平成29(2017)年度 日本語指導助手レポート ハノイで感じる「おもしろい!」こと

ベトナム日本文化交流センター
久保田育美

私はベトナムの首都ハノイにあるベトナム日本文化交流センター(以下、JFVN)に赴任しています。私がこのハノイで仕事をする中でおもしろい!と日々感じていることを2つお話しさせていただきます。それは、ほかの人と一緒に考えることと、さまざまな交流が垣間見られることです。

ほかの人と一緒に考える

授業準備の打ち合わせの画像
授業準備の打ち合わせ

「授業をする」と一口に言っても、その中には「準備」「授業をする」「振返り」が含まれているのではないかと思います。

私は普段、ハノイの中学校・高校で日本語を教えるベトナム人教師の授業サポートを行っています。時には授業準備を一緒に行い、時には授業当日クラスに入って先生の補助をします。とは言え、何年も現場で教えている先生の方が、ベトナムのことも、生徒のことも、教科書のことも、よく分かっているわけですから、二年しか派遣されないベトナム初めての日本語指導助手がいったい何のサポートをするんだと思われるかもしれません。私も今でもそう思います。ですがそんな中で私が最も大事にしているのは、先生との「授業準備」です。

例えば、「語彙導入の後、グループで単語を覚える活動をしたいんだけれど、どんなことをしたらいいでしょう」という相談があります。参考書や活動集を見れば情報が豊富にありそうな内容ですが、私はまず「どうしてグループがいいんですか」「普段の教え方だと何が上手くいかないんですか」「先生がイメージする活動って何ですか」など、いろいろと先生に聞いてみます。そうすると、その先生が良いと思っている教え方、普段大切にしていること、そのクラスの生徒の雰囲気など、少しですがいろいろと分かってきます。先生が話すことにあわせて(時にはそれと逆のことも考えながら)その日の「問い」を一緒に話し合っていくと、自ずと私たちなりの「答え」はでてきます。

遠回りしていろいろ考えて話し合っていると時間も気力も使いますが、この過程が授業準備で大事なのだと、ハノイで先生方と接していて感じています。また私自身、この仕事を通してさまざまな教育観に触れることができ、自身の学びにも繋がっていると実感しています。

さまざまな交流

ここでは、ハノイの指導助手が企画・運営に関わる「ベトナム中学生日本語キャンプ(以下、中学生キャンプ)」と「日本語フェスティバル」についてご紹介します。

中学生キャンプは、ベトナムの夏休みにあたる7月に、全国の生徒・教師を対象として実施しています。直近の2016年度はハノイに全国から生徒54名と教師23名が集まり、さまざまな活動に取り組みました。また、準備期間と当日のサポート役として、大学生ボランティアにも参加してもらいました。

日本語フェスティバルは、毎年4~5月に実施する事業で、ハノイを含む4地域で選ばれた約10名のスピーチコンテストと、歌や踊りなどのパフォーマンスコンテストの二部構成にわかれています。多くの機関から協賛いただき、500人収容するホールで実施する大規模なフェスティバルです。例年、出場者は大学生がほとんどですが、今年度は中高校生、社会人、日本語パートナーズのパフォーマンス部門への参加もあり、幅広い層の参加者が集まりました。

日本語フェスティバル2017の画像
日本語フェスティバル2017

この二つは全く異なるイベントですが、私がこの事業運営を全うして、やってよかったなと思う瞬間は、当日参加者同士で仲良くなっておしゃべりしたり、互いを激励したりする場面が垣間見えたときです。どちらの事業においても、参加者が仲良くなることを大きな目標に掲げているわけではありません。ですが、初めて会ったにも関わらず友だちと楽しく活動する中学生、大学生ボランティアの先輩に憧れてたくさん話をしようとする中学生、緊張感漂うステージ袖で互いのグループを応援し、発表後は和気あいあいとおしゃべりする発表者。こうした場面は一つのイベントの中で起きる小さなことにすぎませんが、私にとってはとても素晴らしいことに感じられます。これをきっかけに、今後何らかのかたちで彼らの交流が続くかもしれないし、何かに対するモチベーションがより高まるかもしれません。

イベント当日にどれだけの交流が生まれるか、それは準備するものでもないし、予測できるものでもありませんが、当日できた繋がりが今後何らかのかたちで残ったり、発展したりすることが楽しみでなりません。中学生キャンプや日本語フェスティバルは、企画・運営側として当日までに多大な労力を割く分、学習者や参加者の間で生まれる交流が見られたときの喜びも非常に大きいのです。

私がここに書いた内容にある業務は一部にすぎませんが、以上が私自身これまでの任期を振り返り、指導助手をやっているからこそ実感できる醍醐味だと思うことです。

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