世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) アイン・シャムス大学・外国語学部・日本語学科(2003)

アイン・シャムス大学
中堂暁美専門家
重見綾香青年教師

エジプトで2番目の日本語学科

日本語学科授業風景の写真
日本語学科授業風景

国立の総合大学アイン・シャムス大学に2000年秋日本語学科が新設されてから、ほぼ3年が経ち、現在3学年60数名の学生が在籍している。歴史はまだ浅いが、カイロ大学文学部日本語日本文学科に次ぐ本格的日本語教育機関として、また名門学部に設立された日本語学科として今後輩出される卒業生の活躍が期待されている。

専門家の役割

 

設立以来エジプト人専任教官がいない状態が続いており、学部長が日本語学科長を兼任している。そのため実質的な学科運営は専門家に任されている。新設学科であるので様々な問題があるが、最も頭の痛い問題はスタッフの確保である。学科運営には博士号を持つ専任エジプト人教官が必須であるが、諸々の事情があり現在はエジプト人スタッフは非常勤のみである。しかし、ほとんどボランティアと呼ぶに等しい待遇で引き受けてくれる教官を探すのは簡単ではない。また日本人専任スタッフも、大学側の条件と待遇に合う人材を捜すのは例年一大事業であり、時にはほとんど決まりかけていた候補者が大学の「60歳定年制」にひっかかり、学期開始直前に駄目になり、慌てたなどということもある。そのような訳で、毎年新学期である9月にやっと常勤、非常勤を含めた全スタッフが揃うという綱渡りを続けている。

 

約3年たち、学科として一応の基礎固めはできたのではないかと思っているが、一日も早く専任エジプト人スタッフが生まれ、学部内で一人前の学科としての体裁を整えるられるよう、更に協力していきたいと考えている。

日本の大学と学術交流協定締結

 

日本の大学との学術交流協定締結は学科設立以来の念願であったが、約1年半の交渉・準備期間を経て、2003年初頭にようやく日本の大学2校と協定を結ぶことができ、2003年秋から3名が3年次の1年間日本へ留学できることになった。下級生達にとっては日本語学習の具体的な目標ができ、在校生にとっても3名の日本人交換留学生と日本語で話せる環境ができ、「授業の中だけの日本語」ではなく日常的に日本語が使える機会が増えると思われる。

日本・エジプト双方の学生にとって実りの多い交流が続くことを願っている。

明るく屈託のない学生達

日本語弁論大会アトラクションの写真
日本語弁論大会アトラクション

学部内でもかなり優秀な学生が集まっている学科であるが、試験の成績には皆かなり神経質であり、学期途中の小試験で悪い点をとって泣き出す学生もいる。しかし、元来ネアカの

国民性であるから、翌日には何事もなかったかのようにケロリとしているし、大学の進級に関係のない「日本語能力試験」などは互いに結果を見せ合ったりして屈託がない。

17歳前後で入学するためか、明確な目的をもって日本語を選んだ学生は少数派で、日本語教育の面から言うとかなり「手のかかる学生達」ではあるが、学科内のパーティーでは、有志によるベリーダンスも登場して大いに盛り上げ楽しませてくれるし、授業中も持ち前の明るさ人懐っこさで、教師達の日頃の苦労を吹き飛ばしてくれる事も多い。

今後の課題

 

4年次には「卒業論文」執筆が課せられており、学生にとっても教師にとっても、これまでの学習の成果が問われることになる。6月の学年末試験終了後には、各自テーマ決めるべく
活動を開始しなければならない。翻訳も「卒業論文」とみなされるので、適切な指導のできる
エジプト人専任教官の確保が急務となっている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
アイン・シャムス大学外国語学部は、1835年創立の国立語学専門学校を前身とする伝統ある学部であり、全国に2校しかない外国語教育専門学部の一つで、外国語教育ではエジプト一の評価を得ている。日本語学科は、エジプトではカイロ大学文学部日本語日本文学科に次ぐ日本語専攻学科として2000年秋に設立された。将来卒業生が様々な分野で活躍することが期待されている。 専門家は日本語学科での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 アイン・シャムス大学
Ain Shams University
ハ.所在地 Abbaseiya, Cairo, Arab Republic of Egypt POBox 11725
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
青年日本語教師:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
アイン・シャムス大学外国語学部日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
 
(1)講座(業務)開始年   専攻:2000年から
(2)専門家・青年教師派遣開始年 2001年
(ロ)コース種別
  専攻
(ハ)現地教授スタッフ
  常勤4名(うち邦人4名)、非常勤3名
(ニ)学生の履修状況
 
(1) 履修者の内訳   1年生:19名
2年生:24名
3年生:20名
(2) 学習の主な動機 日本への興味、日系企業への就職、観光ガイド希望など
(3) 卒業後の主な進路 卒業生なし
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
卒業生なし
(5) 日本への留学人数 3名

ページトップへ戻る