教えながら教わった一年

International School of Beaverton
中西 ゆか

州の概要と日本語教育

派遣先オレゴン州は、人口が約390万人、面積が25万1400平方キロメートルで日本の本州と四国を合わせた位の広さがあります。火山、森林、滝、砂漠等、車を走らせると豊かな景観を見る事が出来ます。白人、ヒスパニックに次ぎアジア系の住民も3.6%おり、留学生や日系企業で働く方等、町で日本人を見ることも珍しくありません。全米では「環境に優しい州」として知られており、ダウンタウン等の街中でも環境整備には力をいれています。雨期が長いため草花も多く、一番人口の多いポートランド市は別名「バラの町」と呼ばれています。

ナイキやコロンビアスポーツの本社がある他、インテルの大きな工場も置かれているなど近年ハイテク産業が伸びており、輸出産業においても成長しているようです。

日本語を学べる学校は小学校から大学まであり、日本語のみで授業を行うイマージョン校や、学校で選択する外国語の中に日本語がおかれている等、日本語を学ぶことが珍しいことではない印象を受けます。学習目的は文化面への興味に加え、日本との盛んな貿易環境がありましたが、近年はアジアの言語とし日本語に代わり中国語が勢力を伸ばしているという話を聞くようになりました。

勤務校とアシスタント業務

派遣校のInternational School of Beaverton(以下ISB)は6年生から12年生が学ぶ公立校です。International Baccalaureate(以下IB)試験対応校であり、学生は卒業までにIB試験取得を目指し学習しています。教師数は約40名、学生数は約800名と中学校、高校が入る学校としては小規模です。小さい学校であることから教師は学生に目が届きやすく、真面目で、勉強熱心な学生が多いです。

外国語は卒業まで必修で、スペイン語、日本語、中国語の三言語から選択します。日本語は約300名の学生が学んでおり、ネイティブ、ノンネイティブの先生が各一名ずつ初級ではAdventure in Japanese1,2を、上級ではYookoso!を使用し授業をしています。

アシスタントとし、ノンネイティブの先生のクラスでは、発音の見本や確認、日本事情の紹介を主に担当し、その他全クラスにおいて、クラスを巡回し学生の回答確認や、アクティビティの補佐、苦戦している学生の補助を行いました。また放課後や高校生の自習時間(二日に一コマ)を使い、希望者に欠席時のサポート、補講、宿題や試験、クラスワークの確認を行い、気づいたことはその都度、担当の先生と意見交換をするようにしました。

日本語授業以外に担当した活動

  1. 文化祭
    ISBではJapanese national honor society(以下JNHS)というクラブの学生が中心となり、2012年から学校で文化祭を開催しています。日本料理の提供(やきそば、寿司等)、太鼓スグループの招待、ゲーム(金魚すくい、輪投げ、だるま落とし)、折り紙教室、浴衣や日本の制服を着ての写真撮影ブース等を設け、学生、保護者の方、地域の方など来場者の方に楽しんで頂ける時間を学生と共に考案しました。
  2. 交換留学のコーディネート
    ISBでは埼玉、富山の高校と交流があり、富山の高校生には短期留学でホームステイをしながらISBの授業にも参加してもらいました。訪問に際し両校との日程調整、ホームステイ家庭の募集、JNHSの学生と歓迎準備等を行いました。全校集会では日本の学生のプレゼンテーションがあり、日本語以外の言語を学ぶ学生や他教科の先生から「次はいつ訪問があるのか」と訪問後は声をかけてもらうことが増えました。互いの言語を学ぶ学生同士の交流は、同年代ということもありとても楽しそうで、留学生帰国後も、楽しかった思い出話や自慢話を友人にする学生を見て、貴重な機会に協力させて頂けたことを嬉しく思いました。

一年目の振り返りと二年目に向けて

米国勤務後、学生生活に日本との違いをいくつか感じました。休み時間の短さ、放課後はすぐにスクールバスに乗車か保護者の送迎、授業以外の活動が多い(ボランティア、スポーツ)など、日本の学生に比べ友達と自由に過ごす時間が少ないような印象を受けています。また授業中も学生それぞれの学習スタイルを尊重する先生が多く、日本の教育との違いを感じます。いくつかの学校を見学させて頂き、アメリカの日本語教育といっても州や学習目的等で大きく異なることも知りました。

一年目は、学校制度や授業の把握、日々の業務をこなすことにいっぱいで出来なかったことが多くあります。また中高生は電子機器に詳しく、オンラインで学習する学生、最新の日本事情を知っている学生も珍しくありません。そのような状況下、自分が学生に何が出来るのか考えることもあります。それでも毎日会話を続ける中で感じる学生の成長や、日本語が通じたことを喜ぶ姿を見て、日本語の習得や文化の違いを感じる手助けが出来ていればと思います。

中高生への日本語教育は、言語教育というだけでなく人間教育でもあるように思います。私の言葉や行動が影響力をもつという責任を感じますし、学生から教わることも多くあります。

二年目は日本語習得の補佐は勿論ですが、日本語学習をきっかけに学生が成長し、国際人として視野を広げるという勤務校のゴールも念頭に置き活動して行きたいと思います。

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