「教える」だけではない

カミアック高校(Kamiak High School)
平田 若菜

カミアック?マカティオ?

指導助手(以下、TA)の受入機関のあるワシントン州はアメリカ合衆国の北西部に位置し、「The Evergreen State(常緑の州)」の愛称で知られています。中心都市はシアトルで、スターバックス等国際的に有名企業の本社があります。シアトル南西にそびえ立つレニア山は「タコマ富士」として親しまれ、州内には日系企業も目立ち、日本との繋がりを感じます。日本語教育の規模は大きく、約100の教育機関で開講されており、WATJ(ワシントン州日本語教師会)の会員は200名近いです。受入機関のKamiak High School (カミアック高校)はシアトル郊外に位置するMukilteo (マカティオ)にあります。人口約2万人の小さな町ですが、裕福な町の一つとして知られており、ボーイング社の工場があります。学生の約20%がアジア人で、約半数が韓国人です。高校以前の教育で外国語が開講されておらず、全ての学生が高校入学以降に初めて外国語教育を受ける事になります。外国語は選択科目として扱われており、日本語の他にスペイン語、フランス語、ドイツ語があります。Japanese1×二クラス、Japanese2×二クラス、Japanese3×二クラス、AP Japanese Language and Culture(以下、AP) の4つのレベルで計約130名の生徒が受講しました。特徴として、生徒の約半数以上が韓国人である事があげられ、その他の生徒も殆どがアジア人です。同じアジアの言語として日本語を選択し、サブカルチャーへの理解を深めたいという思いが伺えました。

大阪のソウルフード、お好み焼き!

TAとして主に力を注いで行った業務は、使用教材ではカバーしきれない年中行事や文化、料理等の「日本紹介のプレゼンテーション」です。例えば、TAの出身地である大阪の食べ物の紹介の一貫としてお好み焼きを作りました。作るという作業だけではなく、材料、道具、作り方等を日本語で学び、日本語教師以外の教師への説明、試食の機会を設け、学校全体を巻き込み大阪を紹介しました。その他には、日米間の違いに焦点を当て、卒業証書等を作成し日本語クラスでの卒業式を行ったりしました。

その他の業務として新しいアクティビティの作成をしました。例えば、レストランのユニットにて、電話で注文を行うテレフォニングアクティビティです。J-LEAPにて他州に派遣されているTAの協力を得てレストランの人を演じてもらい、日本語のネイティブスピーカーと電話で会話をして注文するという体験をしました。生徒には実際のレストランに電話していると説明していたので、準備から実践まで一人一人が真剣に行いました。

日々の業務としてはアメリカ人教師が担当しているJapanese1クラスのアシスタントがありました。日本語のネイティブスピーカーとして文字、単語、文法、発音、会話を担当しました。宿題の確認や会話テストの採点等も適宜行い、授業の前日までに互いの担当個所を話し合い、教案を共有して授業を行いました。

日本語のみ?イマージョンキャンプ!

受入機関外での活動で最も注力した活動は日本語イマージョンキャンプでの指導です。州内の高校生を対象とし、茶道、華道、和菓子作り、運動会、クイズ大会等、様々なアクティビティを日本語のみで行い一日を過ごします。領事館の支援もあり日本に関連する行事としては規模が大きいです。TAは若者言葉、方言(大阪弁)の2クラスをメインの教師として指導し、準備段階では教師としてだけではなく、責任者としての行動等、勉強になる事がたくさんありました。多くのボランティアに助けられ、時間を掛け準備を行いましたので、クラス終了後、生徒からの「ありがとう。」の言葉は感慨でした。教室外で日本語を使える環境、そして他校の日本語学習者との交流が行える良い場だと思いました。

その他の活動として、州内の小中学校、高校、大学へ訪問をし、日本語プログラムの手伝いや出張授業を行ったり、日本人ゲストスピーカーとして大学での講義に参加したりしました。WATJの一員として定例会/勉強会への参加はもちろん、WAFLT(ワシントン州外国語教師会)のカンファレンスにてJ-LEAPに関してのプレゼンテーションをする機会もありました。受入機関の夏期休暇中は他州日本語イマージョンキャンプでのボランティア、ワシントン大学夏期講座でのアシスタント業務を行いました。

架け橋の役目を果たす様な人物になってほしい!

ワシントン州は雨期が長く、秋から春にかけてほぼ毎日降ります。憂鬱な気分になる時もありましたが、晴れという当たり前の日に有り難みを感じる様になり、日常の些細な事にも感謝する様になりました。

そして、アメリカにおける日本語教育の意味、特に義務教育期間中のそれを深く考えされられた1年でした。単に日本語、日本文化を「教える」のではなく、それらを通して「人格形成」を行い、将来を担う人物になるための材料を提供する事がアメリカにおける日本語教師の最大の使命ではないかと考えます。

ワシントン州は日本語学習者にとってはとても恵まれた環境だと言えます。日系企業の多さに比例し、日本人も多く、日本に関係した行事も大規模に行われています。それらにテクノロジーの発達が拍車をかけ、必要な情報は何でも手に入る時代になり、学習者は日本を手軽に体験出来ると思います。好環境にいる学習者に対してTAとして出来る事は何かを考えた1年でもありました。

2年目の最大の目標は日本語プログラム発展のために、縁の下の力持ちとなる事です。具体的には学区内の小中学校やカルチャーセンターにて出張授業を行い、将来の日本語学習者数増加につなげたいと思っています。2014年夏には学生達を連れての日本旅行も計画しているので、日本の学生との交流の活性化も図れたらと思っています。

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