米国若手日本語教員(J-LEAP) 7期生 年間報告書
1年間の活動を振り返って

シェリダン・ジャパニーズ・スクール
鈴木 景子

派遣先の州の概要及び日本語教育について

私が派遣されているオレゴン州はアメリカの西海岸にあり、北はワシントン州、南はカリフォルニア州と接しています。人口は383.1万人(2010年)で、面積は251.418平方キロメートル、日本の国土の65%程の大きさです。11月から5月の雨季はほとんど毎日雨ですが、その時期以外はほぼ気持ちのいい晴天が続きます。山、海、砂漠といった雄大な自然に囲まれていて、近所を散歩していると、木々の間から現れる野生のリスや鹿に、心癒されます。その一方で、オレゴンの中心都市であるポートランドはハイテク企業の進出が著しく、またナイキ及びコロンビア・スポーツの本社等、スポーツ用品メーカーが集中している場所でもあります。
オレゴン州には、初等教育から大学に至るまで、初級レベルから高度に専門化した分野まで、数多くの日本語教育プログラムがあり、そこで毎年多くの学生・生徒が日本語を学習しています。日本語イマ―ジョン教育を提供している学校も複数あり、日本語スピーチコンテストやJapan bowl(日本語や日本文化の知識を競う大会)も毎年開催されています。また、オレゴン州における人口当たりの日本語履修者は、ハワイ州に次いで全米第2位となっており、日本語教育が盛んな州です。

参考文献:在ポートランド領事事務所 「オレゴン州の概況―日本とオレゴン州の関係(2017年9月)」

シェリダン・ジャパニーズ・スクールについて

私の派遣先であるシェリダン・ジャパニーズ・スクールは、ポートランドから南西の位置にある公立の小さな学校です。学校があるシェリダンは、昔、林業で栄えた町で、人口は約6000人という小さな町です。教師数は学校の事務を行うスタッフを合わせて10人、生徒は小学4年生から高校3年生までの88人が在籍しています。生徒全員が日本語を必須科目として勉強し、日本に関する選択科目として日本文化クラスやJapan bowl対策クラスが提供されています。また、建物内に入る時は靴を履き替え、朝は全員でラジオ体操を行い、下校前にはそうじをし、秋には運動会を開催するなど、日本の慣習を学校生活に取り入れている、大変ユニークな学校です。
私のこの学校での主な業務は、日本語や日本文化紹介の授業、テストや宿題の採点等です。日本語の授業では、リードティーチャー(以下、LT)と協力して一緒に日本語を教えるチームティーチングと、一人で少人数のクラスを教えるソロティーチングの両方を行っています。LTと一緒に教案を考え、実行することで、日本語ネイティブである私と、生徒の母語が話せるアメリカ人の先生、両方の強みを生かしたより良い授業を生徒に提供できるように、日々試行錯誤しています。

日本文化紹介や日本人との交流について

日本語の授業の他に、選択授業で日本文化の授業も担当しています。そこでは、てるてる坊主作り、ちぎり絵、桜の木作り、書道、学校や地域のゆるキャラ作り、おにぎりや団子作り、日本のダンス紹介、ラジオ体操の歴史、箸の使い方やマナー等を教えました。生徒の感情表現はストレートで、授業が楽しいかつまらないかは生徒の態度ですぐ分かるため、日々生徒のリアクションを見ながら次にどんなテーマを扱えばいいか決めています。私自身この授業で日本の文化について学ぶことが多く、日本文化を形作ってきた先人の方々への尊敬の念が深くなりました。来学期もこの授業を通じて生徒達と日本文化を楽しんでいきたいです。
また、派遣先では、生徒と日本人との交流の機会が度々あります。昨年8月に参加した青空学校サマーキャンプがその一つで、日本人の小学生十数人が生徒と交流しました。青空学校では、生徒に「うみ」の歌を教えたり、日本語のゲームをしたり、海でスイカ割りや相撲をする際のお手伝いをしました。今年も開催予定なので、生徒が日本人の生徒と沢山交流できるように勉強した日本語を使ってもらえるようサポートしていきたいと思います。

1年目の振り返りと2年目への意気込み

この1年の学校生活で実感したことは、生徒たちは生徒たちなりの悩みを抱えていて、生活や勉強に関するストレスが沢山かかっていることです。それが表面化する生徒もいれば、内側に閉じ込めておく生徒もいます。学校では毎日生徒の気持ちに寄り添いつつ、一緒により良い方向に向かう様に努力している先生方がいて、その姿勢にも大変感銘を受けました。
その様な状況下で、私が生徒たちにできることは、日本語や日本文化の授業を、わくわくする様な楽しい時間にし、そして生徒の自信に繋がるような授業をしていくことだ、と強く思うようになりました。そしてその延長線上で日本語が話せるように、理解できるようになってもらいたいです。それは簡単なことではありませんし、これからも沢山の失敗をすると思いますが、それでも、何か迷うことがあったら、今ここにいる生徒にとって一番いいと思うことは何かを考え、それをただひたすら続けていきたいと思います。それを重ねて行き、最後の日には生徒と先生方といい時間を過ごすことができたと、胸を張って帰国したいと思います。

  • 派遣先での写真1
  • 派遣先での写真2
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