世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 活動再開!

国際交流基金カイロ日本文化センター
池津丈司 松岡英輔

エジプトの情勢がいくらか安定して来たので、国際交流基金日本語専門家の活動再開がかなった。とはいえ、2月に派遣されたのは筆者一人で、本来はエジプト国外の広域担当なのだが、4月に松岡専門家が来るまで、エジプト国内のアドバイザーも務めることになった。


JEN-Youthスピーチコンテストの写真
JEN-Youthスピーチコンテスト

というわけで、4月の初めにJEN-Youthの主催する第2回スピーチコンテストがあり、審査員として参加させていただいた。JEN-Youthというのは日本留学経験者を中心とするJapan Egypt Networkという組織の若者たちのグループで、さまざまな文化交流行事などを自分たちの手で行っている。このスピーチコンテストは全国規模のものではないが、アレキサンドリアから遠路はるばるやってくる参加者もあり、エジプトでは最大規模の日本語スピーチコンテストで、今年は17名が参加した。

準備段階で日本人の手を全く借りずに開催されていること、エジプト人による日本語スピーチだけでなく、日本人によるアラビア語スピーチ(5名が参加)も同時に行われることなど、世界的に見ても画期的なスピーチコンテストである。

ここで審査員をして、閉会後に中級の部の優勝者やその応援に来た人たちと話して驚いた。実はこの優勝者は教室では初級の前半までしか勉強していないのである。更に驚くべきことに、昨年の優勝者も、応援に来た講座の助手(この人は講座終了後に独学で日本語能力試験(JLPT)のN2に合格している)も、同じ国際交流基金アレキサンドリア日本語講座の出身で、初級の前半までしか習っていないのだという。

彼女たちのいるアレキサンドリアは、カイロから北西に200キロほど離れた場所にある。ここには初級の後半以降を教える日本語講座がない。だから、習いたくても初級前半までしか習うことができない。インターネットのソーシャル・ネットワーク・サービスやビデオ・チャットで日本人の友だちを作ったり、日本のドラマをたくさん見たりして覚えたというから、その熱意と才能には圧倒される。

後日、国際交流基金のカイロ講座の講師たちに話を聞くと、実はこのような超人的な習得力を持つ学習者が、カイロでもしばしば見られるのだそうだ。実際、今のカイロ講座の初級クラスにも、アニメが好きで一日中日本のアニメをインターネットで見ていて、セリフを暗記してしまっている受講者がいるという。この何でも暗記してしまう技術は小学校の頃から培われているらしい。

そういえば、そのあと見に行ったアインシャムス大学日本語学科の日本文化イベントでも、学生たちが日本のマンガのクイズをやっていて、思い当たるところがあった。出題者がマンガに出てくる台詞を言って、どのマンガのどの登場人物の台詞なのかを当てるというものだったが、決め台詞だけでなく日本人でもよほどのオタクでなければわからないようなレベルの問題にもパパッと正解が出る。ちなみに筆者は「おれは海賊○になる!」しか、わからなかった。

抜群の暗記力とインターネットがこの国の日本語学習の力になっている。これを教室に活かさない手はない。(池津)


4月15日に着任し、もうすぐ1か月が過ぎようとしています。当初、右往左往していましたが、少しずつ現地に慣れてきました。ここ、エジプトでの国際交流基金日本語専門家(以下、専門家)の業務は、主に国際交流基金カイロ日本文化センター主催講座の整備と拡充、及びエジプト国内の日本語教師・学習者支援です。

1. 国際交流基金カイロ日本文化センター主催講座の整備と拡充

養成講座の皆との写真
養成講座の皆と

私の派遣先である国際交流基金カイロ日本文化センター(以下、当センター)は、エジプト国内の一般人を対象とした日本語講座で最大の規模の講座をカイロとアレキサンドリアで運営しています。当センターにおける私の業務は、講座における授業担当はもとより、講座の運営、受講生の募集、日本語学習者と教師へのアドバイス等多岐にわたります。2014年1月に始まったカイロ講座が丁度この5月に修了式を迎え、現在、よりよい講座を目指して、池津専門家と協議しながら8月の講座開講へ向けて、鋭意準備中です。

2. エジプト国内の日本語教師・学習者支援

もう一つの主な業務にエジプト国内の日本語教師・学習者支援が挙げられます。例えば、エジプトの代表的な日本語教育機関であるアインシャムス大学では、2013年7月の国内治安情勢の悪化を受け、専門家が一時不在となっているため、困難な学科運営が続いています。また、2013年9月、エジプト最南部のアスワン大学に日本語専攻学科が新設されましたが、教員や教材の不足など、立ち上げ期特有の問題への対応が急務となっています。こうした機関への支援をはじめ、エジプト国内の日本語教育関係者が直面する諸問題を少しでも改善できるよう、尽力したいと考えています。(松岡)

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Cairo
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金カイロ日本文化センターは、エジプト及び中東地域における文化交流事業の拠点として幅広い活動を展開している。日本語教育支援事業はその重要な柱の一つであり、エジプトを中心に中東の近隣地域まで視野に入れた様々な支援を行っている。日本語教育アドバイザーは、国内2か所の日本語講座の運営をはじめ、エジプト及び近隣諸国の日本語教師に対する情報提供やコンサルティングなどを行う。また、セミナー等を開催し、日本語教師のスキルアップを図るとともに、地域連携の強化、相互交流の活性化にも努めている。
所在地 5F Cairo Center Bldg.106 Kasr Al-Aini St.,Garden City, Cairo, Egypt
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1998年

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