アラスカ州での2年間

パーマ・ハイ・スクール
早崎 美温

アシスタントティーチャー(AT)としてのやりがい

教室の中に二人先生がいることのメリットの一つに、自然な流れで会話練習ができることがあります。私は派遣先の高校で、会話や発音を教えることに力を入れました。日本語の大会のために強化練習を行ったときには、発音やイントネーションに気をつけて教えることを心がけました。学生たちは、周りの友達と切磋琢磨しながら、スピーチ、詩の暗唱、寸劇、歌、俳句の練習に励んでいました。結果として、2018年度、州の日本語コンテストでは、各部門から合計12個のメダルを獲得することができました。入賞はしなかった学生たちも、学年やクラスの垣根を越え、一致団結して応援しあう姿を見ることができました。
学校での昼食時には、日本語の教室を開放し「いただきます」と「ごちそうさま」の歌を歌ってみんなで昼ごはんを食べていました。日本語の履修の有無に関わらず、様々な学生たちが日本語の教室に集い、みんなでたくさんの会話をしました。日本語の授業中でもそうですが、学生やリードティーチャー(以下、LT)みんなで、日本語の教室を学生たちにとってリラックスでき安全で笑顔の絶えない場所にすることができて良かったです。
何より授業を通し、一から日本語を始めた学生たちが少しずつ成長していく姿を日々見ることができ、非常にやりがいを感じました。これからも、誰かに何かを教える際には、その人の目線に立って親身に教えられる教師でありたいです。

夏休み中の課外活動

私は、一年目の夏休みを利用してミネソタ州の日本語イマージョンサマーキャンプに5週間クレジットティーチャーとして参加させて頂きました。日本語しか使ってはいけないという環境の下、衣食住を生徒みんなと共にしました。普段は公立高校の中で、選択科目の一つとして日本語を教えてきた私にとって、このキャンプにはとても興味がありました。私は初級の学生を5人受け持ち、このキャンプの醍醐味でもある自然の中(私たちは、海岸やキャンプファイヤーの近く)で毎日、授業を行いました。クラス内で徐々に学習スピードに差が出てきた時、なかなか思うようにいかず、やる気をなくす生徒に対しどうやって彼らのモチベーションを上げればよいか悩み、考えました。そんな中「一人一人の成長をほめることが大切」というアドバイスを同僚からもらったことは今でも忘れられません。すべての学生が、自分自身では気付きにくいものの、確実に個々のペースで成長していました。それを言葉にして面と向かって真摯に学生に伝えることで、弱音を吐いていた学生にもしっかりと伝わり、彼の口から「フラッシュカードを使ってもう一度がんばりたい」と言ってくれました。まだまだ教師として至らないこともありますが、私自身、学習者をサポートする者として成長させてもらえたのではないかと思います。

日米間の若者交流について

アラスカ州パーマ高校の学生にとって、普段なかなか日本人と交流する機会がないため、姉妹校(北海道の佐呂間町)から中高生が来てくれた際には、会話やインタビューの活動をたくさん取り入れた授業を行いました。学生たちは、写真やジェスチャーを使いながら、日本語を使って物事を伝えようと懸命な眼差しでした。学外では、一緒にピザ作りを体験したり、本物のヘラジカ(Moose)やバイソンを見に行ったり、氷河の上を歩いたりしていました。日本からの学生に話を聞くと「アラスカ大好き!また絶対に帰ってきたい。もっと英語の勉強を頑張る!」などという声を数多く聞きました。私が派遣されていた2017年度には、実際に中学の時に二週間アラスカに来て好きになり、高校で一年留学の夢を叶えた日本人留学生にも出会いました。
J-LEAP帰国後、引率者としてLTと補助の先生と一緒に学生たちを姉妹都市の佐呂間へ連れていきました。学生たちにとっては毎日が新たな発見で、楽しいこと大変なこと、不思議なことなど様々なことを五感いっぱいに感じ、毎日ノートに書き留めて、色々話もしてくれました。二週間という限られた時間の中で、学生同士はとても仲良くなり、言葉の壁を越えて笑いあっている彼らの姿から、大きな成長を見ることができました。日米両国の学生たちの互いへの関心はますます高まっていくように思います。

若手日本語教員を志すみなさんへ

アラスカでの二年間を通して、自分の視野が広がり、教師として人前に立つことに自信を持てるように、そして多少のことではうろたえない柔軟性と強さを得ることができました。自身の人生にとって大切な時間をアラスカで過ごすことができ、感謝の気持ちでいっぱいです。これからも、どんな形であれ日本や世界のどこかで、日本語教育に携わっていきたいと思っています。

J-LEAPならびに類似のプログラムに参加されるみなさんへ:
日本は、世界は日々、刻々と変化しています。今の新しい日本についての情報や事実を伝えることができるのが、みなさんだと思っています。派遣期間や場所はそれぞれ異なると思いますが、どんな境遇に置かれても失敗を恐れず、なんでも挑戦していってほしいです。また、せっかく異なった文化や言語に触れられる素敵な機会に身を置かれると思うので、楽しんでその国や地域の文化に触れてください。同じ学校の先生や、地域の方々とも交流のできる場があれば、どんどん積極的に行ってみるといいと思います。私にとってJ-LEAPは、自分の固定観念を変える貴重な経験となりました。みなさんも夢に向かって頑張ってください、応援しています。

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