世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ここでも日本語やってまーーーす!!

国際交流基金カイロ日本文化センター
佐藤五郎

 国際交流基金(以下JF)カイロ日本文化センターは、中東地域における唯一のJF海外拠点です。そのため、ここで「日本語教育アドバイザー」として働く私は、国内のみならず周辺諸国も対象とした日本語学習・教育支援活動を行っています。その業務内容は、非常に多岐にわたりますが、着任から半年あまりの活動を中心に、一部をご紹介したいと思います。

1.JFカイロ日本文化センター

 当センター主催日本語講座「ことばと文化」講座の運営を担当しています。当該講座は、初級から上級まで揃った国内最大規模の一般向け日本語講座で、2010年5月現在は受講生240名、講師12名の体制です。私の業務は、受講生の募集、カリキュラム作成・整備や教材選定、そして実際の授業担当などです。また、先生方へのアドバイスなども適宜行っています。何と言っても楽しいのは授業ですが、それだけに夢中になってはいけないのがアドバイザーの厳しいところ。講座全体を見渡し、先を見据え、「今何をすべきか」「今後どうしていくべきか」を常に考えていなければなりません。確かに大変な仕事ですが、自分で考え工夫した点が「受講生増加」「日本語力向上」など目に見える形になって現れたとき、大きなやりがいを感じます。

2.国内での活動

 主に教師向け支援として、コンサルティング業務、ブラッシュアップ機会の提供等を行っています。

 まず、コンサルティング業務ですが、教材や教授法などに関する様々な相談に対応しています。私が執務する「アドバイザー室」には、日本語教材や参考書などが豊富に揃っているので、それらを紹介したり貸し出したりすることもあります。

テスト作成ワークショップの様子の写真
テスト作成ワークショップの様子

 次に、ブラッシュアップ機会の提供ですが、2010年度は「現職日本語教師ブラッシュアップ講座」と銘打ち、4時間程度の小規模な講座を定期的に実施しています。これは文字通り、現職の先生方がさらに教授力を向上させることを目指したものです。4月にはその第1弾として、カイロ大学、アインシャムス大学の派遣専門家と共同で「テスト作成ワークショップ」を実施しました。経験数ヶ月の新米先生から、経験○十年の大ベテラン先生まで、多くの方々が参加してくださいました。新米先生にとってはベテラン先生から学ぶことが大いにあり、また、ベテラン先生も日頃のご自分の実践を振り返る機会となったようです。事後アンケートでも好意的な評価をいただきました。今後も、2ヶ月に1回ほどの割合で実施していく予定です。

公開授業(写真手前が見学者)の写真
公開授業(写真手前が見学者)

  また、不定期で公開授業も行っています。これは、日本語専門家である私の授業を先生方にお見せすることにより、ご自身の授業改善のきっかけを提供できればと考え行っているものです。毎回10名前後の先生方が見学に来てくださいますが、「人の授業を見る機会はなかなかないのでありがたい」と、これもご好評をいただいています。先生方に授業をお見せするのは非常に緊張するのですが、屈託のない受講生たちにも助けられながら、今後も続けていこうと考えています。

 最後に、もうひとつの重要な業務は教師ネットワーク形成です。国内には約60名の日本語教師がいますが、各機関の教師数は実に様々です。機関によっては、たった一人で教えている先生もいて、まさに「孤軍奮闘」です。特にそのような先生方にとって、「大変なのは自分だけじゃない」「同じ悩みを持っている先生がいる」と知ることは非常に心強いものです。ですから、前述のブラッシュアップ講座などを通じて先生方が集う機会をできるだけ多く設け、ネットワーク形成につなげていきたいと考えています。

3.国外での活動

 中東地域の日本語教師に対し、Eメールで質問に答えたり、メーリングリストを通じてこちらから情報を発信したり、或いは各地へ出向いていくこともあります。

 2010年3月には、初の国外出張としてモロッコへ行きました。日本語スピーチコンテストに審査員として参加するとともに、同地の日本語教育関係者とミーティングを行い、モロッコの日本語教育が抱える課題などについて話し合いました。当然のことですが、モロッコとエジプトでは、日本語教育を取り巻く状況が大きく異なります。具体例を1つ挙げるなら、学習動機です。エジプトはさすが観光大国だけあって、観光業界への就職を目指した学習者が大半なのですが、モロッコは「日本のアニメが好き」「日本という国が好き」という理由で学ぶ人たちがほとんどでした。「所変われば品変わる」の言葉通り、様々な現場を知ることができるのは、大変興味深いことです。

 地理的にも文化的にも日本から大きく隔たった中東地域ですが、意外な所で意外なほど多くの人たちが日本語を学んでいます。また、人知れず頑張っている先生方もたくさんいます。日本語教育アドバイザーの私の役目は、世界に向けてその存在を大声で叫ぶことかもしれません。皆さんに、この声は届いていますか。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Cairo
派遣先機関の位置付け 国際交流基金カイロ日本文化センターは、エジプト及び中東地域における文化交流事業の拠点として幅広い活動を展開している。日本語教育支援事業はその重要な柱の一つであり、エジプトを中心に中東の近隣地域まで視野に入れた様々な支援を行っている。日本語教育アドバイザーは、国内2か所の日本語講座の運営をはじめ、エジプト及び近隣諸国の日本語教師に対する情報提供やコンサルティングなどを行う。また、セミナー等を開催し、日本語教師のスキルアップを図るとともに、地域連携の強化、相互交流の活性化にも努めている。
所在地 5F Cairo Center Bldg., 2 Abdel Kader Hamza St., Garden City, Cairo, Egypt
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1998年

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