スイス(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
43 151 3,709
学習者数 内訳
教育段階 学習者数 割合
初等教育 297 8.0%
中等教育 194 5.2%
高等教育 845 22.8%
その他 教育機関 2,373 64.0%
合計 3,709 100.0%

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1968年チューリッヒ大学、1977年ジュネーブ大学に日本学科が開設され、高等教育機関における学術研究分野として日本語教育及び日本研究が開始される。1980年代には、一般市民層にも日本の伝統文化に対する関心が高まったことにより、市民大学や語学学校にも日本語講座が開設され、ビジネス上の必要から日本語を学習する人口も増えて、民間の日本語教育も本格化する。
 1990年代に入ると日本語学習者の年齢、学習目的などの多様化が始まり、民間語学学校講座数の増加が顕著となる。また、公的教育機関においても、大学では日本学専攻以外の学生を対象とした講座の開設、ドイツ語圏の高等学校では選択科目として日本語講座を設置するなど、教育機関レベルでの新機軸が見られた。

背景

 日本のアニメやマンガなどのポップ・カルチャーに関心をもつ若者層、日本の武術を通して日本文化に接している層などの日本語学習熱を背景に日本語学習者数は確実に増加し続けている。また、永住邦人人口の増加により、その子弟を対象とする継承語としての日本語学習分野で着実な発展が見られる。

特徴

 民間の語学学校の学習者が全学習者数の半数以上を占める。

最新動向

 CEFRが浸透しつつあり、大部分の教育機関はA1からのレベル別のコースを設立している。
 継承語に関しては、連絡会と勉強会が毎年開催されている。
 また、旅行者のためのクラッシュコースや、日本の食文化を紹介する短期コース、オンラインコースを提供する教育機関もある。

教育段階別の状況

初等教育

 下記【中等教育】を参照。

中等教育

 スイス・ドイツ語圏の州政府は、小・中学校教育段階の民族融和政策の一環として、『HSKHeimatliche Sprache und Kultur)/母国語・文化コ-ス)』をシステムとして立ち上げ推進している。民間団体の継承言語学校が州の教育省からHSKとして認定された場合、その言語コースは公立学校の正式な課外授業として実施され、その評価・成績も他の正規教科同様成績表に記載される(CEFR評価に準じたものを適用)。一方、継承言語学校側は、公立学校建物内にある教室の無償貸与、授業に必要な機材の使用というオファーを受け、他の教職員との意見交換の場なども設けられている。
 高等学校では、チューリッヒ州、バーゼル州、ベルン州及びザンクトガレン州の7校で、選択科目として日本語講座が開設されている。

高等教育

 チューリッヒ大学及びジュネーブ大学の2校は日本学科を擁し、高いレベルの日本語教育を実施している。
 このほか、スイス国立工科大学・チューリッヒ大学共通語学センター、ザンクトガレン大学、ベルン大学、ルツェルン応用科学・芸術大学、ラッパースヴィル工科大学で、日本語講座が開設されている(2016年11月現在)。

その他教育機関

 バーゼル、ベルン、ローザンヌ、ヌシャテル、チューリヒ、ツーク、ルツェルンの各都市には日本語を母語とする者を両親のいずれかに持つ児童を対象とした学校もある。「スイス日本語教師の会」は、こうした児童のための日本語教材の開発に取り組んでいる。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 スイスの教育制度は各カントン(州)の専管事項となっており、カントンごとに教育制度が異なっているが、おおむね満6歳から9年間が義務教育(初等教育6年、初期中等教育3年)となっている。通常、大学進学希望者はさらに高等学校4年を経て、大学入学資格を取得した上で大学に進学する。大学の修学期間は4年から5年である。

教育行政

 教育行政は連邦政府が行っているのではなく、各カントン(州)の専管となっている。このため、教育制度が各カントンで異なり、不便な点もあるので、各カントンは連絡協議会を設け各カントン間の教育制度の相違からくる不都合の調整にあたっている。

言語事情

 ドイツ語(63.5%)、フランス語(22.5%)、イタリア語(8.1%)、ロマンシュ語(0.5%)の4か国語、および、外国人が話すその他(6.6%)。(www.myswitzerland.comより、2016年時点)

外国語教育

 ドイツ語圏の学校ではフランス語を、フランス語圏ではドイツ語を教えているが、近年英語への関心が高まり、チューリッヒ州ではむしろ英語を第一外国語としてフランス語より早く教え始める傾向が出てきており、様々な議論を呼んでいる。また、多くのカントンで第一外国語学習は小学校4年生から、第ニ外国語は6年生から開始される。

外国語の中での日本語の人気

 他の外国語(特に英語、フランス語、ドイツ語)と比較すると学習者の数は少ないが、学生のみならず一般市民の間でも日本語学習に対する関心が高い。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

 入門、初級にかけては人気教材が固定しているが、読解訓練、日本語能力試験対策、ビジネス日本語など、学習目的がより細分化する中級から上級クラスで使用されている教材は、教師により多様を極める。

初等教育

 下記【中等教育】を参照。

中等教育

 主なものとしては『みんなの日本語』(スリーエーネットワーク)と『げんき』(The Japan Times)がある。

高等教育

 主なものとしては、『Kompaktlehrgang JapanischDr. Heinrich Reinfriedasiaintensiv)、『げんき』(The JapanTimes)、『Japanisch Intensiv Grundkurs』(Buske)

その他教育機関

 主なものとしては、『みんなの日本語Ⅰ Ⅱ』(前出)、『まるごと 日本のことばと文化』(三修社)、『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE Ⅰ, Ⅱ』(前出)などがある。中・上級のクラスでは、新聞・雑誌記事なども頻繁に使用される。

日本語継承言語教育

 主なものとしては、『文部科学省指定小学校・中学校 国語教科書』(光村図書)、『日本語1年生 -この指とまれ-』、『日本語2年生 -はないちもんめ-』スイス日本語教師の会教科書制作グループ、『Japanisch im Sauseschritt, Universitätsausgabe mit Kana und Kanji』(前出)などがある。中・上級のクラスでは、新聞・雑誌記事なども頻繁に使用される。一部、社会科の教科書を使っているところもある。

マルチメディア・コンピューター

CDDVD
 ほとんどすべての教育機関で、教材付属のCDDVDを、聞き取り・発話練習はもとより、日本の文化・生活習慣の紹介ツールとして活用している。
《インターネット》
 読解用マテリアルをダウンロードして使用したり、漢字テストなどフリー教材を多く活用したりしている。また、授業で必要な情報を生徒にインターネットで予め収集させるなどの試みも行われている。かな学習用のアプリや辞書ツールの使用が増えている。
《パソコン》
 課題の作文をパソコンで書いて学習者に提出させることで、文法・語彙だけでなく、文字の習得に繋げている教育機関がある。また、スカイプを使った会話の授業を試みている教師もいる。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教師としての資格は特にないが、大学卒業者、教師資格保持者、日本語教師養成講座履修者等が採用される場合が多いようである。

中等教育

 日本語教師としての資格は特にないが、大学卒業者、教師資格保持者、日本語教師養成講座履修者等が採用される場合が多いようである。

高等教育

 日本語教師としての資格は特にないが、大学卒業者、教師資格保持者、日本語教師養成講座履修者等が採用される場合が多いようである。大学の高等教育レベルになれば、ある程度の学位が必要となる。

その他教育機関

 日本語教師としての資格は特にないが、大学卒業者、教師資格保持者、日本語教師養成講座履修者等が採用される場合が多いようである。

日本語教師養成機関(プログラム)

 2011年にチューリッヒ大学が語学教師養成プログラムを実施したが、大変高額な上に内容が大学講師対象、また使用言語がドイツ語であったため、参加が難しかった。将来同じプログラムが再度実施されるかどうかは、未定である。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 初等・中等教育機関、学校教育以外(成人教育)の日本語教育機関、また日本語を継承語として教えている機関では、そのほとんどがネイティブ教師のみを採用している。
 チューリッヒ大学、ジュネーブ大学日本学科では、日本語担当教師の常勤ポストが複数設置されており、両大学ともにネイティブ教師が採用されている。ジュネーブ大学においては、フランス語から日本語への翻訳の授業と日本語会話の授業をネイティブ教師が担当、日本語での口頭試験の審査官という役割も担っている。

教師研修

 国内研修としては、スイス日本語教師の会による教育セミナーが毎年2回開催されている。
 訪日研修としては、国際交流基金の日本語教師研修がある。

現職教師研修プログラム(一覧)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 ネットワークとしては「スイス日本語教師の会」が存在する。会員は大学、高等学校、市民大学講座、語学学校、継承語教育機関の日本語教師と幅広い層にわたっている。
 会は、毎年春に「日本語教育セミナー」、秋に「分科会」を開催している。これらは会員の日本語教師としての質的向上を目的とする一方で会員間の情報交換、親睦の場となっている。また、ニューズレター「交流」を年1回発行するほか、電子メールによる情報提供も行い、会員への便宜を図っている。

最新動向

 継承語教育のための教科書制作プロジェクト・チームが国際交流基金の助成を受け、小学校1年生向け教科書及びワークブック(2004年)、2年生向け教科書及びワークブック(2006年)を出版している。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

国際協力機構(JICA)からの派遣

 国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。

その他からの派遣

 (情報なし)

日本語教育略史

1968年 チューリッヒ大学に日本学科開設
1977年 ジュネーブ大学に日本語科開設
1980年代 市民大学や語学学校に日本語講座開設
1990年代 民間語学学校講座数が増加
2005年 日本語能力試験の実施を開始

参考文献一覧

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