タジキスタン(2016年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数
初等教育 中等教育 高等教育 その他
教育機関
合計
3 9 0 15 62 0 77
0.0% 19.5% 80.5% 0.0% 100.0%

(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1991年、ソ連邦崩壊とともにも独立したタジキスタンは、1991年から1997年まで熾烈な内戦を経験し、一般国民の生活に関わる多くの社会インフラが破壊された。内戦中は一般教育における状況も混乱に陥り、現在、ようやく復興に向かいつつある段階にある。
 こうした状況のもと、タジキスタンにおける日本語教育は、未だ初期段階にある。2002年9月、国立言語大学に日本語の専門課程である日本語学科が開設された。設立当初は日本人教師はおらず、現地人教師のみで日本語教育がなされていたが、その後2004年9月より数名の日本人ボランティア教師がほぼ1年交替で日本語教育に携わってきた。2007年6月には学科創設以来、初めての卒業生を輩出した。その後、2007年から2年間日本人教師が不在であったため、一時的に学科への新規入学が凍結されていた時期があった。2009年9月からは再びボランティアの日本人講師が赴任していたが、2010年7月に同日本人講師が帰国した。
 2015年2月からはJICA短期シニアボランティア(SV)が継続的に巡回指導を行っており、日本人講師による現地人教師の育成及び学生への指導が実施されている。また、同大学により、日本人日本語教師1名が2016年9月から雇用されている。
 2015年2月に派遣されたSVの活動では、国立図書館や地方大学で日本語を教える機会を設け、学習を継続する環境は担保されていない状況ながら日本語学習者は大幅に増加している。
 2006年9月にはロシア・タジク・スラブ大学に第二外国語として日本語コースが開設され、2014年6月までJICA短期シニアボランティア(SV)が断続的に派遣され単位の取得がない特別クラスを実施していた。2015年2月から、JICA短期SVが継続的に派遣されており、2016年10月現在は2名の日本人講師が、単位の取得があるクラスを現地人教師と共に実施している。
 2007年9月には国際NGOアクテッドが運営するバクトリア文化センターにおいて日本語コースが開設されたが慢性的な教員不足が続き、2008年には同コースは閉鎖された。
 2009年には、ロシア・タジク・ギムナジウム特別中学校において日本語講座が開設された。現在同校では、30人が週3回、現地人教師の下で日本語を学んでおり、JICA短期SVが巡回指導をしてサポートしている。同校では、教材が慢性的に不足した状況が開講以来続いている。

背景

 タジキスタンでは独立後の内戦にて生じた国内経済・インフラの損失、優秀な人材の国外流出等が生じ、これらが未だ経済成長の足かせとなっている。こうした状況の中、タジキスタンの将来を担う人材の育成は政府も急務とするところである。学生の海外留学志向は高く、従って言語教育は大変重要視されている。
 タジキスタンにおいて日本は、日本製の家電製品や自動車が富裕層のステータスとして認知されている他、先端技術や武道の国として比較的好意的に認識されている。他方、未だ日本企業の進出は極めて限定的であり、在留邦人も少ない中、社会における日本語のニーズは低く、従って日本語学習者数も限定的である。

特徴

 開発途上にあるタジキスタンでは、「語学能力=職を得るためのツール」と考える向きが多く、従って英語、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語等、国際機関やビジネスシーンで有用性の高い言語の学習者が多い。日本語学習希望者は近年増えつつあり、ロシア・タジク・スラブ大学により社会人向け講座が開催されることがあるものの、継続的に開催されておらず、また、学習を積み上げていくようなカリキュラムが整っていないため学習希望者数のニーズを十分に満たせていない。
 日本語学習者の学習動機としては、日本の大学・日本語学校への留学、日本の文化・伝統への関心、日本語そのものへの語学的興味などであるが、最近はアニメ・マンガなどの日本のポップカルチャーへの関心から日本語を学習し始める人が増えてきている。
 問題点としては、十分な学習環境が整備されておらず、かつ十分な質と数の教員が存在しないことから日本語教育レベルが低水準に留まっていること、更に日本語を使う就職先等、日本語の習得を活かせる場が非常に限られているということがある。

最新動向

 現在、タジキスタンでは国立言語大学と、ロシア・タジク・スラブ大学及びロシア・タジク・ギムナジウム特別中学校において日本語教育が実施されている。
 国立言語大学では、4名の現地人教師、1名の日本人日本語教師によって日本語学科が運営されており、2016年10月現在約60名の学生が日本語を学んでいる。2名のJICA短期SVが巡回指導として同校の日本語クラスをサポートしている。3名の教師が日本に留学している。
 ロシア・タジク・スラブ大学では、2016年9月に日本センターを開設、1名の現地人教師、2名のJICA短期SVにより同校日本センター・日本語クラスが運営されている。2016年10月現在、4学科、6つのコースで日本語の履修ができ、約60名の学生が日本語を学んでいる。また、同日本センターでは土曜日社会人コース、文化紹介(不定期)を開講している。
 ロシア・タジク・ギムナジウム特別中学校では、2016年10月現在約30名の児童・学生に対し、1名の現地日本語教師が日本語を教えている。2名のJICA短期SVが巡回指導として同校の日本語クラスをサポートしている。
 タジキスタンの日本語教育に対する支援としては、JICAシニアボランティアが中心となり、日本語教師会の設立準備、日本語教育カリキュラムの作成、教科書の選定、現地人教師の指導、学生への日本語教育にあたっている。また、国際交流基金による日本語教師研修プログラムを活用し、現地人教師のレベル向上に取り組んでいるほか、教材購入助成プログラムを活用して日本語教育教材の充実化を図っている。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 ロシア・タジク・ギムナジウム特別中学校において日本語講座(希望者のみ)が実施されている。

高等教育

 国立言語大学(専門課程)及びロシア・タジク・スラブ大学(選択科目)で日本語教育が実施されている。

その他教育機関

 ロシア・タジク・スラブ大学日本センターにおいて、JICA短期SV派遣時のみ、土曜日青少年コースと社会人講座が登録制で開講されている。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 11-4制
 初等・中等教育は11年制(6~17歳)で、義務教育。後期中等教育機関にあたるリツェイ(8~11年生の3年間)もある。高等教育機関である大学は4年制。

教育行政

 初等・中等教育機関も大学も教育科学省の管轄下にある。一部の専門大学では、教育科学省ではなく他省庁の管轄下にある(例えば農業大学は農業省、芸術大学は文化省の管轄下にある)。

言語事情

 タジク語が国家語であり公用語であるが、ロシア語も民族間交流語として公用語の位置づけが与えられている。その他、ウズベク系住民がウズベク語を、キルギス系住民がキルギス語を使用し、ゴルノ・バダフシャン自治州ではパミール諸語が使用されている。

外国語教育

 1年生より第一外国語としてロシア語を履修(必修)。
 4年生から第二外国語として英語、ドイツ語、フランス語等(学校によって異なる)から選択履修(必修)。

外国語の中での日本語の人気

 ロシア語を別とすると、外国語の中では英語、中国語、韓国語の人気が高い。その他、ドイツ語・フランス語・アラビア語等の学習者が多い。日本語については専門課程が一大学にしかないため学習者数は少ないが、近年徐々に増加の傾向にある。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 『みんなの日本語初級Ⅰ、Ⅱ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
 『まるごと入門、初級』国際交流基金 (三修社)

高等教育

 『みんなの日本語初級Ⅰ、Ⅱ』『ひらけ日本語』拓殖大学留学生別課(凡人社)、『BASIC KANJI BOOK』 加納千恵子他(凡人社)、『ジェイ・ブリッジ』(凡人社)などがよく使われている。

その他教育機関

 青少年コース『みんなの日本語初級Ⅰ、Ⅱ』スリーエーネットワーク
 『まるごと入門、初級』国際交流基金 (三修社)
 社会人コース 新聞記事や手製教材

マルチメディア・コンピューター

 日本語教育にマルチメディア・コンピューターは使用していない。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 学士号が必要。

高等教育

 基本的には修士号以上であるが、日本語教育能力検定試験合格、またはそれに準ずる資格が必要。

その他教育機関

 現在、JICA短期SVのみが講座を実施しているため、現地人講師による日本語教育は実施されていない。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 国立言語大学において、日本人講師が雇用されており、日本語コース運営全般に携わっている。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修はない。

現職教師研修プログラム(一覧)

特になし

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 JICA短期SV及びロシア・タジク・スラブ大学により日本語教師会の設立準備を行っている。

日本語教師派遣情報(2016年10月現在)

国際交流基金からの派遣

 なし

国際協力機構(JICA)からの派遣

シニア海外ボランティア
スラブ大学 3名

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

初等教育

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

中等教育

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

高等教育

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

その他教育機関

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

評価・試験の種類

 共通の評価基準や試験はない。

日本語教育略史

2002年9月 国立言語大学にて日本語教育開始
2006年9月 ロシア-タジク(スラブ)大学で日本語教育(第二外国語)開始
2007年6月 国立言語大学で、日本語学科創設以来初の卒業生輩出
2007年9月 アクテッド・バクトリア文化センターで日本語コース開設
2008年9月 アクテッド・バクトリア文化センターにおける日本語コース閉鎖
2009年9月 ロシア・タジク・ギムナジウム特別中学校での日本語講座開始
2012年7月 ロシア-タジク(スラブ)大学での日本語教育中止
2014年4月 ロシア-タジク(スラブ)大学での日本語教育再開

参考文献一覧

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