオフィスが開設された。
  7. (7)2015年10月バルセロナ自治大学(UAB)及びスペイン日本語教師会(APJE)が国際交流基金のさくらネットワークメンバー*(【日本語教育略史】欄外参照)に加入。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 大学学部の選択科目のひとつとして設置されているほか、大学附属の語学センターは社会人にも門戸を開いており、通年または夏季集中講座として日本語講座が設置されているケースも多く見られる。なお、東アジア研究課程に基づく日本研究コースにおいては日本語履修が必修である。東アジア研究課程の学習者の大半は3年次に提携大学等への留学の機会がある。また、日本語学習者の中には文部科学省国費留学生、国際交流基金等による各種日本関連研修などに応募する者も少なくない。

その他教育機関

 公的機関では、公立語学学校(EOI)6校(マドリード、バルセロナ、マラガ、パンプローナ、ア・コルーニャ、ビゴ)、カサ・アシア(バルセロナ、マドリード)で一般向けの日本語教育が、また、マドリードにあるスペイン経済商務研究センター(CECO)ではMBAのコースに在籍する公務員やビジネスマンを対象とした日本語教育が実施されている。国際交流基金でも2011年10月より一般成人を対象とした日本語講座(JFS講座)を開講した。そのほか、マドリード、バルセロナを中心に、民間の語学教育機関(いわゆる語学学校)において日本語コースを設置している。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-4-2制。
 幼児教育が幼稚園(0~3歳)と幼児学校(3~6歳)の6年間、義務教育は、小学校6年間(7~12歳)、前期中等教育(エソ)4年間(13~16歳)までの10年間。その後、後期中等教育(バチリェラト)2年間(17~18歳)。高等教育は大学(4~6年。専攻によって異なる)、職業教育を中心とする専門学校がある。

教育行政

 教育法に定められた基本的枠組みの中で、17の自治州に対して教育制度に関する自治が認められており、各自治州によってカリキュラムの内容等は異なる(例えば、カタルーニャやバスクなど、スペイン語以外の公用語を持つ自治州では、州公用語の授業の義務化など)。

言語事情

 憲法によってスペイン語がスペイン全土の公用語として定められているが、自治州によってはその州の言語が併用されている(ガリシア州、バスク州、カタルーニャ州、バレンシア州等)。

外国語教育

 小学校1年生より外国語が必修(ほとんどの場合英語)。中学校1年生より第二外国語が選択科目となる。自治州によって異なるが、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語などが選択可能。また、スペイン国内には語学学習に特化した公立語学学校(EOI)が300以上設置されており、そこでもスペイン国内の地方語や欧州言語以外にもアジア言語などさまざまな言語が教えられている。

外国語の中での日本語の人気

 相対的な学習者は、英語や主要欧州言語よりも少ないが、他のアジア言語と比較すると、日本語の人気は非常に高い。特に、日本のアニメやマンガ、ゲームやドラマ等の人気が高まっていることもあり、ポップカルチャーへの関心がきっかけで日本語学習を始める例が多く見られ、個人教授や独学で学んでいるケースも多い。授業料の安い公立語学学校(EOI)では、日本語は毎年10倍を超える倍率で抽選となっているほか、東アジア専攻課程においても中国語、韓国語、アラビア語など他の言語と比べて日本語コースの人気は圧倒的に高く、競争率も高い。 ただし、機関数でみると、中国語のほうが相対的に機関数が多い。大学では83機関中中国語は33機関、日本語は26機関。EOIは中国語は16機関、日本語は7機関(2016 年在スペイン日本国大使館調べ)。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 多くの機関では主教材として『みんなの日本語Ⅰ、Ⅱ』本冊、翻訳・文法解説書スペイン語版(スリーエーネットワーク)が使用されているほか、『はじめのいっぽ』スペイン語版(スリーエーネットワーク)、『Japanese for Busy People』スペイン語版(AJALT)、スペイン発行教材『Nihongo. Gramatica de la lengua japonesa. Japones para hispanohablantes』(Herder, S.A.)などが使用されている。中級レベルの教材については、日本で市販されている複数の教材を活用している場合が多い。

その他教育機関

 『みんなの日本語Ⅰ、Ⅱ』本冊、翻訳・文法解説書スペイン語版(前出)や関連副教材のほか、『Nihongo. Gramatica de la lengua japonesa. Japones para hispanohablantes』(Herder, S.A.)、『Japanese for Busy People』スペイン語版(前出)、など入門、初級レベルではスペイン語解説つきの教材が多く使用されているが、『初級日本語げんき』坂野永理ほか(The Japan Times)、『できる日本語』できる日本語開発プロジェクト(アルク)、『文化初級日本語』文化外国語専門学校日本語科(文化外国語専門学校)を使用している学校もある。また、最近では「まるごと」シリーズを使う人や機関もかなり増えてきた。
 そのほか、参考書としては、独学者向けにスペイン人著者が発行した、マンガを利用した教材『Japones en vinetas. Curso basico de japones a traves del manga マンガで日本語』(Norma)のシリーズが初心者の絶大な支持を得ている。スペイン人学習者向けの文法参考書では『Manual de Japones Basicoスペイン語圏 日本語基礎文法』(Pearson Education Japan)、『Manual de lengua japonesa (Segunda Edicion)』(UAM)などもよく利用されている。
 文字教材としては、『Basic Kanji Book』加納千恵子ほか(凡人社)、『ストーリーで覚える漢字300』ボイクマン総子ほか(くろしお出版)、『漢字たまご』有山優樹ほか(凡人社)、『GENKI Plus KANJI LOOK AND LEARN』坂野永理ほか(The Japan Times)の他、マンガを利用した上述著者の『Kanji en vinetas. Curso basico de kanji a traves del manga マンガで日本語』(前出)や「ひらがなMemory Hint」「カタカナMemory Hint」も人気が出てきている。

マルチメディア・コンピューター

 高等教育機関や公立語学学校(EOI)、国際交流基金等の公的機関、大手民間語学学校等においては教室にPCやプロジェクター、TVモニター、DVDプレーヤー、音響などの設備が整っている場合もあり、授業でマルチメディア教材、パワーポイントやDVD、インターネットなどを活用している教師も多い。国際交流基金が開発した「エリンが挑戦!にほんごできます。」のDVDWeb版、「アニメ・マンガの日本語」Webサイトなどもスペイン語版があるため、よく利用されている。また、スペイン語がないもの(「ひらがな Memory Hint」「カタカナ Memory Hint」)も英語版が使われている。そのほか教師の間では「まるごと+」や「ひろがる」など使っているという声を聞く。
 スペインでは通信制大学2校で日本語が開講されており、講座登録者向けのEラーニングが活用されている。まず、カタルーニャ公開大学(UOC)は対面授業なしの完全通信制大学であり、同語学スクールで開講されている日本語コースもオンラインでの受講となっている。教材は日本語講師とシステム開発者が協力して開発しており、印刷用教材とEラーニング教材がある。イラスト、音声、動画などを活用した教材で、学習者が自由にアクセスし、練習問題等に取り組むことができ、教室のフォーラムや担当講師に質問のメールを送ることもできる。また、学習者が動画、音声、テキストを送ることができる教室内ブログも活用されている。また2010年に新規で日本語コースが開講された国立遠隔教育大学(UNED)では、「Web版エリンが挑戦!にほんごできます。」が主教材とされており、補助教材として文法や漢字の練習問題が提供されている。試験以外は基本的にオンライン受講であり、掲示されたペースに従って同サイトで学ぶことになっているが、現在、スペインの2地域では、週1回の対面授業(スクーリング)も実施されている。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 日本語教師としての資格は明確ではないが、学士号以上の学歴を有し(日本で取得した学位の場合、大学によっては、スペインでの学位認定手続きが必要)、スペインにおける日本語教育の経験を有していることが一応の基準となっている模様。なお、各大学独自の選考によって採用が決定されているが、語学センター等の場合、時間給による有期雇用契約が多い。また、東アジア研究学士課程の常勤教員の場合、契約更新条件として博士号の取得が課されるなど、大学の常勤教員となるためには相当の日本語教育経験と学位が必要となってきている。

その他教育機関

 公立語学学校(EOI)の教師となる場合は、各州によって多少異なるが、学士号を有し、かつ公立語学学校(EOI)の日本語学科を卒業していること、あるいは最上級レベルの認定試験を受け、合格していることなどが条件となっており、書類審査、採用試験を経て決定される。なお、公立語学学校(EOI)の待遇等は公務員に準じており、多くはスペイン人である。民間の語学学校の場合は、特に定まった資格要件はないが、スペインにおける日本語教育経験などが考慮されることが多く、一定のスペイン語能力は必須であり、また労働居住許可などの在留資格を有していることが条件となる。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成機関やプログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本語教師)の雇用状況とその役割

 日本語教師の約75%は日本人教師である。スペイン人教師は高等教育において東アジア研究や翻訳・通訳などの専門科目を教える傍らで日本語科目も担当するなど、重点は専門科目にあるようである。東アジア研究課程や翻訳・通訳課程などにおいては、コーディネーターは日本人教師であり、課程全体の方針に従って全体カリキュラムを組んだ上で、科目担当者がそれぞれ授業を計画・実施している。大学附属語学センターや第二外国語や選択科目で教えている大学においては、日本人教師1~数名で日本語コースを担当している場合がほとんどである。
 一方、マドリードやバルセロナなど公立語学学校(EOI)では日本人教師がいない学校もある。全国共通の目標、時間、シラバスなどの要領に沿って、スペイン人教師がコーディネートし、授業を実施している。ただし、ガリシア地方など、日本人教師のみが教えている公立語学学校もある。民間の語学学校においても、日本人教師のほうが圧倒的に多い。初級段階が中心であるため、特に科目によるネイティブ教師と現地教師の役割分担などは行われていない。

教師研修

 スペイン日本語教師会と国際交流基金マドリード日本文化センターの共催による日本語教育研修会、シンポジウム、ワークショップが年4-5回実施されているほか、原則として週一回勉強会を開いている。また、スペイン各地において、国際交流基金主催の地方巡回日本語教育セミナーや、個別機関へのJF日本語教育スタンダード導入を目的としたJFS導入支援のための機関内研修が年十数回実施されている。
 海外研修としては、国際交流基金の日本語教師訪日研修や、毎年フランスで行われているアルザス・欧州日本語教師研修(パリ日本文化会館主催)がある。

現職教師研修プログラム(2016年度一覧)

実施時期 研修名 対象 内容 国際交流基金の関わり
2月 スペイン日本語教師会日本語教育研修会 スペイン日本語教師会会員 1日:講義・ワークショップ 共催
4月
10月
日本語教育定例セミナー 4時間:ワークショップ 助成・協力
不定期 日本語教育巡回セミナー(スペイン国内8か所で実施) 各地の日本語教師 4時間 主催
年3回 JFスタンダード導入支援機関内研修 サラマンカ大学、バレンシア大学 3-4時間 主催

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 以前、バルセロナには日本語教師会が存在していたが、スペイン全土を網羅するネットワークは存在しなかった。2000年から毎年1月に大使館で行われていた日本語教師連絡会を母体として徐々に教師会設立機運が高まり、2010年2月に設立総会が行われ、スペイン日本語教師会(略称APJE)が正式に発足した。2010年は設立総会とともに研修会を実施したほか、3月に勉強会、6月に第1回スペイン日本語教師会シンポジウム、10月にワークショップを開催し、論集を発行するなど活発に活動している。2016年10月現在の会員数は117名。活動内容は、教師会総会兼研修会(2月)、シンポジウムまたはセミナー(6月)、研修会・ワークショップ(年2-3回)を国際交流基金マドリード日本文化センターとの共催で実施しているほか、教師会ホームページやメーリングリスト、Facebookでの情報提供、論集の発行(PDF版)、教材開発プロジェクト等の活動を行っている。

最新動向

 シンポジウムは隔年の開催としており、2015年にはサンティアゴ・デ・コンポステーラにおいて第3回大会が開催された。2013年9月には、第17回ヨーロッパ日本語教師会(AJE)シンポジウムをマドリードで開催した。また2016年には、大学付属語学センターで行っていた日本語劇コンクールの参加資格を広げ、スペイン日本語教師会主催事業として行った。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2016年10月現在)

日本語上級専門家

 マドリード日本文化センター 1名

日本語専門家

 マドリード日本文化センター 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 国際交流基金マドリード日本文化センター、東京外国語大学、サラマンカ大学間の3者協定に基づき、東京外国語大学より日本語講師1名を派遣

シラバス・ガイドライン

初等教育

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

中等教育

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

高等教育

 東アジア研究学士課程においてはボローニャ・プロセスに従ったETS(単位)制度を取り入れており、課程全体の単位数は240単位で、各学年60単位。その内訳は大学によってやや異なるが、教養60、必須84-120、選択90-54、実習6単位であり、うち言語科目の単位は40%となっている。また、CEFRに基づいた全課程終了時の目標レベル設定はB1-B2である。選択科目などで日本語を開講している場合、また、語学センターでも単位が認められる場合は、単位取得に必要な時間数のほかには、特に決められたシラバスやガイドラインはない。地域によって程度の差はあるが、語学センター全体もしくは第二外国語科目として提供されている言語共通でCEFR準拠が求められる傾向は強まっているほか、最近では民間の語学学校でもCEFRのレベルの表示が求められるようになってきている。

その他教育機関

 公立語学学校においては、20程度の全言語に共通し、CEFRに準拠した目標レベル設定と学習時間が設定されており、内容についてもレベルごとに指定された共通のトピック等シラバスが存在する。言語共通で、最終レベル終了時の目標レベルはB2となっており、欧州言語の場合は6年間、日本語、中国語、アラビア語は最大9年間で同レベルに到達することが目標とされている。しかし、指定教材等は特になく、実際のカリキュラム等は担当教師の裁量に任されている。

評価・試験

 日本語学習者の到達度を測る、国レベルの共通の評価基準や測定方法はない。中等教育における日本語教育が存在しないため、大学入試においても受験科目として日本語は採用されていない。日本語能力試験は当地の日本語学習者及び日本語教育機関・関係者には、日本語レベルを客観的に測定するほとんど唯一の試験として、「NOKEN」の略称で、広く認知されており、受験者も多い。また、少数ではあるが、日本漢字能力検定試験を受検する学習者もいる。

評価・試験の種類

 スペイン国内で統一された日本語学習者の到達度を測るための共通の評価基準や試験はない。公立語学学校(EOI)においては、初級段階の修了時にはCEFRのA2レベル、中級ではB1レベルの試験が課されるが、試験問題は統一されたものではない。日本語能力試験(1992年~バルセロナ、2006年~マドリード、2012年~サンティアゴ・デ・コンポステーラ、2014年~グラナダ、2016年~マドリード(コンプルテンセ大学))が唯一、統一試験的性格を持っているが、職業上の資格や大学等での単位や修了の要件にはなっていない。

日本語教育略史

1975年 マドリード国立語学学校にて日本語教育開始
1986年 マドリード自治大学語学センターにて日本語コース開始
1989年 バルセロナ自治大学の翻訳・通訳高等専門学校として日本語コース開始(副専攻の第二外国語履修科目)
1994年 バルセロナ自治大学において日本語能力試験を初実施
1993年 マドリード自治大学にて大学の選択外国語コースとして日本語を開講。哲学文学部に東アジア研究所を開設し、日本語・日本文学科目を開講
1995年 バルセロナ自治大学において日本語コースが翻訳・通訳学部に昇格
1980年代末
~1990年代
2003年
各地の大学の語学センター、翻訳・通訳学部、文学部等で日本語講座設置が活発化
スペイン政府により東アジア研究後期学士課程の設置が承認される(現在までに、マドリード自治大学、バルセロナ自治大学、サラマンカ大学、カタルーニャ公開大学(通信制)において新設)
バルセロナのカサ・アシアにおいて日本語講座開講
2006年 マドリード自治大学において日本語能力試験を実施(国内2会場に)
2007年 オビエド大学及び公立語学学校(ビゴ、ア・コルーニャ)にて日本語講座開講
2008年 サラゴサ大学及び公立語学学校(トゥデラ)において日本語講座開講
サラマンカ大学の東アジア研究学士課程が修士課程に改編
マドリードのカサ・アシアにおいて日本語講座開講
2009年 マドリード自治大学、バルセロナ自治大学の東アジア研究学士課程が4年制となる。
2010年 スペイン日本語教師会が発足
国際交流基金マドリード日本文化センター開設
国立遠隔教育大学(UNED)にて日本語講座開講
2011年 国際交流基金マドリード日本文化センター内で直営日本語講座開講
カサ・アシア, マドリードで同基金との連携日本語講座開講
2012年 サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学において日本語能力試験を実施(国内3会場に)
2013年 マドリードで第17回ヨーロッパ日本語教師会(AJE)シンポジウム開催
2014年 グラナダ大学において7月に日本語能力試験を実施(国内4会場に―7月1か所、12月3か所)
カサ・アシア, バルセロナで同基金との連携日本語講座開講
2015 年 スペイン日本語教師会(APJE)、バルセロナ自治大学(UAB)が国際交流基金のさくらネットワークメンバー*に加入。
サラマンカ大学にて東京外国語大学グローバルオフィスが開所
また、文献学部内に東アジア研究課程日本語コースが、翻訳学部内にも日本語コースが開講される。
2016年 マドリード・コンプルテンセ大学において7月に日本語能力試験を実施(国内5会場に)

*さくらネットワークメンバー:国際交流基金が、世界各地での日本語教育の充実・発展・質の向上を目標に構築を進める「JFにほんごネットワーク(通称;さくらネットワーク)」を構成する連携機関。各国・地域の中核的日本語教育機関がさくらネットワークメンバーとして認定を受けている。

参考文献一覧

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