多くを学んだミネソタでの一年間

アップルバレー・ハイスクール
吉留 玲妃

MINNESO-TA!

ミネソタの水域面積は全面積のうち約8パーセントもあり、アメリカで一番湖が多いと言われる州である。日本の水域面積の約0.8パーセントと比べると少し想像しやすいと思う。人口は全米第21位で、人口の約60パーセントがツインズシティーと呼ばれる都市部に住んでいる。インフラストラクチャーの整備が行き届いており、冬が過ぎ、暖かくなるとあらゆるところで道路整備が行われている。ミネソタには全米で一番大きいモールが存在し、冬はたくさんの人がそのモールに集まる。また、演劇や音楽、喜劇などの行事を楽しむ州人口も多く、全米で一人当たりの劇場座席数はニューヨークについで第2位である。ミネソタは州に昇格したときから教育に関心が高く、2007年にはACT試験において全米第1位という記録も残している。ミネソタの日本語教育の規模は決して大きくはないが、日米協会や日本語教師会は日本や日本語のイベントに積極的に参加している。学生の日本語学習目的の多くは日本の文化やポップカルチャーへの興味であるため、多くのミネソタの日本語教師は1年に一度や2年に一度、日本への海外研修や修学旅行を行っている。

アップルバレー・ハイ・スクール

アップルバレー高校は1975年、州都のセントポールから約15マイル南に位置したアップルバレー市内に設立された。学生数は約1,790人で、STEM校(サイエンス(science)、テクノロジー(technology)、エンジニアリング(engineering)、数学(math)に重点を置いた教育機関)である。学生は科学、技術、工学、数学を充実した支援の中で勉強でき、実際に3Dプリンターなどの最新機械を使って授業をする。私のいる学区は言語教育に対するワークショップがよく行われており、日本語は全米外国語教育協会の基準を基盤にカリキュラム作りをしている。放課後は学生と日本の映画などを見ながら、日本食を楽しんだり、アジアンスーパーマケットに遠足に行ったりしている。前年度までは「IMA!」という教科書を使っていたが、来年度からは「OBENTO」という新しい教科書とTPRSを導入する予定である。私たちの学校は現地の日本語教師1名が約100名の学生に日本語を教えている。

ATとして、日本語教師として

私はアシスタントティーチャー(以下AT)として主に日本の文化紹介、アクティビティーやテストの作成、採点を行った。各ユニットにあった日本文化のスライドショーを作って授業で紹介したり、学生が参加できる行事を授業に導入したり、季節の行事などを授業で紹介し、和食を楽しんでもらったり、運動会をしたりした。アクティビティーやテストの作成はリードティーチャー(以下LT)とともに考えた新しい活動のアイデアを形にしたり、古くなった練習シートや宿題を更新し、学生のレベルに合わせた漢字の宿題を作ったり、テストを作ったりした。採点は学生の練習パケットから宿題、テストまでひらがな、カタカナ、文法の確認をしたり、教師一人では難しいやり直しの確認を毎回行った。授業以外では日本語クラブ活動の手伝いや企画、遠足の引率をLTと一緒に行った。また学校外では日本語イマージョンキャンプへの参加を積極的に行った。昨年は週末のイマージョンキャンプに参加し、また、この夏休み中には約1ヶ月、日本語イマージョンキャンプに参加し、高校の単位を取得できるプログラムの教師として働いた。

この一年、これからの一年

この一年、日本とアメリカの外国語教育への意識と教授法の違いを多く感じた。私自身が学生時代に受けた外国語教育は文法を重点においた、テストのために勉強するといったものだったが、アメリカで外国語教育を行う一員として働くようになり、両国の教育に大きな差があると実感した。さらに日本語のような教育規模の小さい言語はどのようにして学生の興味を保ち、さらに実際のコミュニケーションの場面で使われる言葉を教えるかが大事であると知った。確かに文法の説明は大事だが、その前に人と人とのつながりに重点をおいて、ユニットを作り、授業を進めていくことを学んだ。また、教える人のサポートとしてワークショップを定期的に行い、教授法を見直す機会を設けたり、新しいことへのチャレンジを支援する機会が多いと思った。私はこの一年間、LTから教師として求められる部分をたくさん見て学んだ。学生が安心して授業に来られる環境にすること、困った時にはいつでも頼れる教師であること、学生の普段とは違う言動に目を向け話しかけること、このようなこと全てが授業をする前に教師として大事であると感じた。2年目は自分がリードして授業を進める機会が多くなるので、毎回の授業の目的、ユニットの目的と学生が楽しんで日本語を勉強することを意識して教えていきたい。

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