日本語教師アシスタントとしての一年

エル・マリノ・ランゲージ・スクール
田所 清美

派遣先はカルフォルニア州

カリフォルニア州はアメリカ西部に位置し、西海岸の大部分を占めています。その面積は日本の約1.1倍にあたる423,970㎢で、全米ではアラスカ州、テキサス州に次いで3番目に大きい州です。人口は全米最大を誇り、約3,725万人が暮らしています。メキシコに隣接していることから、メキシコからの移民が多く、スペイン語が州の準公用語になっています。また、日本人比率がハワイ州に次いで2番目に多く、日本人観光客も数多くみられます。カルフォルニア州の気候は、標高や海岸からの距離によって多少違いはあるものの、年間を通して温暖でとても過ごしやすいです。しかしながら、降水量が少ないためとても乾燥しています。

カルフォルニア州の教育制度は、州の教育法に則っており、義務教育期間は小学校から高等学校までの計12年間です。前述の通り、カルフォルニア州は移民が多く、ESLのクラスを設けている学校も珍しくありません。そして、日本人や日系人も多いため日本語教育が大変盛んです。派遣地の近隣地区には、文部科学省認定の全日制日本語学校もあり、そこでは日本の指導要領に則った授業が行われています。他にも、日本語補習校が土曜日に行われており、日本人はもちろん、家庭で日本語を話さない日系人の子どもたちが多く通っています。学習者の日本語学習目的は様々ですが、日本人の場合、帰国を見据えた学習の準備、また第一言語(国語)として当然学ぶべき言語という認識が強い気がします。もちろん英語が話せない保護者や児童にとって、日本語で教員とコミュニケーションがとれる学校はメリットが大きいと思います。一方、日系人の場合、両親が日本語を話せなかったり、片言であったりするケースが多いことから、母国語の習得、継承言語として学ぶ児童が多くいるようです。

小学校イマージョン教育

ロサンゼルス郡西部に位置する、人口約3万9千人の町、カルバーティーが私の派遣された町です。カルバーティーは西にサンタモニカ、東にロサンゼルスが隣接しています。かつては、映画産業の中心として栄え、MGMの拠点でもありました。また、1932年から1985年までヒューズ・エアクラフトの本社も所在し、現在はナショナル・パブリック・ラジオとソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントの本社が所在します。

私の派遣校は、El Marino Language Schoolという公立小学校で、1992年から日本語イマージョン教育を行っています。つまり、幼稚園から5年生までの児童は、他の公立小学校と同様のカリキュラムに基づいて、各教科を日本語または英語で学習しています。El Marino Language Schoolでは日本語イマージョンプログラム(以下、JIP)の他にスペイン語イマージョンプログラム(以下、SIP)も行っており、児童はJIPSIPのどちらか一方のプログラムに所属しています。今年度のJIP児童数は271人で、日本語教員数は11人です。ちなみにSIPにはJIPの約2倍の児童と教員がいます。 近年、イマージョンプログラム開講当初に比べ、日本人やアメリカ人と日本人のハーフの児童の割合が増加傾向にあり、その大半が高校まで日本語を学んでいます。

1年間の活動内容

私の担当した主な業務は、まず日本語モデルになることです。1分間スピーチや作文の時間に、私自身がはじめに話したり書いたりして、例を示しました。 例えば、二つの文を接続助詞を用いて一つに文にしたり、「楽しかった」や「面白かった」以外の感情を表す言葉などの導入を繰り返し行ったりしました。もう一つの業務としては、クラスをレベル別のグループに分け、そのグループに合った授業と課題設定を行いました。JIPのクラスには主に、日本人、日本人とアメリカ人の両親を持つ学生、日系人、そしてアメリカ人が在籍しています。このことから想像できるように、児童の日本語バックグラウンドはそれぞれ異なり、日本語レベルも様々です。そのため、年間を通してレベル別で教えることがとても効果的でした。

授業外の活動としては、KAKEHASHI プロジェクトを通して、沖縄の高校生と広島大学の学生をお迎えしました。私は派遣校の受入窓口として、訪問の日程調整や、活動内容の確認などをさせていただきました。また日米協会が主催するJapan BowlQuestion Writerとして問題作成にも携わることができ、新しい経験を積むことのできた貴重な一年となりました。 派遣校内では、毎週火曜日の朝行われている日本語ブッククラブに参加しています。私は主に3年生と本を読み、漢字や語彙の意味確認などを一緒に行いながら、授業とはまた違った和やかな時間を過ごしました。その他にも、サマースクールのアシスタントとしても活動させていただきました。来年度も積極的に授業外の活動に取り組み、微力ながら、カルフォルニア州や派遣地域の日本語教育のさらなる繁栄に努めていきたいと思います。

2年目に向けて

私の派遣校は日本語イマージョンプログラムにおいて20年以上の歴史がある学校です。そのため餅つきやこどもの日、運動会といった日本の行事が毎年盛大に行われています。派遣当初は「例年通りではない、何か新しいこと始める!」と意気込んでいた私ですが、気がつくとすっかり例年通りの行事のお手伝いに徹している自分がいました。しかし、同時に、自分の目標ももちろん大切ですが、自分の置かれた立場でどう率先力として活動するか、という日本語教師アシスタントとしての本来の役割を再確認することもできました。また、授業では、学習者の立場になって教えることがとても難しいと感じる一年でした。私は日本で英語教師として働いていましたが、当時、授業をする上で自分自身の学習経験がとても役に立ったのを覚えています。しかし、日本語は母語話者であるが故、言葉のニュアンスの違いや助詞の使い分けの指導に苦労しています 。そして、当たり前のことながら、日本語教師として日々学び、知識を備えることが必要であると痛感しました。そこで、私の2年目の目標は日本語教師として日々学び続けることはもちろん、それに加えて、継続使用ができる教材をより多く作り、派遣校に残すことです。今ある教材に満足するのではなく、先生方の意見を取り入れながらより分かりやすく、より使いやすい教材を作成し、データベースで残していきたいと思います。また、日本文化の紹介ができるキットを作り、JIPのみならず、SIPの児童たちにも利用してもらいたいと考えています。2年という限られた時間の半分が過ぎてしまいましたが、残りの1年間も日々学ぶ姿勢を大切にし、日本語アシスタントとして、そして一人の人間としても、さらに成長していきたいと思います。

  • 派遣先での写真その1
  • 派遣先での写真その2
  • 派遣先での写真その3

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