米国若手日本語教員(J-LEAP) 7期生 年間報告書
一年目を終えて

カーニー・ハイ・スクール
美濃部 大樹

ニュージャージー

Garden Stateと呼ばれるニュージャージーは大西洋に面する州で、ニューヨーク、ペンシルベニア、デラウェアの各州に囲まれています。アメリカ国勢調査局のウェブサイトによると、ニュージャージーの陸地面積は約19,047㎢で、大阪府の約10個分の広さしかなく、アメリカの中ではとても小さな州です。また、ニュージャージーの推定人口は、9,005,644人(2017年)です。
ニュージャージーに来るまで知らなかったのですが、ニュージャージーは、発明王エディソンが研究所を設置していたことで有名です。また、ニューブランズウィックという街に、ラトガース大学という州立大学があるのですが、江戸時代、福井藩からラトガース大学に留学した日下部太郎と大学の先輩であったウィリアム・グリフィスとの友情がきっかけとなり、今日まで福井県とニュージャージーの友好関係が続いています。
ニュージャージーにあるプリンストン大学が年に一度開催するプリンストン日本語教育フォーラムには、国内外を問わず、日本語教育の研究者や教師が数多く集まり、研究報告や授業実践報告が行われています。また、2018年度より日本語能力試験がニュージャージーでも受験可能となり、ニュージャージーの日本語学習者にとって受験がしやすくなりました。

カーニーハイスクール

私の受入機関であるカーニーハイスクールは、ニュージャージーのハドソン郡カーニーに位置し、9年生から12年生までの生徒が通学する公立高校です。カーニーハイスクールの教師数は160人、生徒数は1,750人です。カーニーには中南米からの移民が多く、多くの生徒は英語に加え、スペイン語やポルトガル語も話すことができます。街の中心を走るカーニーアヴェニューにはペルー料理、ブラジル料理、メキシコ料理などのレストランが見られ、文化の多様性がカーニーの魅力の一つとなっています。また、カーニーはニューヨークに近く、街中や学校からマンハッタンを一望することができます。
カーニーハイスクールでは、外国語を最低一年間勉強することが卒業の要件になっており、日本語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ラテン語から選ぶことができます。カーニーハイスクールの日本語教師は、私のリードティーチャー(以下、LT)とアシスタントティーチャー(以下、AT)である私の二人です。LTと私は、「ようこそ」と「まるごと」という教科書を参考にしながら、授業内容を自分たちで考えています。一年目終了時点での日本語プログラムの生徒数は日本語1から日本語4まで合わせて78人でした。来年は生徒数が100人を超えることが予想されており、二年目は一年目よりもさらに忙しくなりそうです。

授業外活動

カーニーハイスクールには日本クラブがあり、私はその運営サポートを行いました。どのような活動を生徒がやりたいのか、またそのためにどのような準備が必要なのかを、クラブの幹部生徒と話し合いました。実際にクラブの活動として、おりがみ、囲碁、福笑い、お箸を使う練習、日本の映画鑑賞、カラオケ大会、持ち寄りの食事パーティーなどを行いました。また、私の誕生日には、生徒たちがサプライズパーティーを開いてくれました。 派遣校の外での活動としては、日本語を学ぶ大学生と日本人が一緒に晩御飯を食べながら日本語で会話を楽しむ「日本語テーブル」というイベントがプリンストン大学にあり、そのイベントに参加しました。さらに、ニュージャージーやニューヨークの他のJ-LEAP参加校を訪問し、実際に授業に参加しました。このような形で、派遣校以外の日本語学習者と交流する機会も作っています。
それから、ニュージャージーにはニュージャージー日本語教師会(以下、NJATJ)があるのですが、NJATJの定期ミーティングに出席したり、NJATJが主催するJapanese Language and Culture Study Award Ceremonyの運営のお手伝いをしたりしました。また、NJATJの勉強会では「90%+ Target Language Use in the Classroom」と題する発表を行い、参加者の先生方と意見交換をしたりするなど、地域の日本語教師会の活動にも積極的に参加しています。

二年目に向けて

一年目は、日本語教育に関して非常に多くのことを学ぶことができました。J-LEAPの研修だけでなく、全米外国語教育協会(以下、ACTFL)が出版している書籍やその他教育関連の書籍や論文を読み、カリキュラム作成や授業計画、日本語教授法、評価方法、クラスルーム運営などに関する知識を深めることができました。そして、それらの知識を実際にどのように応用していくのか、日々試行錯誤することで、まだ不完全ではありますが、少しずつ授業スタイルができてきました。
二年目の目標は、1) 一年目にACTFLの考え方に準拠して作ったカリキュラムや授業スタイルの質を向上させながら、それらの定着を図ること、2)やる気のある生徒が会話能力を向上させることができるように、受入機関で放課後にATと生徒が自由に会話できる時間を設置すること、3)中学校への訪問授業を行うなどのアドボカシーを強化し、受入機関での日本語学習者数を現在の学習者数以上に増やすこと、4)地元住民に日本語を勉強する機会を提供し、かつ、地元住民の対日理解を促進するために、夜の時間帯に地元住民向けの日本語のクラスを設置すること、の四つです。二年目は、これら四つのことを中心に活動しながら、LTと協力し、日本語教育についての見識を深め、一年目以上に日本語教師としてさらに成長していきたいと考えています。

  • 派遣先での写真1
  • 派遣先での写真2
  • 派遣先での写真3
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