平成30(2018)年度 日本語指導助手レポート 「つながり」を作る

ブカレスト大学
竹内 智美

ルーマニアのブカレスト大学日本語学科に、日本語指導助手(以下、指導助手)として派遣されて、1年8ヶ月が経ちました。1年8ヶ月前、日本からの直行便がないこともあり、ほとんど1日かけてやっとルーマニアに辿り着いたことを覚えています。このように、日本から遠く離れているにもかかわらず、ここルーマニアにも、日本に興味を持ち、日本語を勉強している学生がたくさんいます。私はここで、日本語の授業や授業外の活動のサポートなどをしています。以下で、指導助手の業務内容や、ブカレスト大学で日本語を勉強している学生たちの様子について少し紹介したいと思います。

日本語の授業

日本語学科はとても人気があり、毎年50名程度の学生が入学してきます。そのため、いつも教室はにぎやかです。私は週に8時間、1年生の日本語の会話と漢字の授業を担当しています。学生たちは、3年間で卒業しなければならないため、とても速いスピードで授業が進んでいるにもかかわらず、予習復習を欠かさず、真面目で努力家な学生が多い印象です。授業中は、できるだけ学生一人ひとりと対話する時間を作るようにし、人数が多い中でも、一人ひとりが主体的に参加していると感じられるような雰囲気づくりを心がけています。また、少しでも主体性を持ってもらえるよう、今学期からは、小テストを学生たちに作ってもらっています。毎回小テストの担当者が工夫して作っており、私自身も学生から学ぶことが多くあります。

学生が小テストをおこなう様子の写真
学生が小テストをおこなう様子

授業外の活動

ブカレスト大学日本語学科には、授業外の活動の一つとして、クラブ活動があります。現在は、以下の18のクラブが活動しています。
生け花、茶道、書道、囲碁・将棋、藍染、演劇、かるた、太鼓、ダンス、折り紙、会話、コーラス、着付け、風呂敷、寿司、メイドカフェ、紙芝居、ポップカルチャー それぞれのクラブでは、日本に留学した学生が日本で学んできたことや、文化イベントでブカレストに来た日本人から習ったことを後輩たちに受け継ぐことで、学生が主体となってクラブ活動をおこなっており、中にはいくつも兼部している学生もいます。私は主に、茶道部と書道部の活動のサポートをしています。どちらのクラブも、経験者がほとんどいないにも関わらず、道具の扱い方から具体的な内容まで先輩から学び、そしてまた後輩に教えることでクラブが続いています。先週教えたことが次の週にはもうできるようになるなど、学生たちの飲み込みの早さにも、いつも驚かされます。

「つながり」を作る

これまでに、ブカレスト大学日本語学科では、日本人学校の子供たちとの交流、日本の高校生たちとの交流、日本の大学生たちとの交流、他の国の学習者との交流などを通して、様々な年代の人たちとのつながりを作っています。その中でも、特に私が中心となって行った、日本の大学生たちとの交流について詳しくご紹介したいと思います。
2018年の2月下旬に、日本から18名の大学生たちがブカレスト大学を訪問しました。ブカレスト大学の学生にとっては「日本人と日本語で話す機会を作る」ことを、また日本の学生たちの中には、将来日本語教師を目指す学生もいるため、「日本語教師の仕事に触れる機会を作る」ことを、そして双方の学生が「お互いの国のことを少しでも知り、今後も続く関係を築く」ことを目指して、様々な活動を考えました。まず、日本人と日本語で話す機会を作り、お互いの国のことを少しでも知り、今後も続くような関係を築くために、SNSを通じて事前に、自己紹介や自国の習慣などの動画の共有をしました。実際に会ってからは、それぞれの国の文化に関するディスカッションをしたり、一緒に両国の料理を作ったりしました。そして、ブカレスト大学の学生が日本の学生にルーマニア語を教え、実際に市場などでルーマニア語を使用する機会を作りました。また、日本の学生が日本語教師の仕事に触れる機会を作るために、日本語の授業に参加するだけでなく、ブカレスト大学で日本語を教えている4人の先生と話す機会を作りました。
交流に参加した学生からは「すごく楽しかったです!」「とても楽しかったです。この思い出絶対に忘れません。」「りょうりをつくった時はいちばんたのしかった。」「りょうりをいっしょにつくってとてもよかったです^^」などの声があがりました。こういった感想や、交流中の学生たちの笑顔、交流の最後に涙を流している姿を見て、本当にこの交流をして良かったと感じました。
一度つながりを作れば、またきっとどこかでそのつながりが生きてくる日がやってくると思います。今後も、学生たちの将来につながるような「つながり」を増やし、学習者たちが、日本語を通してさまざまな経験ができるよう、サポートをしていきたいと思っています。

日本の大学生たちとの交流の写真
日本の大学生たちとの交流

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