世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) カイロ大学 文学部日本語・日本文学科(2004)


カイロ大学
石田美保

カイロ大学日本語・日本文学科

1年生による日本語の歌:弁論大会の写真
1年生による日本語の歌:弁論大会

カイロ大学日本語・日本文学科では1年生から4年生まで約90名の学生が日本語を専攻科目として学んでいる。日本語学科に入学した理由は「日本や日本の文化、日本語に関心がある」「新しい言語を勉強したい」「通訳・ガイドになりたい」などが多いようである。入学すると、1年生の始めから2年生の前期までに日本語の初級文法を学習し、その後、日本の文学、文学史、歴史、思想などを学ぶ。各学年ともそれぞれ約20名の学生のうち、男子学生は2名から5名程度であり、女子学生が圧倒的に多い明るく華やかなクラスである。

日本語教育専門家の主な役割

現地講師がそろっている当学科では、日本人スタッフは専門家を含めて2名(うち非常勤教授1名)のみである。従って派遣専門家は、日本語のネイティブスピーカー、そして日本語教育の牽引役として現地講師と協力して日本語の講義を担当する他、学科のスタッフとして学科の業務や学科主催の行事であるカイロ日本語弁論大会の開催などに携わっている。

エジプト人学生

エジプト人学生の印象というと、「明るい」「積極的」という言葉がぴったりである。コミュニケーション力は抜群で、熱心に勉強に励んでいる。ここエジプトでは日本からの観光客は多いが、実際に日本人と接する機会はやはり少ない。そんな中で、学生たちはカイロ日本人学校の行事や、日本大使館で催される茶道体験、映画鑑賞などに参加したり、学内や国際交流基金の図書館で日本人留学生との交流を深めるなど、持ち前の明るさで日本人との交流や日本文化体験を楽しんでいる。

カイロ大学から日本への留学

日本語学科の学生にとって日本がぐんと身近に感じられるのは、3年次に交換留学生として1年間日本へ行くチャンスがあるということだ。現在では東京外国語大学、大阪外国語大学、北海道教育大学、拓殖大学などへ7名ほどが留学している。20名中7名というのはかなりの割合であり希望者も多いが、留学候補者は2年生前期までの成績によって決められる。わずかの差で涙をのむ学生がいる一方で、家族と相談した結果日本へ留学しないという選択をする学生もいる。家族の絆を重要視するこちらの考え方や、特に女子学生の場合、日本へ1年間一人で留学するということはやはり大きな決断となることを考えると、それぞれが納得できる選択ができればよいと願っている。

このように日本留学の機会に恵まれている一方で、日本へ留学せずにエジプトで勉強を続ける学生達がいかにして日本語学習意欲を維持していけるかということも重要な問題である。エジプトにおいても日本や日本語への関心を保てる環境を提供することも派遣専門家の課題の一つである。

今年の弁論大会

そして今年も弁論大会の時期が巡ってきた。例年、メインのスピーチコンテストの後にアトラクションとして日本語の歌や劇などを発表している。今年は、カイロ日本人学校の学習発表会を見て生徒さんの演劇に感銘を受けた1年生達が、ぜひ日本語劇をやりたいと言う。この時点で1年生は日本語を勉強し始めて実質4か月。弁論大会に参加するのはなかなか厳しい。しかし「日本人の皆さんにぜひ見てほしい」という学生の熱意に押され、その挑戦を見守ることにした。1年生にはせっかくチャレンジするのなら、皆が何らかの形で参加するよう助言した。今後日本へ留学するしないに関わらず、みんなで日本語の劇を作りあげたという体験が日本語との貴重なつながりになればと思ったからだ。

2年生の日本語劇でのワンシーン:弁論大会の写真
2年生の日本語劇でのワンシーン:弁論大会

 さて、当日は……? 1年生は日本語の歌と日本語劇「アリババと40人のとうぞく」、先輩の2年生は「昔の先生と最近の先生」というコメディーを自分たちの力で作成し上演した。失敗あり、ハプニングあり、笑いあり……会場に足を運んで下さった多くの日本人の方々から温かい拍手をもらい、皆満足そうな笑顔で溢れていた。この体験が学生たちにとって今後の日本や日本語との関わりの中での、ひとつの自信につながればと心から願う。

もちろん弁論大会のメインであるスピーチコンテストの方も先生方の指導の下、練習を重ねた弁論者達が、各自の意見を堂々と発表した。このスピーチの内容や当学科の情報についてはカイロ大学日本語・日本文学科ホームページ(http://www.cairo-nichibun.org/)に掲載されているので、ぜひそちらのほうもご覧頂きたい。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
カイロ大学日本語・日本文学科は、2004年度学科創立30周年を迎える。同学科は現地教師も育ってきており、うち8名が博士号を取得しているなど、中東・アフリカ地域の日本語教育・日本研究拠点としての役割を担っている。
 専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 カイロ大学
Cairo University
ハ.所在地 Giza Egypt
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名、他日本研究客員教授短期派遣1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
カイロ大学文学部日本語・日本文学科
ヘ.日本語講座の概要

(イ)沿革

(1)講座(業務)開始年
1974年
(2)専門家・青年教師派遣開始年
1974年

(ロ)コース種別

専攻

(ハ)現地教授スタッフ

常勤12名(うち邦人1名)、非常勤1名(うち邦人1名)

(ニ)学生の履修状況

(1)履修者の内訳
各学年20名程度
(2)学習の主な動機
日本・日本語・日本文化に対する興味、観光業への就職希望
(3)卒業後の主な進路
観光業への就職、修士予備課程進学
(4)卒業時の平均的な
  日本語能力レベル
日本語能力試験2級程度
(5)日本への留学人数
7名程度

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