希少な存在であることをいかして

ケリー・ウォルシュ・ハイ・スクール
花見 さやか

ワイオミング州における日本語教育

ワイオミング州は、アメリカ西部に位置する、人口約53万人の州です。北部には、アメリカで初めて国立公園に制定された、イエローストーン国立公園やグランド・ティトン国立公園を有している他、風の強い土地柄を活かした風力発電や、豊富な天然資源を持つなど、自然豊かな州です。
ワイオミング州での日本語教育は、ララミー市にある唯一の州立四年生高等教育機関であるワイオミング大学で行われています。派遣校であるケリーウォルシュ高校は、ワイオミング州で唯一のK−12で日本語教育を行っている学校です。ケリーウォルシュ高校では、日本語学習(5Cs)を通して生徒が自身の視野を広め、また自国の言語・文化についても客観的に見る事ができ、21世紀に生きる世代として、多文化・多言語社会への柔軟性や寛容性を培うとともに、そこで必要とされる資質を構築していくことを目的に、外国語教育のひとつとして日本語の指導が行われています。

州で唯一の日本語クラスを持つ高校に派遣されて

わたしの派遣先であるケリーウォルシュ高校は、ワイオミング州のキャスパーという州で2番目の都市にあります。2番目とはいえ、人口約53,000人の小さな町です。
ケリーウォルシュ高校は、生徒数約1500人、教師数約180人の、州で唯一、日本語教育を行っている高校です。大きな学校ではありませんが、ワイオミングの雄大な大自然に囲まれているせいか、とても素直で優しい生徒たちが多いと感じています。キャスパーには公立高校が2つあり、生徒たちは自分の希望する高校に進学します。ほとんどの生徒は家に近いことや仲のいい友達が行くことを理由に選ぶそうですが、中には日本語の授業があるからという理由で、ケリーウォルシュ高校に進学を決める生徒もいます。また、他の私立高校から日本語の授業だけを履修しにくる生徒も、若干名ではありますが毎年いるようです。
高校にはスペイン語、フランス語、アメリカンサインランゲージ、そして日本語と4つの外国語があり、生徒たちは自分の好きな外国語を選択して履修することができます。中でも日本語は、毎年100名余の生徒数を持つ人気科目です。使用教材は特にありませんが、Supervisor(以下、SV)のスロツヴィー先生が『げんき』や『Adventure in Japanese』、『ドラえもんのどこでも日本語』などを参考にして作成した、独自の教材を使用しています。

日本人が少ないからこそできることとは

先述の通り、キャスパーはとても小さな街です。今日では比較的にどこに行っても目にすることができるようになった日本食レストランも、キャスパーにはありません。町には、日本人はもちろんのこと、アジア人も少ないのです。そのため、せっかく日本語を勉強して話せるようになっても、生徒が日本語で話せるのはわたしたちだけです。また、日本語や日本文化に興味を持つ生徒たちや町の人々も、本物の日本文化に触れる機会がなかなかありません。
そこで、日本語のクラスでは、毎月1回日本文化を紹介する時間を設けて、節分やひな祭り、こどもの日、お月見などといった日本の年間行事の紹介をしています。プレゼンテーションだけでなく、実際に生徒が体験できることを毎回取り入れ、「楽しかった!」だけで終わらせないよう、アメリカの文化と比較させたり、どうして日本人にとってその行事が大切なのかなどについても勉強します。
また、昨年の11月には日本語レベル4と5の生徒を中心に、文化祭を企画し、実際に行いました。文化祭はケリーウォルシュ高校の生徒たちだけでなく、町の人たちも参加できるようにし、カレーライスや巻き寿司、焼きそばや唐揚げなどの日本食を振る舞ったり、書道や折り紙の体験ブースや、浴衣の試着ブース、茶道、日本語で名前を書くブースなどを設けたりしました。日本のお祭りで人気の金魚すくいとヨーヨー釣りはとても人気で、訪れた子どもたちだけでなく、大人にも楽しんでもらえたようでした。初めての試みだったため、お客さんが来るかどうか心配していましたが、100名ほどの来場者を迎え、大成功に終わりました。キャスパーの人たちに日本について知ってもらうことができ、また運営に携わった生徒たちにとっても、今まで自分が勉強してきた日本語や日本文化についての知識を披露するいい機会になったと思っています。

多くの人に日本を好きになってもらうために

ワイオミング州キャスパーでの日本語指導助手としての1年目は、アメリカの高校生と日本の高校生との違いや、学校の常に新しいことを取り入れる姿勢や変化の早さなどに、驚きと戸惑いの連続でした。また、様々な州に派遣されているJ-LEAPの同期との情報の交換や共有から、州や学校によって、生徒の様子も問題も全く違うということを知れたことは、大変勉強になりました。
州で唯一の日本語を勉強できる高校ということで、生徒たちにお互いを高め合えるようなライバルになる学校がないことは、残念なことだと思っています。また、多くの生徒が進学するコミュニティカレッジに日本語の科目がないため、卒業後も日本語の勉強を続けたいができないという現実もあり、とても残念です。しかし、昨年はコロラド州のスピーチコンテストやジャパンカップに積極的に参加する生徒が多かったことや、JETプログラムや日本への留学について自分で調べている生徒もいることはとても嬉しいことで、ケリーウォルシュ高校の日本語プログラムは、微力ながら日本とアメリカ(ワイオミング)をつなぐ架け橋になっていると感じています。
任期も残り半年余りとなりましたが、これからも文化紹介や文化祭などの日本を紹介できる機会を積極的に持ちたいと考えています。また、小学校や図書館などでおりがみや紙芝居などの日本文化紹介もしていきたいです。そしてそれらを通して、日本が大好きなアメリカ人を一人でも多く増やしていきたいと思います。

  • 授業の様子その1
  • 授業の様子その2
  • 授業の様子その3

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