幼稚園・小学校における日本語教育

アイナ・ハイナ・エレメンタリー・スクール
山本 史織

アロハ・ステート(州の愛称)

2011年8月、太平洋の真ん中に位置し、オアフ島・マウイ島・ハワイ島などの主要8島と100以上もの小島からなる、ハワイ(布哇)州へ派遣されてから、早1年半が経とうとしています。
ハワイ州、別名アロハ・ステートは、 1959年8月に50番目の州として、最後にアメリカ合衆国に加盟しました。赴任先のアイナハイナ小学校は、オアフ島のホノルル市郊外に位置しています。ホノルル市は、世界有数の観光都市であるため、特にワイキキ地区などでは日本人経営のアパレルショップやレストランなども多く見られ、日本語履修目的の理由の1つとして、「就職に有利だから。」という意見も聞かれるくらいです。
公用語は、英語・ハワイ語であり、家系のバックグラウンドによっては日本語、中国語、韓国語、フィリピン語を話す人にも多く出会います。以前、同国オハイオ州に数年住んでいたことがありましたが、オハイオ州とハワイ州を比べると、全体的にアジア人の占める割合が大きいという印象です。

若手日本語教員としてのアシスタント業務

アイナハイナ小学校の日本語プログラムは、 1996年にスタートし、2013年1月現在、フルタイムの教師が1人、若手日本語教員(本人)が1人、パートタイムの教師が3人、と計5名で、日本語プログラムを支えています。学校全体の教師数は、約 75名、生徒数は、幼稚園生から小学5年生までの約645名であり、2013年1月現在では、全生徒が週に1度日本語を履修しています(学年によって、授業時間は異なる)。決まった使用教材は特になく、毎回の授業内容に最適なものを、オリジナルで作成したり、書籍やインターネットから抜粋し、必要であればそれらを再編集したりして臨機応変に対応している。
アシスタント業務として、1年目は、必須クラス(幼稚園生)の補助、日本語クラス以外の補助(幼稚園生)、小学生放課後クラスの補助、幼稚園放課後クラス「にじぐみ」の新規開講担当の4つでした。この新しい「にじぐみ」を履修した子どもの半数以上は、2年目の小学生放課後クラスも履修をする結果となりました。2年目は、必須クラス(幼稚園生・1年生)の担当、紙芝居プロジェクト「OHANASHI」の担当(下記の”これまでとこれから”を参照)、1年目と同様の小学生放課後クラスの補助、「にじぐみ」の担当の4つです。
補助は、基本的には、メインの先生がクラスの前方真ん中、補助役はその先生の横へつき、必要に応じて、個人的支援の必要な子どもの元へ行ったり、コー・ティーチングでクラスの子どもの半数とゲームをしたりという形で行われています。また、担当させていただいたものは全て、スーパーバイザーと週に数回行われるカジュアルな話し合いの元、提案や相談をさせていただきながら、進めていきました。経験豊富な先生方のご指導の元、ゆっくり確実に計画・実践を繰り返すことができ、毎日幸せを感じながら、仕事をすることができています。

夏だ、海だ、日本語だ!

通常は、赴任校での仕事が主ですが、夏休みの間は、周辺の小学生が集うサマーキャンプで、日本語クラスの新設担当を、もう1人の教師とコー・ティーチングという形でさせていただきました。サマーキャンプに参加している子どもたちの多くは、保護者が夏休み中も働いていて家にいることが出来ないという条件下にいます。日本語クラスを取っている子どもたちも、他のサマーキャンプも併せて取っているということを前提にプランニングをしました。その結果、この日本語クラスが子どもに負担になりすぎず、1クラスにまとまった幼稚園生から小学5年生まで全生徒が楽しめるように、宿題を一切設けず、日本の文化紹介(特に夏という季節に焦点を当てた)を含んだ制作を主な内容としました。具体的な各授業のテーマとして、けん玉作り、ちぎり絵、凧作り、漢字を習字で書いたうちわ作り、ヨーヨー釣り、七夕の短冊作りが挙げられます。

これまでとこれから

1年目を終えて、印象に残っていることは、2つあります。1つ目は、幼稚園生を対象とした日本語教育について、複数の視点から知識・経験を得ることが出来たということです。幼稚園生との関わりは、必須クラスでのアシスタントが主でしたが、他にも放課後クラス「にじぐみ」の担当や、日本語の授業以外の時間である算数、美術、英語の授業にアシスタントをさせていただくことで、様々な観点から、子どもの注意の引き方・言葉遣い・学習内容の導入方法などを具体的に見て、考えることが出来ました。次に、子どもや、同僚である先生(担任、特別支援員、図書館司書、事務員など)のバックグラウンドに多様性が見られるということです。今年度は、先生方の名字の3分の1近くが、日本語名であることも1つの例です。考えられる原因として、派遣されているオアフ島の、旅行客や歴史的背景による移民などからくる、ハワイ文化の東洋と西洋の文化が混ぜ合わされた独特の文化形成が考えられます。また、これらの事情から、子どもたちの多くは、日常生活の中で自然と日本文化に触れていることがあるので、海苔やふりかけなどを用いておむすびを作って食べる3年生の特別授業の時も、「海苔は、食べたくない。」とセっている子どもは、2人だけでした。
2年目が始まるにあたっての目標は、3つあります。まず、去年アシスタントとして得た知識・経験を、前半に担当させていただく日本語の授業(幼稚園生&1年生の必須クラス、「にじぐみ」)で活かしながら、新たなものを自分の ”教師の引き出し”に貯めていくことです。2つ目は、後半に新規で始めさせていただくプロジェクト「OHANASHI」で、図書館で眠っていた紙芝居を、幼稚園から2年生までの全15クラスで、パネルシアターを用いながら紹介(2週間に1回 10~15分ずつ)することです。これには、子どもが親と一緒に自宅で紙芝居を楽しめるよう、紙芝居の裏に英訳をつけていくことも含まれています。3つ目は、教材・ワークシート・レッスンプランの整理をすることです。
私が日本語教師を志した当時からの夢は、幼児~小学校低学年の子どもと、日本語や日本文化を楽しみながら一緒に学んでいくことでした。 2011年夏にハワイ州へ派遣されてからは、この夢に、日米間の交流を日本語教育を通して深めていく、という大きな仕事も加わり、責任重大ではありますが、今までにない程充実した日々を送ることができています。この活動を支えてくださっている皆様に恩返しをすることが出来るよう、残りの赴任期間、全力で頑張っていきたいと思います。

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