世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 国際交流基金カイロ日本文化センター -日本語教育アドバイザーの活動-(2008)

国際交流基金カイロ日本文化センター
山科健吉

 カイロ日本文化センターは、中東における唯一の国際交流基金事務所として、エジプトはもとより中東地域全体を視野に入れた文化交流事業を展開しています。中でも日本語教育支援事業は重要な柱の一つで、日本語教育アドバイザーは国内2か所の日本語講座の運営をはじめ、エジプト及び近隣諸国の日本語教師に対するコンサルティングや広域セミナーの実施など、幅広い活動を行っています。

国際交流基金カイロ日本文化センター主催日本語講座

国際交流基金カイロ日本文化センター日本語講座の写真
国際交流基金カイロ日本文化センター日本語講座

 カイロ日本文化センターではこれまで大学生や社会人を対象に中級と上級レベルに特化した日本語コースを実施してきましたが、2007年5月に一般成人対象の日本語コースとしては国内最大規模を有するエジプト日本語教育振興会日本語講座(旧在エジプト日本大使館日本語講座)の運営を引き継ぎ、カイロ日本文化センター主催「ことばと文化」講座の初級コースとして新たにスタートしました。現在、事務所主催の日本語講座は首都カイロのほかにエジプト北部のアレキサンドリア市でも実施(初級コースのみ)しており、両講座合わせて250名を超える学習者が日本語を学んでいます。

教師研修

 将来のエジプトの日本語教育を担う若手教師を発掘し、支援していくことも日本語教育アドバイザーの大切な仕事のひとつです。2007年6月、エジプト国内の現職教師を対象に日本語教授法のスキルアップ研修を実施しました。当初は若手教師を中心に10名程度の受講者を想定していましたが、実際には予想を上回る25名の日本語教師がこの研修に参加しました。直接教授法体験やワークショップを通して、これまでの自分自身の教え方を振り返り、今後の教室活動に生かす方法について学びました。研修は週1回全4日間という短いものでしたが、皆さんとても熱心に課題に取り組み、それぞれが努力に見合う成果を挙げることができたと感じています。

近隣諸国への出張

 筆者はエジプトに赴任して以来、これまでチュニジア、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦、イエメン、クウェートに出張しました。一口に中東といっても日本語教育を取り巻く環境は地域によって様々です。エジプトやトルコのように比較的広く日本語教育が実施されている国もあれば、北アフリカ諸国や湾岸諸国のように一国一機関、日本語教師も国内に2~3人という地域もあります。また学習者のニーズも地域によって様々で、就職や留学のために集中的に日本語を学習している人もいれば、生涯学習の一つとして日本語学習を楽しんでいる人たちもいます。日本語教育アドバイザーは中東地域の日本語教育現場を訪ねて現状を視察し、情報提供やコンサルティングを行っています。

中東日本語教育セミナー

2007年中東日本語教育セミナーの写真
2007年中東日本語教育セミナー

 日本語教師のスキルアップと中東地域の日本語教育ネットワーク強化をめざし、毎年カイロにおいて中東日本語教育セミナーを開催しています。今回で7回目となったセミナーには、日本から迫田久美子氏(広島大学大学院教授、日本語教育学会副会長)をお招きし、「『わかる』から『できる』へ」をテーマに講演とワークショップを行っていただきました。なお、今回はオブザーバーとしてサハラ以南アフリカ諸国の日本語教師も参加し、これまでで最多の13か国(アラブ首長国連邦、イエメン、エジプト、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、トルコ、モロッコ、ヨルダン、ケニア、セネガル、日本)から56名の日本語教育関係者がカイロに集まりました。回を重ねるごとに参加国、出席者が増えてきており、中東地域における日本語教育の広がりを感じます。

今後の展望

 国際交流基金が2006年に実施した海外日本語教育機関調査では、中東・アフリカ地域の日本語学習者数は約9000人で、世界全体の日本語学習者数300万人に比べると高々0.3%にすぎません。一方で、近年インターネットの普及などによって日本語や日本文化に興味を持つ学習者が増えてきています。今後、中東の日本語教育もゆっくりしたスピードで拡大と多様化に向かっていくことでしょう。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
1995年に開設された国際交流基金カイロ日本文化センターは、エジプト及び中東地域における文化交流事業の拠点として幅広い活動を展開している。日本語教育支援事業はその重要な柱の一つであり、エジプトを中心に中東の近隣地域まで視野に入れた様々な支援を行っている。日本語教育アドバイザーは、国内2ヶ所の日本語講座の運営をはじめ、エジプト及び近隣諸国の日本語教師に対するコンサルティングなどを行うほか、毎年中東日本語教育セミナーを開催し、中東の日本語教師のネットワーク構築及び相互交流の活性化にも努めている。
ロ.派遣先機関名称 国際交流基金カイロ日本文化センター
The Japan Foundation Cairo Office
ハ.所在地 5F Cairo Center Bldg., 2 Abdel Kader Hamza St., Garden City, Cairo, Egypt
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.アドバイザー派遣開始年 1998年

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