世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) アインシャムス大学での活動

アインシャムス大学
山口覚・足立健治

山口覚

アインシャムス大学の日本語学科では語学習得を第一の目的としたカリキュラムが組まれています。歴史やITなどの授業も週あたり数時間あるにはあるのですが、学生たちは基本的には日本語漬けという学生生活を送っています。専門家には授業のほか、より運用力を高めるための授業力にかかる現地教師への指導、カリキュラム作成、文化イベント等での対応、学科運営にかかるマネジメントなどで力を発揮することが期待されています。国際交流基金が進める日本語教育の施策と現地事情とのバランスを考えながら、日々業務に当たっています。

アインシャムス大学は国際交流基金日本語専門家派遣から17年目を迎えており、派遣専門家は現地の日本語教育の自立化を意識的に進めていかなければならない時期に差しかかっています。日々業務を行う上で注意している点は、現地学生や現地スタッフが授業内外で自主的に活動を行うようにリードするということです。

今年も文化紹介デー

アインシャムス大学外国語学部では各言語学科による文化紹介イベントが行われています。これは基本的には他言語の学科生に向けて学習言語の文化紹介を行うというものですが、日本語学科のものはとりわけ人気が高く、大学外部からも多く来場します。来場者は左右後方の壁にびっしりと立ち見、座席の間の通路と最前列の前のスペースに座り込み、という超満員の光景が例年繰り広げられています。

今年はプログラムが分刻みでびっしり。時間通り進められるのかと密かに心配していましたが、実際は全く問題なし。来賓到着を待つことでの15分の開始遅延がありましたが、それ以外はすべて予定通りで、閉会はプログラムで予定していた時間の5分前に終わるというすばらしさ。ステージ演目は今年も真面目なものと娯楽性の強いものを交互に行われ、全行程4時間にわたる発表にも来場者は最後まで楽しんでいました。

昨年度同様、このイベントのために学生たちはマイクやスピーカーをレンタルしました。レンタル費用は事前に学生が自分たちでカンパを集めて賄いましたが、最終的には併催の会場外での寿司販売などでいくらか余剰金が出たようで、そのお金でバスを仕立ててみんなでアレキサンドリアに日帰り旅行に行くというおまけがつきました。現地教師と学生たちによる主体的な運営でここまでできるようになったということに感動をおぼえます。このようなイベントを通じても日本語学科が今後もさらなる高みに到達することを期待してやみません。

会場の外も超満員の画像
会場の外も超満員

ステージ前に陣取る観客たちの画像
ステージ前に陣取る観客たち

足立健治

勉強会

日本語学科には18名のエジプト人の助手がいます。「助手」というのは優秀な成績で学部を卒業した大学院生の研究活動補助を目的に、大学がその院生を雇用しているものです。助手の仕事は基本的に学科の事務なのですが、将来の自立化を念頭に、日本語学科では授業も担当しています。彼らの教授能力、日本語力を上げることも派遣専門家の業務の1つとなっています。そのため、今年度は助手に対して定期的に勉強会を行うことにしました。

勉強会は教え方に関するものと、日本語能力試験に向けての日本語の授業の2つを行っています。当初は教え方の勉強会だけを不定期でやっていたのですが、学部卒業時にN2を取得したものの、N1を取っていない人も多いため、能力試験対策の勉強会も始めました。N2の勉強会は3~4人程度と、参加者はまだまだ少ないのですが、参加者は久しぶりの学生役を楽しんでいるようです。

勉強会を通して、新しい教え方、勉強の仕方に触れ、自身の教え方を振り返ってもらい、教えることを楽しんでほしいと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 アインシャムス大学
Ain Shams University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
アインシャムス大学外国語学部日本語学科は2000年に設立された日本語専攻課程である。2004年には日本語・日本文学専攻の大学院修士課程も開設された。当大学はエジプトの外国語教育では高い評価を得ており、エジプトの日本語教育の中心的存在になっている。日本語専門家は学科運営、カリキュラム作成や現地スタッフへの指導、助言など行っている
所在地 Abbaseiya, Cairo, Arab Republic of Egypt
国際交流基金からの派遣者数 専門家:2名
日本語講座の所属学部、
学科名称
アインシャムス大学外国語学部日本語学科
日本語講座の概要
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