世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 創立30周年を迎えて -カイロ大学における日本語教育-


カイロ大学文学部 日本語日本文学科
古川 敦子

カイロ大学文学部日本語日本文学科

日本語学科の窓から見るカイロ大学の中庭の写真
日本語学科の窓から見るカイロ大学の中庭

日本とエジプトは地理的にも、そして文化的にも遠く離れています。しかし、ナイル川の悠久の流れやエジプトの古代を語る遺跡に憧れや関心を抱く日本人がいるのと同様に、ここカイロにも日本の文化や歴史に興味を持ち、熱心に日本語を学ぶ人々がいます。 
 エジプトは中東でも日本語学習が最も盛んな国で、複数の大学や機関で日本語教育が行なわれています。その中で、カイロ大学文学部日本語日本文学科(以下「日本語学科」)はエジプトで最初に設立された日本語専攻学科として、これまでエジプトの高等教育機関における日本語教育のリーダー的役割を担ってきました。2004年11月には30周年を迎え、今、更なる飛躍が期待されています。
 日本語学科のカリキュラムは語学だけではなく、日本文学、思想、文化など幅広い知識を習得することを目的として設定されています。1994年には大学院も設立され、日本研究者の養成にも力を入れています。
 現在、日本語学科はエジプト人のスタッフによって運営されています。現地講師は皆、当学科卒業生で、日本へ留学して学位を取得しスタッフとして戻ってきました。博士号を持つスタッフも8人いて、非常に充実していると言えます。日本語に堪能な彼らは、在学生にとって日本語学習者のよき先輩でもあり、また目標にもなっています。

日本語学科の学生

試験が終わって…笑顔!の写真
試験が終わって…笑顔!

日本語学科の学生は各学年約20名で、そのうち8、9割を女子学生が占めています。毎年希望者が多く、文学部の中でも人気の高い学科となっています。3年次に6~7名が交換留学生として日本へ行けることもその理由の一つかもしれません。
日本語学習の動機としては、ガイドや通訳といった職業への希望が挙げられることもありますが「新しい(珍しい?)言語に挑戦したい」「日本の文化を知りたい」という言語的・文化的興味も多く挙げられます。中には「将来日本語教師になりたい」「エジプトと日本の架け橋になりたい」という夢を持つ学生もいます。
 学生は授業中、積極的に発言・質問するなど学習意欲の高さを感じます。特に会話練習では初級の学生でも習った表現を使ってみようと張り切る姿が見られます。9月に「あいうえお」から勉強し始めた1年生が、翌年4月末には「50年後、エジプトはどんな国になっていると思いますか?」と言う質問に対して、拙いながらも日本語で自分の意見を述べられるようになるのには感心させられます。

日本との交流

カイロには日本からの観光客が多いとはいえ、日常生活で学生が日本語を使ったり日本人と接したりする機会はあまりありません。日本に関する情報もまだまだ少ないのが実情です。そこでカイロで行なわれる日本関係のイベントに参加することは、学生が日本に触れられる貴重な機会となっています。
特にカイロ日本人学校とは交流が深く、色々な行事に招待していただいています。運動会では生徒さんと一緒に綱引きや玉入れなどの競技に挑戦、1月の「Japan Day」ではお餅つきや書初め、羽根突きなどを体験しました。
また、学生にとって日本の「今」を知るのに欠かせないのが、日本の大学からの留学生の存在です。同じ世代の学生同士が集まって、アラビア語・日本語を取り混ぜて談笑している時、教室の中とはまた違った顔が見られます。日本語学科の廊下や図書室は日々小さな国際交流の場となっているようです。

日本語教師としての役割

日本語学科は現地講師がそろっており、私が唯一の日本人教師です。私の役割は、現地講師と協力して日本語の授業を充実させることだと考えています。特に1、2年生の日本語教育はその後の日本研究へつながる重要な基礎となります。しっかりしたカリキュラムが必要なことは言うまでもありませんが、授業の内容・方法・進度に柔軟性を持たせ、目の前の学生にとってよりよい日本語教育を考えていかなければなりません。30年の歴史と実績を生かしながら、それに頼りすぎることなく常に新しい工夫を取り入れていくことを心がけています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
カイロ大学日本語日本文学科は2004年度学科創立30周年を迎えた。同学科は現地教師も育ってきており、うち8名が博士号を取得しているなど、中東・アフリカ地域の日本語教育・日本語研究拠点としての役割を担っている。
ジュニア専門家は日本語の講義での日本語教授、カリキュラム・教材作成にたいする助言、現地教師の育成を行なう。
ロ.派遣先機関名称 カイロ大学
Cairo University
ハ.所在地 Giza Egypt
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家1名
他日本研究客員教授短期派遣1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
カイロ大学文学部日本語・日本文学科
ヘ.日本語講座の概要

(イ)沿革

(1)講座(業務)開始年
専攻:1974年から
(2)専門家・青年教師派遣開始年
1974年

(ロ)コース種別

専攻

(ハ)現地教授スタッフ

常勤12人(うち邦人1名)

(ニ)学生の履修状況

(1)履修者の内訳
各学年20名程度
(2)学習の主な動機
日本、日本語、日本文化に対する興味、観光業への就職希望
(3)卒業後の主な進路
修士予備課程進学、観光業への就職
(4)卒業時の平均的な
  日本語能力レベル
日本語能力試験2級程度
(5)日本への留学人数
約7名

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