世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 「One Team One Goal

アインシャムス大学
久野 元・盛田 真規子

One Team One Goal」――これは学内での日本文化紹介デーに向けて、4年生が考えたスローガンです。当日本語学科での日本語専門家(以下、専門家)の任務と目標にも通じるものです。

第2回 日本文化紹介デー

3月21日、昨年から始まった学科の一大イベントが開催されました。他学科の学生に対して日本文化を紹介することが目的ですが、同時に学生たちが日頃の日本語学習の成果を発表できる場でもあります。

このイベントを通して素晴らしいと感じたのは、学生の企画・実行力と団結力、そして何より「日本が大好き」という熱意です。準備期間が十分に取れなかった昨年の経験を教訓に、今年は早くから4年生が中心となって役割分担を決め、教員の助言のもと、計画的に準備を進めました。朝8時から歌や盆踊りを練習し、休み時間には各チームで作業が続けられました。もちろん、全てがスムーズにいったわけではありません。しかし、どんな時にもリーダーが「One Team One Goal」の合い言葉で全員を励まし、導きました。

この日のために、宣伝チームがfacebook上にイベント告知ページを開設し、また合唱チームは国際交流基金カイロ日本文化センター主催「The grand Japanese POP culture festival」の歌のコンテストに出場して、学外にも広く参加を呼び掛けました。その結果、当日はメディア関係者を含む、500名以上もの来場者を集めることができました。

お箸コンテストの写真
お箸コンテスト

今年も「留学生活の紹介」「合唱(アラビア語と日本語)」「生け花デモンストレーション」「盆踊り」「お箸コンテスト」「折り紙」「くじ引き」など充実した内容で、観客参加型の企画も多く、会場は終始たいへんな熱気に包まれました。また会場外にも、学生が来場者の名前をカタカナで書くサービスや、日本へのメッセージを寄せ書きするコーナーが設けられ、大盛況でした。学生手作りの日本文化関連のポスターやアニメイラストが壁を埋め尽くしました。

日本語学科の将来を担うエジプト人教員

エジプト人教員の写真
エジプト人教員

専門家が仕事上、たいへん頼りにしているのが、エジプト人の准講師と助手の存在です。今年、念願だった初のエジプト人准講師が誕生しました。彼女は本学科第一期生で、修士号を取得したばかりです。一方、助手は毎年卒業生のうち成績上位者1~3名が選ばれます。彼らは皆とても優秀で、大学側と専門家の間に入って、事務連絡・会議・書類作成での通訳や翻訳をこなし、我々の日常業務を助けてくれます。

大学の授業は通常修士号を持つ准講師以上のスタッフが担当します。しかし、日本語学科には修士号以上を有する者は1名しかおらず、講師不足が課題となっています。そこで、大学側の暫定措置として学士号を持つ助手にも日本語の授業を担当させていくこととなりました。

本学科はいずれ国際交流基金の手を離れ、エジプト人を中心として運営することを目標としています。そのため、助手には実践的な環境の中で教授経験を積ませていく方針をとり、現在初級授業などのチームティーチングに参加するよう働き掛けを行っています。

しかし、助手本人の日本語能力がいくら高くても、すぐに学生に日本語を教えられるわけではありません。助手の中には国際交流基金カイロ日本文化センターでの日本語教師養成講座修了者もいますが、日本語授業を担当することにはまだまだ強い不安を抱えている者が多いのです。

そこで必要になってくるのが、現地講師および助手の育成に向けた、きめ細やかなサポート体制です。たとえば、授業前の教案チェックや文法項目の確認、授業見学やそのフィードバックを通しての具体的なアドバイス、さらに自作教材や試験作成の指導などを行なっています。これは専門家の任務の一つでもありますが、他の日本人講師も協力し、一丸となって取り組んでいます。

このように、日本語学科はエジプト人教員による将来的な自立化を見据え、全体で一つの大きなゴールを目指して前進し続けているのです。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 アインシャムス大学
Ain Shams University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
アインシャムス大学外国語学部日本語学科は2000年に設立された日本語専攻課程である。2004年には日本語・日本文学専攻の大学院修士課程も開設された。当大学はエジプトの外国語教育では高い評価を得ており、エジプトの日本語教育の中心的存在になっている。日本語専門家は学科運営、カリキュラム作成や現地スタッフへの指導、助言など行っている
所在地 Abbaseiya, Cairo, Arab Republic of Egypt
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
アインシャムス大学外国語学部日本語学科
日本語講座の概要

沿革

講座(業務)開始年
2000年
国際交流基金からの派遣開始年
2000年

コース種別

専攻科目
 

現地教授スタッフ

常勤5名(邦人4名)
 

学生の履修状況

履修者の内訳
1年生28名、2年生8名、
3年生6名、4年生17名
学習の主な動機
日本に対する興味、日系企業への就職、観光ガイド、
翻訳・通訳者
卒業後の主な進路
日系企業就職、観光ガイド、大学院進学
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N2程度
日本への留学人数
1~4名程度

ページトップへ戻る