世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 豊かな実を結ぶことを信じて

国際交流基金カイロ日本文化センター
村上 吉文・佐藤 五郎

 国際交流基金カイロ日本文化センター(以下、JFカイロ)は、エジプトの日本語教育を支援するだけでなく、中東と北アフリカの全域も管轄しています。しかし、たいへん残念なことにこの地域は非常に広大で、そこにアジアで言えばミャンマー一国と同じぐらいの4000人強の日本語学習者が散在しています。(国際交流基金2009年度海外日本語教育機関調査)

 以前はこのような状況でJFカイロとしてできることは限られていたのですが、最近の目覚しいインターネットの発展により、こうした広域に散在する学習者や教師を支援することもはるかに手軽にできるようになってきました。現在のJFカイロは、中東・北アフリカ地域広域支援を担当する日本語上級専門家(以下、上級専門家)1名、エジプト国内支援およびJFカイロ日本語講座運営を担当する日本語専門家(以下、専門家)1名が、それぞれの任務に当たっています。

1.上級専門家 

 2011年度より、「中東日本語教師オンライン研修」を新しく始めました。無料で使えるテレビ会議システムを使って、ヨルダンやトルコの先生を「ビデオゲスト」としてお招きし、主にJFカイロの上級専門家が講師となって研修を行いました。この研修は閉じられたテレビ会議システムではなく、無料のサービスによって全世界にインターネットで中継し、中継中にも多くの視聴者からコメントや質問などを受けることができました。いずれの回も録画を公式チャンネルに残してあり、たとえば第3回研修の録画はこの原稿執筆時点で685回の再生回数を数えています。

中東日本語教師オンライン研修の様子の写真
中東日本語教師オンライン研修の様子

 こうした状況を受け、2012年度からは基本的に毎月2回に回数を倍増して研修を実施しています。前年度はJFカイロの上級専門家のみが講師でしたが、今年度は各国で活躍する国際交流基金の専門家たちを中心に「ゲスト講師」としてオンラインでお招きして、それぞれのご専門の分野について、JFカイロの上級専門家がインタビューするという形式をとっています。たとえば2012年4月にはマドリード日本文化センターの熊野七絵上級専門家をゲスト講師に招き、熊野氏が中心になって開発したウェブサイト「アニメ・マンガの日本語」について話を聞きました。画像は、話を聞きながら、実際にサイトを操作しているところです。

 今後も様々な話題で深い内容のオンライン研修をお届けしますので、皆さんもぜひご覧ください。

2.専門家

 カイロに赴任したのは2009年9月。あっという間に時は流れ、もうじき帰任を迎えようとしています。これまでに蒔いてきた種の数々は、あるものはようやく芽を出し、あるものは小さな双葉をつけました。その種たちのいくつかを、ここにご紹介します。

① 日本語教師養成講座

 

2010年度は6名の修了生を輩出し、そのほとんどが日本語教師として活躍しています。JFカイロ日本語講座で教えているのは2名。熱意と責任感、そして何より「教えることが好きでたまらない」という思いが、彼女たちを輝かせています。2011年度養成講座ももうじき終わりますが、受講生たちがどう巣立っていくか楽しみです。

② 現職日本語教師ブラッシュアップ講座

 

3ヶ月に1度の割合で実施している本講座には、毎回、新人からベテランまで、様々な先生方が参加してくださいます。現状に満足せず、学び続ける気持ちを持つことは、教師の成長に欠かせません。その気持ちが、先生方の中にも確実に根付いていると感じます。2012年度からは、新たに「教師のための日本語ゼミ」を開講。エジプト人の先生方にとっては、自身の日本語のブラッシュアップ、そして日本人の先生方にとっては、日本語を外国語として分析する目を養う場となることを目指しています。

③ キッズ・ジャパニーズ

夏休みを利用した、児童対象特別コース「キッズ・ジャパニーズ」を、2010年から実施してきました。このコースでは、歌やゲームなどの活動を通して、日本や日本語、日本文化に楽しく触れることを目指しています。評判も上々で、2012年度まで3年連続で参加してくれる子どもたちもいます。この子たちが数年後、日本語講座に入ってきてくれたら・・・・こんなに嬉しいことはありません。

④ 中級日本語コースへのJFS導入

国際交流基金が開発したJF日本語教育スタンダード(以下、JFS)を、2012年度から中級日本語コースのカリキュラムデザインに取り入れました。「この課の学習を通して何ができるようになるか?」というcan-doの視点に立ち、具体的な活動とその評価基準を設計しました。今後使用する中で手直しをしつつ、JFカイロ日本語講座の質の向上に役立てていけたらと思います。

 エジプトの大地に蒔かれた種たちは、ナイルの恵みを受け、いつか豊かな実を結ぶでしょう。帰任後も、どこか別の地から、その成長を見守りたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation Cairo Office
派遣先機関の位置付け 国際交流基金カイロ日本文化センターは、エジプト及び中東地域における文化交流事業の拠点として幅広い活動を展開している。日本語教育支援事業はその重要な柱の一つであり、エジプトを中心に中東の近隣地域まで視野に入れた様々な支援を行っている。日本語教育アドバイザーは、国内2か所の日本語講座の運営をはじめ、エジプト及び近隣諸国の日本語教師に対する情報提供やコンサルティングなどを行う。また、セミナー等を開催し、日本語教師のスキルアップを図るとともに、地域連携の強化、相互交流の活性化にも努めている。
所在地 5F Cairo Center Bldg.
106 Kasr Al-Aini St., Garden City, Cairo,Egypt
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家1名、専門家1名
国際交流基金からの派遣開始年 1998年

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