平成29(2017)年度 日本語指導助手レポート クアラルンプールにおける日本語指導助手の活動

クアラルンプール日本文化センター
屋名池明

私は現在、マレーシアの首都のクアラルンプールにある、国際交流基金クアラルンプール日本文化センター(以下、JFKL)で日本語指導助手(以下、指導助手)として活動しています。クアラルンプールはマレー系、中華系、インド系をはじめとする多数の民族が共存しており、様々な文化を肌で感じることができます。日本も例外ではなく、クアラルンプールには日系の企業や店が数多くあり、日本語が至る所で見られます。そのため、日本への関心も高く、日本語に興味を持つ人々がJFKLを訪ねて来ることは少なくありません。そんなJFKLで活動する私の業務は多岐に渡りますが、その中核となっているのは日本語講座と日本語・日本文化紹介イベントの2つです。以下では、これら2つの業務について紹介します。

JFKL日本語講座

JFKLでは、16歳以上の成人を対象とした日本語講座を開講しています。指導助手の私は、上級専門家、専門家、現地講師の先生方とともに同講座を担当しています。同講座ではJF日本語教育スタンダード準拠の日本語教科書『まるごと 日本のことばと文化』を使用しています。私が担当しているクラスは「入門」「初級2」「初中級」で、授業が午後6時半に始まり、8時半に終わります。そのため、受講生の大半は、仕事が終わってから授業に来ます。そのようなこともあり、授業が始まる前は、仕事の疲れを見せる学生も少なくありません。しかし、授業が始まると、そのような様子を見せる学生は1人もおらず、みんな熱心に教室活動に取り組んでくれます。そして、授業が終わると、みんな笑顔で「先生、また来週!」と言って教室を去っていきます。毎回の授業の準備は大変で、上手くいかず、頭を抱えることは時々ありますが、学生からそのような一言をもらうと、「日本語教師になって本当によかった」と心から思うことができます。

日本語・日本文化紹介イベント

指導助手としての主要な業務には、日本語・日本文化紹介イベントへの協力もあります。例えば、JFKLでは、マレーシア国内の学生に日本文化を知ってもらう機会を提供するため、大学、高等学校等の外部教育機関からの訪問依頼に対して受け入れを行っています。これをJFKLでは「JFKL Visit」と呼んでいます。JFKL Visitは日本文化体験ワークショップ2つ、ミニ日本語講座、JFKL図書館ツアーからなっており、私は毎回、30分間のミニ日本語講座を担当しています。訪問してくる学生の多くは、日本語を学習したことがないため、そのような学生たちに少しでも日本語の面白さを知ってもらおうと、毎回、日本語を使ったゲームやクイズなどを行っています。30分という限られた時間内で日本語に興味を持ってもらうことは容易ではありませんが、JFKL Visitに参加した学生たちが覚えたての日本語を使って「ありがとうございました」と声をかけてくれるときは、とても嬉しく思います。

JFKL Visit ミニ日本語講座の画像
JFKL Visit ミニ日本語講座

日本語・日本文化紹介イベントへの協力は、上述のJFKL Visitに限りません。私が昨年度はじめて1人で出講した、サラワク大学の学生自治寮による日本フェスティバルでは、JFにほんごeラーニング「みなと」をはじめとする、国際交流基金が開発したオンライン日本語学習ツールの紹介と、1時間の日本語講座を行いました。また、JFKL文化事業部(以下、CAD)のイベントに協力することもあります。今年度5月上旬には、セランゴール州ぺタリンジャヤにある博物館において、日本人形展覧会のオープニング・レセプションがあり、私はミニ日本語講座を担当したほか、CADスタッフによる日本文化体験ワークショップのサポートをしました。このように、日本語・日本文化紹介イベントは毎回、場所も内容も異なるため、準備するのも、実際に行うのも簡単ではありません。しかし、普段とは異なる環境で、異なる人々と接することで、日本語事業に対する視野が広がり、日本語教師としての成長につながると感じています。

今後について

クアラルンプールに赴任して、1年2カ月が経とうとしています。私の任期は、残り10カ月となりました。この14カ月間、様々なレベルの日本語クラスを担当させてもらうことで、日本語教師としての経験を積むことができました。上級専門家、専門家、現地講師の先生方には、授業の準備や反省をするにあたって、大変貴重なアドバイスをいただきました。また、JFKL職員の皆さんには、日本語事業全般について丁寧に教えていただきました。経験の少ない私が、赴任してから今まで諦めずにやってこられたのは、JFKLの皆さんがこのように手厚くサポートしてくださったからです。JFKLで指導助手として活動できていることを、本当に嬉しく思います。残りの10カ月、JFKLのスタッフの皆さんとともにマレーシアの日本語教育に貢献していきたいと思います。

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