世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ピラミッドとアインシャムス大学は不滅?

アインシャムス大学
岩元隆一

天真爛漫な2年生達の写真
天真爛漫な2年生達

 「エジプトと言えば?」と日本人に尋ねたら、ほとんどの日本人は「ピラミッド」と答えるだろう。では、エジプトで「外国語学部と言えば?」という質問を教育関係者にしてみたら、それは「アインシャムス大学外国語学部」という答えになるだろう。このたとえ話でお分かりのように、アインシャムス大学外国語学部はエジプトでは自他共に認める外国語教育の中心である。そのアインシャムス大学に日本語学科が開設されてから五年が経過しようとしている。三十余年の歴史を持つカイロ大学日本語・日本文学科には当然ながら歴史の長さや卒業生の人脈など及ばないところが多々あるが、アインシャムス大学外国語学部日本語学科には、他人がどう思うかは別として、筆者の目から見て、他にはないすばらしいところがいろいろある。今回はその一部を皆様にご紹介したいと思う。「親の欲目の子供自慢」ならぬ「教師の欲目の大学自慢」と、笑ってお読みいただければ幸いである。

 まず特筆すべきは、何といっても意欲にあふれ、真面目で明るい学生達である。大学入学を決める高校時代の成績が非常によい学生が入学してくる難関学科のためか、学習意欲があり、毎日の宿題もほとんど欠かさず提出し、小テストに備える姿勢もこちらが驚くほどである。学生の90パーセントが女性であるが、積極性といい、勤勉さといい、どこに出しても恥ずかしくない学生達である。この真面目さが数字に表れるのが日本語能力試験である。2004年実施の能力試験でも、去年卒業した学生二名と日本への留学経験者の四年生一名が一級に合格し、日本語学科開設五年目にして、既に合計四名の一級合格者が誕生している。また、二級には三年時に合格した学生を含めて四年生の半数以上が合格している。いずれも非漢字圏(中国など漢字を使用している国を除いた国々)の日本語専攻学科の学生としてはきわめて高いレベルにあることの証明であるといえるだろう。

陽気で真面目な4年生達の写真
陽気で真面目な4年生達

 また、学生たちは真面目に勉強をしているだけではなく、いったん大学を離れるとエジプトの普通の若者と同じように映画や音楽やスポーツを楽しんでいるようで、バランスの取れた学生生活を送っているように見受けられる。それを一番感じさせるのは、時々呼んでもらう学生の家でのパーティーのときである。そのときの学生たちのはしゃぎようは教室では見られないもので、学生達の底抜けの明るさを垣間見ることができる。

 次は同僚教師のすばらしさである。常勤講師は筆者以外に日本人が四名いるが、日本の水準からすると恵まれているとは言いがたい待遇ながら、それぞれの得意分野や個性を生かし、熱意あふれる態度で授業に臨んでくれている。また、常勤講師以外に翻訳や大学院の授業を担当の非常勤講師は全員がカイロ大学出身の日本への留学経験のあるエジプト人の先生方である。カイロ大学での授業の傍ら、わざわざ出講していただいている。長い留学経験のためか、日本人以上に日本的な気配りをされるこの先生方の協力なしにはアインシャムス大学の日本語学科の運営は不可能であり、カイロ大学の日本語・日本文学科の非常勤講師の存在はアインシャムス大学にとってかけがえのないものとなっている。

 他にもすばらしさはまだまだあるが、欲目の度が過ぎてきたように感じるので、今回はこの辺で終わることにしたい。

 アインシャムス大学日本語学科は開設からまだ日は浅いが、このような学生達と同僚教師達がいる限り、前途は明るいと確信している。これから数十年、数百年、いや数千年とアインシャムス大学日本語学科がピラミッドのように不滅であってほしいと願っている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
エジプト国内で高い評価を得ているアインシャムス大学外国語学部内に、カイロ大学に次いで2000年に設立された日本語専攻課程である。2004年には日本語・日本文学専攻の大学院課程も開設された。今後はカイロ大学とともにエジプトの日本語教育の中心となることが期待されている。派遣教師はエジプト人の主任講師が着任するまでは学科運営を任されている。
ロ.派遣先機関名称 国立アインシャムス大学
Ain Shams University
ハ.所在地 Abbaseiya, Cario, Arab Republic of Egypt.
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家1名 ジュニア専門家1名
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
アインシャムス大学外国語学部日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2000年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 2000年
(ロ)コース種別
専攻科目
(ハ)現地教授スタッフ
常勤3名(邦人3名)非常勤4名(邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生21名、2年生25名、3年生17名、4年生23名
(2) 学習の主な動機 「日本語に対する興味」「留学」「日系企業への就職」
(3) 卒業後の主な進路 「大学院進学」「日系企業への就職」
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級程度
(5) 日本への留学人数 3年次に2~3名程度

ページトップへ戻る