世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) アイン・シャムス大学・外国語学部・日本語学科(2002)

アイン・シャムス大学
派遣日本語教育専門家
中堂暁美

エジプトで2番目の日本語学科

茶道同好会のデモンストレーションに参加した学生たちの写真
茶道同好会のデモンストレーションに
参加した学生たち

日本語学科は、国立の総合大学アイン・シャムス大学に2000年秋に設立されたできたてホヤホヤの学科であり、現在まだ2学年しか在籍していない。文科系では全国有数の学部に設立された待望の日本語学科ということで入学希望者が多く、英語学科より入学が難しい学科になっている。点数で足切りするとどうしても女子学生が多くなるようで、日本語学科も定員25名のうち各学年3名のみが男子学生という、さながら女子大学のような様相を呈している。入学時の年齢は16歳から18歳と幅があり、入学の動機は必ずしも明確ではなく、漠然とした期待感で日本語を選ぶ学生も多いが、授業中は積極的、活発で、意欲的である。

先輩格のカイロ大学文学部日本語日本文学科とは異なり、語学習得が主眼であり、前身の語学専門学校(1835年設立)時代からの伝統である翻訳に特に力を入れる傾向にあり、1年次の後期から翻訳の科目が組み込まれている。

専門家の役割

大学側は設立当初から、カイロ大学日本語学科からエジプト人スタッフを迎えるべく交渉しているが、諸々の事情で今だにエジプト人専任スタッフがいない状況が続いているため、学部長が日本語学科長を兼任し、学科の実質的な運営は国際交流基金派遣専門家に任されている。責任の重い仕事ではあるが、ゼロからのスタートという意味で大変やりがいがある。現在は専任のエジプト人スタッフがいないことと、小規模の学科であることから、学部内での日本語学科の位置づけが曖昧になっているが、遠からず誕生する専任エジプト人スタッフに問題なく橋渡しができるよう、学科の基礎固めをしたいと考えている。

語学学習向きのエジプト人

初等、中等教育で暗記中心であったためか、学生は概して作文力、読解力に劣り、応用力に欠ける。良くも悪くも大雑把で、物事にこだわらない性格なので、初めは緻密さが要求される日本語学習に面食らう学生が多い。また、日本語教育特有の設問の多様さ、複雑さに慣れるまでに時間がかかる。しかし、それは単に「慣れていない」、「経験がない」だけの場合もあり、いわゆる潜在的語学能力は非常に高く、会話力は特に優れている。社会生活でも、会話によるコミュニケーションを最も重要視する国民性であるため1年生でも教えたばかりの日本語を使って学生同士会話をさせると、つたないながら本来のコミュニケーション好き、明るさ、屈託のなさが発揮され実に楽しそうに会話をする。黙っていられないおしゃべり好きの国民性であるから、授業中もその例外ではない。教師の質問内容によっては、時に蜂の巣をつついたような大騒ぎとなり、教師と学生のバトルが繰り返される。それでも、無邪気で憎めない学生達である。ただ、4年次には「卒業論文」執筆が課せられており、そのための作文力向上が目下の日本語教育上の最優先課題である。

今後の課題、目標

優秀で意欲のある専任エジプト人スタッフの雇用と現地化が急務であるが、これは派遣専門家だけの努力では不可能であり、また専門家の職務を越えるものである。しかし、より望ましい現地化が進むよう大学側に協力していきたい。

アイン・シャムス大学には日本人の留学生が皆無であり、地理的にも中心からやや離れているため、学生達が習った日本語を教師以外の日本人と話せる環境にない。できるだけ早く幾つかの日本の大学と交流協定を締結し、日本人学生との交換を進め、「授業中だけの日本語」ではなく日常的に日本語が使える環境造りをしたい。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
 アイン・シャムス大学外国語学部は、1835年創立の語学専門学校を前身とする伝統ある学部であり、全国に2校しかない外国語教育専門学部の一つで外国語教育ではエジプト一の評価を得ている。2000年秋に同大学外国語学部に日本語学科が設立され、カイロ大学日本文学科につぐ本格的な日本語教育機関として注目を集めている。また、同学部は伝統的に翻訳に力を入れる傾向にあり、どの学科でも一年次から翻訳の授業が行われる。日本語学科は新設学科ではあるが将来卒業生が様々な分野で活躍することが期待されている。
 専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 アイン・シャムス大学
Ain Shams University
ハ.所在地 Abbaseiya, Cairo, Arab Republic of Egypt P O Box 11725
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
アイン・シャムス大学外国語学部日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2000年9月
(2)国際交流基金からの派遣開始年 2001年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤2名(うち邦人2名)、非常勤3名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   各学年25名程度
(2) 学習の主な動機 日本への興味、
日本語教師希望
(3) 卒業後の主な進路 卒業生なし
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N2程度
(5) 日本への留学人数 なし

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