オレゴン州での1年を終えて

シェリダンジャパニーズスクール
本間 由希子

オレゴン州の概要及び派遣校について

私の派遣されておりますオレゴン州は、アメリカ合衆国北西部に位置し、太平洋に沿って北はワシントン州、南はカリフォルニア州に接しています。人口は約383万人(2010年)、面積は、日本の本州と四国を合わせた面積より少々大きい251,419㎢です。海も山も砂漠地帯もあり、非常に豊かな自然に恵まれています。大自然や気候的な条件に恵まれ、農業、水産業が発展する一方、シリコンフォレストと呼ばれるほどのハイテク産業の集積地にもなっており、インテルの世界最大の工場や研究所もあります。

私の派遣先の学校シェリダンジャパニーズスクールは、オレゴン最大の都市ポートランドから南西の位置にあるヤムヒル郡シェリダン市にあります。2012-2013年度の在籍学生数は全校で88名、小学校4年生から高校4年生(日本の高校3年生に相当)が在籍しています。オレゴン州の一般的な日本語学習環境として、イマージョンスクールで日本語を学んだり、他の外国語の中から日本語を選択科目として履修するのとは異なり、派遣校は、イマージョンではありませんが、入学時の小学4年生から全校生徒が日本語を必修科目として学ぶという極めて特殊な環境です。

シェリダンジャパニーズスクールの特徴

シェリダンジャパニーズスクールの特徴は、チャータースクールであるというところです。チャータースクールはアメリカで1992年以降に誕生した公立学校で、親や教員、地域の団体などが自分たちの理想とする教育計画を地方教育委員会に提出し、州や学区の認可(チャーター)を受けて設立されます。認可されれば、公費によって学校を運営することができますが、認可は期限付きで、教育的成果をチャーター交付者より定期的に評価され、一定の成果をあげなければチャーターを取り消されます。州や学区の法令・規則の適用が免除されるため、独自の理念・方針に基づく教育を提供できるという特徴があります。こうした独自性のため、派遣校は少人数教育が実現しており、日本語教育に関しても特殊な環境が実現しているようです。日本語のクラスは、レベル別に分かれています。2012-2013年度の日本語チームの教師はスーパーバイザーであるアメリカ人教師を含め、アメリカ人の日本語教師が2名、オレゴン州と富山県が姉妹県州との関係で富山県より文部科学省のREXプログラムにより派遣されている日本人教師1名、そしてティーチングアシスタントである私の計4名でした。基本的には、各教師の作成したパケット、教材を使用し、授業は進められます。

参考文献(チャータースクールについて):

アシスタント業務と学校外の活動

アシスタント業務として行った主な業務は下記3つです。

  1. アメリカ人教師の日本語の授業のアシスト:学生の会話のパートナー、アクティビティのアシスト、漢字や文字の書き順を担当、作文添削、教材作りを行いました。
  2. 日本文化紹介:小・中・高校生それぞれの学年に向けて週1回、文化の授業を担当しました。扱ったテーマとしては、「相撲」、「日本の昔の遊び」、「お月見」、「日本のお化け、お盆」、「お正月」、「成人の日」、「節分」、「バレンタインデー」、「ひなまつり」、「桜、花見」、「ゴールデンウィーク」、「こどもの日」、「七夕」です。各テーマについて、折り紙や、歌、料理など、体験もできるような活動に結びつけていきました。七夕は、保護者の協力で笹を頂くことができ、学生たちは日本語で短冊に願い事を書きました。学校のイベント時に保護者にも七夕を紹介し、短冊を書いて笹に飾る体験をして頂きました。
  3. アートクラス(選択科目):日本人教師と共に週1回2コマ担当しました。書道、紙芝居、割りばしペン、ちぎり絵などを紹介し、学生に作品を完成させてもらいました。 授業以外での活動は、夏休みに行われたサマースクールで日本語を勉強したことのない子どもに、あいうえおの歌、じゃんけんなどを紹介したりしました。

1年目を振り返って

派遣校での1年間は、毎週日本文化のクラスを担当していたこともあり、文化について考える1年でした。

学生が異文化に接した時、その物や行動の意味を知らなければ単に「変だ、おかしい」と反応することを、彼らの好奇心の始まりだと思うようになってから、授業でも「どうして」という部分も伝えたいという気持ちを強く持つようになりました。日本語を選択科目として学ぶのとは異なり、派遣校の学生は小学4年生から必須科目として学ぶため、学習動機はそれほど明確なものはないのかもしれません。しかし最初の動機は何であれ、自主的な動機づけができれば日本語の長期的な学習者、日本のよき理解者になってくれるのではないかと思います。そのために、あと残り1年、学生に日本に関して自主的な興味をもたせるきっかけが与えられるような存在になれるように努力し続けたいと思います。そして2年目は、日本文化のみでなく、日本語の授業で学生に「日本語がわかる。日本語は楽しい」という感覚をもってもらえるようにしたいです。自分が迷いながらもよい授業ができるよう努力し続ける限り、教師としても成長し続けられるのではないかと実感します。

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