米国若手日本語教員(J-LEAP) 7期生 年間報告書
最果ての地、アラスカでの挑戦

サンド・レイク・エレメンタリー
河野 充博

アラスカと日本語教育

私の赴任地であるアラスカ州は、カナダを挟んで北米大陸の最北端に位置しており、全米50州の中で最大の面積(1,518,807平方キロメートル)を誇ります。その面積は日本の約4倍ですが、広大な土地に対して人口は738,432人と少なく、私の出身県である福井県(人口: 774,355人、2018年現在)とそれほど変わりません。石油産業が盛んで、アラスカを縦断する石油パイプラインが敷かれており、車を走らせていると太く大きなパイプラインを目にすることもあります。
私が住んでいるアンカレッジはアラスカ最大の都市であり、その民族多様性で有名です。そのため、外国語教育に対して高い関心を持つ家庭が多く、実際にアンカレッジには日本語イマージョンをはじめとして、他5つの外国語(スペイン語、ロシア語、ドイツ語、中国語、ユピック)イマージョンの学校があります。その中でも日本語イマージョンの歴史は古く、1989年にアンカレッジ初のイマージョンスクールとして誕生し、今日まで発展を続けてきました。アンカレッジの日本語イマージョンの特徴は、サンドレイク小学校からはじまり、ミアーズ中学校、ダイモンド高校へと進学する全米でも珍しい幼稚園から高校までの13年間一貫のイマージョンプログラムがあることで、根強い人気があります。

サンドレイク小学校

私が働くサンドレイク小学校は、アンカレッジの中心地から車で15分ほど離れた静かな湖の畔に位置しており、67人のスタッフが働いています。日本語イマージョンプログラムでは、330人ほどの生徒が日本語を学んでおり、各学年に日本語教師と英語教師が1人ずついます。リードティーチャー(以下、LT)とアシスタントティーチャー(以下、AT)である私は一年生の担任で、2017年度は52人の生徒たちに日本語を教えました。
学校区でのカリキュラム変更に伴い、日本語クラスでは社会に加え2017年度から理科も教えています。理科では「音と光」、「アラスカの動物」といった単元を扱い、ときには難しい概念や言葉を導入する必要がありますが、実験を多く取り入れるなどして常に生徒が楽しく日本語を学べる環境作りを心掛けています。私はATとして、主に授業準備、教材作成、成績評価などを任せられています。また、クラス担任として生徒の生活指導なども行っており、日本語を教える能力のみならず、様々なスキルが要求される現場ですが、そこに小学校教師として働くことの魅力を見出しています。生徒から笑顔で「日本語だいすき!」と言われる瞬間が何よりの至福のときです。

授業外活動

サンドレイク小学校では放課後、生徒とコミュニティ向けに太鼓のクラスが開かれています。私も週に一回このクラスに参加して、楽しく太鼓を叩きながら保護者や地域の人たちとの交流を楽しんでいます。太鼓クラスは、地域のイベントがある度にパフォーマンスを披露しており、私もCherry Blossom Festivalというイベントにて人前で初めて太鼓の演奏をしました。アラスカに来るまで太鼓の経験はほとんどありませんでしたが、せっかく新天地に来たのだからできる限り色々なことに挑戦したいという気持ちで、太鼓クラスをはじめとして様々なことに挑戦しています。こうした活動の中で、新たな出会いがあることも楽しみの一つで、挑戦したいという気持ちを後押ししてくれます。
学校外でも、積極的に日本関連の活動に参加するようにしています。日本語イマージョンプログラムがあるダイモンド高校では、Adapt-a-studentプログラムとして、生徒に日本人ホストとの文化交流の時間を提供しています。私もホストとして2人の生徒を担当し、メロンパンを作ったり、日本のゲームをしたりと交流を楽しみました。また、ATとしての活動の中で、日本語イベントへの参加も欠かせないものとなっています。実際に私はデクラメーションコンテストで審査員を務めたり、日本語スピーチコンテストの運営協力をしたりして、日本語関連イベントを盛り上げています。

1年目を終え、2年目へどう繋げるか

アラスカに来てから間もなく一年が過ぎようとしています。アラスカで一番美しい季節とも言われる夏もそろそろ終わりを迎え、少しずつ日が短くなるのを目にし、夏の間にやり残したことはないかと焦る毎日です。サンドレイクでの学校生活1年目は、自分が思っていたよりもスムーズに進み、とても実りの多い一年になりました。LTの指導のおかげもあって、生徒の前に立ち授業をリードして教えることに対する抵抗は一切なくなり、むしろ毎日が教えることへの喜びで満たされていて、学校へ行くことが楽しみでなりません。
ATとしての1年目を振り返ってみると、学校での生活に関しては満足のいく活動ができたように思いますが、コミュニティへの働きかけという点で課題が残りました。2年目は、一年間教えた経験を活かしLTとともに授業をより一層充実したものへと作り上げていくことはもちろん、コミュニティに対してサンドレイク小学校での活動を積極的に紹介していきたいと思っています。また、日本の学校に対してもアドボカシー活動を行い、アメリカにおける日本語教育を知ってもらうきっかけを作りたいです。帰国の際に、「やり残したことなんてあるわけない!」とはっきり言えるように、残りの一年も力を尽くします。

  • 派遣先での写真1
  • 派遣先での写真2
  • 派遣先での写真1
What We Do事業内容を知る