世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 障害を乗り越えて前進する中東の日本語教育

国際交流基金カイロ日本文化センター
村上 吉文・谷淵 麻子

2011年の劇的なエジプト革命から2年がたち、様々な問題を抱えながらもエジプトは少しずつ落ち着きを取り戻しています。国際交流基金カイロ日本文化センター(以下、JFカイロ)では、主に中東と北アフリカを管轄する上級専門家1名と、エジプト国内を管轄する専門家が業務を分担しています。以下、それぞれの業務について簡単にご紹介いたします。

1.散在する中級者に学習機会の提供を。

JFカイロの中東及び北アフリカを対象にした広域業務には、昨年度のこの欄でご紹介した中東日本語教師オンライン研修などがありますが、この一年であらたに始めた企画としてオンライン中級日本語講座があります。この様に、先生がたを対象にした講座だけでなく、学習者を対象にした講座でも、こうした通信技術を利用し始めました。

この講座では、Googleのハングアウトという無料のテレビ会議システムを使って中東各国の日本語学習者と日本語の会話力や文章作成力を向上させるための授業を行いました。エジプトのカイロやアレキサンドリアはもちろん、サウジアラビア、モロッコ、レバノンなどのほか、イギリスに避難中のシリア人日本語学習者も参加し、単にテレビ会議システムで日本語を話すだけでなく、講師以外の日本人ともネットワークを広げてもらうために、計10回の授業で日本人のゲストを7回呼び、オンラインで話を聞いたりインタビューしたりする活動を行いました。 

広大な中東には、初級を修了しても中級の日本語を学ぶ機会のない学習者が大勢います。このプログラムがこうした学習者たちにとって、日本語学習を継続する契機となってくれれば幸いです。

2.ナイル川を越えたドッキ地区で、みんな元気に!

オンライン日本語中級講座。遠く離れていても議論は活発です。の写真
オンライン日本語中級講座。遠く離れていても議論は活発です。

2012年6月の新大統領誕生後、いったんは落ち着きを取り戻したカイロですが、11月以降、タハリール広場を始め、各地でデモが頻発しました。タハリール広場の近くに位置するカイロ日本文化センター日本語講座は、連日変化を見せる周辺状況を確認し、開講・休講を判断しなければならない日々が続き、最終的に、受講生の安全を第一に考慮して、11月下旬から2013年3月まで休講にしました。

しかし、休講の間も、受講生の日本語学習への熱意は強く、レベル別のフェイスブックグループページを作成、講師・受講生間で連絡を取り合い、自主学習に役立つ日本語教育サイトの紹介や、オンライン上での課題の提出・質疑応答などを行いました。

2013年4月から、タハリール広場の位置するナイル川東岸から、西岸のドッキ地区に場所を移して日本語講座を再開しました。休講中、オンライン上で交流していた講師・受講生が、新しい教室において、顔と顔を合わせて一緒に勉強できる喜びをかみ締めながら、心機一転頑張っています。

クラスとクラスの間の休み時間です!いろんなクラスの学生がいますね。の写真
クラスとクラスの間の休み時間です!いろんなクラスの学生がいますね。

カイロ日本文化センターは、カイロ、ドッキ地区にある教室の他、エジプト第2の都市、アレキサンドリアでも日本語講座を開講しており、カイロ・アレキサンドリア合わせて、エジプト人講師6名、日本人講師7名が日本語を教えています。

これら講師が集って、国際交流基金が開発したJF日本語教育スタンダードについて学ぶ「勉強会」を行っています。講師同士が日々の実践を分かち合い、Can-do(日本語の熟達度を「~できる」という形式で記述したもの)やポートフォリオ(学習過程を記録し、保存するもの)について吸収し、新しい教科書である『まるごと』を使って、学生のニーズに合った講座をどのように展開していくべきか、検討を進めています。これまでに講座内で培われてきた良い点と、新しい考え方ややり方をどのように融合させていけるかがカギであると感じている今日この頃です(これは革命後2年がたったエジプトの「今」についても言えることではないでしょうか)。

日本語講座の学生たちは、厳しい社会状況に直面する中で、時にはその現状に苛立ち、時にはジョークにしつつ、日本語の勉強が自分の将来にとって、どのような意味があるのかを考えながら、通ってきています。

講師一同、こうした学生たちに対し、よりよい講座を提供できるよう目指しています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation Cairo Office
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金カイロ日本文化センターは、エジプト及び中東地域における文化交流事業の拠点として幅広い活動を展開している。日本語教育支援事業はその重要な柱の一つであり、エジプトを中心に中東の近隣地域まで視野に入れた様々な支援を行っている。日本語教育アドバイザーは、国内2か所の日本語講座の運営をはじめ、エジプト及び近隣諸国の日本語教師に対する情報提供やコンサルティングなどを行う。また、セミナー等を開催し、日本語教師のスキルアップを図るとともに、地域連携の強化、相互交流の活性化にも努めている。
所在地 5F Cairo Center Bldg.
106 Kasr Al-Aini St., Garden City, Cairo, Egypt
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1998年

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