ミシガンでの2年間

レイクビュー・ハイ・スクール
稲垣 明子

2年間のティーチングを通じて

2年間の間に、教室でのティーチング、授業のプランニング、採点、教材づくりなど、教師としてのさまざまな業務に関わらせていただきました。教師が二人いることで、生徒に生の会話やスキットを聞かせることができたことや、発音や書き順の指導を主に任せてもらえたこと、また日本人の視点から日本の文化的、社会的な知識を伝えることができたことなどは、日本人のアシスタントティーチャー(以下、AT)として役に立てているかなと感じました。
日々の業務の中では、大きな成果を実感することはあまりなかったのですが、リードティーチャー(以下、LT)に私がいることで助かっていると言っていただいたり(特にLTが不在時も生徒たちが日本語を学べることが大きいと言われました)、最後に生徒に感謝の手紙をもらったりしたことがとても嬉しかったです。有益だと思った経験の一つは、LTの各生徒に対する接し方を学べた事です。教室には、机に座って大人しく勉強することが難しい生徒や、特別な配慮が必要な子など、様々な学生が一緒に学んでいます。そのような学生一人一人をよく理解し、できるだけ配慮をしながらも、必要な時には線をひく、そのような教師としてのクラスマネジメントを学べたことは大きかったです。J-LEAPでの2年間は私にとって、日本語を教えるだけでなく、国や文化の違う人と一緒に密に働いた2年間でもありました。それは今後教壇に立つときだけでなく、仕事でもプライベートでも様々な背景の人と関わっていく中で、きっと大きな糧になるだろうと感じています。

夏の日本語キャンプでの経験

学校外の活動の中で一番印象に残っているのは、夏休みに参加したミネソタ州での日本語サマーキャンプです。私はクレジットティーチャー兼キャンプカウンセラーとして1カ月間参加しました。毎日3時間の授業の準備をすることに加え、それ以外の時間はずっと学生と一緒にいて、学生の色々な生活面の問題に対応していくことは結構大変でした。また、授業でテクノロジーが使えないことや野外での授業のため虫に気をとられて学生が授業に集中できないことなどは、それまでにない新しい課題でした。しかしながら、ともに時間を過ごすうちに学生たちがだんだん心を開いてくれたり、同じクラスやキャビン内での結束が芽生えたり、今まで全く日本語ができなかった学生が最後には文章を書けるようになったり、最後の発表に失敗して落ち込んでいた生徒が、次の日にちゃんともう一度挑戦する姿を見られたりと、学生たちが日本語を学ぶことを通じて成長する姿を間近で見ることができたことは、何にも代えがたい経験となりました。また、このキャンプを通じて、日本や日本語が大好きなアメリカ人の友人ができました。私自身も、このキャンプが初めて教師として一人で教える経験となりましたが、この経験を通じて教師としてより自信をつけ成長することができたと思っています。

言葉だけでなく伝わるもの

中学の学生で、いつも私と話すときにお辞儀をしてくれる学生がいて、私は何故その子だけが私にお辞儀をしてくれるのだろうと不思議に思っていたことがありました。LTにその話をしたところ、「それはあなたがいつもお辞儀しているからじゃないの?気づいてないの?日本人はよくお辞儀をするからね。」と言われ、自分が無意識によく学生に対しても感謝を伝える際などにお辞儀をしていたことに気づきました。私はそれを聞いて、自分が伝えているものは、口に出す日本語だけではなくて、私の振る舞いや人との接し方、すべてを学生は見ているのだということに今更ながら気が付きました。おそらく私のLTに対する接し方、日本語自体は聴き取れなくても、話し方の違い(LTに対しては敬語を使って話していました)や、動作などからも学生は多くのことを読み取っていたのではないかと思います。そのようなことは、よくも悪くも、日本で育った日本人だからこそ伝えることのできる部分なのではないかと感じました。
また、私に会いに日本に行きたいといってくれる学生が何人かいてとても嬉しかったのですが、そのように日本人の教師に出会ったことが、いつか日本に行ってみたいという動機づけのきっかけになったことを感じ、アメリカで教えることができてよかったと思いました。

アメリカの高校で日本語教師をしてみて感じたこと

やはり国が違うので、人の考え方や言動も日本とは違うなと感じることが多くありましたが、新しいことを学ぶ気持ちでそれを受け入れていくことが大切ではないかなと思いました。またそれぞれの派遣先の学校によって、従事する先生の考え方ややり方も違うので、柔軟に対応し、現地の学校にあったやり方で自分のベストを尽くしていけばいいと思います。それと、日本で知り合う機会のあった外国人の方々は、日本に自分の意志で来ている人が多いので、日本語や日本文化を学ぶことに積極的な人が多かったですが、海外に出れば、日本のことを全然知らない人もたくさんいるのだと身をもって感じました。そういった人たちに触れ合い、自分を通じて日本のことを知ってもらうチャンスがあるのも、海外に住みながら日本語を教えることの醍醐味の一つかなと思います。今後の具体的な進路は未定ですが、J-LEAPの2年間で学んだ多くの経験を次の道に活かしていきたいです。

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